専門職大学等は、「大学制度の中に、実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして制度化するものであり、産業界との密接な連携により、専門職業人材の養成強化を図り、また、大学への進学を希望する方にとっても新たな選択肢が広がるもの」とされており、従来の大学同様の高校卒業後の学生をはじめ、社会人学生など多様な学生を積極的に受け入れるという。
新たな進路の選択肢となった「専門職大学」についてみていこう。
専門職大学で学べる分野
文部科学省では、医学、歯学、6年制の薬学、獣医学の分野を除き、職業分野は限定されないが、観光、食と農業、IT・コンテンツなど人材の育成が強く望まれる成長分野などが中心になると想定している。
2019年度開設を目指し認可申請しているのは専門職大学13校、専門職短期大学3校。いずれも私立で、分野は工科、ファッション、保険医療、医療福祉、看護保険などで医療系が目立つ。認可がおり次第、文部科学省のWebサイトに公開される予定で、その時期は2019年夏頃とされているが、秋になるのではないかという見方もある。
既存の大学との違い
既存の大学は、比較的、学問的色彩の強い教育が行われる傾向にあるのに対して、専門職大学は、特定職種における業務遂行能力の育成に加え、特に、企業での長期実習や関連の職業分野に関する教育等を通じ、高度な実践力や豊かな創造性を培う教育に重点を置く点で特色がある。
専門職大学では、実践的な職業教育のためのカリキュラムが編成され、卒業単位の3~4割以上が実習等の科目となる。また、長期の企業内実習等を2年制課程で10単位以上、4年制課程で20単位以上履修することを義務付けている。
専門学校との違い
大きくは、大学制度の中に位置付けられるか否かの違い。専門職大学の教育課程や教員組織は、大学として必要な水準が求められる。一方で、専門学校は自由度の高い制度の特性を活かし、社会的な要請に柔軟に対応しつつ、多様で実践的な教育を展開することができる。
修業年限
4年制課程の専門職大学と、2年制または3年制課程の専門職短期大学がある。なお、社会人の学び直しを推進するため、実務経験を通じた能力習得を勘案して、一定期間を修業年限に通算することが可能だ。
卒業後の進路
職業に直結する実践的な教育を受けられることで、就職への期待が高い。卒業時に就職できなかった場合、卒業後、就職が決定するまでの必要な学費を負担する「完全就職保証制度」を設ける予定の大学もある。
また、既存の大学と同様、大学院への入学資格も得られる。
2019年度開設予定の認可申請大学
2018年11月時点で設置認可を申請した専門職大学は13校8学部44学科で入学定員は4,201人、ほかに2年次編入学定員18人、3年次編入学定員10人。専門職短期大学は3校3学科で、入学定員は190人、ほかに2年次編入学定員5人となっている。
専門職大学
国際工科専門職大学(東京・愛知・大阪)
国際ファッション専門職大学(東京・愛知・大阪)
専門職大学 東都学院大学大(東京・神奈川)
東京医療福祉専門職大学(東京)
東京専門職大学(東京)
金沢専門職大学(石川)
名古屋医療福祉専門職大学(愛知)
京都専門職大学(京都)
大阪医療福祉専門職大学(大阪)
島根保健福祉専門職(島根)
岡山医療専門職大学(岡山)
高知リハビリテーション専門職大(高知)
福岡専門職大学(福島)
専門職短期大学
ヤマザキ動物看護専門職短期大学(東京)
日本歯科専門職短期大学(静岡)
大阪調理専門職短期大学(大阪)
2019年度開設予定の専門職大学の認可が待たれる中、i専門職大学(仮称)のように2020年度開設に向け、準備を始めている大学もある。既存の大学の再編も進む中で、進路の新たな選択肢として、また社会人の学び直しの場として、専門職大学の今後に注目したい。