【共通テスト2025】試験本番までの3週間、駿台が教える「今からできること・すべきこと」

 2025年度の大学入学共通テストまで1か月を切った。多くの受験生が気になる、共通テストの傾向や志望動向、受験直前期の過ごし方などについて、駿台予備学校 入試情報室長の城田高士氏に話を聞いた。

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駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏
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 2025年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、1月18日と19日に行われる。年明けに迫る大学入試に向けて、受験生はどのような点を心掛けるべきだろうか。

 現段階で見えてきている受験生の志望動向や、共通テストの出題傾向、共通テストまでの期間の過ごし方などについて、駿台予備学校 入試情報室長の城田高士氏に話を聞いた。

受験人口は昨年比4.1%増ながら、低い水準

--ここ数年の志願者数の推移、今年度の状況について教えてください。

 今年は18歳人口が多いこともあり、受験人口は現役生と既卒生合わせて約65万6,000人と、昨年(約64万1,000人)に比べて増加しています。しかし、共通テストの確定志願者数は昨年の0.7%増に留まりました。今年は昨年より多少ライバルが多くなりますが、一昨年の約67万人、2020年以前の70万人超と比較すると、依然として少ない状況です。今年は過去2番目に受験人口が少ない年だととらえることもできますから、それほど心配する必要はありません。

駿台予備学校 入試情報室長の城田高士氏

 近年、私立大の入学者の約5割、国公立大を合わせた全入学者の約4割が、総合型選抜やが学校推薦選抜といった年内入試で進学先を決めており、今年も同様の傾向が見られると予想されます。今回のデータは9月時点の模試を基にしており、ここから年内入試で進路を決定した受験生が抜けていくため、最終的な共通テストの受験者数は減少する可能性があります。

 ちなみに、受験者数のピークは1992年で、約121万5,000人でした。当時は現在の受験生の保護者世代が受験生だった頃で、2人に1人しか大学に入れなかった時代です。それに比べると現在の受験人口は約半数に減少していますが、大学の定員数は変わらないため、努力すれば希望する大学を目指せる時代になったともいえるでしょう。

受験人口と大学入学定員推移

「外国語・国際関係」「経済・経営・商学系」が人気上昇

 国公立大の志望動向を見ると、各日程内の合計での全体指数*1は102ですが、受験人口の増加を考慮すると、国公立大を目指す人が大幅に増えたというわけではありません。 *1 各日程内の第1志望合計での前年度を100とする指数

 文系では外国語や国際関係の学部で増加しており、コロナ禍が明けたことで、外国人旅行者を目にする機会が増えたり、海外研修や留学が再開したりと海外に目が向いてきたことが背景にあると考えられます。経済・経営・商学系も増加傾向にあり、注目度が高まっているようです。

 一方、理系では、コロナ禍で顕著だった理系志向の強まり自体は落ち着き、進路を冷静に検討し、自分が進みたい分野を選ぶ時代が戻ってきたように見えます。とはいえ、コロナ禍で人気が高まった医学部・薬学部は、高止まりです。スポーツ健康系は母数が小さいため指数変動が大きく見えていると考えられますが、健康意識の高まりを反映している可能性もあります。また、理学部や工学部も引き続き安定した人気を保持。総合科学には、近年新増設が増えているデータサイエンス系が含まれており、現在、この分野は間口が広がっているため、データサイエンスを目指している人にとってはチャンスだといえます。しかしながら「入りやすいから」と安易に決めてしまうと、学力や学びたいこととのミスマッチが懸念されますので、志望校選択の際は慎重に検討していただきたいと思います。

系統別志望動向【国公立大学】

 難関国立10大学の志望者指数*2は103となっています。昨年の例をあげますと、9月の共通テスト模試の段階では、東北大を除く9大学で志望者数が前年比マイナスでした。新課程入試の前年度であったこともあり、安全志向が出ていたのだと思いますが、蓋を開けてみると、これらの難関国立大学にもしっかりと出願者が集まり、前年並みまたは微増となっていました。今年は新課程の初年度であり、仮に失敗しても来年の入試は大きく変わらないため、受験生は9月模試の時点では弱気にならず、第一志望を貫いていると考えられます。こうした背景を鑑みると、この資料の指数ではプラスになっている大学が多いものの、実際には昨年並みと考えるのが妥当です。 *2  前年度の前期第1志望者を100とする指数

 京大については、志望者数に伸びが見られます。首都圏の高校の先生からも「今年は京大志望者が増えている」という声を聞いています。ここ数年はコロナ禍の影響で人の動きが鈍化していましたが、首都圏の受験生の視野にも京大が入ってきたようです。

志望者数【難関国立10大学<前期>】

 東京科学大については、2024年度までの東京工業大と東京医科歯科大の模試志望者合計と、統合して「東京科学大」となってからの2025年度の模試志望者数を比較しています。話題性もあり注目度は高く、志望者は増加しています。

 東京科学大の学部・学科別志望者動向を見ていくと、医学系よりも理工系の人気が高いことがわかります。特に生命理工や環境社会理工などの分野は、旧・東京医科歯科大と統合することで「自分の学びの幅を広げられる」という期待が高いのではないでしょうか。一方、医学部を志望する場合は「行きたい大学」と「行ける大学」の両方を考慮するため、注目度の高い大学を敬遠する受験生もいるようです。東京科学大の数値にはこれらの傾向が明確に出ています。

志望者指数【東京科学大<前期><後期>】

 10大学の全体的な特徴として、北海道大学(後期)で経済学部の志望者指数が133、東京大学(前期)では経済学部への進学者が多い文科二類で119、名古屋大学(前期)でも経済学部で120となっています。これらの数値からも、経済系の人気が高まっていることがわかります

 従来はカリキュラム変更の前年は安全志向が見られましたが、2024年度入試はその傾向が見られませんでした。冒頭でも説明した通り、受験人口はピークの約半分に減少していることに加え、年内入試で決めてしまう人が増加しており、旧帝大や難関大を目指す人にとっては大きなチャンスとなっています。受験生もその状況を理解し、「行きたい大学にチャレンジしよう」という姿勢が広がっているのだとすれば、非常に良いことだと思っています。

新課程共通テスト初年度…変更点と注意点

--2025年度共通テストから、新しい学習指導要領に対応した新課程入試が実施となります。留意すべき変更のポイントと、当日の注意点についてご教示ください。

1.「情報」の追加

 旧課程からの一番大きな変更は、「情報」が追加されることです。共通テストでは1,000点満点のうち1割の100点が「情報」の配点ですが、各大学で科目の配点を自由に決められます。

 国立大は1割の素点よりも「情報」を重視した配点をする大学が15%、1割のままが24%で、1割よりも小さく扱う大学が52%です。中には北海道大のように、受験は必須だが配点はゼロにするとしている大学もあります。公立大は、選択科目扱いの大学が34%もあります。1割のまま、もしくはそれよりも配点比を大きくしている大学は20%もありません。ですから、まずは第1志望に向けてがんばって、もし仮にうまく得点できなかったとしても、変更先は十分あるということです。仮にうまくいかなくてもリカバリーはききます。

 ですから、今の段階で「情報が苦手だから国公立大をあきらめる」というのは、もったいないと思います。過去問がない中で対策しなければいけませんが、条件はみんな同じです。予想問題や模試、対策問題集で訓練しましょう。

2.国語は大問が1題追加され、10分増

 国語は「近代以降の文章」が1題追加となり、大問5問構成になります。試験時間も10分増え、90分となります。公表されている試作問題の概要を確認すると、国語でありながら図やグラフ、横書きのテキストが入ってくるなど、複数の情報を読み取る力が問われるようです。大学入試センターとしては、マーク式ではありながらも何とかこうした思考力・判断力・表現力といったものを測りたいという思いが根底にあるのだと感じます。

 センター試験の時代は、「センター試験対策がマーク式を導入している私大対策にもつながる」と言われていましたが、今では、国公立大の2次試験で求められる力が、共通テストでも求められているといえます。過去問はありませんので、「情報」同様に予想問題や模試、対策問題集に取り組んでください。

試作問題『国語』の概要

3.数学も10分増で、大問の構成が変更

 数学(2)の試験時間は10分延長され、70分となります。従来、大問1にまったく関連しない小問が2問含まれていましたが、この構成が変更される可能性があります。大問が1問増えると予想されますが、問題の総量が極端に増えるかどうかは不明です。ただし、時間の延長により、ある程度の分量増加が見込まれますので、その点には注意が必要です。

 また、旧課程においては、受験者の多くが選択問題において「統計的な推測」を避けて「数列」「ベクトル」の2つを選択していましたが、新課程では「統計的な推測」または、旧課程において理系の受験生のみが学習する内容であった「平面上の曲線と複素数平面」のどちらかを選択しなければいけなくなりました。これは、文系の受験生にとってハードルが上がったと言えるかもしれません。

4.新旧課程をまたがって得点調整あり

 2025年度は地理歴史、公民、数学、理科、情報で、それぞれ新旧課程またがって得点調整の対象になります。理科は受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象となりませんが、情報は1万人未満であっても得点調整の対象となります。ですから、特に今年は1科目あるいは複数科目で得点調整があるのではないかと考えています。

 そのため、実際の点数が変わる可能性があります。たとえ自己採点して成績が思うように取れなかった場合でも、結論を急がず、学校の先生とも相談をしながら冷静に出願先を決めていただきたいと思います。

大学入学共通テストの「得点調整」

5.連動型問題の導入

 マークシート方式の改革としていわゆる「連動型問題」が増加しそうです。1問目の正解が複数あり、どれを選ぶかで次の問題の正解が変わってくるというタイプの問題です。2024年世界史Bで出題されたため、世界史選択で過去問を解いたことのある人は把握していると思いますが、今後、他の科目でもこのタイプの問題が出てくると思われます。

連動型問題とは

6.選択科目の組み合わせに注意が必要な場合も

 選択科目において、「地理総合/歴史総合/公共」などの科目を選択する人は、選択できない組み合わせがありますので、下記の表で確認して混乱のないようにしてください。

7.問題冊子に新旧科目の両方を掲載

 新旧過程の移行期に伴う注意点としては、数学(1)、数学(2)、情報は、問題冊子の中に新旧過程両方の問題が掲載されていますので、間違えて解かないよう気をつけてください。地歴公民は出願の段階で希望を出しているので該当する問題しか配られませんし、現役生は新課程の問題しか配られません。

受験生必見!本番前1か月で押さえるべき3つのポイント

--2024年度を振り返り、難易度予想含む2025年度の展望をお聞かせください。

 2025年度は新課程入試の初年度であり、一般的に変化の初年度は易化傾向にあるとされていますが、今回は過去2年連続で平均点が上昇していることから、大幅な易化は期待できません。科目によって多少の変動はあり得るものの、全体としては現行と同程度かやや易しい程度の難易度になると予想されます。

 中でも「情報」については、プログラミングへの苦手意識から不安を感じる受験生もいると思いますが、理論をしっかり理解すれば比較的短期間で得点アップが期待できる科目です。過去問はありませんが、予想問題や模試、対策問題集での準備で十分対応できますので、それほど心配はいらないと思います。

 なお、大学入試センターが令和7年度大学入学共通テストの問題作成方針について抜粋した資料が下記になります。これまでの考え方を継続しながら、その趣旨をより明確にする方向性が示されています。たとえば、複数の題材を組み合わせたり、身近な場面設定に当てはめたりするなど、考える力を問う出題が増える見込みです。ただし、極端な難化は想定しづらく、過去4年分の問題演習で十分対応できる水準となる見通しです。

令和7年度大学入学共通テストの問題作成方針

--残りの1か月、共通テストに向けてどのような学習が望ましいでしょうか。本番までの限られた時間で「やるべきこと」「やるべきではないこと」を教えてください。

 「やるべきこと」は下記の3つです。

1.基礎固めの継続

 学校の勉強を基盤とし、教科書レベルの内容を確実に理解して解けるようにしておくことが重要です。特に中学受験経験者の中には、「受験勉強は学校の勉強とは別物」という意識の人もいるかもしれませんが、大学受験は学校で学ぶ内容の延長線上にあります。共通テストは思考力を問う試験ですが、その基盤となるのは教科書をしっかりと頭に叩き込んだ基礎知識なのです。

2.苦手教科の強化

 苦手分野や理解が不十分な分野を見直すことも、この時期に重要な取組みです。重点的に取り組むことで点数アップにつながります。

3.過去に受けた模試の復習

 模試の結果から、自分の弱点や得意分野を客観的に把握できます。一度は復習している人も多いと思いますが、このタイミングで改めて過去の模試を見直し、取りこぼしがないか確認してください。

 一方で、「やるべきでないこと」は、マークシート方式のテクニックに頼ってしまうことです。ある程度慣れることは必要ですが、センター試験時代には一部で通用した小手先のテクニックは、共通テストでは通用しません。共通テストのテクニックに関する動画などがあふれているようですが、大事な直前期にそうした情報に頼るのではなく、問題の本質を理解し、真の力を養うことが重要です。

--受験生、高校1・2年生へメッセージをお願いいたします。

 共通テストの問題作成方針には、「大学教育を受けるためにふさわしい能力・意欲・適正等を多面的・総合的に評価・判定する」と記されています。センター試験は「高校の学習内容が習得できているかを確認するテスト」でしたが、共通テストはそれに、「大学での学びに足る学力が備わっているかを測る」という観点が加わったのです。

 総合型選抜の拡大を決めた東北大学、国公立大医学部の学校推薦型選抜・総合型選抜、一部の私大などが共通テストを課しているのも、それによって入学者の学力を担保したいという強い意向の現れではないでしょうか。つまり、共通テストの勉強にしっかり取り組んでおけば、難関大学入学後の勉強にも必ず役に立つはずです。

 2025年度は新課程初年度ということで、受験を目前に控え不安な人もいるかと思いますが、条件は皆同じで、誰もが不安を抱えています。こういう年こそ、初志を貫いて最後までがんばった人が合格を勝ち取ることができるのでしょう。


 2025年度の志願者動向と共通テストの最新情報を聞いた。新課程初年度ということでさまざまな情報があふれているが、受験生の皆さんは城田氏の「心配しすぎなくて良い」の言葉を胸に、残りの1か月を落ち着いて有意義に過ごしてほしい。体調にも気をつけて、本番当日はこれまでの努力と実力を十分に発揮できるよう願っている。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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