卒業した大学「教育の質が高い」と思う人は2人に1人

 応用社会心理学研究所は、2020年3月に全国の大学学部卒業生を対象に、学生視点による大学の「価値」、大学教育のリアリティを測定する調査を実施。8月7日に調査結果を発表した。有効回答数は1,142名。

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大学/大学生活についてのアンケート調査(2020年3月)
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 応用社会心理学研究所は、2020年3月に全国の大学学部卒業生を対象に、学生視点による大学の「価値」、大学教育のリアリティを測定する調査を実施。8月7日に調査結果を発表した。有効回答数は1,142名。

 今回発表となった「大学/大学生活についてのアンケート調査」は、今後のあるべき教育を考えるにあたって、「満足度」を指標にすることは果たして適切なのか、という疑問から実施。学生をお客様でなく、大学が目指す教育を実現するメンバーの1人として捉えるならば、学生「満足度」よりもむしろ「コミットメント」や「納得」が重要になるとの考えのもと、大学に対する学生の「コミットメント」「納得」、彼らが感じる「大学の価値」にフォーカスした大規模調査を行った。

 調査対象者は2020年3月卒業の大学学部生(4年制大学。医・歯・薬・獣医など6年制の学部生を含む)で、有効回答数1,142人・334大学。精度の高いデータ分析を実施するために、1,251人の回収データから回答矛盾や不真面目な回答サンプルを除去するデータクリーニングを実施、有効な回答と認められた1,142人を分析対象とした。分析対象を「令和元年度学校基本調査」(文部科学省)の分野別卒業生比率に合わせてサンプルに重みづけ(ウェイトバック集計)を行い、分野の偏りを是正した。単位未満で四捨五入しているため、内訳の計と「全体」とは必ずしも一致していない。

 「学生生活についての満足度」についての調査結果によると、8割以上が「学生生活は楽しかった」「充実していた」と回答。学生生活については高い評価という結果になった。大学での過ごし方についての設問では、8割近くが「友人との関係は良好だった」と回答。そのほか「時間にゆとりがあった」「課外活動・クラブサークルが充実していた」がともに6割を超え、これらが学生生活の楽しさを支えているものと思われる。

 また「進路についての満足度と職業意識」についての調査結果では、卒業後の進路についても評価は高く、約8割が「進路や就職先に満足している」という結果となった。

 一方で、「大学の教育についての評価」についての調査結果によると、本来、大学に求められるべき「教育」に対する評価は低く、卒業校が「教育の質が高い」と思う人は2人に1人。「授業の進め方・教え方」も半数近くが「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答した。

 「大学の教育についての評価(学生のモチベーション)」や「企業と連携した取り組み」を評価する人は半数を下回り、3人に1人が「雰囲気が自分と合わなかった」、5人に1人が「辞めようと思うことがあった」といった大学不適応を起こしていたこともわかった。

 「大学の教育方針への理解・共感」についての調査結果によると、「大学の方針・理念に共感できる」と回答したのは54.2%。大学が示す「3つのポリシー」である入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)/教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)/卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)については、「知っている」と回答した人がいずれも4割前後と、まだまだ浸透していないことがうかがえる結果となった。

 本調査は、応用社会心理学研究所が行ってきた大学評価モデルやキャリア形成の知見を活用し、今後の大学教育のあるべき姿を探るための本質的な要因や構造を明らかにできるよう設計。コロナ禍で教育も大きな変革が求められる中、本調査の学生視点による「価値」の測定によって、大学教育に内在する本質的な問題点が明らかになったとしている。

《田口さとみ》

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