ここでは、家庭ですぐにできる「振動で水の温度を上げる」方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
熱の正体にせまる~振動で水の温度を上げよう~
第1分野【物理】実験
制作時間:2日 難易度:★
水筒として学校に持っていく魔法ビン。このビンは、ふつうのビンとちがって、外の熱が中に伝わりにくい構造のため、中の温度が変化しにくいという特長があります。その特長を利用し、ビンに振動を与えたときに起こる水温の変化を調べてみましょう。
用意するもの
魔法ビン 温度計
そのほかのもの グラフ用紙、水
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実験1 やってみよう 水を魔法ビンに入れて振る
★手順 全5工程
振動を加えただけで、魔法ビン内の水の温度が、どのように変化するかを調べてみましょう。
また、水の分子がどのような状態になっているのかも合わせて調べてみましょう。
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魔法ビンの中に水を3分の1程度入れる。中の水と魔法ビンの温度が同じになるように1日放置する。
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振る前の水の温度を温度計で計り、記録しておく。
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魔法ビンのフタをしっかりと閉めて、1000回程度振る。
※つかれたら、ほかの人と交代しましょう。
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振ったあとの水の温度を温度計で計り、振る前に計った温度と比較する。
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魔法ビンを振る回数と温度の変化をグラフにまとめ、振る回数と温度の関係を調べる。
うまくいかないときには
水温と魔法ビン内の温度を同じにしてから実験開始
●放置する時間が短いと、入れた水よりも、魔法ビンの温度が低く、水の温度が下がる場合があります。
●温度計は正確な値を示すのに少し時間がかかります。水に温度計をさしたあと、示す値が安定してから記録するようにしましょう。
なぜそうなるの? ~振るだけで温まる水~
熱の正体は、物質を作る原子や分子の運動
動植物や金属、水など、すべての物質は「原子」や「分子」でできています。たとえば、金属などは原子の集まりですが、水は酸素原子1個と水素原子2個が集まってできた水分子でできています。
この分子はとても小さく目には見えませんが、たくさん集まると、わたしたちがふだん目にしている「水」として見えます。
分子をくわしく調べると、常に振動していることがわかります。この振動が「熱」の正体です。また、振動の激しさの度合いが「温度」であり、振動が激しいと「温度が高い」ということになります。
水に振動を加えて温度が上がるのは、加えた振動の一部が水の分子に伝わり、水の分子の運動が激しくなるためです。
●冷たい水と熱い水の分子の状態
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熱い水は、冷たい水よりも分子の運動が激しくなっています。そのため、熱い水は分子の間隔も広がっています。物を温めると、少しだけ体積が増えるのはこれが原因なのです。
実験2 やってみよう 金属をたたいて温める
★手順 全3工程
実験1では、温度を上げるのに少し時間がかかりましたが、この実験では、ハンマーで強い衝撃を与えて金属を温めます。たたく前後でどのくらい金属が温まるのかを調べてみましょう。
用意するもの
金属片*、ハンマー、ペンチ、ハンマーのたたく面よりも大きな石、放射温度計**
*鉛のおもりや太い鉄くぎなどが適しています。
**ホームセンターや通信販売などで手に入ります。
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ハンマーでたたく前に、手で金属に触れて温かさを確認する。放射温度計があれば温度を測定しておく。
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金属をペンチで支えて石やアスファルトの上に置き、ハンマーで連続して50回程度たたく。
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金属を触り、たたく前との温かさを比較する。放射温度計があれば温度を計る。
そうなんだ! ~熱は分子の振動によって伝わる~
わたしたちの手は、おもに水やタンパク質などの分子でできています。手が温かいときは、手の分子がより激しく振動しています。
手を洗って冷たくなった友だちの手を握にぎると、自分の手のぬくもりが伝わって友だちの手が温まります。
これは、温かい手の分子の振動が、冷たい手の分子に伝わることで起こります。一方、自分の手は、分子の振動を冷たい手に伝えたので、振動がおだやかになり冷たくなります。
このように、触れ合って伝わる熱は、分子の振動が伝わっているのです。
身近で発見 ~水分子を電波で振動させて温める「電子レンジ」~
分子を振動させて温める方法は、電子レンジに利用されています。
電子レンジでは、レンジ内部の対象物に電波を当てて、含まれる水分子を直接振動させます。このとき、水の分子が振動しやすい電波を当てることで効率よく温められます。
また、水分子が含まれるものであれば、水が温まることで周囲にも熱が伝わり、対象物全体を温めることができます。
レポートのまとめかた
実験1で、最初に計った水の温度と、振ったあとに計った温度の上がりかたには、どのようなちがいがあるでしょうか。実験1の工程1で放置した水を使って氷を入れたり、お湯を入れたりして、最初の温度を変えて振ると結果がどう変わるか調べてみましょう。
温度を計って記録するさいは、何回か実験を行い、平均値をとって、グラフにまとめると、より正確なデータになります。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。