高校生・大学受験生向けの進路・受験情報サービスにおいて、豊富なデータと独自の視点で支援を行うベネッセコーポレーション。同社が、保護者満足度で評価する「イード・アワード2024 通信教育」高校生・大学受験生の部にて、「受験・進学情報充実の通信教育」部門賞を受賞した。
サービスの特徴や今後の展望について、進路・受験情報サービス全体の責任者である西野貴昭氏と、進路情報編集のグループリーダーである松本直子氏に聞いた。
大学生サポーターを活用した独自の受験支援体制
--「イード・アワード2024 通信教育」高校生・大学受験生の部にて、「受験・進学情報充実の通信教育」部門賞の受賞、おめでとうございます。
西野氏:ありがとうございます。本当に光栄に思っています。ご一報をいただいたときは、メンバー全員で喜びを分かち合いました。記念品のトロフィーもいただき、フロアの中央に飾らせていただいているのですが、これを見るたびに「高校生や保護者のために頑張ろう」というモチベーションをいただける、大変光栄な賞だと思っています。
松本氏:普段は進研ゼミ会員さんからのアンケートで評価をいただいていますが、このように客観的な評価をいただけたことで、私たちが届けているものにより自信がもてました。これからもベネッセ・進研ゼミならではの視点を大事に、発信していきたいと思います。
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--2025年度の大学入試から「新課程入試」になりますが、高校生・大学受験生の学びに変化はありましたか。
西野氏:教育課程の変化で学校の授業等は変わってきていますが、本質的なところは昔から変わっていないのではないかと考えています。ただし、大学入試では思考力・表現力・判断力がより求められるようになり、学校教育もより深い思考力を育成する授業になってきています。
特に大きな変化として、学校推薦型選抜・総合型選抜といったいわゆる推薦入試が増えていて、これらの試験での入学者数はすでに入学定員の半数を超えています。我々も「推薦合格プログラム」を高1から高3まで設け、進路情報としての発信はもちろん、小論文対策や面接対策なども提供しています。
ベネッセならではの取組みと言えるのは、大学生サポーターによる支援です。約1万2,000人(2024年12月時点)の大学生が後輩のためにサポーターとして登録してくれており、コアメンバーとして常時約200人が活発に活動しています。この大学生サポーターのおかげで、たとえば高校生が志望理由書をWebに書き込むと、その大学に合格した大学生サポーターたちがアドバイスをしてくれるといったようなサービスが展開できています。
松本氏:私自身、3人の子供を育てた経験から、学びの変化を実感しています。すでに社会人になっているいちばん上の子のときには暗記重視の学習でしたが、今高校1年生の末っ子は、授業で先生が考えさせるための問いかけをしたり、生徒たちが「なぜそう考えたか」の理由をつけて答えたりと、学び方が大きく変わってきているのを肌で感じています。このような変化に合わせて、進研ゼミも進化してきました。
西野氏:ベネッセの強みのひとつとして、学校で受験する模試と連携できる点があげられます。模試との連携で提供しているサービスが「進研模試対応 大学合格逆算ナビ」です。これは生徒ひとりひとりの模試結果と希望進路をもとに、個別の学習コンテンツや志望校の候補を提案できるサービスになっています。生徒の模試の成績を分析し、得意な科目や伸び代のある分野を把握したうえで、志望校合格に向けた具体的な学習プランを提示するのです。さらに、志望校を決めかねている生徒に対しては、視野を広げたうえで、志望校を絞るための検討材料を示すことができるようになっています。個々の生徒の学力を伸ばしながら、同時に志望校決定のサポートができる体制を整えているのです。
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高校生の心理に寄り添った戦略的な進路支援
--ベネッセグループは、大学入試のための幅広い支援を展開されているのですね。高校生・大学受験生向けサービスには、どのようなこだわりがあるのでしょうか。
西野氏:もっとも大切にしているのは、受験生や保護者への共感、寄り添いの姿勢です。高校生は「やらなければならない」という気持ちをもちながらも、なかなか一歩が踏み出せないことが多いものです。そこで私たちは、「なかなかやる気が起こらない」「わかっているけどできない」という気持ちにまずはしっかりと共感し、その状態にアプローチするにはどうすれば良いのかを考えています。
進路情報誌では漫画やイラストを効果的に使い、高校生の心理に寄り添った展開で興味をもってもらえるように工夫しています。たとえば、部活と勉強の両立に悩む生徒をメインキャラクターにして、実際に両立できた先輩の体験談を交えながらストーリーを展開するなど、「これは自分に必要だ」と思ってもらえるようにしているのです。
松本氏:情報を提供するタイミングも重要です。高校時代は学年によって重要な進路決定のタイミングが異なりますから、それぞれの時期に合わせた情報提供を行っています。たとえば、高1の秋には文理選択、高2の秋には志望校を見据えた科目選択、高3では具体的な受験対策というように、それぞれの段階で必要な情報を、必要なタイミングで提供するよう心がけています。
また、進路支援の形態も、今の高校生の学習スタイルに合わせて進化させています。従来の冊子による情報提供に加えて、スマートフォンアプリを活用した進路支援も行っています。情報誌ではいつでもまとめて確認できる大学入試に向けての基本情報を、アプリ(Webサイト)では、その時に必要な進路・入試情報をタイムリーに配信しています。
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--進路サービス提供の際、もっとも気を配られていることは何でしょうか。
松本氏:進路情報発信で特に重視しているのが、「伝えたいこと」と「伝わること」のバランスです。たとえば、夏休み前の教材では「この時期に頑張れば逆転できる」というメッセージを伝えたいのですが、ただそう言っても響きません。そこで、実際のデータを示しながら「D判定からでも400時間やれば逆転できる」といった具体的な目標を示したり、実際に逆転合格を果たした先輩の体験談を紹介したりします。これができるのは、私たちがこれまでのゼミ先輩の体験に裏付けられたデータをもっているからだと自負しています。
西野氏:私は以前、別部門にいたのですが、進研ゼミの編集現場に来て、対象を細かく設定したコンテンツ作りに驚きました。それを「戦略的ごちゃごちゃ感」と表現しています。
松本氏:そうですね。私たちは「戦略的なごちゃごちゃ感」を大切にしています。同じ高校生でも、難関大を目指して積極的に取り組む層もいれば、なかなか一歩を踏み出せない層もいる。そういった違いを意識して、それぞれの層に響くコンテンツを企画し、読者像に響く見せ方や言葉選びを工夫しています。
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--それぞれの企画はどのように決定されているのですか。
西野氏:毎月、「進路シラバス検討会」を実施をしており、そこで話し合い、決定しています。「進路シラバス」では「この時期の高校生は何を考えているのか」「学校ではどんな行事があるのか」「どんな不安や悩みが生まれやすいのか」といったことを徹底的に議論します。その議論をベースに、その時期にもっとも響く企画や表現方法を検討しています。
進路情報誌のビジュアル面でも工夫を重ねています。たとえば、イラストや写真の選定ひとつとっても、必要に応じて高校生へのアンケートを実施します。私たち大人が「これは良い」と思っても、高校生の反応は異なることが少なくないと感じています。そこで、迷う点は高校生にヒアリングをしたうえで、それに基づいた選択をしています。
進路決定の「その先」を見据えた支援体制
--充実した進学情報のための御社の取組みや、目指していることをお聞かせください。
西野氏:以前は「興味・関心を広げる」ことに注力していた時期もあったのですが、現在は方針を大きく転換しています。YouTubeをはじめ、世の中にはすでに膨大な情報が溢れているからです。
そこで私たちが注力しているのは、その情報の海の中で「自分の軸をしっかりもって進路を決めていく」ための考え方を提供することです。たとえば、「自分がもっとも重視する価値観とは何かを考えるセミナー」を開催するなど、自分自身と向き合うきっかけを提供しています。当初は少し難しいのではないかと心配しましたが、高校生は予想以上に深く考え、自己分析をしてくれました。
松本氏:オープンキャンパス向けの情報提供でも、このアプローチを実践しています。高校2年生向けの冊子では、オープンキャンパスを「楽しかった」といった通り一遍な感想で終わらせないよう、「何を学びたいからこの大学のカリキュラムを見るのか」「この体験授業で確認したいことは何か」といった、目的意識をもって参加できるような働きかけをしています。オープンキャンパスの予約をしないと行けないこともある現状を踏まえ、5月中旬には夏のオープンキャンパス情報を届けるなど、先を見据えた情報提供を行っています。
--最後に、今後の展望をお聞かせください。
西野氏:これからは、キャリアオーナーシップの時代です。高校時代からそれに繋がるような主体的な進路選択をしてほしいと考えています。単なる受験のための情報提供ではなく、一生の宝となるようなキャリアの考え方の基礎を身に付けてもらえるような情報発信やサービスを提供していきたいと思います。
松本氏:そうですね。大学合格をゴールとするのではなく、その先の人生を見据えた進路選択ができるよう支援していきたいと思います。ベネッセ・進研ゼミの集合知や編集担当者の想いを生かしながら、ひとりひとりが自分の軸を見つけ、将来幸せに過ごしていけるよう、高校生の進路選択・大学受験を応援していきたいと考えています。
--ありがとうございました。
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西野氏と松本氏のお話からは、単なる受験情報の提供にとどまらない、高校生ひとりひとりの人生に真摯に向き合う姿勢が随所に感じられた。実直な調査をもとに、高校生が直面する課題や心理状態を徹底的に分析し、それを進路支援に反映させていく。こうした地道な取組みの積み重ねこそが、多くの保護者に支持される理由なのだろう。
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