過去10年で志願者数最多8,000人越えの京大、駿台に聞く2026年度入試攻略法

 京都大学への志願者が増加している。2025年度入試では過去10年で最多となり、8,000人を超えた。その人気の理由と合格者の共通点とは? 毎年、多数の京大合格者を輩出する駿台予備学校 お茶の水校2号館・校舎責任者の川瀬裕樹氏に話を聞いた。

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駿台予備学校 お茶の水校2号館 校舎責任者 川瀬裕樹氏
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 京都大学(以下、京大)への志願者数は4年連続で増加し、2025年度入試では過去10年で最多となり、8,000人を超えた。

 毎年、多数の京大合格者を輩出している駿台予備学校(以下、駿台)お茶の水校2号館・校舎責任者の川瀬裕樹氏に、2025年度入試の分析と共に、京大に合格するための戦略について話を聞いた。

4年連続志願者数増加、過去10年最多志願者数に

--京大入試の志願者数の推移について教えてください。

 前期日程の志願者数は8,077人となり、2016年度入試以来9年ぶりに8,000人を超えました。これは、ここ10年ではもっとも多い志願者数です。また、4年連続の増加で、2021年度入試(7,045人)からは約千人増えました。大学全体の志願倍率も、当時の2.6倍から3.0倍に上がっています。文系・理系別に見ると、文系は前年度より131人増え、3年連続で増加。理系も146人増え、4年連続の増加となっています。

京都大学 前期日程における志願者数推移

--なぜ京大の人気が高まってきているのでしょうか。

 やはり京大のもつ魅力でしょう。京大対策コースに在籍する既卒生に京大の魅力を聞いたところ、自由な学風、研究環境、文化や歴史のある古都でのひとり暮らしへの憧れなどをあげていました。理系志望者にとっては、ノーベル賞受賞者をアジア最多の11人輩出している環境で、第一線で活躍する世界レベルの研究者の下で学び、自らもその一端を担うことができることは京大ならではの大きな魅力だといえます。

 また、東大の第1段階選抜が厳しくなり、東大を回避した人が京大へ流れてきていることも考えられます。実際に、2025年度入試では東京都の志願者が増えました。京大でも第1段階選抜は実施されていますが、学部によっては不合格者が数人程度にとどまっています。こうした違いから、現役合格を目指す受験生にとっては京大のほうが受験しやすいと感じ、志願者数の増加につながったのではないでしょうか。

--志願者数が増えた学部、減った学部についても教えてください。

 志願者数が2024年度入試より増えた学部は、文系学部では文学部と法学部で、いずれも大幅な増加となりました。理系学部では理学部が3年連続で志願者を増やし、医学部医学科も7年ぶりに志願者数が300人を超えました。

 一方、志願者が減少したのは、経済学部・総合人間学部の2学部に加え、理系の教育学部です。

 総合人間学部については、共通テストで配点対象となる科目が、理系は地歴・公民と情報の2科目、文系は理科基礎と地歴・公民、情報の3科目のみです。したがって、共通テストの予想平均得点率が低い年には、本来は他学部を目指していたものの、共通テストが伸び悩んだ受験生が、かろうじてこの科目では得点できている場合に、志望を変えて流れ込む傾向があります。しかし、2025年度は共通テスト全体の予想平均得点率が上昇し、予定どおり得点できた上位層の多くが第一志望を貫いたことで、志願者数の減少につながったと考えられます。

 経済学部については、文学部・法学部と比べて募集人員の枠が少ないこと、2年連続で志願者数が増加していたこと、さらに昨今の経済学部人気により受験者の学力層が高い傾向にあることなどから敬遠されたのでしょう。

京都大学 志願状況

全国各地から入学者が集まり、多様性が高まる

--他に特筆すべき変化はありましたか。

 近畿だけでなく、全国的に志願者が増えていることです。東大では関東からの志願者が6~7割を占めるのに対し、京大では近畿からの志願者は約45%にとどまっています。直近3年間の地域別出願者数を見ると、四国以外では志願者数が増加しています。

 特に近年増加が目立つのは、関東と中部東京都からはこの2年で200人以上、愛知県からも約80人増えています。こうした全国から集まる受験生たちが生み出す多様性が、今の京大の大きな魅力と言えるのではないでしょうか。

京都大学 地域別出願者数3か年比較

--東大は合格者に占める女子の割合が2割台に回復しました。京大での女子の志願者の動向について教えてください。

 京大での志願者に占める女子の割合は約23%、入学者に占める女子の割合は約20%と、この5年間でほぼ横ばいで、東大と大きな差はありません。京大もこれでは十分とは考えていないようで、2026年度からは理学部と工学部の特色入試(総合型選抜と学校推薦型選抜)で女性枠を設ける予定です。

 ただし、この特色入試の女性枠には、共通テスト全体で8割以上、かつ一部の理系科目は9割以上の得点、提出書類がA評価であることなど、非常に厳しい選考基準が設定されおり、これをクリアできる受験生は、一般選抜でも十分に合格できる実力をもつと見られます。そのため、この新たな女性枠には、こうした実力がある受験生を先に確保しておくという狙いもあると考えられます。

京都大学 志願者数・入学者数における男女別割合5か年比較

文系でも数学が難化 過去問演習の積み重ねが得点力のカギ

--次に教科ごとの分析について伺います。まず、全学部共通の英語からお聞かせください。

 英語は、前年度と比べてやや易しくなった印象です。特に和訳問題の易化が顕著で、例年に比べて文の構造で悩まされる問題が少なく、受験生にとっては読みやすく、解きやすかったのではないでしょうか。

 京大入試の英語は、2024年度入試では英文解釈とその一部に条件付き英作文が課されたものが2題、和文英訳問題の3題構成でしたが、2025年度入試では条件付き英作文が独立して出題され、大問4題構成となりました。基本はその2パターンですが、過去問は直近5年分だけでなく、さらにさかのぼって25年分取り組み、さまざまなパターンで時間配分のシミュレーションを重ねることが重要です。

 分量自体は目立って多いわけではなく、通常の難関大レベルですが、語彙の難易度は高いです。英文解釈の問題では、ある程度前後の文から意味を推察できるよう語彙力を高めておくことが必要です。

--数学は文系、理系それぞれの難易度はいかがでしたか。

 2024年度入試が文系・理系ともに難易度の高かった数学ですが、2025年度入試も引き続き文系は難しかったですね。点差が付きにくく、数学を得意とする受験生ほど厳しかったのではないかと思います。

 一方で、理系は、2024年度入試に比べて解法の方針が立てやすく、かつ手が動きやすい設問が多く出題されたため、全体としては易化した印象です。

--文系数学が難化しているのは、文系の領域でも数学をきちんと学んできた人がほしいという大学側のメッセージでしょうか。

 それはあると思います。2025年度入試の文系数学では、すべて完答できる大問は、おそらく大問4のみではないでしょうか。順番に解いていくと時間的には厳しかったでしょう。まず、すべての問題に目を通して、解ける問題を見極める力を養うことが必須です。そして何より、合否の分かれ目は、難易度が低い問題や標準レベルの問題を取りこぼさないことです。

 京大入試の数学には、「誘導がない」という特徴があります。答えは1つですが、そこにたどり着くまでの過程は複数あります。受験勉強の中で決まった形だけでなく、「どうしたらこの問題を最短で解けるか」「楽に解けるか」を日ごろから常に考えて取り組むようにしましょう。

--国語と理科、地歴についてもお聞かせください。

 国語については、2025年度入試は前年度と同様の難易度で、特筆すべき変化は見られませんでした。

 理科では、多くの受験生が選択する化学に注目すると、近年、難しい大問も多かった印象ですが、2025年度入試はそうした難問はあまりなく、全体的に取り組みやすかったのではないかと思います。ただ、論述や計算過程の記述が必要な問題は依然として多く、解答作成に時間がかかる傾向が続いています。やはり、過去問を通して2次試験対策をどれだけ積んできたかが本番に影響したでしょう。

 また、計算過程の記述が多いのも、大学側が受験生がどのようにして答えにたどり着いたのかに関心があるからでしょう。回り道であっても、自分で試行錯誤して考える力が求められているのです。

 地歴では、世界史で従来の論述問題に加えて、2025年度入試では大問4で短文論述の新しい出題方式の問題が見られ、戸惑った受験生も少なくなかったでしょう。全体として難易度がやや上がった印象です。

「過去問を通じて大問ごとの時間配分を調整していくことが重要」(川瀬氏)

京大に合格する人の共通点は、最後まで粘れること

--京大に合格する人にはどのような共通点がありますか。また、どんな人が向いているとお考えですか。

 共通点としてあげるなら、英語であれば語彙や文法を、数学であれば難易度の低い標準的な問題を着実に身に付けた上で、過去問演習にしっかりと取り組んでいることです。東大と比べて、京大の合格者数では公立高校の躍進が目立ちますが、それは、こうした教科書をベースとしたオーソドックスな勉強を地道に積み重ねていれば、京大の入試は十分に戦える内容だということの証左だと思います。

 どんな人が向いているかについては、ありきたりな回答になってしまいますが、やはり最後まで諦めずに粘れる人です。京大のような超難関大の入試では部分点をいかに積み上げるか、そのために頭をフル回転させて手を動かし、その結果をどれだけ解答用紙に書けるかが非常に重要です。

 そして、諦めない力は、入試だけでなく出願時にも求められると言えます。2025年度京大入試では、駿台の既卒生だけでも共通テストでの合格判定がDやEだったにも関わらず、かなりの数が逆転合格を果たしました。共通テストの結果が多少悪くても諦めず、2次試験でどれくらい点を取れば合格できるかを逆算し、その点数を取るための方法を考えて2次対策に取り組むことが大切なのです。現役・既卒に関わらず、伸びる受験生は共通テスト後の1か月でも大きく伸びます。京大入試は2次試験の配点比が大きいので、共通テストが終わってからも諦めずに最後まで粘ってほしいですね。

浪人生が増えている京大、どうなる2026年入試

--京大志望者は、現役時に不合格だった場合、浪人を選択するケースは多いのでしょうか。

 大学が発表している「現役生の京大入学者数」のデータを見ると、京大では現役入学者が減少していることがわかります。志願者数自体は現役生・既卒生とも増えているため、合格者に占めるの既卒生の割合が増えていると考えられます。実際、駿台でもここ3年、京大コースを受講する既卒生が全国各地で増えており、京大人気を実感しています。浪人を選ぶ人が増えているのは、浪人してでも進学したいと思わせる魅力が京大にあるからではないでしょうか。

京都大学 現役生の京大入学者数推移

--新学年がスタートしました。2026年度の京大入試の傾向をどう見ていますか。

 2月に実施する高2生対象の駿台全国模試を2023年度と2024年度とで比較した結果、少子化の影響から受験者数全体では減っている中、京大を第一志望とする高2生は全国で150人ほど増えていました

 さらに、今春の入試では既卒生の合格がたくさん出ている分、現役生に合格が出ず浪人していることも考えられます。今のところ、引き続き現役生・既卒生ともに志願者が増えていると言えそうで、京大人気は2026年度入試でも継続されると予想されます。

--魅力あふれる京大を目指す中高生に向けて、メッセージをお願いします。

 努力なしに京大に合格することは絶対にできません。「合格への近道はありますか?」とよく聞かれますが、やはりどれだけ早く学習をスタートできるかが重要だと思います。

 先ほどもお話ししたように、学力は積み重ねです。部活や学校行事の合間をぬって少しでも勉強時間を確保することが大切です。特別なことをするというよりも、学校の授業の予習・復習をしっかり行うこと、苦手を放置せず克服すること。そうした学習習慣や生活習慣を、できるだけ早い段階で身に付けることが合格への大きな足がかりとなります。

 そして、勉強に限らないことですが、いちばん大事なのは「基礎・基本」です。この記事が出るころは、高3生もまだ前期。夏までは、苦手をなくし、基礎を固めることが多くの受験生にとって最優先の課題でしょう。焦らず、着実に取り組んでいってほしい。その上で、京大の出題傾向を意識した取り組みや、直前期には過去問演習を、できれば25年分を繰り返し、さまざまなシミュレーションを行うといった個別対策に進みましょう。

--最後に、受験生を支える保護者にもメッセージをお願いします。

 受験は、あくまでもお子様が主役です。保護者様は陰ながらサポートする立場で支えていただけたらと思います。たとえば体調管理で、夏場など食欲がなくても1日3食の食事のリズムや睡眠のリズムを守れるようにしてあげることなどは、学校や塾ではできない、ご家庭だからこそできるサポートです。

川瀬氏から保護者へのアドバイス「京大の入試は“自分で考え抜く力”が求められる試験。受験生本人が自分で考え、行動できるように自律を促すことを大切に」

 また、2026年度から共通テストは電子出願に変更になりますし、私立との併願受験など、出願作業に手間取る場合には、お子様から保護者様へサポートが求められるかもしれません。そのような状況に備えて、保護者様は我々がこうして発信する情報を参考に、最新の情報を知っておいていただくと良いと思います。

 保護者様はお子様がちゃんと勉強しているのか、日々不安に感じると思いますが、ご自宅以外で量・質ともにちゃんと取り組めているお子様であれば、家に帰ってからはむしろリフレッシュの時間にし、ご家庭では受験以外の話題で、プレッシャーから少しでも解放してあげてほしいと思います。

--本日はありがとうございました。


 川瀬氏は「試行錯誤して最後まで粘る姿勢が重要だ」と強調していた。しかし、この姿勢は一朝一夕には身に付かないもの。京大が入学者に求めている力をひとつひとつ身に付け、その積み重ねの先に合格をつかんでほしい。

第一志望は、ゆずれない。
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《木村りこ》

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