環境問題への危機感高いが「何もしていない」21%

 日本において、環境問題への危機感が高い一方で、日々の生活の中で環境に配慮した行動を取る人が少ないことが、スリーエム ジャパンが2022年6月14日に公表した調査結果から明らかになった。

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科学への信頼度
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 日本において、環境問題への危機感が高い一方で、日々の生活の中で環境に配慮した行動を取る人が少ないことが、スリーエム ジャパンが2022年6月14日に公表した調査結果から明らかになった。

 3Mは、17か国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、メキシコ、ポーランド、シンガポール、韓国、UAE、英国、米国)において、各国約1,000人、計1万7,198人の成人男女を対象に、人びとの科学に対する意識調査「State of Science Index(ステート・オブ・サイエンス・インデックス)」実施した。調査期間は2021年9月27日~12月17日。

 科学への信頼度について、他国の傾向と同様に、日本でも上昇傾向にあることがわかった。「科学を信頼している」と回答した人の割合はパンデミック前の調査と比べ8ポイント上昇の88%となり、過去最高となった。

 「科学が日々の生活に与える影響はかなり大きい」と回答した人の割合は、グローバル平均の40%を大幅に上回り、75%となり、2021年までの調査と比較しても高水準を維持している。

 そして、「科学は日常生活における自分にとって非常に重要である」と回答した人の割合は35%(グローバル平均56%)となり、グローバルの平均よりも低いものの、2018年の初回調査から20ポイントも上昇していることから、日本人の科学に対する評価や意識の変化が伺えた。

 調査では、STEM分野のジェンダー課題の実状と意識との間に差があることが明らかになった。

 経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表した調査結果によれば、2019年のSTEM分野関連の高等教育機関への入学者のうち、女性が占める割合は加盟国の中で日本が最下位となり、理工系の女子学生の少なさが浮き彫りとなった。

 しかし、実際に「STEM分野ではジェンダー格差がある」と回答した人は全体の約4割に留まった。それらの回答者にさらに「性別による格差は改善しているか」と聞いたところ、「改善していると思う」と回答した人の割合が調査対象国中最高の72%となり、ジェンダー格差があると考えている人の中でも、格差は改善されつつあると感じている人が比較的多いこともわかった。

 日本ではSTEM分野のジェンダーに関する課題があるものの、偏見や格差を実感していると答えた回答者は一定数にとどまる傾向にもあり、実情と意識との間に乖離があることが示唆された。

 また、日本においても、サステナビリティへの関心は高まっているようだ。環境問題の各項目に「昨年より心配している」と回答した割合は、「気候変動」(日本76%、グローバル平均74%)、「自然災害の激化」(日本80%、グローバル平均74%)、「プラスチックによる海洋汚染」(日本68%、グローバル平均73%)、「大気汚染」(日本65%、グローバル平均71%)となり、グローバル平均と比較しても決して関心が低くないことがわかった。

 また、科学が解決すべき社会課題(COVID-19のパンデミックを除く)として、「気候変動の影響」を選んだ人の割合が69%と、調査対象国の中で最も高い数値となった(グローバル平均58%)。

 中でも、気候変動がおよぼす影響として、「異常気象」と回答した人の割合は、調査対象国中で最高値の80%にまで上り、グローバル平均を10%上回る結果となった。実際に、「(異常気象により)将来的に自身や大切な人たちがある日突然、住んでいる場所から避難する必要が生じることを懸念している」と回答した人は93%に上り、同様に調査対象国の中で圧倒的に高い数値となっている(グローバル平均79%)。

 しかし、環境問題への危機感が高い一方で、日々の生活の中で環境に配慮した行動を取る人が少ないことも明らかになった。過去6か月間で実際にとった行動として、「何もしていない」と回答した人は21%(グローバル平均7%)で、調査対象国の中でもっとも高い数値となった。

 その他には、「プラスチックの使用を削減した」(日本36%、グローバル平均53%)、「水の使用量を削減した」(日本25%、グローバル平均48%)、「プラスチックや段ボールなどのリサイクル素材を利用した」(日本35%、グローバル平均54%)などがあげられたが、いずれもグローバル平均を大幅に下回る結果となり、調査対象国の中で最低値となった。

 気候変動の影響を軽減するための取り組みを妨げているものとして「やりかたがわからない」と回答した人の割合は37%で、グローバル平均の28%よりも高い数値となっている。

 社会課題解決に対する重要性の認識は高まっているものの、個人レベルでは対応しきれない課題やいかに自分ごととするかと言った課題は残されたままだ。

 3Mでは「State of Science Index」の各国の結果の比較や、より詳細な情報をWebサイトで公開している。

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《鈴木あさり》

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