【NEE2018】まずはできるところから…小学校プログラミングの現状、実践例を交えて

 2018年6月7日から9日まで、東京ファッションタウンビル(TFT)で開催された教育専門展「New Education Expo 2018(NEE2018)」において、「小学校プログラミング教育の現状と展望」というテーマでセミナーが行われた。

教育ICT 先生
パネルディスカッション「小学校プログラミング教育の現状と展望」
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 2018年6月7日から9日まで、東京ファッションタウンビル(TFT)で開催された教育専門展「New Education Expo 2018(NEE2018)」において、「小学校プログラミング教育の現状と展望」というテーマでセミナーが行われた。

 放送大学教授の中川一史氏をコーディネータに、宮城教育大学教育学部准教授の安藤明伸氏、戸田市教育委員会教育政策室指導担当課長の川和田亨氏、茨城大学教育学部附属小学校教諭の清水匠氏、備前市立香登小学校教諭の津下哲也氏を迎え、今後のプログラミング教育のあり方について熱く語った。

小学校のプログラミング教育、6つの分類に寄せて



 まず、コーディネータである放送大学教授の中川一史氏がセミナー全体についての説明を行った。

 中川氏は冒頭、「今は学習指導要領移行期であり、プログラミング教育の先行実施が進んできている」と述べた。同氏はさまざまな学校に関わっているが、プログラミング教育に関しては、デジタル教科書、大型提示装置(電子黒板など)、一人一台環境、学校と家庭の連携、授業支援ソフト…など、多数の“テーマ”があるという。当日のセミナーでは、国の動向や自治体のあり方、現場の実践など、プログラミング教育に関する多岐に渡るテーマについてそれぞれの立場から話題を提供をしてもらい、今後のプログラミング教育のあり方を考えていきたいと語った。

クラブ活動から学校裁量へ



 ついで、宮城教育大学教育学部准教授の安藤明伸氏は国の取り組み方について考えを述べた。安藤氏は、「自動運転、介護・介助などの自動化が進んでいる。それらはデータで繋がっており、すべてプログラミングされて動いている。そういった中で、学校におけるプログラミング教育の重要度が増してくるのではないか」と語った。

 安藤氏は仙台市の学校で行われたプログラミング教育の例を紹介し、「プログラミング教育をクラブでやり出すところが増えてきている。クラブは評価がないので、取り組みやすく、楽しさを体験させやすいという点がある」と述べた。

 文部科学省は平成30年3月に「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」を公開し、その中で「小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類」を示している。分類詳細は「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」で公開されているほか、同手引内でも確認できる。

小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類(例)
画像:小学校段階のプログラミングに関する学習活動の分類(例)

 安藤氏はこの分類に基づき、クラブ活動でのプログラミング教育の可能性について「クラブをきっかけとして、クラブ(分類D)から各学校の裁量により実施するもの(分類C)へ繋いでいく、という流れがとてもスムーズであるのではないか」と述べ、発表を終えた。

教科×プログラミング、2つの実践例



 岡山県備前市立香登小学校教諭の津下哲也氏は、「すべての子どもたちにプログラミングの楽しさを」というテーマのもと、同氏による実践を紹介した。まず、実際に会場で模擬授業を行った。自動ドアが開く映像を見ながら、その手順をワークシートに30秒でまとめ、実際に体験しながらプログラミング教育への理解を深めることにつなげていた。

◆実践1:6年生理科で「レゴ WeDo2.0」
 テーマは「駐車場ゲートモデルをつくろう」。小学校6年生の理科「電気と私たちの暮らし」の単元では、「水門モデル」を利用して駐車場ゲートを作成したという。水門モデルは、レゴブロックを組立てながらプログラミングも学ぶことができるプログラミング教材「レゴ WeDo2.0」内に組立て手順が示されており、教育現場でも実践しやすい。紹介された実践のようすでは、子どもが実際にプログラミングするなかで、子どもが試行錯誤しながらよりよいものを作っていた。

◆実践2:1年生生活で「Ozobot(オゾボット)」
 「Ozobot(オゾボット)」は、米Evollveが開発する教育用ロボット。センサーで色や線を読み取り、子どもがかいた線の上を動き回る。このライントレースロボットを利用したのは小学1年生。生活科で用い、通学路の安全性について取り組んだ。通学路を模した紙の上をロボットに“歩かせる”ことで、通学路を歩く疑似体験ができていた。パソコンやタブレットなどのデバイスがなくてもプログラミング学習を導入でき、低学年でもロボットなどを使った実践が可能である例だ。生活科の「学区を安全に歩く」という学びと、プログラミング教育がうまく両立できていた

掃除も学びの場、概念はロボットが道標に



 茨城大学教育学部附属小学校教諭の清水匠氏は、学校現場ではやることがたくさんあり、プログラミング教育の“優先順位”については当初、否定的だったという話から始めた。現在は「イベント的なレクリエーションにならないように」という思いを大事に、「教科教育の延長上でやっていくようにしたい」と述べる。

 ただし、勤務校はネット環境が充分に整っておらず、コンピューターを使わずともできる実践を行った、ということだった。パソコンやタブレットなどのICT機器を使わないで行うプログラミングのことは一般に、「アンプラグドプログラミング」と呼ばれている。清水氏はこの、アンプラグドなプログラミング実践を含む2つの例を紹介した。

◆実践1:学級活動で「条件分岐」
 ある学級活動では、6年生が5年生に学校のリーダー役を引き継ぎたいが、掃除がうまくできていないという課題があった。そこで、「掃除の運営手順を伝えていきたい」という思いから、プログラミング的思考を生かす活動が行われた。掃除の手順を示す「フローチャート」には、プログラミングに欠かせない「条件分岐」の要素が含まれている。最後には、できあがったものを5年生にプレゼントし、リーダー役を引継ぐという目的を達成することができ、学級活動の目的も達成することができた。

◆実践2:算数で「変数」
 小学6年生の算数における「比例」単元において、変数の概念とプログラミング教育を連携させた。ロボットに変数を設定し、何度もやらせることで、点の集合体が集まって直線になる、という「比例」の概念を目で見て理解できるようになった。教科の目標の達成に迫るために、プログラミング教育を活用することができた例だ。

 清水氏は、「学校の中でプログラミング教育の優先順位を高めていきたい。良い部分を見てもらい、教員が体験できる場を作ることが大事。教員も新しい学びを楽しむ心意気を持つとよいのでは」とコメントしている。

 なお、茨城大学教育学部附属小学校では、異年齢活動として「はらから班(縦割り班活動)」教育を導入している。通常の学級とは異なり、毎日の校内清掃(はらから清掃)や行事に向けた話し合い(はらからタイム)などを行う「はらから活動」の際は、この「はらから班」を単位として活動している。

ボトムアップ×リーダーシップ、そしてフォロー



 戸田市教育委員会 教育政策室 指導担当課長の川和田亨氏は、行政(教育委員会)の立場から「産官学民で進める、戸田市のプログラミング教育」というテーマで考えを述べた。

 川和田氏は「新学習指導要領本格実施まで時間がない中で、教育委員会が本気になっていく必要があり、『ボトムアップ』と共に『リーダーシップ』も大事」と述べた。

 川和田氏はさらに、「全学校、全学級でやることに意味がある。学校格差などについて、校長のカリキュラムマネジメント(カリマネ)にかかっており、すべての学校が同じことをやるのがよいのかという思いがある。目的は同じでもアプローチは違ってもよいのではないか。学校が主体的に選んでほしい。見た目でやっていることが違っていてもよいのでは」と述べ、教育委員会が学校をフォローすることの大切さと、学校の多様性を認めることの重要性を強調した。

 最後に、中川氏は「楽しむことは大事。やりっぱなしにならず、イベント的にならないようにしながら、まずはできるところからやっていくということが大事だろう」という言葉でセミナーを締めくくった。

 国の動向、自治体のあり方、現場の実践など、プログラミング教育に関する多岐にわたる内容が話題とされた100分。今後、新学習指導要領本格実施に向け、プログラミング教育から目が離せないと感じさせるセミナーだった。

《鈴木邦明》

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