第173回芥川龍之介賞・第173回直木三十五賞の選考委員会が2025年7月16日に都内にて開催され、「該当作なし」と決定した。
今回の選考では、グレゴリー・ケズナジャット氏の「トラジェクトリー」(文學界6月号)、駒田隼也氏の「鳥の夢の場合」(群像6月号)、向坂くじら氏の「踊れ、愛より痛いほうへ」(文藝春季号)、日比野コレコ氏の「たえまない光の足し算」(文學界6月号)の4作品が候補となっていた。
グレゴリー・ケズナジャット氏は1984年生まれで、2021年に「鴨川ランナー」で第2回京都文学賞を受賞している作家である。2023年には第9回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞も受賞しており、「開墾地」が第168回芥川龍之介賞の候補にもなっていた。
駒田隼也氏は1995年生まれの新進作家で、京都芸術大学を卒業。2025年に「鳥の夢の場合」で第68回群像新人文学賞を受賞している。
向坂くじら氏は1994年生まれの詩人で、詩集「とても小さな理解のための」「アイムホーム」やエッセイ「夫婦間における愛の適温」「ことばの観察」などを出版している。小学生から高校生までを対象とした私塾「国語教室ことば舎」の運営も行っており、2024年には初小説「いなくなくならなくならないで」が第171回芥川賞候補となっていた。
日比野コレコ氏は2003年生まれの若手作家で、2022年に「ビューティフルからビューティフルへ」で第59回文藝賞を受賞してデビューした。「モモ100%」「愛すのぢゃーにぃ」などの作品を発表している。
選考委員会は7月16日に開催され、厳正な審査の結果、今回は「該当作なし」との判断に至った。
第173回直木三十五賞の選考対象となったのは、逢坂冬馬氏の「ブレイクショットの軌跡」(早川書房)、青柳碧人氏の「乱歩(らんぽ)と千鶴(ちうね) RAMPO とSEMPO」(新潮社)、芦澤央氏の「嘘と隣人」(文藝春秋)、塩田武士氏の「踊りつかれて」(文藝春秋)、夏木志朋氏の「Nの逸脱」(ポプラ社)、柚月裕子氏の「逃亡者は北へ向かう」(新潮社)の6作品。
逢坂冬馬氏は1985年生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。2021年に「同志少女よ、敵を撃て」でアガサ・クリスティー賞を受賞してデビューした。同作は第166回直木賞候補にもなり、本屋大賞1位や高校生直木賞を受賞するなど高い評価を得ている。
青柳碧人氏は1980年生まれの早稲田大学教育学部卒。2009年に「浜村渚の計算ノート」で第3回講談社Birth小説部門を受賞し、デビュー。ミステリー作家として活躍し、「むかしむかしあるところに、死体がありました。」が2020年本屋大賞候補になるなど注目を集めている。
芦澤央氏は1984年生まれの千葉大学文学部史学科卒。2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。「汚れた手をそこで拭かない」が第164回直木三十五賞候補になるなど、実力を認められている作家だ。
塩田武士氏は1979年生まれの関西学院大学社会学部卒。2010年「盤上のアルファ」で第5回小説現代長編新人賞を受賞。「罪の声」で第7回山田風太郎賞を受賞するなど、着実にキャリアを積み重ねてきた。
夏木志朋氏は1989年生まれの大阪市立第二工芸高校卒。2019年「Bとの邂逅」で第9回ポプラ社小説新人賞を受賞。2020年、同作を改題した「ニキ」でデビューした新鋭作家である。
柚月裕子氏は1968年生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。「孤狼の血」が第154回直木賞候補になるなど、ミステリー界で確固たる地位を築いている。「ミカエルの鼓動」は第166回直木賞候補にもなっていた。
今回は6名の作家による作品が候補として選出されていたが、受賞には至らなかった。