【中学受験2021】受験者総数と1人当たりの受験校数は減少か…サピックス小学部

 新型コロナウイルス感染症が中学受験にどのような影響を与えるのか、不安を抱く保護者は多いだろう。コロナ禍中の入試を迎える今、顕著な志望動向や各校の対応などについて、SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏に話を聞いた。

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 新型コロナウイルス感染症が中学受験にどのような影響を与えるのか、不安を抱く保護者は多いだろう。コロナ禍中の入試を迎える今、受験生の志望動向や各校の対応などについて、SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏に話を聞いた。

出題範囲などにも変更点



--コロナ禍は今年の中学入試にどのような影響を与えているのでしょうか。

 コロナ対策の一環として、まず開成などの合格発表が掲示ではなくWeb発表に、桜蔭などいくつかの学校において学校窓口での願書提出からインターネット出願に変更になりました。また、フェリスなどが面接を中止するなど、例年と異なる対応をとる学校は少なくありません。中学受験の風物詩といえば校門前での塾講師による激励ですが、今年に関しては「入試応援は遠慮してください」と通達を出す学校も出てきています。

 また、筑波大学附属駒場や東京学芸大学附属小金井などの国立校では、コロナ禍による休校が長期化したことを受けて、6年生で学習する漢字や政治分野からは出題しないなど、教科ごとに出題範囲を減らすような措置がとられています。実際には複数の学校を併願すると思いますので、今までの勉強法を変えることはないと思います。

 このほか開成中学校が、入試当日に、新型コロナウイルス感染症に罹患している、もしくは濃厚接触者に特定されているため、受験できなかった志願者を対象に、2月23日に追試を行うことを発表しました。今後も他校でも同じような追試を実施する可能性がありますので、各校のWebサイトはこまめにチェックして頂きたいと思います。

--かつてリーマンショックの不況下、中学受験者数は減少に転じました。コロナ禍においても同様の流れになるとお考えでしょうか。

 今年の前半は模試も自宅受験がほとんどだったので正確な志望者数などはまだ出ていませんが、9月以降の受験者数について、サピックスでは5%増加しましたが、他塾では横ばいか1割近く減ったところもあると聞いています。経済面や受験勉強が十分でないなどの理由から、昨年よりも受験者の総数は減る傾向にあるのではないかとみています。

SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏
SAPIX(サピックス)小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏

1月受験が減るという予想も



--志望校選びにも影響はありそうでしょうか。

 コロナ禍が続くなかで、無理して受けさせないという傾向も想定されます。例年、東京・神奈川が本番を迎える2月入試の前受けとして、埼玉や千葉、あるいは地方校の首都圏入試に受験にチャレンジするなど、多くの受験生が1月試験校を複数受験していましたが、今年は例年に比べてそれも若干少なくなるのではないかとみています。たとえば、埼玉と千葉で1校ずつ受けるところを今年はどちらか1校にする、といったように、なくならないまでも減ることはあるでしょう。

 また、午後入試にも少なからず影響は出ると思います。2月1日の午前と午後、学校を移動して2度の試験を受けるのはやはり体力的にもハードルが上がると考え、無理のない入試日程を組む方も増えるのではないでしょうか。

--確かに、1月の受験で体調を崩すなどしたら、悔やんでも悔やみきれませんね。そうなると1人あたりの受験校数にも変化がありそうでしょうか。

 同じ学校を複数回受ける場合も1校としてカウントするとして、例年ですと1人あたりの平均出願校数は7校。うち実際に受験するのは5校といわれています。ですが、1月受験を控えたり、遠距離通学を敬遠したりするなど、今年に関しては1人あたりの出願校数が減るのではないかと予想されます。

コロナによる不安から安全志向に



 学習面の影響でいえば、学校や塾の休校により、例年に比べて学習の到達度に不安を抱く保護者もいらっしゃいました。結果として、無理してワンランク上の学校を挑戦するより、手堅い学校を目指していく気持ちも強まっていくでしょう。トップ校ではなく2番手校、2番手よりはより安全な学校を選ぶというように、安全志向が増えて上位校の受験者数は減ると可能性があります。

 ただ、こういったときこそ初志貫徹で上を目指して頑張ることで、難関校に手が届きやすくなるというプラスの考え方も付け加えておきたいところです。

--入試期間中も、ソーシャルディスタンスの確保など、子どもがいかに安心・安全に入試を受けられるかということに学校も保護者も心を砕かないといけませんね。

 そのあたりの心配は尽きませんよね。ただどこの学校も、消毒や検温などを徹底したり1教室あたりの受験者数を少なくしたりして、3密を避けようとかなり熱心に工夫しています。

 たとえば関東で毎年1万人近くが受験することで知られる埼玉の栄東ですが、例年1月10日に行われる入試を、今年は10日、12日の2日間に分け、兄弟校の埼玉栄中や栄北高も入試会場として使用します。さらに、大勢が集まらないように集合時間を2段階に分け、机にパーテーションを設置するなど、感染防止に力を入れている学校のひとつです。

 なおかつ今年は、校庭を駐車場として解放し、自動車での送迎をOKにしている学校もあります。各学校、知恵を絞って、安全に入試を行うための配慮と対策を徹底しています。

広尾学園小石川の開校は大きな話題に



--今年度、注目の集まっている学校、人気が高まっている学校を教えてください。

 一番の注目は文京区の村田女子学園。学校名を変更し、広尾学園の姉妹校として開学します。人気、実力ともに名を馳せた広尾学園の先生が派遣されるとあって期待も高く、1年目の学校にしてどれだけ受験生が集まるか注目です。

 男子校では、文京区の獨協です。元々面倒見のいい学校で、ドイツ語も勉強できたり、系列に獨協医大があるなど、バランスのとれた学校として人気があります。その獨協が2021年は2月1日に午後入試を実施することになりました。世田谷学園と巣鴨の午後入試のレベルが高くなりすぎたのもあって、人気を集めそうな気配です。

 神奈川大学附属も、3回の入試のうち1回は午後入試に振り替えました。附属校でありながら多くが外部に進学すること、生徒数の割に校舎・敷地も広く運動設備にも恵まれている学校で、さらに1日午後に入試回を設けたことで人気を集めるのではないかといわれています。

 ほか、芝浦工業大学附属が共学化して女子募集を開始、松戸の聖徳女子が共学化して校名を光英VERITAS(ヴェリタス)に変更するなど、どれだけ受験希望者数を集めるか注目しています。

--注目のコースはどうでしょうか。

 世田谷学園が理数コースと一般コースに分かれてより理数教育を強化する方針を固めています。埼玉県の開智では先端コースと一般コースという入り口での分割をやめて、入学してからのコース分けに変更しました。グローバル系のコースを目的とした志願者も多くなるでしょう。世田谷の国本女子が取り入れている、日本と海外の高校卒業資格が得られる「ダブルディプロマコース」など、中高6年間で英語を仕上げていくグローバルコースはやはり人気が高いですね。

--グローバルコースというと相当な英語力が必要になるのでしょうか。

 入り口での英語力を問わない学校がほとんどです。広尾学園でいえば、帰国生や英検1級レベルの英語力の生徒が集まるアドバンストグループと、英語力ゼロの状態から学ぶスタンダードグループがありますが、ゼロからの状態からでも時間数を多くとって英語力を伸ばしていくのが特徴です。帰国生やインターナショナルスクール出身の生徒と交わって、英語を伸ばしていけるのもメリットです。

休校期間中に見えた私学の強み



--休校期間、私立中学校はどのような対応をしていたのでしょうか。

 まず、各中学校の対応ですが、学びを止めないために即座に対応できた学校と、遅れをとった学校と対応が分かれました。強かったのは広尾学園、栄東、聖光学院など、ICTを活用した教育に力を入れている学校。もともと1人1台のタブレット端末などを付与していたこともあり、すぐに家庭でのネット環境を整えて、普段どおりの学校活動を続けられたと聞いています。

 ICT環境が整ってなかったにも関わらず、スピーディーに体制を整えて授業を再開した学校もあります。開成はそれまで対面授業がすべての学校でしたが、感染状況に危機感をもち、3月中には対策委員会を設けて、動画や課題の配信、ズームを使ったオンライン授業に対応していった経緯があります。4月からリモートでの授業を実施し、5月には、他校では学習が追いついていないからと試験実施を見送るなかで、しっかり中間試験も行っていました。

 開成、麻布、武蔵、桜蔭などいわゆる伝統校において、リモートへの切り替えが早かったのは印象的でした。オンラインのニーズが高まる中、すぐに各家庭に連絡して状況を聞いたり、学校の機器を集めて貸与したり、設備や環境面でもサポートをしたそうです。誰も取り残さない、生徒1人1人を大事にするという学校の姿勢が伝わってきますね。

--塾の対応はいかがでしょうか。

 高校、大学受験コースのある塾は、英語のリスニング対応などですでにネット環境が整っていたため、オンラインへの移行が早かったように感じます。一方で、集団塾も個別塾も、中学受験専門塾は基本的には対面授業で、プログラミングの授業でもない限り、小学生クラスにICTは必要ないという認識でした。それが、2月末の休校要請で一変しましたね。

 サピックスでもまずはタブレットからノートパソコン、ビデオカメラにWi-Fi機器、機材を集めるところから始めました。サピックスは毎週配布型のテキストを採用しているので、毎週の教材を生徒に郵送して、同時並行で動画を撮影するなど、限られた機材と時間のなかでどんな授業ができるのか、手探りで遠隔授業をスタートさせました。そして5月中旬からはテレビ会議システムを利用した双方向の授業も開始しました。

 こういうときこそコミュニケーションが大切だと考え、ふだん教えている先生が生徒に直接連絡をとって勉強の遅れをフォローし、各ご家庭にも協力してもらいながら学習を続けることができました。6月以降は通常の対面授業に戻りましたが、例年とそん色ない形で授業を展開できています。無理しなくていいよといいながら、子どもたちは一生懸命やってくれていたんだと思います。

不安なときこそ塾を頼りに



--コロナ禍での受験ということで、例年とは入試に臨む心構えも若干違うのではないかと思います。小学6年生、保護者へのアドバイスをお願いします。

 まずは新型コロナウイルス、インフルエンザなどに罹らないような対策が第一。本人はもちろん、両親やきょうだい間での家庭内感染を招かないよう気を付けてほしいです。感染対策はもちろん、リスクの高い場所に行かないなど、家族全員が健康維持できるように気を配ってください。

 今年は例年と違って、学校説明会や文化祭、学園祭などに参加して行きたい学校を実感したり、気持ちを盛り上げていったりするチャンスも少なかった。保護者も、オンライン説明会だったり人数が制限されていたりと、受験校をきちんとみることができない年だったと思います。ですが、そういうときこそ塾に相談してください。

 塾の先生は毎年の傾向を把握しているので、今年見学できなくてもどの学校にどのようなカリキュラムがあるのか、資料やデータに表れない部分までアドバイスすることができます。偏差値だけでなく、授業中の子どものようすをみたうえで、こういう学校がいいと相談にのってくれるはずです。例年以上に、先生と密に連携をとって適切な情報を得てほしいですね。

 そして、入試時期が近くなると学校や塾を休んで家で勉強する子も今年は増えると思います。リスクを鑑みたうえでの家庭の判断なので、絶対休んではダメとも、休んでともいえません。ただ、休むことでお父さんお母さんと家で一緒にいる時間が増えることが、プラスにもマイナスにも働くこともあると頭に入れておいてください。

 集中していないように見えたり、課題をやろうとタブレットを立ち上げたはずが動画を見ていたりなど、いつも以上に目が届く分、どうしても子どものマイナス面に目がいきがちですが、そうではなく、きちんとできているところを評価してほしいです。

 これからの時期は特に、ささいなことでも褒めてあげてプラス思考でいられるようにしてあげてください。親が言うとケンカになることもあるでしょうから、そういうときは塾の先生から伝えてもらうなど、塾をおおいに活用していただけたらと思います。

--ありがとうございました。

 「子どもをプラス評価で見ているような家庭は、総じて受験もうまくいく」と、長年の経験から話してくれた広野先生。未だコロナが収束しない状況の中、一生懸命入試に立ち向かっていく子どもたちに親はどう接すればいいのか。そんな重要なヒントをもらうことができた。

《吉野清美》

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