大学新入生のストレス状況、コロナ前と同水準に
コロナ禍における大学生のメンタルヘルスの実態について、新入生のストレス状況は、2021年になり新型コロナウイルス感染症の感染拡大前(2019年)の水準に平均値上では戻ったことが、岐阜大学が2020年1月13日に公表した調査結果から明らかになった。
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コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響の調査は2019年4~5月、2020年4~5月、2021年4~5月の期間に、各年度の岐阜大学の新入生を対象にアンケート調査を実施した。
コロナ禍が大学生のメンタルヘルスに与えた影響に関して、これまで国内外で多くの研究結果が公表されてきた。しかし、それらは感染拡大後に調査を行った研究が多く、コロナ禍の影響が反映されているのか、もしくはコロナ禍に関わらず大学生の精神的健康度が反映されただけなのか、判別のつかない研究も見られた。
そこで、感染拡大前(2019年)と感染拡大直後(2020年)のデータを比較することにより、コロナ禍の影響を実証しようと試みた。加えて、感染拡大1年後(2021年)のデータとも比較することにより、感染拡大の長期的影響の検討も試みた。
調査の結果、感染拡大直後(2020年)は他の年度と比べて、むしろ抑うつや不安をあまり感じていなかったことが明らかとなった。
感染拡大直後の学生はこうした精神症状よりも、現実感のなさを他の年度よりも強く感じていたことが示されており、急激な環境の変化によって「何が起きたかわからない」まま時間が過ぎ去っていると感じていたのかもしれない。
感染拡大1年後(2021年)は、感染拡大直後に比べて高い抑うつや不安を感じていることが示されたが、平均値上では感染拡大前(2019年)の水準に戻ったという結果が得られた。
しかし、「死にたいと考えることがある」について、0~4で評価した際、「かなり当てはまる」と回答した学生の割合は、2019年が0.7%だったのに対し、2021年は1.6%と増加傾向にあり、こうした学生を早期に発見し、支援する体制の拡充が求められる結果も得られた。
一方で「死にたいと考えることがある」について、0~4で評価した際、「全くあてはまらない」と回答した学生の割合も2019年は67.5%、2021年は69.4%と増加しており、コロナ禍に適応した学生が一定数いることもわかった。こうした結果は、コロナ禍によるメンタルヘルスの二極化の漸進を示唆している。
一方で、学業に関するストレスは感染拡大直後がもっとも高く、これはオンライン授業への適応の難しさを示していると考えられる。
しかし、感染拡大1年後は感染拡大前と同じ水準に戻ったという結果が得られた。2021年度の新入生は、高校時(2020年度)にオンライン授業を経験している学生も多く、2020年度の新入生に比べれば、大学に入ってからもそれほど抵抗なく、準備、適応できていると思われる。
今後は調査時期や対象学年を広げながら、継続的に調査を実施していくことで、いつ、誰に、どのような支援が必要となるかが、より明確になることが期待される。
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