大人になった今でもそんなときめきを体験できるWebサイトがあるのをご存知でしょうか。今回は、そんなWebサイト「迷路.jp」の運営者であり迷路クリエイターの吉川めいろさんに、迷路の魅力と制作の舞台裏についてお聞きしました。
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8月2日に発売された「めいろどうぶつえん」
--本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、めいろさんご自身はどんなお子さんでしたか。
絵を描くのが好きな少年で、電車や自動車など乗り物を描いたり、テレビアニメのキャラクターを描いたりしていました。
そのころから迷路も作っていました。細長い紙に迷路を描いて、クルクル丸めて「巻物迷路」にしたり、1mm方眼紙にぎっしり迷路を描きこんだり、バリエーションもたくさん作っていましたね。
幼少期から迷路好き…緻密な絵の制作は仕事でも
--現在は、イラストや迷路制作をされていますが、以前は別のお仕事をされていたとか。
はい。電機メーカーに就職して、自社の取扱説明書などを制作する部門に在籍していました。そこでは図面(三面図)から立体的なイラストにする「テクニカルイラストレーション(以下、TI)」が業務のひとつでした。次第に、それを専業にしたいという気持ちが高まっていき、数年後「後悔はしたくない」と決心し、TIを専門とするドキュメント制作会社に転職しました。晴れて「テクニカルイラストレーター」となり、さまざまな企業の製品のイラストを制作しました。
--そのころから緻密な絵を描くことを生業にされていたのですね。大人になってから、迷路制作をはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
あるとき、趣味でWebサイトを開設しようと思い立ったのがきっかけです。TIは、言語を使わず見るだけで理解しやすいコンテンツですが、それと同じように言語を使わず見るだけで楽しめるコンテンツをテーマにしたいと思ったのです。そこで頭に浮かんだのが「迷路」でした。
小学生のころの迷路は手描きでしたが、仕事で使っているAdobe Illustratorで描いたらどんな迷路ができるのだろうという興味もありました。思い立ったが吉日、システム上の設定もトントンと完了し、思いついてからわずか数日で「迷路.jp」をスタートさせました。
10月10日「ドットライナーフェスティバル」で初のコラボ
--私たちのめいろさんとの出会いは、2017年「ドットライナー」コラボ迷路の制作でしたね。そのときのお気持ちをお聞かせいただけますか。
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コクヨコラボ迷路「ドットライナー」
以前から、さまざまな商品とのコラボ迷路を個人的に描いていました。「鉛筆シャープ」の迷路を描いたこともあったのですが、細長いものは迷路の広がりに制約ができてしまって制作に苦労しました。文房具はペンやハサミなど細くて長いものが多く迷路にアレンジするのが難しいので、コクヨさんからの依頼ということで一瞬身構えましたが、「ドットライナー」は丸いフォルムなので制約もなく、のびのび楽しみながら描くことができました。
--そう言っていただけて安心しました。迷路の制作工程について教えていただけますか。
形だけで何かわかるものを見たとき、迷路のインスピレーションが湧きます。単調な一本道にならないよう、面が広いものが迷路向きです。簡単な迷路だと30分ほどで描きあがります。迷路の細かさ=難易度に比例して制作時間も長くなります。なかには20時間以上もかかったものもありました。
--20時間!超大作ですね。制作にはどのような道具を使いますか。
アイデア出しのラフには、1.3mm芯の「鉛筆シャープ TypeS」(コクヨ)と斜眼紙「アイソメトリックグラフ」(SAKAEテクニカルペーパー)を使います。それをもとにAdobe Illustrator CCで制作します。テクニカルイラストレーター時代から、ペンタブは使わずマウスだけで制作しています。
--制作はどこでされることが多いですか。
自宅とは別に、迷路制作用のスタジオがあります。迷路作りが大好きなので、制作とプライベートをしっかり分けないと、ずっと迷路を描いてしまいますので(笑)。
仕事空間とプライベートをしっかり分けて自己管理
--ちょっとスタジオのようすを拝見してもいいですか。
良いですよ、どうぞどうぞ。
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吉川めいろさんの迷路制作スタジオを本邦初公開
--すっきり整理整頓されていますね!一般的なクリエーターさんのデスクは、ラフ画や画材で混沌としているイメージなので予想外でした(笑)。
私の場合、使用するアプリケーションもAdobe Illustrator CCのみなので、気分転換にノートパソコンだけを持って喫茶店などで制作することもあります。
吉川めいろが教える!迷路クリアのマル秘テクニック
--2018年8月2日には、50種類にものぼる動物迷路を収録した「めいろどうぶつえん」を発売されました。初版には限定付録「キャンパスジュニアペンシル(赤芯)」も付いていましたね。発売日が夏休み真っ只中だったこともあり、親子で楽しむ場面も多かったと思います。めいろさんおすすめの迷路の楽しみ方を教えてください。
私は制作する際に、迷路を存分に楽しんでもらうためにスタートからゴールまでの経路をじっくり考えて制作しています。迷路全面を旅する感覚を楽しんでほしいですね。
もし「難しすぎる」と感じたら、ゴールから逆にたどっていくと案外簡単にクリアできるかもしれません。ゴールからスタートへ向かう経路は、シンプルになっていることが多いのです。
--めいろさんの考える、迷路の魅力とは何でしょうか。
言語・性別・世代に関係なく、世界各国の人たちが楽しめるところです。これからも書籍、電子書籍、Webなどさまざまなメディアを通じて世界中に迷路を発信していきたいと思っています。
国境、世代、性別を超えて楽しめることが迷路の魅力
--今日も頑張るinspi読者に向けて、めいろさんからメッセージをお願いします。
私は「はたらく」ことは、迷路を進むようなものだと思っています。自分が信じた道をひたすら進むこと。行き止まりだったら引き返して別の道をまた進めば良いのです。いつかゴールするとき、そんな回り道が良い思い出になっているはずです。
--素晴らしい言葉ですね!
今回のインタビューの記念にinspi迷路を制作してみました。みなさんで楽しんでくださいね。
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今回特別に制作いただいた「inspi」迷路
--素敵な迷路まで!吉川めいろさん、本日はありがとうございました。