ここでは、家庭ですぐにできて成功したら食べられる「牛乳からチーズを作る」方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
自由研究:中学生向け 小学生向け
乳製品に含まれるタンパク質の性質を調べる~牛乳からチーズを作ろう~
第1分野【化学】実験
制作時間:30分 難易度:★★
チーズやバターなどの食品は、おもに牛乳から作られています。でもなぜ、液体の牛乳から固体のチーズやバターができるのでしょう?この実験では、牛乳からチーズを作り、タンパク質の性質を調べます。
用意するもの
牛乳(400mL) 鍋 レモン汁(100mL) ボウル ふきん 温度計
そのほかのもの ガスコンロ、水、食塩
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実験1 やってみよう レモン汁で作る、やわらかカッテージチーズ
★手順 全5工程
「カッテージチーズ」とは、熟成されていないチーズのことで、わたしたちが食べているチーズのもととなるチーズです。牛乳とレモン汁を使って、このカッテージチーズを作ってみましょう。
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牛乳400mLを鍋に入れて、焦げつかないように弱火で温める。
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60度になった牛乳にレモン汁100mLを加える。しばらくすると、黄色い液体と白っぽい固体に分離し始める。完全に分離したら火を止める。
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10分ほど置いておくと、白っぽい固体が沈殿するので、ふきんをはったボウルにあけて、水分をこし取る。
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水を切ったら、ふきんに包んだままで水を入れたボウルに入れる。にごりが出なくなるまで軽く洗う。
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ふきんに包んだままで軽くしぼる。さらに食塩を少し加えて完成。
うまくいかないときには
「成分無調整」の牛乳を使おう
●コーヒー牛乳、低脂肪乳、カルシウムが添加された牛乳など、牛乳に何かの成分が加えられたものを使うと、うまく作れません。成分無調整の牛乳を使いましょう。
●牛乳とレモン汁の比率は4:1です。分量の比率を確かめましょう。
●牛乳は沸騰しないよう弱火で温めましょう。沸騰させてしまうと、固まらないことがあり、食感も悪くなります。
なぜそうなるの? ~カッテージチーズができるしくみ~
タンパク質は熱や酸で性質が変わる
わたしたちの体にとって欠かせない栄養素のひとつであるタンパク質は、酸や熱などによって変化します。たとえば、卵をゆでると黄身や白身に含まれるタンパク質が熱によって固まり、ゆで卵ができます。牛乳を温めると、表面に薄い膜ができるのもタンパク質の変化です。
実験1で作ったチーズは、酸を加えると固まるというタンパク質の性質を利用しています。牛乳の成分はおもに乳固形分と水分に分けられ、乳固形分の中の無脂乳固形分に「カゼイン」というタンパク質が含まれています。このカゼインは、pH値が4.6以下になると固まり、水分と分離する性質があります。牛乳に加えたレモン汁のpH値は約3.0なので、これによって牛乳に含まれるカゼインが固まり、チーズになったのです。
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実験2 やってみよう 生クリームからバターを作る
用意するもの
生クリーム(50mL)、フタつきのビン、タオル、ボウル、スプーン、食塩
★手順全3工程
市販の生クリームは、その多くが脂肪分です。この生クリームから脂肪分を分離し、練りあげたものがバターです。牛乳に含まれる脂肪分は、タンパク質やリン脂質などでできた膜に包まれて、水分と均等に混ざっています。この膜に衝撃を与えてこわすことで、脂肪分を取り出せます。
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フタがぴったり閉められるビンに、よく冷やした生クリーム50mLを入れる。
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手の熱が伝わらないよう、ビンをぬれたタオルで包み、ビンのフタを閉めて強く振る。生クリームが温まると、脂肪分が取り出しにくくなる。
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黄色い脂肪のかたまりと白い水に分離したら、脂肪のかたまりだけをボウルにあける。これをスプーンで練ると、バターが完成する。
そうなんだ! 手軽でおいしい乳製品
牛乳には、カルシウムなどの栄養素がバランスよく含まれています。
そのため、乳酸菌を加えて発酵させたヨーグルト、脂肪分を取り出して固めたバター、タンパク質を分離させて熟成したチーズなど、ヨーロッパなどでは古くからさまざまな加工方法による乳製品が作り出されてきました。
かんたんにおいしく栄養をとることができるため、乳製品はわたしたちの食生活に定着しています。
●さまざまな乳製品
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レポートのまとめかた
実験1で、牛乳に、レモン汁を10mL加えるごとにどのように変化するのかを観察します。また、変化があらわれるのに、どれくらいの時間がかかったか調べてまとめましょう。
実験1で、分離した牛乳をふきんで包み、ボウルで洗ったときに出てきた液体を牛乳と比べると、色やにおいなど、どのようなちがいがあるか比較してみましょう。
実験1で、牛乳に加えるレモン汁の量を多くした場合、どのようなチーズができるか試しましょう。味はどうちがうのかもまとめましょう。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。