東大受験指導者が語る「独り言」が多い子供の意外な特徴

 磨けば光る勉強の才能をもっているにもかかわらず、親御さんや先生の不理解によってその才能が封殺されてしまうことがある。石川県の進学塾・東大セミナーで30年の指導歴をもつベテラン講師 川本雄介氏が上梓した『ドラゴン桜で学ぶ 伸びる子供の育て方』より、「独り言が多い子供」が実は成績が上がりやすい特徴を紹介する。

教育・受験 小学生
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 本来、磨けば光る勉強の才能をもっているにもかかわらず、親御さんや先生からの不理解によってその才能が封殺されてしまうことは少なくない。突飛な行動をして親を困らせているような子供が、実は勉強のスイッチが入った瞬間に驚異的なスピードで成績を上げていく例もある。

 石川県の進学塾・東大セミナーで30年という指導歴をもつベテラン講師 川本雄介氏は『ドラゴン桜で学ぶ 伸びる子供の育て方』(星海社新書)を上梓した。一見突拍子のないように思える子供の行動を分析し、どう指導すれば勉強に生かせるのかを概観する一冊だ。その中から「独り言が多い子供」が実は成績が上がりやすい、という特徴について、著者の川本氏に話を聞いた、西岡壱誠(全国で教育支援事業を行っている 東大生集団 カルペ・ディエム代表)が解説する。

「独り言」が多い子は成績が上がりやすい?

 長年生徒を指導していると、授業中であるにもかかわらず先生の言葉に対していちいち反応をしてしまう子供がいることに気付く。何か先生が言ったことに対して「えー!」「そうなんだ」と言ってしまったり、当てられていないにもかかわらず、ちょっとした投げかけに対して「えっとー」と声に出してしまったり。あるいは、授業中にずっとブツブツと何かを喋っていて、それを指摘すると「え、なんか言っていましたか?」と気付かなかったようすを見せる子も多い。そういう子供は大抵、周りから奇異な目で見られ、学校現場や親御さんから独り言の癖を注意され、大人になるにつれてだんだんと萎縮していってしまう。

 しかし、この傾向をもっている子供は、頭が良くなる可能性を秘めていると感じる。実際に、適切な指導をすると成績が著しく上がり、東大に合格したという生徒の中には、独り言が多い特徴をもっている子供は多い。

 なぜ、独り言が多い子供というのは成績が上がりやすいのか。まず、こういった子供はアウトプットが得意だ。授業や本を読んだ後にその感想を聞くと、驚くほどうまく言語化してくれる。彼ら彼女らの独り言は、ただ聞いているだけでは収まり切らないほど頭の中に次々と言葉が浮かんでくるため、独り言として出力されてしまう。つまり、「言葉にする能力」が高いから発生しているのだ。だからこそ、一度授業を受けただけでも驚くほど多くの文字量をノートにまとめられたり、記述問題でも臆さずに言葉を紡いだりすることができる。これは、勉強において大きなアドバンテージになる。

「独り言」は学んでいる真っ最中

 また、独り言の多い子供は、自分なりの世界観をもっている場合が多い。他人から与えられた情報を唯々諾々と受け入れるのではなく、自分の中で噛み砕き、咀嚼し、受け入れるまでに時間がかかっているために「独り言」が出力されている。一方で、他人から言われてすぐに受け入れてしまう子は、自分の中で完全には咀嚼し切っておらず、自分の世界観が明確ではない状態である場合がある。

 『私たちはどう学んでいるのか―創発から見る認知の変化 (ちくまプリマー新書) 』では、頭が良くなるためのメカニズムに関して、“認知的変化”という言葉が用いられている。われわれが「学ぶ」「学習する」と言っていることは、自分の脳の中での認識を変え、ただの情報を「知識」、すなわち「他の場面でも自分で応用可能な状態にする」必要がある。人の話を聞くだけでは頭は良くならず、自分の認識を変化させるのが「学ぶ」ということなのだ、と。つまり、独り言が多い子供というのは、必死で脳内の考えを変化させることで、今まさに学んでいる真っ最中なのだ。ドラゴン桜でも、「自分だけの世界をもっている子供は、その後伸びる可能性が高い」と述べられている。

子供の「独り言」は伸び代でしかない

 自分の中に強いこだわりがあり、自分の世界観をもっている子供のほうが独り言が多く、そういう子は周りとの環境で軋轢を生むこともあるので、ときに親を悩ませる。しかし、その分、勉強に対してスイッチが入ると、他の子に比べて大きな飛躍を見せることがある。

 お勧めしたいのは、独り言が多い子供とはとにかくコミュニケーションを重ねること。そういう子は話すのが大好きで、誰かが対話してくれればくれるほど、考えが深まり、頭が良くなっていく。たとえば、食事の場でも、家族で遠出をするときでも、親御さんは積極的に子供とコミュニケーションを取るようにすると良いことだろう。間違っても、子供がたくさん話すことに対し、「うるさいから黙っていなさい」などと言わないことが肝要だ。一方的に封じてしまうと、本来子供がもっていた才能の芽を摘んでしまうことになりかねない。親御さんとしては大変かもしれないが、ぜひ根気強く、お子さんと向き合ってもらいたいと思う。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)


《西岡壱誠(カルペ・ディエム)》

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