自由・自律・自学…生徒が語る海陽学園「ハウス」生活の中身

 海陽学園の生徒たちはハウスと呼ばれる寮で中高6年間を過ごす。敷地内には校舎から独立した全12棟の寮があり、ひとつの棟におよそ60名の生徒がともに生活をしている。中学3年生の生徒2名にハウス生活について聞いた。

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海陽学園 高瀬福也さん(左)と中野泰賀さん(右)
海陽学園 高瀬福也さん(左)と中野泰賀さん(右) 全 10 枚 拡大写真
 海陽学園の生徒たちはハウスと呼ばれる寮で中高6年間を過ごす。敷地内には校舎から独立した全12棟の寮があり、ひとつの棟におよそ60名の生徒がともに生活をしている。彼らの生活をサポートするのは寮を統括する「ハウスマスター」と、各階ごとに配置される「フロアマスター」だ。多感な男子中高生と大人たちが同じ屋根の下で過ごす、日本屈指のボーディングスクール海陽学園のハウス生活とは。

 この春、中学3年生になる(2022年3月取材)15期生の高瀬福也さんと中野泰賀さんに、毎日の過ごし方、勉強、部活、先輩、友達のことから家族の存在について、ありのままを語ってもらった。

毎日の生活は想像よりもはるかに自由



--ご出身地と、海陽学園に入りたいと思ったきっかけを教えてください。

高瀬さん: 学園からもすぐ近くの豊橋市出身です。僕の従兄が海陽学園の5期生として通っていたので、学校の話を聞くことも多く「自分で何でもできる」という寮での生活に憧れていました。小学校4年のときに参加した体験入学では実際に寮に泊まることができて、すごく楽しかったんです。「ここで毎日を過ごしてみたい」と思い、この学校を目指しました。

中野さん:僕は名古屋市出身です。小学校5年生のころ、仲の良い友達に「こんな学校があるよ」と海陽学園のことを教えてもらったのがきっかけです。いろいろ学校について調べているうちに「楽しそうだな、行きたいな」と魅力を感じて特別給費生を目指して勉強を頑張りました。海陽学園の存在を教えてくれた友達とお互い励まし合って勉強して、一緒に入学しました。

--入学前と入学後、海陽学園の印象について考えは変わりましたか。またはイメージどおりでしたか。

中野さん:ハウス生活は、自由がなかったり時間も厳しかったりするのかなと思っていましたが、まったくそんなことはありませんでした。週末の過ごし方も自由で、スポーツ大会やハウス内のパーティー等のイベントがたくさんあって、皆でワイワイやるのが楽しいです。イベントも自分たちでいろいろと決めて行動できるし、想像しているよりもはるかに自由でした。不自由を感じるのは、ファストフードやラーメンを好きなときに食べられないことくらいですね(笑)。

高瀬さん: 進学校で寮生活ですし、海陽生って真面目な人ばかりなのかなと思っていましたが、実際入学してみるとひとりひとりの個性がとても強いんです。僕はアニメが好きなのですが、他にもアイドルが好き、スポーツ好き等いろいろな人がいます。アニメ好きの中でも流行りモノが好きな人もいれば、90年代にこだわりをもつ人もいて、いろいろな友達ができて面白いです。僕たちは2人とも愛知県出身ですけれど、海外からも日本国内各地からも生徒が集まっていて、普通の学校にはない多様性があることも入学してから気が付いた魅力のひとつです。

海陽学園 高瀬福也さん

--全寮制の生活をなかなかイメージできない人もいると思います。平日、休日の生活について具体的に教えてください。

高瀬さん: 朝は小学生のころよりも少し早いですね。6時半ぐらいに起床して、7時から朝食をとります。寮を出ればすぐ校舎なので通学の苦労はまったくありません。授業は8時過ぎに始まって、16時頃まであります。放課後は月・水・金曜日は部活があり、火・木曜は自由に過ごすことができます。夕食後は学園から1人1台貸与されたパソコンを使える時間もあって、資料作成や調べもの、趣味の情報を閲覧することもできます。20時から22時は夜間学習、22時半に就寝なので平日はとても忙しく過ごしています。部活は吹奏楽部でアルトサックスを担当しています。放送部も兼部していて、体育祭や文化祭等の映像を編集したり、学校紹介の広報動画を作成してたりします。

中野さん: 僕はテニスが好きでテニス部に所属しています。部活がない日も自主トレしていますので、毎日放課後はテニス漬けです。平日は朝から就寝時間まで規則正しく、目まぐるしく時間が過ぎていきます。

1年生の日課(海陽学園提供資料より)

--休日はどんなことをして過ごしていますか。

高瀬さん: 土日はとにかくイベントが目白押しなんです。スポーツ大会みたいに学校全体でやるイベントもあれば、ハウスごとに鍋パーティーを先輩が企画してくれることも。決まった予算の中で「キャベツは○個、椎茸は○個」と食材を発注して、もちろん料理から後片付けまで自分たちでやっています。自炊の腕も上がるし、食材を余らせないように工夫したり、予算内で準備したり、生活力もつきそうです。

中野さん:僕もハウスイベントに参加して楽しく過ごしていますが、イベントがない日は朝から1日中テニスをして過ごすことも多いですね。自由に使えるコートもあるし練習する相手もいて、テニスに打ち込むには最高の環境です。ボードゲームやカードゲームをやっている人もいて、自分たちで好きな遊び方ができるのも良いですね。謎解きみたいにみんなで知恵を出し合う遊びも盛り上がっています。

--祝日も授業を行うぶん、まとまった休みを帰省に充てていると伺いました。夏休みや年末年始など、長期休暇はどのように過ごしていますか。

高瀬さん: 宿題もたくさん出ますが、夜更かししたりゲームをしたり、地元の友達と遊んだり、ふだんハウスではできないことをしています。1年のうち、学校で過ごす期間の方が圧倒的に長いので、帰省したときにどれだけ家族と関われるかをすごく考えるようになりました。母の作ったご飯を食べたり、家族旅行をしたり。弟と遊ぶのも大切な時間です。実は弟も海陽学園に合格して、この春入学することになりました。僕が通っていて学校の良さを知っているので、海陽学園を選んでくれたのだと思います。

海陽学園 中野泰賀さん

中野さん:寮生活から解放された数日間は、食事以外ずっとゴロゴロしたり、ゲーム三昧みたいな生活になってしまうこともあります。それでも、家族で過ごす時間が特別なものになったのは僕も同じですね。長い休みは家族で旅行したり、父が経営しているお店を手伝ったり。家族でふだんできないことができる貴重な時間です。

皆が集う温かい場所、パブリックラウンジ



--ハウス生活でお気に入りの場所や時間はありますか。

中野さん:やっぱりここ、パブリックラウンジです。家庭のリビングみたいな感じでテレビや映画を観たり、鍋パーティーやピザパーティーをしたり。皆が集まって過ごせる温かい場所なので、僕はここが大好きです。あとは生徒の部屋はすべて個室になっているので、自分の部屋でテニスのイメージトレーニングをする時間も好きです。

高瀬さん: 僕は吹奏楽をやっていてサックス演奏が趣味なので、部屋で練習したり音楽室で過ごしたりといった時間もお気に入りです。あとは、曜日によって先輩たちより授業が終わるのが早いので、部活に行くまでの時間にこのパブリックラウンジを占領して、録画しておいたアニメを観るのも楽しみです。

--ハウスの生活で苦手なことはありますか。

中野さん:正直、あまりありません。1つ挙げるとすれば、朝ですね。起きるのが朝6時半と早くて、もうちょっとゆっくり寝たいなと思うこともあります。入学したばかりのころは、ハウスの皆で起こし合ったりしていましたが、3学期になっても起きられない人は放っておくのがうちのハウスマスターの方針です。とはいえ寝坊してもガミガミ怒られることはありません。「成長期は眠くて当たり前だよな」と言ってくれるのですが、そう言われると、逆にちゃんと起きようと思います。

高瀬さん: 僕的には、階段の上り下りが大変なこと。教室の席替えと同じように、定期的に自分の部屋を引っ越すというルールがあるのですが、4階から2階へ重い段ボール箱を持って移動するのがちょっと大変です。「部屋に荷物を溜め込まないように」というハウスマスターたちの作戦のようです(笑)。あとは、シャワー室は個室だけど脱衣所は共同なのがちょっと嫌かな。

中野さん:僕はどこでも脱いじゃうタイプなので気にならないです(笑)。たまに困るのは、みんなが一斉に洗濯をすると乾燥機が順番待ちになることですね。うちのハウスには乾燥機が4台しかないので、週末にまとめて洗濯をしようとしても埋まっていてできないことがあったり。そこで考えて、3日に1回は洗濯をするようになりました。

海陽学園の模型図。右側に連なる建物が生徒が6年間過ごすハウス

ハウスマスターは父、フロアマスターは兄



--ハウスマスターはどのように生徒と関わっているのでしょうか?

中野さん:ハウスマスターは、ときに優しくときに厳しく人生を導いてくれる大先輩。ハウスをまとめるのは大変だと思いますが、僕たちのことを下から支えてくれる存在です。

高瀬さん: ふだんは本当に優しいのですが、怒ると怖い。子供を見守るお父さんみたいな存在です。人生経験も豊富で、大先輩なのに何でも話せる雰囲気をもっていて、困ったことがあればいつでも相談できる。ハウスマスターがいれば、日常の中で解決できないことなんてないんじゃないかという安心感があります。

--フロアマスターはどのように生徒と関わっているのでしょうか?

中野さん:ハウスマスターがお父さんだとしたら、フロアマスターはより僕たちに歳が近いお兄さんです。うちのハウスの方はデンソーや東京海上日動、豊田通商といった企業から出向してきてくれているのですが、好きなものについて話したり、仕事について教えてくれたり、本当に仲の良い兄弟みたいです。勉強についても、こうしてみると良いんじゃないかなとアドバイスをもらったり、恋愛相談や人生相談に乗ってもらうことも。心の支えになっています。

高瀬さん: ちょっとした世間話をしたり、愚痴を聞いてもらったり。フロアマスターの中には、実はヨットの全日本優勝者だったり、アルティメットの日本代表経験がある方もいて、話をしていても面白いんです。今はコロナであまり行けないのですが、学校が休みに入ってからも一緒にご飯を食べに行ったり仲良くしてもらっています。フロアマスターとしての期間はだいたい1年間ですが、任務が終わって一緒に生活をすることがなくなってからも連絡を取り合っている先輩もいます。生涯付き合っていける頼れるお兄ちゃん、そんな存在です。

お気に入りの場所、ハウスのパブリックラウンジにて。上段左から、「ハウスC」のフロアマスターの宮本遊馬さん、ハウスマスターの山下勇一さん、フロアマスターの畠広樹さん。下段左から高瀬福也さんと中野泰賀さん(所属は2022年3月時点)

毎日2時間の「自学」の積み重ねが成果に



--20時~22時の夜間学習について教えてください。

高瀬さん: 2時間のうち、まず55分間集中して10分休憩をはさみ、後半55分また集中するというぺースでやっています。この時間は皆が勉強しているので勉強するしかないんです。怠けている人がいると注意をしたりするぶん、逆に自分は怠けないようにしなきゃという気持ちにもなります。僕は小学校のときまでは、学校や塾の宿題等、出されたものをただやっている感じで成績もあまり良くなかったんです。ですが海陽に入って、自分から意思をもって勉強するようになり、勉強のやり方を掴めてきたと感じています。成績も上がってきて、手ごたえを感じられるようになりました。

中野さん:「この2時間はこれをやりなさい」と、やることが決まっているわけではないので、自分の苦手な教科をやろうとか、漢検の勉強をしようとか、自分のやるべき学びに対して真剣に取り組める時間でもあります。友達に教わることだけでなく、教えることもありますが、人に教えることで良いアウトプットができ自分の知識の再確認にもなっています

大きな夢に向かわせてくれる環境



--これまで過ごしてきたハウスの生活の中で一番心に残っている出来事を教えてください。

中野さん:僕はハウスのイベントです。特に定期テストが終わった後「お疲れ様!」と打ち上げのようにハウスでパーティーやカラオケ大会をするのが一番楽しいですね。解放感いっぱいで、長期休暇に入るまでリラックスして過ごせる時間が最高に楽しいです。

高瀬さん: 僕が一番印象に残っているのは1年生のころのマラソンイベント「ビヨンド・ザ・キプチョゲ」です。皆で学校の周辺を走って、走行距離の合計で1万kmを目指そうと計画したんですが、最後30km足りなかったんです。そこで、どうせならフルマラソンを走ろう!と、フロアマスターや皆とリレー形式で42.195kmを走り、キプチョゲ選手の世界記録に挑みました。ゴールが見えてくるころは、もうテンションが上がって、寒い中上着を脱ぎ出す人もいて(笑)。これぞ青春、男子校というノリが最高でした。

--ご自身の夢を教えてください。

中野さん:本当に夢の夢みたいな話なんですけど、僕はアイアンマンを作りたいと思っているんです。単純にカッコイイし、空も飛べて、めちゃくちゃ強いパワードスーツを作ることは絶対に世のため人のためになると思っています。アイアンマンを目標にして、勉強を頑張ろうと励みにしています。

高瀬さん: 僕はまだ具体的ではないんですけど、何か大きなことをしたいという思いがあります。世の中にまだない企業を作ったり、影響力のある官僚になったり。アニメ好きやオタクにも日本を動かしていく力があるということを証明したいという夢をもっています。大きなことを成し遂げて、日本だけではなく世界に打って出たい、というのが目標です。

--最後に、中学受験を考えている小学生にメッセージをお願いします。

中野さん:やっぱり中学受験はきついし、勉強が嫌だとかやりたくないなとかあると思います。でも、もし何かひとつでもやりたいことがあるのなら、ぜひ海陽学園を選択肢に入れてほしいと思います。この学校にはやりたいことを支えてくれる、背中を押してくれる環境が整っています。受験頑張ってください!

高瀬さん: 偏差値の高い学校は他にもたくさんあると思いますが、ここは勉強だけではなくて、ハウスでの生活を通して人間力を育ててくれます。楽しいのはもちろん、今が将来につながっているという成長を感じさせてくれる。この学校に入って僕はすごく良かったと思っています。中学受験は大変だと思いますが、小学生のころに大変なことを経験していると、後々になって「あのときあんなに頑張れたんだから」という自信や力になります。ぜひ海陽学園に来て、希望のある将来につなげてくれたらと思います。

--ありがとうございました。

 「いろいろな生徒が6年間を過ごすわけなので、いろいろあります」と笑いながら話してくれた高瀬さんと中野さん。一緒に何かを成し遂げたこと、ケンカをしたこと、無邪気に遊んだこと。勉強だけではない生活そのものが、人としての大きな器を育ててくれているのだと、2人の姿から大いに伝わってくるインタビューだった。海陽学園の寮生活について詳しく知りたい方には、自宅から気軽に参加できるオンライン個別相談会がおすすめ。随時開催されているので、同校のWebサイトから事前予約を。

海陽学園 海陽中等教育学校

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●海陽学園・教職員インタビュー 2022年7月公開予定

《吉野清美》

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