【大学受験2024】関西の名門私大・関関同立「ダブル合格者」の進学先は?東進から入手

 東進ハイスクールが独自に作成する「ダブル合格者進学先分析」。運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏に、最新のデータを解説していただきながら、「関関同立」と呼ばれる関西の私大トップ4校(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)への進学状況に迫る。

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 東進ハイスクールが独自に作成する「ダブル合格者進学先分析」。運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏に、最新のデータを解説していただきながら、「関関同立」と呼ばれる関西の私大トップ4校(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)への進学状況に迫る。

 かねてより受験生の人気を集めている早慶(早稲田大学(以下、早稲田)・慶應義塾大学(以下、慶應))や明青立法中(明治大学・青山学院大学・立教大学・法政大学・中央大学)、関関同立(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)といった私立の名門大学。各大学の人気度や注目度は、志願者数や志願倍率などから計られがちだが、そうした数字には表れにくい、昨今の人気傾向を示すデータがある。

 そのデータとは、東進ハイスクールが独自作成している「ダブル合格者進学先分析(以下、ダブル合格分析)」だ。これは、たとえば早慶を併願して、両方受かった場合に実際に進学するのはどちらかといった最終的な進学先を分析したもの。いわば受験生の滑り止めなどを含んだ受験者数の比較が「仮需」だとすると、同データは、実際に進学した先を示す「実需」を示すデータとも言えよう。

 本企画では、東進ハイスクール運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏に「早慶」「明青立法中」「関関同立」について、それぞれのダブル合格分析データを用いつつ、各校の特徴と、それぞれを受験する生徒の進学傾向をインタビューした。第3回となる本記事では、関西の私大トップ4校である「関関同立」にスポットをあてる。

関西私大のトップ4「関関同立」

--関関同立の特徴と受験生の傾向を教えてください。

 「関関同立」は関西を代表する難関私立大学グループです。関関同立の特徴としては、一流企業への就職率の高さが挙げられます。有名企業400社就職率ランキング(2023年大学通信調べ)では、同志社大を筆頭に関西以西の私大トップ4を関関同立が占め、4校ともに国立を含む全大学の中で50位以内にランクインしています。これは、関関同立が一流企業への就職において圧倒的な強みをもっていることを示しています。

 また、関関同立の受験者には、国公立大との併願者が多いという特徴があります。国公立大併願率は同志社大が最大で79.4%、一番低い関西大でも56.3%と半数を超えています

 一方で、東京の私大グループである明青立法中(明治大学、青山学院大学、立教大学、法政大学、中央大学)では、国公立大併願率が50%を超えているのは明治大と中央大のみで、大半が私大専願者です。明青立法中と関関同立の偏差値を比較すると、明青立法中の方が高くなる傾向がありますが、これは3教科に絞った偏差値比較だからとも捉えられます。半数以上が5教科型の学習を中心としている関関同立志願者との差はその点にあるとも言えるでしょう。

ダブル合格者の進学先では、関西学院大と立命館大が逆転

--東進では卒業生の進学先のデータから「ダブル合格者進学先分析」を実施しています。関関同立のダブル合格者の進学先の選択について、傾向を教えてください。

 関関同立のダブル合格者進学先の比率を見ると、すべての年度において同志社大が圧勝しています。100%同志社大という年もあり、人気・実力ともに同校が関西私大のトップに君臨していることがわかります。

 同志社大に次ぐ2番手として、長年その存在感を示してきたのが関西学院大です。ところが、2023年度に異変が起こりました。関西学院大と立命館大のダブル合格進学率で、立命館大に軍配が上がったのです。これはおそらく、両校の歴史において初めてのことでしょう。コロナ前の2019年には80%以上が関西学院大を選んでいましたが、その比率が少しずつ低下し、ついに2023年に34.6%と、およそ3人に1人にまで下がりました。
 関西学院大は、関西大との選択においても、ここ数年で数字が落ちています。2020年までは、9割以上が関西学院大を選んでいましたが、2023年は69.8%と7割を切りました。

インタビューに応じてくれたナガセの広報部長・市村秀二氏

 立命館大と関西大では、立命館が大きくリードしその差を広げました。ちなみに、関関同立の中では最下位に甘んじている関西大ですが、関西第2グループである「産近甲龍」トップの近畿大との対決となると、関西大の圧勝であり、第1グループ「関関同立」と第2グループ「産近甲龍」との壁の厚さを物語っています。

関関同立は、明青立法中以上に大学改革に積極的

--個々の大学について、親世代が持つイメージからアップデートしておくべき変化はありますか。

 以下の表9・表10のとおり、1999年時点では関関同立も明青立法中も、ほとんどの大学が6~8学部で、いずれもオーソドックスな法・経済・商・文・社会・理工プラスαと、どの大学を見ても学部ラインナップはほとんど代わり映えしませんでした。ところが、2000年前後から少子化、グローバル化、情報化などの社会の変化に対応すべく、多くの大学において本格的に改革が進められ、各大学ともに学部新設・改組のラッシュが始まったのです。

 関関同立の大学改革は目を見張るものがあり、上表のとおり、各大学共に学部数が1999年時点の2倍近くになっています。中でも立命館大は16学部と、東海大に次いで日本の私大では日本大と並び2番目に学部の多い大学となりました。ちなみに日本のすべての大学における、学部数ランキングのTOP10に関関同立すべてがランクインしています(表11)。

 単に学部が多ければ良いというわけではありませんが、学部の多さは、時代に合った教育を推進するための改革の努力の成果でもあり、大学改革を評価するひとつの指標であると考えます。

 ここまで学部数に注目して見てきましたが、今、関関同立が掲げる教育改革の柱として4つの大学に大きく共通するところがあります。それは、「グローバル教育」と「AI・データサイエンス教育」の取り組み強化です。

 専門知識やスキルを身に付けることのできる学部・学科の設置はもちろん、文理を問わずすべての学部の学生が、外国語によるコミュニケーションスキルやAI・データサイエンススキルを身に付けることのできる独自のプログラムが用意されています。

--「グローバル教育」は、全国の大学でもここ10数年で大きく強化されています。関関同立では具体的にどのような教育を実施しているのでしょうか。

 まず、グローバル教育の強化に関して、関関同立は全国の大学の中でも最先端を行く大学グループだと言えます。

 同志社大では、「英語で学ぶ国際教養を」をモットーに、人文科学から社会科学、さらに自然・人間科学にまで及ぶ全学共通教養教育(リベラルアーツ)科目において、講義はもちろん、討論も、レポートも試験もすべて英語で行う教育プログラムを2016年より提供しています。

 立命館大ではアメリカン大学と立命館大学で「国際関係学」を学び、卒業時に両大学の共同学位を取得することができるジョイント・ディグリー・プログラムをはじめ、海外の大学と立命館大学の両方で学ぶ学部・学科やプログラム、また、すべてのカリキュラムを英語で学ぶ専攻コースなど、新たなグローバル教育を積極的に展開しています。

 また、関西学院大では、「インテンシブ・プログラム」という、少人数クラスで、聞く・話す・読む・書くをすべて合わせた英語の授業が実施されています。ネイティブの教員が英語のみで講義を行い、学生は4つのレベルから自分にあったコースを選択することが可能です。

 関西大では、日本初の「COIL Plusプログラム」という海外とのオンライン協働学習が文科省の支援対象に採択され、グローバルキャリアマインドを培うとともに、連携大学との間で留学生の派遣・受入を活性化させることを目指しています。

--各大学の「AI・データサイエンス教育」の取り組みについてはいかがですか。

 4大学とも、AI・データサイエンスは、文理に関わらず全学生が学べるプログラムを用意しています。

 同志社大学では、2022年度からデータサイエンス・AI教育プログラムを開講し、文理問わず14学部すべての学生が履修可能となっています。

 立命館大でも、データサイエンスやAIに関する知識・技能が修得可能な、新たな教育プログラムを開講し、文理や事前知識に関係なく、1年生から数理・データサイエンス・AIについて、段階的に学ぶことができます。

 関西学院大も、文理を問わずデータサイエンスやプログラミングなどの基礎から、プロジェクト型演習などの実践・応用まで学べる「AI活用人材育成プログラム」をIBMと共同で開発しました。

 関西大学では、2021年より、全学部生対象に「AI・データサイエンス教育プログラム」を開講し、社会が求める高度かつ実践的なスキルを身に付けていきます。さらに、2025年4月には、新たにビジネスデータサイエンス学部を開設予定です。

キャンパスの立地が人気を左右する

--各大学とも、時代に即した教育内容の充実に尽力する姿勢が見られますね。では、教育内容以外に、大学の人気を左右する要因は何でしょうか。

 明青立法中編でも述べたように、大学の人気を左右するのは、もちろん「教育内容」と言いたいところなのですが、意外に大きいのが大学の立地です。そして、関関同立においてもこの立地戦略が今後の人気の鍵を握る重要なファクターであることが、今回のW合格進学データによって浮き彫りとなりました。

 関西学院大のメインである西宮上ケ原キャンパスは、赤い瓦屋根とクリーム色の外壁を特徴とする独特の建築様式「スパニッシュ・ミッション・スタイル」で統一され、その美しさは日本屈指と言われています。1995年に開設された神戸三田キャンパスも同じスタイルの美しさに加え、最新設備と自然の融合を満喫することができます。ところが、関西主要都市から遠いという難点があります。専用のスクールバスを走らせていますが、それでも下表のとおり、神戸の中心地の三ノ宮から各々約40分、約60分ほどかかります。特に神戸三田キャンパスへは、自宅からの通学が困難という生徒が多いようです。同様の状況は、立命館大の1994年に開設されたびわこ・くさつキャンパスにも言えます。

 そんな中、立命館大が2015年に大阪いばらきキャンパスを開設し注目されています。現在は4学部ですが、2024年からは6学部体制となります。同キャンパスは大阪から20分、京都からも30分程度と、極めて交通の便が良く好評です。

 一方、同志社大のメインキャンパスは今出川。京都のど真ん中に8学部を擁すキャンパスは多くの学生の憧れであり、大きなアドバンテージです。

--ダブル合格進学率にも、キャンパスの立地が大きく影響するのでしょうか。

 冒頭で、関西学院大が立命館大にダブル合格進学率で逆転されたことを述べましたが、これは、おそらく、両校の歴史においてはじめてのことでしょう。理由については、複合的な要因が考えらますが、その中でも「キャンパスの立地」が与える影響は大きいのではないでしょうか。

 それを検証するために、両校をキャンパスの立地によって2つにグループ分けして、各々の進学率を見てみました。まず表の2行目、関西学院大の西宮上ケ原キャンパス VS 立命館大の衣笠+びわこ・くさつキャンパス。すると、関西学院大が63.0%と立命館大を上回っていました。次に、関西学院大の神戸三田キャンパスと、立命館大の大阪いばらきキャンパスを比較すると、母数はそう多くはありませんが、100%立命館大という結果となりました。さらに神戸三田VS衣笠、びわこ・くさつはというと、立命館大が86.4%と圧勝。最後に、西宮上ケ原と、大阪いばらきを比較すると、こちらも立命館大が72.4%と強さを見せました。

 つまり、神戸三田という、美しさと最新の設備と自然が融合した素晴らしいキャンパスではありながらも、立地がネックとなってしまっていると考えられます。一方、立命館大の大阪いばらきキャンパスの人気は、このダブル合格進学率の結果を見ても明らかであり、さらに、2024年には2学部が移転してくることを考えると、この先、立命館大の有利な状況は加速すると考えられます。

 次に関西学院大のキャンパスごとに、関関同立の中では最下位となっている関西大と比べてみました。大学全体としては、関西学院大が69.8%と上回っていますが、神戸三田キャンパスは44.4%と関大にも負けていることがわかりました。一方西宮上ケ原は79.7%と8割に迫る勢いで圧勝しています。

--キャンパスの立地で進学先を決める学生も少なくないということですね。

 立地の有利・不利は今に始まったことではありません。神戸三田キャンパスができたのは1995年。大阪いばらきは2015年です。

 ではなぜここ数年で、これほど数字が変わってきてしまったのか。

 その理由はいくつか考えられます。ひとつは、コロナ禍の影響です。コロナ発生当時は、感染リスクを避けるために大都市圏への進学を回避する動きが高まりました。この影響は2021年入試で顕著に現れました。首都圏に限らず関西圏でも大打撃を受け、早慶上理、明青立法中、関関同立、日東駒専、産近甲龍で軒並み10%減となりました。その影響は徐々に緩和してきましたが、残念ながらコロナ前に戻るところまでは行っていません。

 そしてコロナ禍と時期を同じくして「コスパ」ならぬ「タイパ」という言葉が生まれました。特に若者の時間効率を重視する動きが高まっており、通学も通勤も「電車に揺られて長時間」などということが敬遠される傾向にあるのは確かです。それに加え、自宅を出てひとり暮らしをするとなると、経済的にも厳しいという理由で、自宅から通える大学を選ぶ受験生も増えています。そうなると、キャンパスの遠さ、交通の不便さが、ますます大学選びのハンディになっていることが想像できます。

 本来、勉強は「どこで学ぶか」より「何を学ぶか」が大事であり、キャンパスの場所よりも学ぶ内容や将来のことを考えて大学選びをしてほしいところです。大学側としては、立地の不利を凌駕するような魅力をどうやって打ち出せるかが勝負となってくるでしょう。

主要学部同士のダブル合格で選ばれるのは?

--同じ学部でダブル合格した場合には、どういった傾向があるのでしょうか。

 まずは法学部ですが、同志社大が他の3大学に対してすべて100%という圧倒的な強さでトップ。続いて、関西学院大、立命館大、関西大の順となっています。ちなみに、司法試験合格者(法科大学院別)を見ると、2023年は同志社が29名でトップ(全大学院中10位)。続いて立命館20名、関西7名、関西学院5名となっています。

 経済学部も法学部と同様、同志社、関西学院、立命館、関西の順です。

 続いて商・経営系は、同志社(商)の次にくるのは立命館(経営)です。立命館の経営学部は、大阪いばらきキャンパスにあり屈指の人気を誇ります。

 立命館大は公認会計士試験にも強く、2022年は54名(全体の5位)でベスト10の常連、直近では6年連続で同志社大を上回り、関関同立トップに立っています。ちなみに立命館大は商学部がないため、公認会計士試験では、経営学部はもちろん、法学部・文学部、中にはスポーツ健康科学部や理工学部からも合格者を出しているとのことです。

 また、公認会計士試験合格ランキングを遡ると、下表のとおり、2000年代前半までは関関同立からトップ10にはほとんど入っていませんでしたが、2014年には4校すべてがトップ10入りするという躍進ぶりを発揮し、現在にいたっています。

 次に理工学部について。ここでもやはり同志社大が圧勝です。そして立命館大、関西大、関西学院大と続きます。

 関西学院大の理工系4学部は、神戸三田キャンパスというハンディがあり、ダブル合格者の進学先という指標のみを見ると低迷しているように見えますが、志願者数で見ると全く逆です。関西学院大は2021年に理工学部を4学部にする改革を行ってから、志願者数を伸ばしています。しかも3年連続の増加は関関同立でダントツとなっています。

志願者数では、関西学院大が3年連続増加でひとり勝ち

--同志社大の圧倒的な存在感、立命館大の躍進の一方で、関西学院が苦戦しているように思われましたが、理工学部だけでなく、大学全体でも志願者数は伸びているのでしょうか。

 はい、そのとおりです。18歳人口の減少、コロナによる大都市への進学回避、入学定員厳格化等など、私立大学にとって大きな向かい風が吹く中、この3年間、志願者数を大幅に伸ばしてきたのが関西学院大です。

 関西学院大は、2021年度から怒涛の入試改革を実行してきました。おもな内容は、2021年度の理系4学部新設に伴う、全学部日程(全学部に対して同一日程で同一試験を行う)入試に加え、併願する場合には減額制度を導入、そして2022年度には文系全学部でも全学部日程入試の導入、募集人数拡大と、共通テスト利用7科目型導入、さらに2024年度からは、文系学部で、学部個別日程における「傾斜配点型」「均等配点型」入試と、文系学部でも併願減額制度の導入等、次から次へと入試改革を打ち出してきました。その成果が志願者数増に結び付いていると考えられます。

 ダブル合格者進学率において、関西学院大が厳しい状態にあるという現象と、このひとり勝ちとも言える志願者数の伸びをどうとらえるかは、極めて難しい問題です。来年以降、どのような変化があるのか注目していきたいと思います。

 受験生の皆さんには、これらの数値はあくまで参考値として、「大学で何を学びたいのか」という本質的な視点に立ったうえで、受験校選びをしてほしいと思います。

 高2生、高1生ならば、実際に大学に足を運び、キャンパスの雰囲気や設備・環境などについても自分の目で確かめることをお勧めします。

--ありがとうございました。


 私自身も関西学院大で学んだ身として、受験生の選択に関する分析と解説は非常にリアルで、興味深く聞かせていただいた。4大学が切磋琢磨しながら迅速かつ大胆に改革する姿勢に、各々の誇りとたくましさを感じる。今後も魅力的な学びの場であり続けていただきたい。また、受験生は納得できる選択の上、キャンパスライフを満喫してほしい。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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