迷いのない親がもっとも危険!正解のない時代の教育とは…おおたとしまさ氏

 モンテッソーリ、シュタイナー、レッジョ・エミリア、ドルトンプラン、サドベリーなど、世界7大教育法を国内実践校取材を交えて紹介する、おおたとしまさ氏の新著「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」。親たちへ何を投げかけるのか。

教育・受験 小学生
おおたとしまさ氏
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 子育て世代の親子を取り巻く環境は加速度的に変化し、「正解のない時代」へと突入した。親も育児、家事、仕事と働き方改革の狭間で悩み、大きなストレスを抱える中で、どのように子どもを育てていけばよいのだろうか。

 世界7大教育法といわれるモンテッソーリ教育、シュタイナー教育、レッジョ・エミリア教育、ドルトンプラン教育、サドベリー教育、フレネ教育、イエナプラン教育を、国内での実践校の取材を交えて紹介する、おおたとしまさ氏の新著「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」は親たちにどんなヒントを投げかけるのか。おおた氏に、今このテーマを著した理由や読者へのメッセージを聞いた。

教育は人材育成とは違う



 多くの学校現場を取材し、育児や教育、受験関連と多くの著書をもつおおた氏だが、特に中学受験に関心の高い読者から注目されている。しかし、おおた氏は「自分の著書が受験系だと思われていることは不服。今まで中学受験のために頭がよくなる方法なんて本は1冊も書いていない」と言い切る。

 「学校を取材している目的は『良い教育って何だろう?』というテーマに答えを見つけるため。そして一般的な学校教育とは違う教育の中にもヒントがあるだろう、正解のない世の中を生きていくうえでのヒントが、画一的な教育に対するアンチテーゼとして生まれた海外のオルタナティブ教育にあるのではないかという問題意識から、このテーマを選びました」と説明する。

 本格的な教育改革を目前に控えた現在、いまだにさまざまな議論が展開されている。こうした中「多くの人が人材育成を教育と勘違いしている」とおおた氏は警鐘を鳴らす。「教育とは大きな社会というシステムの中の部品(=人材)としての性能を高めるための手段ではなく「その子自身を見てあげること、その子の人生を豊かにすること」だとその考えは明確だ。親の子どもへの過度な期待を原因とする教育虐待が問題となっているが、おおた氏もまた「教育は親のためでも社会のためでもなく、子ども自身のためにある」と念を押す。

海外発祥の“自由”な教育の魅力



 海外で生まれ、日本に入ってきているおもな教育法を網羅した「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」では魅力的な教育法が、実例を交えて紹介されている。実際の学習者である著名人も紹介されていることから、我が子にはどのメソッドがあっているのかと悩んでしまう読者もいそうだ。確かに紹介された教育法の実践校への進学を検討する際に役立つ情報が多く参考になる。しかし、おおた氏は「取材した教育法に共通することは教育の現場で子どもを見ることであって、目的に合わせて子どもを育てることではないという。この本では、その視点が伝わればよいと思っている」と語る。

おおたとしまさ氏

 「ここに載っている方法を家庭で真似してほしくはないんです。読んで、子どもを見る視点が変わってくれればいい。教育の現場では教育法を学び訓練を受けた専門の先生が実践しているわけで、家庭で真似をすることは不可能です。特別な教育法を謳っていなくても海外の教育メソッドのよい部分を取り入れている幼稚園や学校もあります。この本を読むことで自分の子どもが通っている保育園、幼稚園、学校と似ているところに気付いたり、たとえば子どもを自由にさせるといった、そのふるまいの価値がわかるようになってくれたらよいと考えています」(おおた氏)

子どもに必要な力と親の役割



 では、画一的な教育を受けてきた親世代、教育関係者は、どう子どもたちを見つめ、自由にさせるのだろうか。長年培われてきたマインドセット、過去の成功体験にとらわれ「子ども自身を見つめる」こと自体ピンと来ないかもしれない。おおた氏は「子どもに何が良いかと悩んでいる、迷っている親は大丈夫です。これだ!という答えを大人が見つけて、迷いなく突き進んでしまうことがもっとも危険です」という。

 子ども自身を見つめる視点として指標となる子どもに必要な力とは何か。おおた氏は、これまでのように社会というシステムの部品として機能すれば良かった時代から変わっていく「正解のない時代」に子どもたちに必要となる力を3つあげた。

1.そこそこの知力と体力
2.GRIT(グリット、やり抜く力)
3.自分にない能力をもつ人とチームになる力

 「1の知力と体力はこれまでと変わらず必要な力だが、これからは2と3に比重が寄ってくる」という。さまざまな環境や文化の違いを理解する思考力、共感する力、コミュニケーション能力といった力を身に付けるために必要なのは、確かにメソッドを真似るといったことではないだろう。

 画一的な教育へのアンチテーゼとして立ち上がった世界7大教育はいずれも戦時中、戦後の大きな混乱や喪失感の中で、子どもひとりひとりの個性をしっかりと見つめることから誕生したものだ。子ども自身を見つめる眼をもつ先生がいる場所で、大人も子どもも対等に語らい、子どもたちが伸び伸びと学ぶ姿が鮮明につづられている新著。自発的に子どもたちが動けるだけの自由を今、親である自分自身が制限してしまっているのではないだろうか。自由からこそ身に付けられる力がもっとあるのではないだろうか。

 正解のない混乱の時代ともいえる今この本を読み、子どもの未来について悩み、考え、また迷うことから、子どものもつ見えていなかった力に気が付くことができるのかもしれない。

おおたとしまさ氏


 ※リセマムでは、おおたとしまさ氏の直筆サイン入り「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」(大和書房)を3名にプレゼントする。応募期間は2019年7月16日(火)から7月31日(水)まで。

世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書

発行:大和書房

<著者プロフィール:おおたとしまさ>
 1973年、東京生まれ。育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートを脱サラ独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を務め、現在は育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を所持。小学校教員の経験もある。著書は「ルポ塾歴社会」(幻冬舎新書)、「名門校とは何か?」(朝日新書)、「受験と進学の新常識」(新潮新書)ほか50冊以上。

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