ポジティブな気持ちで理科が好きになる…菊池洋匡氏に聞く「学習まんが」を中学受験に生かす秘訣

 小学生に人気の角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』に『からだレスキュー』(1)~(3)が新登場。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池洋匡氏に、子供が理科を好きになるきっかけや、中学受験の土台づくり、自由研究などに効果的な活用法を聞いた。

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中学受験専門塾 伸学会代表 菊池洋匡氏
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 小学生に人気の角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』に、人の体のつくりをテーマにした『からだレスキュー』(1)~(3)が新たに登場した。

 『どっちが強い!?』はシリーズ累計290万部を突破し、ライオンvsトラなど子供が気になる動物バトルを通して動物の生態について学べる学習まんがだ。そのシリーズから新しく登場した『どっちが強い!? からだレスキュー』は、ジェイクやレインなどの登場キャラクターは共通しつつも、小学校理科の学習指導要領をもとに内容が構成され、全巻を読めば人体についてひととおり学べるようになっている。一歩踏み込んだ情報や、新型コロナウイルスについても解説されており、「人体」に関する知識がふんだんに盛り込まれた学習まんがなのだ。

 面白いストーリーのまんがを読み進めていくうちに知識が身に付いていくのではという期待、夏休みの自由研究に役立ててほしいという願い、知識を効率良くインプットさせたいという狙い、理科好きになってほしいという思い。さまざまな親心から、我が子に『どっちが強い!?』シリーズをプレゼントをしたくなる保護者もいるのではないだろうか。

 中学受験に役立つ情報動画を精力的に配信している中学受験専門塾 伸学会代表の菊池洋匡氏に、子供が理科を好きになるきっかけや、中学受験の土台づくりに効果的な学習まんがの活用法を聞いた。

学習まんがで苦手意識を払拭



--『からだレスキュー』(1)~(3)を伸学会に通うお子さんに読んでいただいた反応はいかがでしたか。

 特に私から読みなさいと勧めたわけではなく、いつもの本棚に置いて子供たちがどんな感じで手に取るのかなというのを見てみました。すると「新しい本がある、楽しそう!」とすぐに手に取る子と、手に取らない子、反応が分かれましたね。楽しそうに読んでいたのは比較的成績の良い子だなという印象です。

 好奇心や読む力があるからこそ新しい本を手に取ることができて、結果として力がさらに伸びていく子と、学習まんがであってもハードルが高いと感じて読むのを避けてしまうがゆえに、伸びる機会を遠ざけている子もいて、良い循環と悪い循環があるなとあらためて実感しました。

角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!? からだレスキュー』(1)~(3)好評発売中
--「理科があまり好きではない」「理科は興味をもてない」など、お子さんが理科に対して苦手意識をもっている場合、その苦手意識から解放されるのはどのようなきっかけがありますか。

 もちろん、このような理科を題材にしたまんがを楽しみながら読むことで抵抗感が薄れることもあると思います。他にも、科学館や博物館に行って実際に目で見て体験することで、生き物や科学的なことに興味をもち、理科が好きになる第一歩が踏み出せた生徒、学校の理科の授業はつまらなかったけれど、塾で授業を受けてみたら楽しくなったと言ってくれる生徒もいます。取っかかりはさまざまですが、実体験や人との関わりや先生との出会いによって意識が変わる部分も大きいのかなと思います。

理科好きになる近道



--子供に理科好きになってもらうために親ができるアプローチはありますか。

 意外と多いのは、親御さん自身が「理科が不得意で…」というケース。やはり一番身近な親御さんの苦手意識は子供に伝わってしまいがちです。理科に限らずどんな教科にも言えることですが、親自身が楽しんでいるものを子供と共有するといったスタイルだと、子供も自然と興味をもつことが多いんです。

 たとえば、歴史が好きなお父さんと一緒に家族旅行で史跡めぐりをしたり、合戦ごっこをやってみたり。ポイントは、決して勉強のためにそれをさせるわけではなくて、親御さん自身が心から楽しむことです。

「理科に限らずどんな教科も、親自身が楽しんでいるものを子供と共有するといったスタイルは、
子供も自然と興味をもつことが多い」と語る菊池氏
 そういう姿を見ていると、子供は「親が楽しんでいるってことは、これは面白いものなんだ」という気持ちで入っていくことができます。子供に理科を好きになってもらいたいなら、まず親である自分がどうしたら楽しめるか、好きになれるか、ということを考えてみるのが実は近道なのではないでしょうか。

--「勉強になるから」といった心構えよりも「楽しいから」のほうが、入っていきやすくなるのですね。

 はい。特に理科のヒントというのは、本当に日常の至るところにあります。

 たとえば、料理やお菓子作りは科学的な反応の連続です。ケーキがベーキングパウダーで膨らむのは二酸化炭素が発生するからで、これは理科の授業に必ず出てくる内容です。

 他にも、紫キャベツを入れた鍋に弱アルカリ性のコンニャクを入れると青くなって、そこにちょっと味変して酸性のお酢を入れると赤く変わったりします。この紫キャベツ液を少し中華麺にかけたら緑がかった青色になり、レモンをかけると鮮やかな紫色になりました。こうした酸性・アルカリ性の色の変化は、BTB液、リトマス紙などの色の変化とあわせて中学受験では覚えなければならないことですが、そういった体験があれば「面白い」という視点で見られるようになるのではと思います。そういう体験のきっかけは日常の中にたくさんありますので、そこから「理科って面白い」というふうに入っていってくれたらベストですよね。

学習まんがでポジティブな思い込みを



--学習まんがを渡すタイミングもご家庭でさまざまだと思います。まんがを読み始めるようになる低学年、塾で理科学習を開始する中学年、理科単元で人の体について学ぶ高学年、それぞれのパターンの活用方法を教えてください。

 低~中学年の子に理科を好きになってもらいたいなら、やはり親子で読んだまんがについて話題に出すのが一番ではないかと思います。

 絵本の読み聞かせもそうですが、子供は保護者が読んでくれるから嬉しいという気持ちが大いにあって、そこからだんだん本を読むという体験が良いものだという認識に変わり、自分でも本を読むようにステップアップしていきます。ですので、保護者もお子さんも読んでみて、その内容について一緒に話をするということが、興味をもつ第一歩としてとても大事だと思います。

担当編集氏によると、親子で『どっちが強い!? からだレスキュー』を読んでいるご家庭もあるとのこと。
子供と一緒に読むことで、大人の学び直しにも使える
 理科に対して難しいという先入観をもたない「早い(低年齢の)うちに」与えるのは有効です。学校で理科学習が始まって、テストができないと「理科が苦手なんだ」と植え付けられてしまうんです。

 たとえば4年生で「これくらいみんな知ってるよね」という平均があるとします。それに比べて自分の点数が低いと、理科が苦手なんだと思ってしまいます。でも同じことを知っていても、その子が2年生だと、「2年生なのにすごいね」という扱いになって「理科が得意なんだ」となりますよね。

 だからこそ点数をつけられないうちに学習まんがを与えて「こんなこと知ってるんだ」という感じに周りから扱われるようにしておくと「理科が得意な自分」「得意=自分は理科が好き」というポジティブな思い込みが出来上がっていくことにひと役買ってくれるのではないでしょうか。

「学習まんがは『理科が得意な自分』『得意=自分は理科が好き』という
ポジティブな思い込みが出来上がっていくことにひと役買ってくれる」
--高学年の活用法はいかがでしょうか。

 高学年の使い方としては、学校や塾の授業で習ったタイミングで補完的に読むことで理解が深まると思います。テストで解けなかったところの単元を手に取って読んで、後から「こういうことだったんだ」と振り返って復習に役立てるのも良いですね。

 『からだレスキュー』はフルカラーで描かれているのも魅力です。血液の循環、消化の流れについて『からだレスキュー』を読み返すと、ビジュアルで確認することができるので、さらに興味をもって掘り下げるために読むといった活用の仕方もおすすめです。

--学習まんがから得た興味や知識を、どのように日々の学習につなげていくと良いでしょうか。まんがで楽しく土台づくりをしたその後の学習への導き方について教えてください。

 「勉強させよう」というスタンスから入っていくとダメですね。先に述べたように、子供の成績うんぬん抜きにして、親子のコミュニケーションのツールとして楽しむことがとても大事なポイントだと思います。

 学習まんがだから、どうにかして学ばせたい、身に付けさせたいという親御さんの気持ちもわかりますが、やはり押し付けになってしまうのは良くありません。勉強として知識が入っていても好きという気持ちがないと、結局他の子に追い抜かれてしまいます。無理に勉強させて、一時的に知識を増やすのは本末転倒で、むしろ勉強は楽しくないものという後々消えないダメージが残るかもしれません。

 知識というものは、いろいろなところからどんどん勝手に発生して膨らんでいくもの。『からだレスキュー』の中に書かれていることは、中学入試で出題されないことも出てきますが、中学入試に出る・出ないというのは関係なく、楽しく読んでインプットしておくと、得た知識に関する内容が授業で出てきたときに「それ知ってる」というプラスの気持ちが絶対に生まれます。ですので「効率良く受験に出る内容を教えなきゃ」というような義務感は感じなくても大丈夫です、と保護者のみなさんに強調しておきたいです。

親子の対話が思考力を伸ばす



--近年の中学入試では、条件をもとにその場で考えさせる思考力を問われるような内容の問題が増えています。この「思考力」を考えた場合、学習まんがはどういった点が有効だと思いますか。

 まず、思考力というのは一朝一夕に身に付くものではありません。日頃の会話の中で、あなただったらどう思う、どうしたら解決できるだろうと意見を出し合うことを通じ、考えることを習慣化することがポイントになるのです。

 その意味でまんがやアニメはお子さんにとって話題にしやすいと思います。この登場人物はどういう気持ちでこういう行動をとったんだろう、もう一方の登場人物はそのときどう感じたんだろう、あなたがその立場だったらどうするんだろうと、日頃からニュースや身の回りのことを話題に保護者と対話をしている子というのは、違和感なく思考力を問う問題も解けるようになっていくんです。

「日頃からニュースや身の回りのことを話題に保護者と対話をしている子というのは、違和感なく思考力を問う問題も解けるようになっていく」と話す菊池氏。『からだレスキュー』は家族の健康という身近なことを話すきっかけになる
 というのも、問題文を読んで記述するとき、日頃と同じことを子供は頭の中でやっているのです。ペーパーテストの問いを通じて「あなたはどんな考えをもっている?」と、出題者と対話をしているのが入試問題で、そこに答えられる子が合格する。それは日頃から家庭でたくさん対話をしていることと本質はまったく一緒なのです。

 理科、社会といった教科に限らずテーマは何でも良いので、日頃から親子で対話をすることを大切にしてほしいと思います。中学入試に出る・出ないではなく、対話したことが巡り巡って絶対何かに生きてくるんです。いろいろなことについて考える習慣さえあれば、どんなテーマであれ自分の考えをまとめて書くという入試問題にも自然に対応できるようになっていきます。

--読み返してじっくり知識を頭に入れるタイプのお子さん、興味のあるところだけよく読んで他は読み飛ばすお子さん、ざっと読んでわかった気になるお子さん、解説ページは読み飛ばすお子さん等、さまざまいると思います。保護者ができるサポートを教えてください。

 基本は「どんな読み方したって良いじゃない」というスタンスで良いと思います。そのうえで子供の読み方を観察して、それを無理に矯正させないで長所を伸ばすようなサポートをしていくことが大事です。結果として、子供が読書を好きになって、もっといっぱい読むようになっていくのではないかなと思います。

 お子さんが知識を頭に入れるタイプだったら、クイズを出題して「こんなことも知っていてすごいね」とほめてあげると喜んでもっと覚えるかもしれないですし。興味があるところだけ読む子には、3冊だけではなくもっと大量に与えて、より幅広い興味を見つけると良いかもしれません。読み飛ばす子にも長所はあって、3冊をじっくり読むよりも、たくさんの本をざっと読んだほうが知識の量としては多くなることも大いにありますからね。

 『からだレスキュー』はストーリーの展開はもちろん、解説がかなり詳しく作りこまれていて驚きました。子供向けだからといって簡単な内容ではなくて、大学や国家試験レベルの専門知識が得られるページもあります。
決死の覚悟で人を助けるという、ドラマチックな展開
記事ページでは子どもが気になる話題とともに、脳に関する大学レベルの専門知識など詳細な解説が載っている
 子供というのは本当に興味をもつと、大人向けの図鑑や、容赦なく難しい漢字が使われている本でも読んで覚えてしまったりもします。子供向けだからと加減してないのは良いですよね。これだけ詳しい本だからこそ、解説ページなんか全部読めなくて当たり前という意識が大切だと思います。「ちゃんと全部読みなさい」という押し付けになりがちなので注意してほしいです。

--読み方も「これが正解!」というのはなく子供それぞれで良いのですね。夏休みの宿題の定番「自由研究」も正解がありませんが、自由研究のテーマと『からだレスキュー』の相性が良さそうなところを教えてください。

 『からだレスキュー』を読むことで、食べたものがどうしたら消化されるのか、どうしてしゃっくりが出るのか、どうして血は赤いのかなど、日頃当たり前だと思っていた自分自身の体に対する疑問や、不思議がたくさん見つかると思います。図解や解説などもとても詳しく載っているので、探究学習や夏休みの自由研究のテーマとして、まとめ方の参考としても大いに活用できると思います。

探究学習や夏休みの自由研究のテーマにも大いに活用できる『からだレスキュー』。
ストーリーの面白さのみならず、解説の濃さも抜群
 『からだレスキュー』含め『どっちが強い!?』シリーズは、バトルやゲームが好きな子供にとってはとてもわかりやすいテーマだと思うので、自由研究の題材として扱いやすいのではないでしょうか。たとえば『どっちが強い!? カブトムシvsクワガタムシ』には夏休みに採りに行ったカブトムシやクワガタが載っているねと一緒に読んでみて、お子さんがもっと知りたいなと興味をもった部分をピックアップしてまとめても良いでしょう。

--最後に、『角川まんが科学シリーズ』は子供たちにとってどんな「力」を与えてくれるものだと思いますか。

 一番は「好奇心」だと思います。好奇心というのは強い力です。何事に対しても、面白そうだなと思って入っていけると、学んだことも定着しやすい。嫌々やっていること、つまらないと思ってやっていることは、時間をかけて頑張ってもなかなか頭に入ってきません。そういう気持ちになってしまっている中で勉強をするのは、子供にとってかわいそうなことだと思うんですよね。

 「知的好奇心」をどれだけ子供の中で育ててあげられるかということは私たち指導者にとっても、保護者にとっても大きなテーマです。それにはやはり、理科や社会のみならず、何に対しても楽しそうだな面白そうだなと思える気持ち、その開かれた心というものをもっておくことがとても大事です。親も子も開かれた心で出会えば『角川まんが科学シリーズ』は知的好奇心を刺激してくれて、満たしてくれる恰好のアイテムです。大いに子供の学びの助けになってくれることでしょう。

--ありがとうございました。

 「大切なのは一時的な知識を入れ込むことではなく、好奇心を育むこと」と菊池先生は繰り返す。健やかに過ごしながら純粋にまんがを楽しんで、親子で内容について対話をする。そんな夏休みの親子時間を充実させるために『からだレスキュー』はぴったりだ。

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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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