女子の文理選択「理系進学・就職へのメリット」大きく影響

 女子学生の文理選択には、「理系進学・就職にメリットを感じている」ことが大きく影響していることが、山田進太郎D&I財団が行った調査結果からみえてきた。理系進学者は「理系進学・就職にメリットを感じる」割合が、文系進学者より3倍以上も高くなっている。

教育・受験 高校生
文理選択に影響を及ぼす要因
文理選択に影響を及ぼす要因 全 3 枚 拡大写真

 女子学生の文理選択には、「理系進学・就職にメリットを感じている」ことが大きく影響していることが、山田進太郎D&I財団が行った調査結果からみえてきた。理系進学者は「理系進学・就職にメリットを感じる」割合が、文系進学者より3倍以上も高くなっている。

 山田進太郎D&I財団は、2035年度のSTEM(理系)分野における大学入学者の女性比率を28%にすることを目指し、STEM(理系)女子奨学助成金事業や、企業・大学・非営利団体と連携した中高生向けのSTEM(理系)関連イベント、調査活動などに取り組んでいる。

 今回、日本の理工系学部の女性比率の低さとその背景に着目し、女性の理系選択に影響を与える要因を明らかにすることを目的に調査を実施。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの協力のもと、2023年6月に大学1・2年生の女子520名(文系278名、理系242名)を対象とした「女子学生の理系進学における障壁と要因に関するアンケート調査」を行い、結果を公表した。

 調査では、文理選択の意思決定状況をもとに、理系進学者を「理系志望者」と「理系グレーゾーン(中3時点で文系を志望していたが最終的に理転した、または中3時点で迷っており最終的に理系学部に進学した人)」、文系進学者を「文系志望者」と「文系グレーゾーン(中3時点で理系を志望していたが最終的に文転した、または中3時点で迷っており最終的に文系学部に進学した人)」にそれぞれ分類して分析している。

 「理系進学・就職にメリットを感じる学生の割合」と「得意な理系科目がある学生の割合」を、理系志望、理系グレーゾーン、文系グレーゾーン、文系志望の4つのセグメントに分けて分析したところ、理系志望者は文系志望者に比べ1.5倍以上が「得意な理系科目があった」と回答。「理系進学・就職にメリットを感じる」割合は3倍以上理系志望者のほうが高い結果となった。

 財団は、このことから、女子学生が理系に進学する要因として「得意な理系科目があること」も影響するが、「理系進学・就職にメリットを感じる」ことがより重要だと指摘。文理選択の前段階である中3時点での文理の考え方にも強く影響を与えることが判明した。さらに、「理系進学・就職にメリットを感じる」ことがなかった場合、消極的な理由から文系を選択した女子学生がいる可能性がある、という仮説も成り立つという。

 次に、理系進学者、文系進学者のそれぞれにおいて、「理系進学・就職にメリットを感じる」割合を「身近な親族の職業」「中高時代の理系体験の有無」の2つの要因と掛けあわせて分析。文系進学者においては「理系進学・就職にメリットを感じる」人の割合が、「理系職業従事者が身近にいない場合」24%、「母親が理系職業従事者の場合」17%と、母親が理系職業従事者の場合に3分の2ほどに減少した。一方、理系進学者においては「理系進学・就職にメリットを感じる」人の割合が、「理系職業従事者が身近にいない場合」84%、「母親が理系職業従事者の場合」90%と、理系の将来にメリットを感じる割合は増加。

 進学や文理選択をする前に、女性が理系職業で働くことの難しさを身近で感じることが、「理系進学・就職にメリットを感じること」にネガティブな影響を及ぼすケースもあるという仮説が成り立ち、周囲に理系職業の女性ロールモデルが存在するだけでは、理系選択をするのに十分ではないことが示唆された。

 また、文系進学者であっても、中高時代に「理系体験」を経験することで、「理系進学・就職にメリットを感じる」人の割合が1.3倍増加。理系進学者においても、中高時代に「理系体験」を経験した人のほうがメリットを感じる割合が高くなっていることから、女子学生に対しては、進学ないしは文理選択前までに「理系体験」を提供することで、積極的な動機で女子学生が理系を選択する可能性を高められるという仮説が成り立つと分析している。

 調査の完全版は、財団公式サイトで公開している。

《畑山望》

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集