共通テストまでの3週間、駿台が教える「今からできること・すべきこと」

 2024年度の大学入学共通テストまで1か月をきった。多くの受験生が気になる、志望動向、共通テストの傾向や受験直前期の過ごし方などについて、駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏に話を聞いた。

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駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏
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 2024年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、2024年1月13日・14日に行われる。今回で4回目となる共通テストだが、残り3週間、どのような対策をしたら良いのかと悩む受験生も多いだろう。

 年明けに迫る大学入試に向けて、受験生の志望動向や共通テストの出題傾向、受験直前期の過ごし方などについて、駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏に話を聞いた。

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2024年度はチャンスの年? 志願者減少傾向が続く

--ここ数年の志願者数の推移、今年度の状況について教えてください。

 まずはじめに、今年は受験生にとって「チャンスの年」だとお伝えしたいです。少子化により近年の大学入試への志願者は減少傾向にあり、数字の上では大学全入時代と言われています。共通テストにおいても受験者数は減少しているので、努力している受験生には年々チャンスが広がっていると言えるでしょう。それに加えて、2025年度には新課程入試が導入されるため、2024年度の受験生は安全志向が見られます。過去にも、カリキュラムの変更やセンター試験から共通テストへの移行など、変化の前年には安全志向が強まる傾向がありましたが、今回もその動きが同様に数字に反映されています。

 国公立大学の志望者数ですが、第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試のデータによれば、2022年度の国公立大学志望者数を100とすると、2023年度は97と減少しており、弱気な傾向が見られます。この傾向は難関国立10大学の志望者数にも表れており、東北大学を除くといずれも減少しています。

 学部の系統別でも、志望者数が昨年度を下回る系統が目立ちます。たとえば、文系では人文科学系や法学系の志望者が減少傾向にあります。特に国際関係分野は、2022年度は前年度から志望者が減少し、2023年度はさらに少なくなっています。これはコロナ禍に海外研修や海外旅行の機会が制限され、国際関係分野への関心が低下していることに起因しているのかもしれません。とはいえ、国際関係は今後も重要な分野であり、将来的なキャリアの幅も広がります。国際関係分野を志望する受験生は、自身の目標に向かって進んでいただきたいと思います。外国語学部の人気も下がっていましたが、2023年度は下げ止まった印象です。一方で、経済・経営・商学・社会学系は依然として人気があります。ただし、前年とほぼ同じ水準であり、激しい競争が予想されるわけではありません。

 理系は、コロナ禍で医療系や薬学部への関心が高まりましたが、最近はその傾向も落ち着いています。工学部はやや減少している一方で、農学系の人気は上昇し、ここ数年は高い水準を維持しています。政府の政策としてデジタルやグリーン分野への人材強化が進む中、今後ますます注目を集めることが予測されます。継続的に人気がある医学部は前年並みです。

 このように、全体的な志望者数はマイナスから前年並みであり、特に難関大学への挑戦に慎重になり、手堅く狙える大学を志望する受験生が増加している傾向が見られます。つまり、難関大学を志望する受験生にとっては、チャンスが広がっていると言えるでしょう。逆に、不安になって志望校を下げる受験生が増えると、その下げた先が激戦になる可能性もあります。ですから、受験生にはぜひ進学したい大学を最後まで諦めないでいただきたいです。

 次に私立大学ですが、国公立大学以上に少子化の影響を受け、志望者が減少しています。2023年度入試においては、半数以上の私立大学で定員割れをしました。大学全入時代であることから、ある程度受験校の数を絞り込もうとしていることも模試志望者減少の一因だと思われます。また、安全志向から学校推薦型や総合型選抜にシフトしている生徒も多く、一般選抜を受験する生徒が少なくなっていることも影響しています。

 チャンスが広がっているのは私立の難関大学である慶應義塾大学や早稲田大学もその例外ではありません。安全志向の中で、国公立大学から早慶大に志望を変更するケースもあると思いますが、それを含めても志望者は減少しています。一方で、GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の中では、学習院大学や中央大学の志望者数が増えており、明治大学、立教大学などは減少しています。GMARCHを目指している方も、安全志向になって諦めることなく、また、ぜひ早慶大も視野に入れて挑戦してほしいです。

 学部系統別に見ても、医学部は比較的安定していますが、ほかの学部は国公立大学と同様に減少している状況です。受験生には、大学や学部の人気に左右されることなく、自身の目標に向かって自信を持って臨んでほしいと思います。

難易度は前年並みか。過去問にしっかり取り組もう

--共通テストについて、過去3回の振り返りと2024年度の展望をお聞かせください。

 2021年度に共通テストが導入されて以降、2022年度の共通テストでは数学の平均点が著しく低くなりました。一方、2023年度は数学の平均点が大幅に上がり、5教科平均点も回復しました。各科目の平均点もおおむね50~60%の範囲に落ち着いてきています。最初の数年は、出題側にも試行錯誤があったと思いますが、3回の実施を経て調整が進んでいる印象を受けています。2024年度の難易度は昨年度並みであろうと考えています。まずは学力を着実に向上させ、過去問にしっかりと取り組むことが重要です。

--2025年度に導入される新課程入試について、概要を教えていただけますか。

 2025年度の共通テストでは地理・歴史・公民の科目構成が変更され、数学も分野が変わります。ただし、これらの科目については、2025年度入試も旧(現行)課程の科目で受験できる「経過措置」があります。要するに、現高校3年生が2025年度の共通テストに再チャレンジする場合でも、大きな負担増はないということです。二次試験も同様、現高校3年生が不利にならないように、共通分野からの出題や選択問題などが検討されています。

 新しく追加される「情報」については、現高校3年生も学校で授業を受けている教科です。カリキュラムは変わりますが、基礎はできているので1年間しっかり学習すれば十分に対応できると考えています。

 国語も2025年度からは変更があり、現代文が1題追加されます。公開されている試作問題では、複数の資料からテーマを読み取る総合問題のように見受けられます。しかし、現高校2年生も学校でこの傾向に沿った学習をしているわけではなく、受験対策の中で対応していくことになります。つまり、スタートラインは既卒生も現役生も同じだということです。

 過去の課程変更を振り返ると、2006年度にセンター試験にリスニングが追加され、2015年度には「ゆとり教育からの脱却」を掲げた課程変更がありました。これらの課程変更の前年の浪人発生率は、それぞれ前年比マイナス14.3%、マイナス12.9%と減少しました。これは、変化の前の安全志向の影響で、出願校のレベルを下げた受験生が増えた結果だと考えられます。

 現高校3年生には、変更点について学校でもあまり詳しい指導が行われないでしょう。そのため、未知の要素が多く、漠然とした不安につながっているのだと思われます。しかし、正確な情報をもとに冷静に判断すれば、2025年度の変更は、過去の2006年度入試、2015年度入試に比べると小さな変更です。前述の通り、来年度も旧課程のまま受験できる措置も用意されていますので、それほど心配する必要はありません。2024年度入試は、最後まで諦めずに土俵に残ったもの勝ちだと言えるのではないでしょうか。

共通テスト前後の最終対策、受験生へのメッセージ

--共通テストに向けた模擬試験の結果は、残り1か月の受験勉強にどのように生かせば良いでしょうか。

 模試の結果で受験生がもっとも気になるのは、アルファベットで示される志望校判定だと思いますが、それはあくまでも現在の学力の参考に過ぎません。模試の成績表をもう少し読み込むと、自分がどの科目・分野で得点を落としているかがわかります。問題ごとの正答率も示されていますので、正答率が高い問題を落としている場合、そこが自分の苦手分野・弱点だと読み取ることができます。短期間で大きく伸びるのは苦手な科目・分野ですから、そこに時間をかけて対策することが成績向上の近道です。これからの1か月は、弱点克服に充てていただければと思います。

 また、過去問の見直しも必要です。センター試験では学校で習った内容を覚えていれば解答できる問題も多かったのですが、共通テストでは複数の資料を読み解くなど、思考力が求められる問題が増えました。この傾向に慣れるためにも、3年分の過去問を繰り返し復習することが重要です。

--国公立大学を目指す受験生が、共通テストとその後に控える二次試験、併願する私立大学入試に向けて、本番までの限られた時間で「やるべきこと」は何でしょうか。

 基本的には、共通テストまでは共通テストに向けた対策を重点的に行うのが良いと思います。ただし私立大学も併願する受験生は、共通テストの後に、私立大学の入試を受けながら国公立大学の二次試験対策も進めることになりますので、少し早い段階で私立大学の過去問にも目を通しておくと良いでしょう。

 今年は共通テストから国公立大学の前期試験までの日数が約40日あり、例年よりも長い期間となります。共通テストで思ったように点数が取れなくても、十分に挽回する時間があります。共通テストが終わったら、スパッと気持ちを切り替えて、ぜひこの期間を有効活用していただきたいです。

 入試が近づくと過去問ばかりに集中しがちですが、過去問はあくまでも出題傾向を知り、時間配分の練習をするためのものであり、学力自体を向上させるものではありません。過去問と並行して学力向上に焦点を当てた学習に取り組むことが理想的です。具体的には、これまで受験した記述式の模試を再度見直し、失点した個所を分析しながら復習してください。

--私立大学でも共通テスト利用入試を実施する学校が増えており、2023年度も過去最多となりました。共通テストの上手な利用方法について、アドバイスをお願いします。

 共通テスト利用入試には、「単独型」と「併用型」の2つがあります。共通テストを利用する大学の大半が、共通テストのみで合否判定を行う単独型を採用しています。同じレベルの大学ばかりに出願すると、すべて同じ結果になってしまう可能性があるため、出願校の難易度に幅を持たせることが重要です。

 共通テスト利用入試を利用することで、各私立大学の出題傾向に左右されずに対策ができますし、特に地方在住の受験生などにとっては、時間的・経済的負担が軽減されるメリットもあります。その分、第一志望校対策に多くの時間を割けるという利点もあります。一方で、安全校の私立大学の合格が確定した後に、気が抜けてしまうケースもあります。手あたり次第に出願するのではなく、個々の性格や状況を考慮して、最適な利用方法を見つけると良いと思います。

--高校1・2年生は、今からどのように受験と向き合えば良いでしょうか。

 現高校2年生が大学受験をする2025年度入試は、新課程入試の初年度になります。前年の安全志向で浪人生が減っていることが予想されます。つまり、ライバルが減るチャンスでもあります。皆さんには、今から諦めない強い意志を持って、ぜひ第一志望を貫いていただきたいと思います。

 高校1・2年生の間は英語・数学・国語に重点的に取り組み、苦手科目や苦手分野を克服することが成功の鍵となります。そうすることで、高校3年生になったときに理科、地歴・公民などの選択教科にじっくりと時間を割くことができます。

 また、皆さんの学年はコロナ禍でさまざまな経験の機会が制限されてしまったかもしれません。勉強以外の領域にも意識を向け、自身の興味や将来の進路について考えてみてください。受験勉強のモチベーションを持続させるためには、「有名大学だから」という理由ではなく、将来の目標と学びたい分野に基づいて大学を選ぶことが大切です。ですから、学業と並行して、自分が何に関心を持っているかを考えておくと良いでしょう。

--最後に、今年の受験生へ、メッセージをお願いいたします。

 駿台では毎年、現役合格生にアンケートを実施していますが、「現役合格できた理由」でもっとも多いのは、「最後まで諦めなかった」という回答です。順調な成績で合格した受験生からは、このような回答は無いでしょう。学力は試験当日まで向上しますので、たとえ周囲の人から「無理だ」と言われても、強い意志を持って最後まで頑張った受験生が合格しているのです。結果が悔しいものであっても、挑戦した結果であれば受け入れられます。一番後悔するのは、第一志望に挑戦しなかったことです。繰り返しますが、今年はチャンスの年です。ただし、出願しないと何も始まりません。どうか自信を持って、自分を信じて強気に出願し、入試に臨んでください。

--本日はありがとうございました。

 城田氏より、大学入試の傾向について客観的な分析・解説をいただいた。 その中で一貫して感じたのは、「最後まで第一志望を諦めないで」という強いメッセージだ。 この時期、受験生の皆さんは不安にかられることもあるだろう。 しかし、情報に惑わされることなく、これまで努力してきたご自身を信じ、 将来の目標に向かって最大の力を発揮してほしい。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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