山口大、海水と淡水の塩分濃度差エネルギーで発電する装置を開発

 東京ビッグサイトで開催された「FC EXPO2019」には水素を利用したさまざまな製品、技術が展示されていた。その中で面白い技術を発見した。それは山口県パビリオンにあった塩分濃度差エネルギー(SGE)変換装置だ。

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山口大学が展示した塩分濃度差エネルギー変換装置
山口大学が展示した塩分濃度差エネルギー変換装置 全 1 枚 拡大写真
東京ビッグサイトで開催された「FC EXPO2019」には水素を利用したさまざまな製品、技術が展示されていた。その中で面白い技術を発見した。それは山口県パビリオンにあった塩分濃度差エネルギー(SGE)変換装置だ。

山口県関係者も今回の展示の目玉と言って自慢していたほど代物である。しかし、その装置はお世辞にもすばらしいとは言えず、海水と淡水が入ったポリタンクが2つ並び、それぞれのポリタンクにホースがつながれているといった極めてシンプルなもの。

ところがポリタンクから海水と淡水を流し始めると、横にある電力を測る黒いボックスの数字が上がって行き、そのボックスにつながれたプロペラが回り始めたのだ。なんでも逆電気透析(RED)というもので、海水と淡水の塩分濃度差エネルギーをイオン交換膜により直接電力に変換する技術とのことだ。つまり、イオン交換膜の間を海水と淡水を通すだけで発電するわけだ。

「1トンの海水と淡水があれば、約500Whの電力を発電することができます。まだ、実用化には至っていませんが、現在沖縄県で実証実験を行っているところです。日本は海に囲まれているし、川も全国至る所で流れていますので、最適な再生可能エネルギーの一つだと考えています」と山口大学大学院の比嘉充教授は話す。

比嘉教授はこの研究を10年以上続けているそうで、海辺でなくても食塩泉の温泉がある場所でも大丈夫だという。食塩泉の温泉以外の利用ということでは、栃木県などでトラフグの養殖が行われているが、この技術を使えば食塩泉の排水を利用して発電もできるわけだ。

「今後はクラウドファンディングや助成金を利用しながら、なんとか5~7年のうちに実用化したいと考えています」と比嘉教授は話し、配付した資料にはこんなことが書かれていた。

「われわれは河川と海水の合流部、海岸域に設置されている下水処理場の処理水放流部などのさまざまな場所で、現在無駄に捨てられているSGEを有効活用し、電気やCO2フリー燃料の製造に利用するといった新たな試みの挑戦すべく一致団結し、今回新たに山口大学にブルーエナジーセンター(BEST)を設立しました。このBESTでは、SGEを活用した新技術の開発を強力に推進するとともに、それらの新技術の早急な社会実装の貢献に努めたいと考えています」

2030年頃には、下水処理場をはじめ、工場、温泉施設など至る所で塩分濃度差エネルギーを利用した発電設備ができているかもしれない。

山口大学、海水と淡水の塩分濃度差エネルギーで発電する装置を開発…FC EXPO 2019

《山田清志@レスポンス》

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