スマホと牛乳でできる【自由研究】目に見えない「ミルククラウン」の姿を瞬間激写

 筑波大学で、科学に強い関心をもつ小中高校生のための科学教育プログラムを企画・運営しているサイエンスコミュニケーター・尾嶋好美氏の著書「おうちで楽しむ科学実験図鑑」(SBクリエイティブ)より、目にも楽しい「ミルククラウン」の科学実験を紹介する。

教育・受験 小学生
ミルククラウン
ミルククラウン 全 4 枚 拡大写真
 自分の手を動かし、目の前で起こる現象を見ることで、疑問をもち、自分の頭で「なぜ? どうして?」と考えるようになる体験は子供にとって貴重だ。子供の探究心を伸ばす科学体験の機会は、遠くへ出かけたり、大掛かりな準備をしなくても、実は家庭の中でつくることができる。夏休みの宿題の定番「自由研究」のテーマ選びに迷っているご家庭は、家の中にある身近なものや、100円均一ショップなどで手軽に手に入る安価なもので、チャレンジしてみてはいかがだろうか。

 筑波大学で、科学に強い関心をもつ小中高校生のための科学教育プログラムを企画・運営しているサイエンスコミュニケーター・尾嶋好美氏の著書「おうちで楽しむ科学実験図鑑」(SBクリエイティブ)より、身近なものから科学への興味がふくらみ、目にも楽しい科学実験を紹介する。

目には見えない? ミルククラウン



 皿に張った牛乳に、1滴の牛乳をポトンと落とすと、しぶきがあがります。その様子を写真や動画で見かけたことがあるでしょう。王冠、つまりクラウン(crown)のような形をしていることから、「ミルククラウン」と呼ばれています。

 ただ、いっしゅんで消えてしまうため、自分の目で見るのは、ほぼ不可能です。撮影するにしても、以前は、特別な機材や技術が必要で、一部の人しかミルククラウンの姿をとらえることができませんでした。でも、今は、ちょっとした工夫で、手軽に撮れます。必要なのはスマートフォン。目には見えない不思議な現象を、撮影してみましょう。

スマートフォンの機能を確認



 今回は、動画を撮影してスローモーションで見られるという、スマートフォンの機能を使います。2013年にiPhone 5sで使えるようになり、話題となりました。おもちのスマートフォンのカメラアプリで、「スロー」「スローモーション」「スーパースローモーション」「スロモ録画」といった名前の機能があれば、それを使ってみましょう。また、フレームレート、つまり1秒の動画を構成する静止画のコマ数「fps」が選べるなら、できるだけ大きい数値を設定します。※このようにして撮ることを以下、「スローモーション機能で撮影」といいます。

ミルククラウンを撮影する


 薄くひろがっている液面に、しずくが落ちることでできるミルククラウン。つくり方はかんたんなのですが、この形状になるメカニズムは、よくわかっていません。しずくが落ちていくときの空気の密度や、液体の粘度、しずくが液面に衝突する速度、液体の厚さなど、さまざまな条件が複雑にからみあって、できている冠なのです。

 ちなみに、皿に落とした牛乳と皿にあった牛乳、どちらがミルククラウンになったのでしょうか?

 確かめるには、食用色素で色をつけた牛乳をスポイトにふくませ、白い牛乳に落とすとよいでしょう。色がパッとひろがって見えますが、白い牛乳にふちどられたクラウンができているはずです。
 さて、ミルククラウンができてから壊れるまでの時間は、約30ミリ秒です。1ミリ秒は1000分の1秒なので、1秒の30分の1より短かい時間しか存在しない冠なのですね。この短さだと、ヒトの視覚では認識できません。

 そこで役立つのがスマートフォンのカメラのスローモーション機能です。たとえば、iPhone 6以降なら「240fps」を選んで設定します。「fps」はframes per secondの略で、1秒間に記録される静止画の数をあらわしています。

 240fpsなら1 秒間に240枚、つまり約4.2ミリ秒ごとに1枚の写真を撮ることになります。そのため、30ミリ秒しか存在しないミルククラウンの撮影が可能なのです。

 ほかに、噴水や滝、鳥の羽ばたきなども撮るとおもしろいでしょう。変化の速い実験にも便利です(本書85ページ、88ページ参照)。
赤い食用色素を加えた牛乳を落とすと、皿にあった白い牛乳が動いて、クラウンができる
(協力:SBクリエイティブ、写真:香野 寛)
おうちで楽しむ科学実験図鑑

発行:SBクリエイティブ

<著者プロフィール:尾嶋好美(おじま よしみ>
 筑波大学サイエンスコミュニケーター。東京都生まれ。北海道大学農学部畜産学科卒業、同大学院修了。筑波大学生命環境科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。筑波大学にて、2008年から科学に強い関心を持つ小中高校生のための科学教育プログラムを企画・運営。著書に『「食べられる」科学実験セレクション』『理系力が身につく週末実験』、編訳書に『「ロウソクの科学」が教えてくれること』がある(いずれもサイエンス・アイ新書)。



おいしい自由研究 ふしぎ! 理科実験スイーツ
¥1,430
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《編集部》

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集