全国学習塾協会、中学校の過度な部活動における課題等について提言

 2019年6月25日、「第4回民間教育推進のための自民党国会議員連盟総会」が開催され、全国学習塾協会会長の安藤大作氏が「わが国の教育政策に関する提言」を発表し、日本の教育を取り巻く現状と課題、これまでの民間教育の取り組みに関する成果を共有した。

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全国学習塾協会会長・安藤大作氏
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 2019年6月25日、「第4回民間教育推進のための自民党国会議員連盟総会」が開催された。この席上で全国学習塾協会会長の安藤大作氏が「わが国の教育政策に関する提言」を発表し、日本の教育を取り巻く現状と課題、これまでの民間教育の取組みに関する成果を共有した。

 Society5.0時代を迎えるにあたり、子どもたちが未来を生き抜いていくためには、知識の習得だけでなく、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、コラボレーション能力、情報リテラシーなどのスキルを養っていく必要がある。また、2020年から施行される新学習指導要領においても、小学校でのプログラミング教育の必修化や英語の必修化や教科化、教科横断的な学びも組み入れられるなどしており、学習内容の充実が図られると同時に、その範囲も拡大している。

 一方で、教員採用倍率が1倍台の地方自治体もあるなど、教員の質と量の確保が難しくなってきている現状がある。全国学習塾協会では「働き方改革が叫ばれる中、学校が新学習指導要領に対応していくことは、学校現場の負担増加・疲弊に繋がり、ひいてはさらなる教員採用倍率の低下という悪循環に陥りかねない」と指摘。子どもたちを第一に考え、学びの多様性を推進していくためには、「社会に開かれた教育課程」を実現するとともに、学校教育と民間教育のパートナーシップを今まで以上に強固なものにしなければならないと考えるとした。

 今回、全国学習塾協会が行った教育政策に関する提言は次の3つ。
1.多様な学びの自由化に向けた子どもの時間確保(部活動に係る指導の徹底)
2.学校教育と民間教育を繋ぐICT環境整備の推進
3.低所得者層などを対象とした学校外教育バウチャー支給

 1項目めについて、当日は部活動の現状と課題、ガイドラインの徹底というテーマで議論がなされた。スポーツ庁は社会問題となっている部活動問題を是正するため、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」「文化活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を発出しているが、自主練習をはじめとする朝練や夜練が行われている実態との乖離があり、子どもたちの、多様性をもって豊かに学ぶ時間を奪うだけでなく、教員にも大きな負担となっているとの報告があった。全国学習塾協会では、ガイドラインの執行状況を調査・公表し、各教育委員会に向けてその遵守を徹底して欲しいとした。

 2項目めについては、経済産業省が主導する学校教育と民間教育の連携では、EdTechにより、効果的・効率的な学習が可能となり、「新たに生まれた時間において、新学習指導要領にある主体的・対話的で深い学びや教科横断的なSTEM/STEAM教育の時間に充当させることが可能になる」との実証事業の結果報告を取り上げた。学校現場でのこうした教育プログラムの導入にはICT環境の整備が必要だが、2018年3月時点で教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数が5.6人であることに加え、2022年までに生徒3人に1台という目標では前述の個別最適化プログラムを導入できる環境とは言えないと指摘。これは子どもたちの学習の機会損失に繋がるリスクがあり、早急に1人1台に向けてICT環境の整備を推進することを望むとした。

 3項目めについては、「世帯年収と子どもの学力」「学校外教育支出と子どもの学力」に相関関係があることが明らかになってきた点に言及。家庭の経済力の差により子どもたちの多様性のある学びが阻害されることは避けなければならないとし、この点について、民間でできる取組みに加え、国の財政支援を望むと意見した。また、夫婦が理想の子ども数をもたない理由として、子育てにかかる経済的な負担が1位に挙げられる現状についても取り上げ、教育費の金銭的負担を理由に出生率が低下することは国力の低下に繋がる恐れもあり看過できないと指摘した。

 この国の10年後、20年後の社会を支えていくのは今の子どもたちひとりひとりである。全国学習塾協会は、未来の子どもたちのための教育を第一に考えるという視点に立ち、以上の3項目の実現を国に向け提言。今後も今の子どもたちにとって最良の教育環境の実現に向けて動くとした。

(協力:全国学習塾協会)

《編集部》

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