人気高まる京大、2次試験で逆転合格のカギは「対話」

 2025年度の大学入学共通テストが終了し、いよいよ2次試験直前期を迎えた。近年人気が高まる京都大学を志望する受験生は、2次試験までどのように過ごせば良いのだろうか。京大対策コースから毎年、多数の京大合格者を輩出している駿台予備学校お茶の水校2号館・校舎責任者の川瀬裕樹氏に、受験生が目指すべき戦略や心構えについて話を聞いた。

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駿台予備学校 川瀬裕樹氏
駿台予備学校 川瀬裕樹氏 全 6 枚 拡大写真

 2025年度の大学入学共通テストが終了し、いよいよ2次試験直前期を迎えた。

 近年人気が高まる京都大学(以下、京大)を志望する受験生は、2次試験までどのように過ごせば良いのだろうか。京大対策コースから毎年、多数の京大合格者を輩出している駿台予備学校(以下、駿台)お茶の水校2号館・校舎責任者の川瀬裕樹氏に、受験生が取り組むべき効果的な学習戦略や心構えについて話を聞いた。

京大が選ばれる3つの理由

 京大の前期志願者数は3年連続で増加しており、2024年度には前年比383人増の7,800人に達した。難関大学合格実績で圧倒的な実績を誇る駿台は、京大対策のさらなる強化に乗り出した。

 創立から100年以上の歴史をもつ駿台は、時代の変化に対応し、柔軟かつ革新的な教育アプローチを展開してきた。独自のコーチングメソッドを取り入れた指導者育成プログラムやICT学習支援ツールの導入に加え、東京大学や医学部に特化したプログラムの強化に注力。その流れを受け、駿台独自の知見とデータを活用し、全国各地で京大志望者に対して、従来よりもさらに質の高い指導を展開している。

 京大の魅力、2次試験の特徴、共通テスト後から2次試験までの学習戦略、逆転合格のカギを探る。

--これまでの京大合格者は、どのようなところに魅力を感じて京大を目指し、合格を勝ち取ったのでしょうか。京大の魅力について教えてください。

 京大を志望する理由は人それぞれですが、多くの人を惹きつける京大の魅力は、大きく3つあると思います。第1に、自由な学風です。入試本番の在学生による応援や、卒業式でのコスプレ参加者の多さなどがニュースになることから、「自由」「おもしろい」というイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。

 第2に、充実した研究環境です。京大はノーベル賞受賞者をアジア最多の11人輩出しており、世界レベルの研究に取り組める環境が整っています。特に理系の生徒にとって、第一線で活躍する研究者の下で学び、自らもその一端を担うことができる点は、京大ならではの大きな魅力だといえます。

 第3に、歴史と文化に彩られた立地です。キャンパスの近くを鴨川が流れるという抜群の環境もあり、京都の独特な風情や魅力に心を奪われる人も少なくありません。高校の修学旅行で京都を訪れたことがきっかけで、京大を志望するようになったというエピソードもあります。

駿台予備 京大対策コースを率いる川瀬裕樹氏

 自由な学風、充実した研究環境、そして歴史を感じる土地柄が揃う大学は他にありません。そのため、京大志望者には、「京大しかない」という強い想いを抱く人が多いと感じます。

京大合格者に見られる気質は「粘り強さ」

--夢を掴んだ京大合格者に見られる特徴について教えてください。

 京大は学部によって科目や配点が異なりますから、どの学部を目指して取り組むのか、その戦略・対策が重要であるとともに、合格には気質的な面も重要だと考えています。

 京大の入試では合格者の得点が0.01点単位で発表され、僅差で合否が分かれることも珍しくありません。誘導問題が少なく考えさせる問題が多いことも特徴です。「答えが出ないから諦める」のではなく、たとえ完全な正解にたどり着けなくても、可能な限り考えを書き出すことが重要です。計算過程での部分点や、思考過程の記述も評価の対象となるため、粘り強く解答を組み立て、少しでも多くの点数をもぎ取ろうとする姿勢が合格につながる傾向にあります。

 このような入試の特性を踏まえ、日ごろの学習でも同様の姿勢で取り組むことが効果的です。たとえば、過去問演習を行う際、解答が終わり次第答え合わせといった、毎回ただ効率を重視して早めに切り上げるのではなく、時には本番と同じ試験時間を使い切ることをお勧めします。最後まで粘り強く問題と向き合い、見直しをしたり、難しい問題に立ち返って考え直したりする習慣を身に付けることが大切です。

 さらに、駿台の京大成績開示データ分析によると、合格者は難易度が低い問題から標準レベルの問題までほぼ取りこぼさず得点しています。2024年度入試における文系数学を例にあげると、難易度が高かった第4問「整数・常用対数」において、合格者は4割以上の得点を確保している一方、不合格者は2割未満しか得点できていないことが目立ちました。つまり、合格者は難易度が高い問題でも粘って問題と向き合い4割は得点できた一方、不合格者は諦めてしまい、ほぼ白紙で提出しているようすがうかがえます。こうした違いが結果的に小数点単位での合否のわかれ目に繋がってくるのではないでしょうか。

駿台の京大成績開示データ分析をもとに「合格者は難易度が高い問題でも粘って4割は得点している」と指摘する川瀬氏

 駿台の京大クラスでも、年間を通して「1点の重み」を指導していますが、それを本番で実践できた生徒が合格しているという印象です。最後まで粘り、考え抜く力が京大合格の鍵だといえるでしょう。

逆転合格も可能、2次試験直前の学習ポイント

--共通テストが終わり、うまくいったと手ごたえを感じている人は、2次試験までの約1か月間どのように過ごすと良いでしょうか。

 まず、共通テストで「うまくいった」とはどういう状態かを定義する必要があります。ここでは、ベネッセコーポレーションと駿台予備学校が共同運営する「データネット」(共通テストの自己採点結果の集計・分析)において、B判定(合格可能性60%以上)またはA判定(合格可能性80%以上)を取った場合を「うまくいった」と捉えて良いでしょう。この状態であれば自信をもち、2次試験に向けた準備を進めてください。

 うまくいった人の戦略としては、過去問を遡って解く、同じ年度の問題を繰り返し解くことが非常に重要です。特に京大の場合、英語や数学の「25か年」など長期間の過去問集は極めて有用です。「そこまで遡る意味があるのか」と思うかもしれませんが、京大入試は年度ごとに出題形式や内容に変化が見られる点が特徴です。

 たとえば英語では、直近5年間だけでも大問の数や条件付き英作文の形式、解答用紙の枚数に変動があります。このため、確定したパターンに基づいて時間配分を計画することが難しくなります。多くの年数の過去問をしっかり解き込むことで、「この形式で出題された場合、この問題にはこのくらい時間をかける」というシミュレーションを繰り返し、自分の中に落とし込むことができます。

 また、数学では、標準レベルの問題を絶対に取りこぼさないことが求められます。しかし、第1問から標準レベルの問題が出題されるとは限りません。難問に時間を取られてしまうと、解けるはずの問題に手が届かない可能性があるため、過去問演習を通じて「どの問題を優先して解くか」を判断する力を鍛える必要があります。この力を養うためには、5年分の過去問を1周する程度では足りません。25年分を遡って解いていくほど、問題を見極める目が鍛えられます

「『どの問題を優先して解くか』を判断する力を養う必要がある」と語る川瀬氏

--では、共通テストがうまくいかず力不足を感じている人は、2次試験までの約1か月間どのように過ごすと良いでしょうか。

 最初にお伝えしておきたいのは、共通テストで点が取れるに越したことはありませんが、C、D判定の人でも、合格の可能性は十分にあるということです。E判定からも合格者は出ています。学部や学科によっては特定の科目だけが重視される場合もありますし、これからしっかり2次試験で点数を取れば、逆転も見込める学部や学科も十分にあります。「自分もまだ可能性がある」と思って最後まで諦めずに努力していただきたいと思います。

 うまくいかなかったと感じている人は、まずは失敗の原因を突き止めてください。共通テストの出題形式が合わなかったのか、知識が足りなかったのか、あるいは睡眠不足で体調が悪かったのか。単純に共通テストの出題形式が合わなかった人は、気持ちを切り替えて2次試験で実力を発揮してください。知識が足りなかった人は、しっかりと基礎を確認する必要があるでしょう。体調が悪かったのなら、生活面から見直す必要があるかもしれません。2次試験で同じことを繰り返さないように反省点を改善しつつ、過去問でしっかりと対策してください。

--2次試験まで、生活面で気を付けることはありますか。

 生活面については、共通テストの結果にかかわらず、基本的な対策は変わらないと考えています。ただし、共通テストが思うようにいかなかった場合、焦りから無理をしてしまうケースが見受けられます。たとえば、睡眠時間を削ることで勉強量を増やそうとするものの、結果としてパフォーマンスが落ちたり、体調を崩してしまったりすることがあります。こうした事態を避けるためにも、朝型の規則正しい生活を心がけながら、よく寝て、よく食べて、よく勉強をしていただきたいと思います。

--共通テスト後の結果を見て、芳しくなかった生徒さんが逆転合格した例はありますか。

 あくまでも私の経験上ですが、京大志望者の場合、共通テストの評定が芳しくないケースでも、「合格するためにはどうしたら良いですか」という相談はあっても、「志望校を変えた方が良いですか?」という相談が少ない印象です。これは、京大ならではの魅力を強く感じている受験生が多いからだと思います。特に関東圏だと国公立大後期、私立大共に受験生の選択肢が多く、京大以外でも納得できるわけではないですが、前期は京大を受験したいというこだわりの強い受験生が目立ちます。

「京大ならではの魅力を強く感じている受験生が多く、志望校変更の相談に来る生徒が少ない」と語る川瀬氏

 ですから「志望校の変更をするか迷っている」と相談に来た生徒は、印象に残っていますね。ある生徒は、共通テストの判定評価が芳しくない状況で、不安になっているようでした。しかし、1年間の模試の成績推移や記述力を確認し、過去の合否データを示しながら、「2次試験でこの得点を取れれば逆転合格は可能。本当に京大を目指したいなら、その気持ちを貫いて出願すべきでは」と背中を押しました。同時に、併願先や安全策も提案し、悔いのない受験をサポートしました。その後、その生徒は講師室を頻繁に訪れ、過去問の添削を繰り返しながら2次試験対策に取り組みました。その結果、ギリギリではありましたが、見事に逆転合格を果たしました。

 京大の理念には「対話を根幹とする」という考え方がありますが、この生徒も、机に向かうだけでなく、講師や周囲と対話を重ねながら、自分の学びを再構築しました。こうした姿勢こそが、逆転合格のカギではないかとあらためて感じています。

京大を目指す高1・2年生は、早めに志望学部を決めて対策を

--駿台の京大クラス・コースの指導の特徴について教えてください。

 京大はここ3年連続で志願者が増加しており、その志願者層は関西圏のみならず、全国に広がりを見せています。この状況を踏まえ、駿台では全国の京大志望者を適切に導くための、京大志望者に特化した指導体制の強化に取り組んでいます。全国の京大クラスの学習コーチや進路アドバイザーを対象に、ほぼ毎月研修を実施。京大特有の入試傾向や指導方法を共有し、教務側の連携を強化しています。

 講師陣による授業では京大特有の論証や必要十分条件を考える数学の演習など、京大に特化した内容を重視。これにより、生徒たちは京大に対する実践的な対策を深めています。一方、教務側では模試や入試結果のデータを活用し、生徒ひとりひとりに効率的な学習をサポート。さらに、学習コーチを通じて、受験の基本情報や実践的なアドバイスを提供しています。こうした講師陣の専門性と教務側のきめ細やかなサポートにより、学習面・進路面どちらも京大に精通した者が指導できる体制を整えていることが駿台の強みになっています。

--来年京大受験を考えている高校2年生が今やったほうが良いこと、1年後までにやるべきことを教えてください。

 駿台のアンケートによると、京大を含む難関大学を目指す人たちは、中学や高校の早い時期から目標を定めていることが多いことがわかります。

 難関大学のイメージが強い京大ですが、現在の成績と照らして届くかどうかを気にするのではなく、文学部を目指すのか、理学部を目指すのか、学部まで含めた具体的な目標設定をぜひ行ってください。目標が定まることでモチベーションが上がり、そこに向けた戦略が立てやすくなるため、勉強の効率も向上します。

 高校2年生の時点では、過去問に目を通しておくことも重要です。「過去問はすべて直前期まで取っておきたい」と考える人もいますが、高2の段階で「この問題は今でも解けそうだ」「こんな問題が出るのか」といった感覚を得ることで、自分の弱点を把握し、高3の夏までに取り組むべき内容を計画的に進めることができます。とはいえ、高2の段階では京大に特化した対策だけでなく、総合力や基礎学力の向上が何より重要です。特に、苦手科目をできるだけ減らす努力が必要です。京大入試とはいえ、学校の授業の延長線上にあります。授業を大切にしながら基礎学力を養い、隙間時間を活用して不足している部分を補強しておきましょう。

--2次試験までの残り1か月を走り切れるように、受験生に応援メッセージをお願いします。

 受験生の皆さんには、この貴重な機会をぜひ楽しんでほしいと思います。私自身、大人になった今振り返ると、学生時代の部活、学校行事、受験といった一大イベントに全力で没頭できた時間は、本当に貴重だったと感じます。

 学校の先生、塾や予備校の講師、そして家族が一丸となって頑張る自分を応援し、合格を願ってくれる環境は、人生でもそう多くありません。この幸せな時間を存分に味わいながら取り組んでください。もちろん、プレッシャーを感じることもあると思いますが、それを乗り越え成長することで、大学生や社会人へのステップにつながるはずです。大変だと思いますが、健康を第一に、理想の進路と理想の自分を目指して最後まで頑張ってください。

--本日はありがとうございました。


 独自のコーチングメソッドにより、さらに強化された駿台の京大対策コース。その中心に立つ川瀬氏に、京大入試の特徴や2次試験直前期の過ごし方について、貴重なアドバイスを伺った。ここまで京大を目指して努力を重ねてきた受験生には、残り1か月を悔いのないよう過ごし、最後まで志望を貫いてほしい。京都の春が、皆さんを温かく迎えてくれることを心から願っている。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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