「TOEFL Primary(R)」を採用…全人教育の理念息づく玉川学園小学部のバイリンガル教育

 創立以来、「グローバル人材の育成」を教育理念の一つに掲げて英語教育に力を入れてきた玉川学園小学部で、2017年から導入されているTOEFL Primaryの活用方法や効果について、同校のダミアン・プラット先生に話を聞いた。

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玉川学園校舎
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 創立以来、「グローバル人材の育成」を教育理念のひとつに掲げて英語教育に力を入れてきた玉川学園小学部。2016年4月からは、中学部以降で展開されている国際バカロレア(IB)クラスへの準備教育を行うBLES(Bilingual Elementary School)クラスがスタートした。小学1年生から特徴的なバイリンガル教育を実践する同校のBLESクラスで、2017年から導入されているTOEFL Primaryの活用方法や効果について、同校のダミアン・プラット先生に聞いた。

バランスの取れたバイリンガルを育成



--まずは玉川学園小学部の教育の特徴と、育てたい人材像についてお聞かせください。

 創立以来、一貫して創設者である小原國芳が提唱した「全人教育」という考え方をベースに、知性・身体・心のバランスが取れた人材育成を目指した教育を行っています。学力だけを伸ばすのではなく、芸術やスポーツなどを含めてバランス良く取り組める環境が特徴です。3年前に着任してすぐに、この「全人教育」という哲学が学園に深く根付いて実践されていることを感じました。

玉川学園小学部 ダミアン・プラット先生
玉川学園小学部 ダミアン・プラット先生

--小学部での英語教育について、一般クラスとBLESクラスの違いを含めて教えてください。

 本校の国際教育は歴史が古く、創設者の時代から海外姉妹校との交流など国際感覚を育てる教育が受け継がれています。その中で本校の英語教育が目指しているのは、流暢にふたつの言葉を道具として使える「バイリンガル」の育成です。

 世界人口の半数以上がバイリンガルで、2言語以上を話せることが当たり前になっている今、学園を挙げてバイリンガル教育を実践しています。昨年度からは一般クラスでも小学1年生から英語の授業を週5時間に増やし、会話の基礎(聴く、話す)と英語に対する自信をつけることに主眼を置きながら、小学5年生までに、語学のコミュニケーション能力別レベルを示す国際標準規格のCEFR A1程度の英語力習得を目標としたカリキュラムを展開しています。

 一方のBLESクラスでは、英語の授業については週5時間と一般クラスと同じですが、国語と社会以外の教科学習も英語主体で授業を行う点が大きな違いになります。これにより、BLESクラスでは6割程度が英語で行われる授業となっており、小学1・2年生の間は担任も外国人と日本人の教員が2名体制で児童をフォローしています。

--BLESクラスの具体的な教育内容について、もう少し詳しくお聞かせください。

 BLESクラスの教科学習は英語主体で行いますが、カリキュラムは文部科学省の学習指導要領に沿ったものになっています。また、日本語については一般クラスと同等の力をつけることが前提ですので、国語は日本語で一般クラスと同じカリキュラムで授業を行います。

確実な日本語力に英語力をプラスして6年生からのIBクラスに備えていくという方針でバイリンガル教育を行っている点が、BLESクラスの特徴です。

BLESクラスのようす
BLESクラスのようす

「英語で学習できる」力に



--児童の中で帰国生の割合はどれくらいでしょうか。

 帰国生の割合は学年によって異なりますが、バイリンガルの水準に達している児童と英語で会話ができる程度の児童を合わせて約4分の1になるかと思います。それ以外の児童は英語がほとんどわからない状態でスタートします。

 こうしたゼロスタートの児童にとって入学当初は戸惑いの連続ですが、英語を話せる同級生、英語指導のプロである教師たちと日々過ごす中で徐々に英語への抵抗がなくなり、夏休みを過ぎたころから理解できることが増えて自信がついてくるようです。子どもたちの成長は本当に早いですね。

--英語がゼロスタートの児童は、BLESの環境の中でどのように英語力を身に付け、5年間でおおよそどのレベルまで到達されるのか教えてください。

 BLESクラスの1・2年生では、英語力の土台づくりとして「聴く、話す力」を主とするBICS(Basic Interpersonal Communication Skills、生活言語)の習得に注力し、4・5年生では6年生からスタートするIBクラスに備えてCALP(Cognitive Academic Language Proficiency、学習言語)の習得に移行します。3年生はその間の橋渡し期間と考えています。

 CALPの習得には、「読む力」が大事になりますので、1年生から3年生にかけて徹底的にフォニックスを学びます。また、1・2年生のうちは読む力によって5つのグループに分け、小人数制のグループワークでレベルに合わせた学習を行っています。

 具体的には、英語の授業時間の半分は全体でフォニックスを学び、残り半分はグループで曜日ごとに教師との学びと自学を組み合わせています。こうしたことの積み上げによって、ゼロスタートの児童が小学5年生までにCEFR B1程度の英語力を身に付けることを目標としています。

--来年度より6年生から始まる国際バカロレア(IB)クラスの教育の特徴について教えてください。また、なぜ6年生からと前倒しになったのでしょうか。

 IBクラスの大きな特徴は、探求型学習をベースとしていることです。自ら学習し、研究する姿勢が必要になるので、自立した生徒でないと対応できないプログラムと言えるでしょう。

 また、IBプログラムでは「挑戦する人」や「コミュニケーションができる人」といった10の学習者像が定義されていますが、本学園のIBクラスでもそれらの学習者像を育成することを目標にカリキュラムを組み立てています。学習言語としては、英語が基本となりますが、保健体育と本学園独特のプログラムがある音楽を含め、1割程度の授業は日本語で行っています。

 IBの制度は、年齢に応じてPYP(初等教育プログラム)、MYP(中等教育プログラム)、DP(ディプロマプログラム)という3つのプログラムに分かれています。本来、MYPは6年生からスタートする設計となっているので、来年度からの変更は前倒しというよりは元々の制度に合わせる形となります。

国際標準に合わせ英語力を測る



--玉川学園小学部の英語教育において、TOEFL Primary®をどのように活用されているのかをお聞かせください。また、TOEFL Primary®のどういった点に魅力を感じていらっしゃるのでしょうか。

 TOEFL Primaryを採用した最大の理由は、BLESの効果を測るためです。ですので、一般クラスでは実施していません。2年生は5月頃に1年生での学習効果を、3年生は12月頃にCEFR A2程度に到達しているかを測るために試験を実施しています。

 TOEFL Primaryは、1つの試験で児童の英語力をスケールに基づいて測ることができ、国際標準であるCEFRとの比較や経年で伸びを見ることができるといったフレキシブルな点が魅力だと考えています。また、児童にとっても取り組みやすい内容となっており、低学年にも相応しいテストだと感じています。

--児童がTOEFL Primary®を経験していくことは、上の学年に進むにつれ、あるいは大人になったときにどのように役立つとお考えでしょうか。

 TOEFLはIBクラスでは採用していませんが、海外の大学へ進学を希望する際には必要となることが多い試験です。小学生のうちからTOEFLに親しんでおくことは、そういった場面で役に立ってくることもあるのではないかと思います。

世界で活躍するために重要な「寛容性」



--玉川学園では、創立以来の教育理念のひとつにグローバル人材の育成を掲げてこられています。これからの世の中を生き抜く「世界で活躍できる人材」に求められる要素について、どのようにお考えでしょうか。

 昨年度から一般クラスでも英語の授業が週5時間となり、もっとも変化したのは、直接指導を受けていない外国人教師にも自ら積極的に挨拶したり話しかけたりするようになった児童が非常に増えたことです。英語に対する自信がついたことで多様性を受け入れ、色々な人や物事に関心をもつことにつながっているのだと思います。

玉川学園小学部でのバイリンガル授業のようす
玉川学園小学部でのバイリンガル授業のようす

 また、つい先日あった5年生のディスカッションの授業では、相手の意見を受け入れ尊重しつつも、自分の意見を英語でしっかりと述べることができる児童たちの姿にとても成長を感じました。さまざまな物事に関心をもち多様性を受け入れ、相手を理解しようとする「寛容性」を備えること。そのうえで自ら考え、世界共通言語である英語で自信をもって意見を述べることができる。こういったことが、「世界で活躍できる人材」に求められる要素だと考えています。

--小学部から高等部までを含めた玉川学園としての英語教育について、今後の展望をお聞かせください。

 小学部の教師のうち、50人中20人は外国人で、その中には英語を母国語としない教師も含まれています。ネイティブのような英語を話せるようになることを目標とするのではなく、共通語として英語をコミュニケーションの道具に使いつつも、3か国語、4か国語と複数の言語を話すことが当たり前の光景になっていることが理想です。10年後くらいには、本学園がそうなっているかもしれません。楽しみにしながら、指導にあたっていきたいと考えています。

--ありがとうございました。

 世界標準に合わせた英語教育の現場で、子どもたちの英語力と教育の成果を的確に測るために活用されているTOEFL Primary。ひとりひとりが今どの水準に立っているのかを可視化することで、到達しなければならない地点までの課題が明確になり、より効果的な指導へとつながる。こうした現状分析と課題設定の繰り返しという細やかなフォロー体制が、世界に羽ばたき、活躍する子どもたちの育成には欠かせない要素といえるだろう。

TOEFL Primary /TOEFL Junior 2020年度 第2回公開テスト


実施日:2020年12月6日(日)
受験地:札幌・仙台・埼玉・千葉・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・広島・福岡

TOEFL Primary /TOEFL Junior 2020年度 第2回公開テスト
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《額賀 佑佳》

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