【自由研究】日本最大級の全身骨格「むかわ竜」のスゴさ

 発見から15年の歳月を経て、いよいよ全貌が明らかになったむかわ竜。全長8mのこの恐竜は、全身の8割が保存されていた。国内外から注目される「むかわ竜のスゴさ」を「子供の科学 2019年8月号」より、あらためて確認しておこう。

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日本最大級の全身骨格!むかわ竜
日本最大級の全身骨格!むかわ竜 全 4 枚 拡大写真
 恐竜がいた時代にタイムスリップしたら…恐竜が現代に甦ったとしたら…古代の世界を想像し、その長い歴史を感じる新たな「化石」の発見には常に注目が集まる。

 発見から15年の歳月を経て、いよいよ全貌が明らかになったむかわ竜。全長8mのこの恐竜は、全身の8割が保存されていた。国内外から注目される「むかわ竜のスゴさ」を「子供の科学 2019年8月号」より、あらためて確認しておこう。

日本最大級の全身骨格!むかわ竜



 この夏、国立科学博物館で企画展「恐竜博2019」が開催されます。この企画展の主役のひとつが「むかわ竜」です。

 むかわ竜は、2003年に北海道むかわ町穂別で尾の骨の一部が発見され、2013年と2014年に行われた大規模発掘で、残りの部分の化石が回収されました。

 その結果、全身の8割を超える化石が残っていたことが明らかになりました。高い保存率の「全身骨格」を持つ“日本産”の恐竜化石としては、ニッポノサウルス、フクイベナトールに次ぐ3例目になります。

Data



全長:約8m
食性:植物食
分類:鳥盤類 鳥脚類 ハドロサウルス科
時代:白亜紀後期
化石の産出地:北海道むかわ町
地層:蝦夷層群函淵層
年齢:9歳以上

 ただし、過去の2つの全身骨格と比較すると、むかわ竜は大きさが異なります。実は、ニッポノサウルスは全長4mほどで、フクイベナトールは全長2.5mほどでした。この2種に対して、むかわ竜は全長8mの大型恐竜なのです。

 そもそも、化石は小型のものほど全身が残りやすく、大型のものほど全身が残りにくいという傾向があります。そのため、全長8mで8割の保存率を誇るむかわ竜は、世界的に見ても、とても貴重であるといえます。

 さらに、むかわ竜はその化石が見つかった地層も注目されています。恐竜は陸の動物ですから、ほとんどの場合、陸でできた地層から化石が産出します。しかし、むかわ竜は海でできた地層から化石が見つかりました。何らかの理由によって、沖合まで流されてきたようです。

 海の地層は、陸の地層に比べると「いつできたのか」という時代(年代)がはるかに特定しやすいという特徴があります。つまり、むかわ竜は「いつ生きていたのか」ということが、把握しやすいのです。

 このことは、むかわ竜の近縁種をめぐる進化など、さまざまな謎の解明に大いに役立つと期待されています。

むかわ竜の恐竜としてのスゴさ



 むかわ竜は、「ハドロサウルス科」というグループに属しています。そもそも恐竜類は、「竜盤類」(りゅうばんるい)と「鳥盤類」(ちょうばんるい)の2つのグループに分けることができます。竜盤類はトカゲのものに似た骨盤(腰の骨)を持つ恐竜たちで、ティラノサウルスのような肉食恐竜や、全長20mを越える巨大な植物食恐竜たちが属しています。鳥類も竜盤類に分類されます。

分類上のむかわ竜:恐竜類は、まず骨盤のつくりによって、竜盤類と鳥盤類の2グループに大きく分かれ、さらにさまざまな種へ分かれていく。むかわ竜がどんなグループに属しているのか見てみよう。分類上のむかわ竜:恐竜類は、まず骨盤のつくりによって、竜盤類と鳥盤類の2グループに大きく分かれ、さらにさまざまな種へ分かれていく。むかわ竜がどんなグループに属しているのか見てみよう。/画像出典:「子供の科学 2019年8月号」(誠文堂新光社)


 一方、鳥盤類は鳥のものに似た骨盤を持つ恐竜たちです。鳥盤類に属する恐竜はすべて植物食恐竜で、鳥盤類の中には独特の特徴を持ったグループがいくつもあります。

 そうした鳥盤類のグループの2つに「鳥脚類」があります。少しややこしいのですが、「鳥」という文字が入っていても、このグループは鳥類とは関係ありません。「ハドロサウルス科」は、鳥脚類を代表するグループの1つです。

 ハドロサウルス科に限らず、鳥脚類の恐竜たちは他の鳥盤類の恐竜たちと比べるといささか地味な印象を受けるかもしれません。角やフリル、大きなトゲなどの“武装”が鳥脚類にはほとんどありません。

 しかしハドロサウルス科の恐竜は、特に白亜紀後期(約1億100年前~6600万年前)の北アメリカやアジアで大繁栄していました。

 ハドロサウルス科の恐竜が大繁栄した理由は、彼らが植物食動物としてとても優れていたからだと考えられています。

 ハドロサウルス科のあごの内側を見ると、そこにはたくさんの小さい歯がびっしりと列をつくってきれいに並んでいます。これは「デンタルバッテリー」というシステムです。

デンタルバッテリー:上の歯がすり減っても、下から次々と歯が出てくる。(Erickson et al.(2012)を参考に編集部で作成)デンタルバッテリー:上の歯がすり減っても、下から次々と歯が出てくる。(Erickson et al.(2012)を参考に編集部で作成)/画像出典:「子供の科学 2019年8月号」(誠文堂新光社)


 びっしりと並んだ歯は、最上段、もしくは最下段の歯だけが使われます。植物を食(は)んでいると、その歯はしだいにすり減ってきて、やがて使えなくなり、抜け落ちます。するとすぐにその後から新しい歯が補充されるというしくみです。デンタルバッテリーにある“予備の歯”は、1000本以上ありました。むかわ竜の発掘の際にも、たくさんの歯が見つかっています。

 しかも、この歯自体とても優れたものでした。2012年にフロリダ州立大学(アメリカ)のグレゴリー・M・エリクソン博士たちが発表した、あるハドロサウルス科恐竜の歯は、使っていくうちにすり減る場所に自然と差ができて、歯の表面に多くの凸凹が増えていったようです。凸凹が多ければ、ツルツルの歯よりも植物を効率的にすり潰すことができます。

 また、ハドロサウルス科には飛ぶに“トサカ”がある種がいました。この特集の記事を書いている時点では、むかわ竜の頭部についてはよくわかっていませんが、むかわ竜の学名と、新たな復元画が発表されたら、その頭部に注目してみましょう。トサカがあるのか、もしあるとしたら、どのような形をしているのか。これがむかわ竜を楽しむポイントの1つです。

「子供の科学 2019年8月号」には、自由研究に使えるペーパークラフト「むかわ竜」の型紙が付録となっている/画像出典:「子供の科学 2019年8月号」(誠文堂新光社)


 続きは「子供の科学 2019年8月号」でお楽しみください。

取材協力:北海道大学総合博物館教授 小林快次
取材・文:土屋 健

<協力:誠文堂新光社>

子供の科学 2019年 8月号 特大号 別冊・綴込付録付 [雑誌]

発行:誠文堂新光社

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《編集部》

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