【大学受験2021】度重なる変更も「思考力・判断力重視」は変わらず

 大学入試改革元年、いよいよ迎える大学入学共通テスト。コロナ禍、混沌とした新大学入試の特徴やポイントについて、東進ハイスクールを運営するナガセ 広報部長の市村秀二氏に整理してもらう。

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インタビューに応じるナガセ 広報部長の市村秀二氏
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 いよいよ迎える、はじめての大学入学共通テスト。2020年春からの新型コロナウイルスの影響も重なって、受験生やその保護者にとっては波乱と不安の日々なのではないだろうか。

 2019年11月に発表された英語外部検定試験の活用の見送りをはじめ、翌12月には国語と数学の記述式問題導入の見送りも発表された。当初からの変更が相次ぐ大学入学共通テストであるが、何はともあれ当日まで80日を切った。新大学入試の特徴やポイントについて、東進ハイスクールを運営するナガセ 広報部長の市村秀二氏に話を聞いた。

コロナショックが大学入試に与えた波紋



--コロナショックが大学入試改革に与えた影響について教えてください。

 大きく3つの側面があります。まず、皆が懸念している大学入学共通テスト(以下、共通テスト)への影響です。初年度の共通テストは、新型コロナウイルスによる学習の遅れを考慮し、本試験2回(第1日程:1月16日・17日、第2日程:1月30日・31日)と特例追試験(2月13日・14日)の計3回実施されることになりました。本試験の第2日程は、第1日程の追・再試験となっているほか、同感染症による休校等で「学業の遅れ」があると認められた現役生が出願時に選択できることとしています。2020年10月14日現在の大学入試センターの発表値では、第2日程選択者はわずか789名にとどまりました。例年、追・再試験は本試験の翌週に実施されますが、今回は2週間後の実施となり、第2日程は一部私大の入試日程と重複します。この複数日程の設定により、大学への共通テストの成績提供は1週間程度後ろ倒しとなり、大学の入試スケジュールにも変更が生じています。

 次に「総合型選抜」「学校推薦型選抜」への影響です。大学入試改革は「学力の3要素」について多面的・総合的に評価する入試への転換を図る試みであり、教科の成績以外の実績を評価する「総合型選抜」「学校推薦型選抜」があらためて重要な選抜方法として位置付けられていました。しかし、大会、コンクール、展覧会などの延期・中止が相次ぎ、受験生にとって出願書類や志望理由書、面接などでアピールする活動実績を積むチャンスが失われたことで、各大学は実績だけでなく、目標に向かうプロセスを重視する評価に変更したり、出願条件の緩和や変更をしたりせざるを得なくなっています。また、受験生との直接的な接触を避けるために、オンラインを利用した面接・討論の実施や、書類選考のみによる合否の判定など新しい入試様式が採用されることにつながっています。

 最後に、各大学の個別試験における感染症予防対応です。これは大学にとっても受験生にとっても大きな影響だったのではないでしょうか。緊急事態宣言発令により全国で休校措置が取られ、学習の遅れが深刻化したことで、文科省は大学に対し「学業の遅れに対する配慮」と「新型コロナウイルスに罹患した受験生への配慮」を要請しました。それらの対応の公表が7月末から五月雨式に行われたこと、また、正式な発表は募集要項等で行われる大学も多いことなど、本来であれば2年前に告知されるはずの大学入試に関する詳細な情報が直前まで不透明なまま進行し、混乱を招いている状況です。

コロナに翻弄される大学…入試情報は直前までこまめにチェック



--文科省からの要請に対し、大学は具体的にどのような対応を求められているのでしょうか。

 「学業の遅れに対する配慮」としては、文科省から案として提示された「大学入学共通テストの科目指定で第3学年でも履修することの多い地理歴史、公民、理科の2科目指定を1科目に減じること」「個別学力検査において、入学志願者が解答する問題を選択できる出題方法とすること」「『発展的な学習内容』として記載されている内容から出題しないこと」「『発展的な学習内容』を出題する場合においても、設問中に補足事項等を記載すること」などについて、各大学の対応が発表されています。

 「新型コロナウイルスに罹患した受験生への配慮」としては、「追試験の設定」か「追加の受験料を徴収せずに、別日程への受験の振替」が求められていましたが、国公立大の多くは3月22日(東京大学・京都大学などは22日・23日)に「追試験」を設定するようにしています。私立大は「追試験の設定」「別日程への振替」だけでなく、早稲田大学のように「追試験を行わず共通テストで代替」という大学もあります。

 このような状況で、横浜国立大学(教育学部を除く)や長野県立大(グローバルマネジメント学部)のように「入学志願者の安全と受験機会の確保を最優先するため」に、個別学力試験を行わず、共通テストの成績のみで評価する大学も出てきています。いずれにしろ、大学ごとに対応が異なるため、志望校についてはこまめに大学ホームページをチェックし、最新の入試情報を正しく把握しておくことが大切です。

インタビューに応じるナガセ 広報部長の市村秀二氏

いよいよ迎える大学入学共通テスト、その概要は?



--紆余曲折ありましたが、共通テストについて、大学入試センター試験(以下、センター試験)からの変更点をあらためて教えてください。

 共通テストの実施主体となる大学入試センターは「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」の中で、「知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する」「高等学校における『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し、授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等を基に考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する」と示しています。

 そのため、思考力、判断力(記述問題の導入が見送りになったことで、具体的に表現力を測る問題はなくなった)を問う問題を学習場面や社会生活・日常生活場面の設定の中で出題することが多くなると思われます。具体的には、多くの教科で情報量・問題量が多くなり、より多くの文章・図・グラフ・資料・写真等の素材を読み解き、解答に必要な情報を見つけ出して解答することが要求されるようになります。

 また新しい設問形式としては、いわゆる連動型の問題(連続する複数の問いにおいて、前問の答えとその後の問いの答えを組み合せて解答させ、正答となる組合せが複数ある形式)が出題される場合があります。

各教科の特徴とポイント



--各教科の具体的な特徴と、センター試験からの変更点を教えてください。

 表にまとめてみたので、こちらをご確認ください。
日常生活や社会の事象を数理的に捉え、数学的に処理して問題を解決するような問題や、対話等による問題解決の過程を重視した問題が新たに出題されるようになる。

 英数国についてはさらに考慮しておく点があります。

--英語に関しては外部検定試験の活用が見送られ、当初の予定から出題内容が変更になっているのではと思います。

 共通テストのリーディングにおいては、試行調査で提示されているとおり、読解問題のみの構成となります。ただし文法や語彙力を決して軽視しているわけではなく、正しい文法運用力が備わっていないと正しく解答できない英文が、リーディング、リスニングを問わず出題されるでしょう。2019年4月4日に大学入試センターから「大学入学共通テストの導入に向けた平成30年度(2018年度)試行調査(プレテスト)の結果報告」の中で発表された「語彙、文法および語法事項については、CEFRで整理されている能力を発揮する中でその知識を活用できるかを評価する問題となるよう出題」という方針はそのまま引き継がれると考えられます。

 私大や国公立二次に関しても言及しますと、文法語法問題を重視してきた大学は今後も同様の出題を継続すると思われます。英語4技能試験(外部検定試験)を利用した大学入試は私大を中心に今後も緩やかに拡大していくでしょう。

--国語と数学はいかがでしょうか。

 国語および数学IAの記述問題導入が見送りとなり、表現力を直接測る問題はなくなりました。しかし先の表に記載したとおり複数の素材を読み解く問題や日常生活の事象を数理的にとらえる問題などの出題が予想されます。

 また、センター試験より問題の分量が増えた分、共通テストにおいてはスピード・時間配分が高得点獲得のための要となります。複数の文章・資料に目を通し、資料の意味や場面設定、そして問題の設定条件を直ちに把握したうえで、何が問われているかを速やかに理解する、いわゆる読解力・理解力は不可欠な力であるといえるでしょう。

 そのほか、解答に必要な情報が資料・データのどこにあるかを探し出したり、不要な情報を選り分けたりするための情報収集力・情報処理力が、思考力・判断力の前提として必要になってきます。

--作問・出題形式に変更はあれど、解答するために必要な力は変わらないのですね。

 受験生は、共通テストにおける度重なる変更に、その都度一喜一憂してきたことだろう。「今まで積み上げてきた努力は無駄にならない」。今回の取材を通して、その言葉の真意が裏付けられたように思う。

《野口雅乃》

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