【大学受験】プロ112人調査で読み解く、大学選び最新マップ<東日本編>

 学習塾関係者や進路指導のプロ112人への調査をもとに、東日本エリアにおける大学選びの最新傾向を整理する。偏差値や大学名だけでは見えにくい、「実際に選ばれている大学」の判断軸とは何なのかを読み解いていく。

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【大学受験】プロ112人調査で読み解く、大学選び最新マップ<東日本編>
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 東京大学、東北大学、北海道大学といった旧帝大をはじめ、一橋大学、東京科学大学(旧東京工業大学と旧東京医科歯科大学が合併)など、東日本エリアには難関国公立大学が多くそろっている。また、入試難度や就職実績(主要400社)でこれらに肩を並べる私立大学も充実している。「早慶上理」(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学)や、「GMARCH+芝浦工業大学」(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学、芝浦工業大学)などがあげられ、難関国公立大学に並ぶ有力な私立大学が数多く集まっている。

 東京都や横浜市といった首都圏に加え、札幌市、仙台市などの大都市圏を抱えるこの地域では、大学選びの選択肢が非常に多い。一方で、受験生や保護者からは「何を基準に志望校を決めれば良いのかわからない」という声も少なくない。

 筆者は2024年から約2年にわたり 、東日本105塾112人の進路指導担当者に、大学受験における志望校決定の重要キーワードを調査。膨大なデータから見えてきたのは、「偏差値」や「大学ブランド」だけではない、子供の将来を見越した複合的な要因を伴った「新基準」だった。

 本稿では、「選ぶ側」(受験生・保護者)を横軸に、「進路指導を行う側」(塾関係者)を縦軸に、それぞれが重視するキーワードをまとめた最新キーワードマップを独占公開。「難関大学」「上位・中堅大学」「地元小規模大学」の3つに分けて、受験校決定のリアルな基準を分析していく。

記事下のボタンより大きいサイズのキーワードマップを閲覧・ダウンロードできます
  • 今、偏差値を追い越すキーワードは?

  • 保護者の間で大幅に上昇、下降した意外な指標

  • 塾側の進路指導で急伸している項目

  • 10年後の受験界を支配するキーワード群

を予想。変化の激しい時代、偏差値や大学名だけでは見えにくい、「実際に選ばれている大学」の判断軸とは何なのか。わが子にとっての“正解”をどう見つけるべきか。112人のプロの知見が詰まった「志望校選びの新基準」をお届けする。

※調査方法:東日本105塾関係者(112人)へ大学受験で進学決定要素になるキーワードを著者(追手門学院大学客員教授、ルートマップマガジン社 西田浩史)が聞き取り調査(2024年1月~26年1月)した結果を基に作成。

 旧帝大や難関国公立大学に加え、有力な私立大学が東日本には数多く存在する。とりわけ「早慶上理」は、旧帝大クラスであってもなかなか“滑り止め”になりにくい入試難度である。ちなみに西日本にはこのクラスの私立大学群はない。それだけに、東日本の大学受験における影響力は絶大だ。最難関、難関大学がある東京は他のエリアと異なって少子化の影響はまだ小さい。ただ、近年活発化している「学校推薦型・総合型選抜(推薦入試)の拡大」などによる複合的な要因によって、「偏差値」や「大学ブランド」といった物差しから状況は徐々に変わりつつある。まず「難関大学」からデータに基づき検証していきたい。

難関大学選びは「大学ブランド力」を重視

 「早慶上理」「GMARCH+芝浦工業大学」の各大学において、入試の中心は現在も一般選抜であることに変わりはない。学習塾関係者の多くも、「このクラスの大学では、依然として一般選抜が志望校決定の軸になっている」と指摘する。

 一方で、近年は学校推薦型選抜や総合型選抜の実施枠が拡大しており、大学選びに与える影響も徐々に広がりつつある。特に、評定平均や活動実績を生かした受験を視野に入れる受験生にとっては、一般選抜一本ではなく、複数の入試方式を前提に志望校を検討するケースが増えているという。

 調査では、「最終的な合否は一般選抜で決まることが多いが、推薦・総合型の有無が志望校の“選択肢”を広げている」との声も多く聞かれた。入試方式の多様化が、大学選びの考え方そのものに変化をもたらし始めているといえそうだ。

 さっそく下の『「早慶上理」「GMARCH+芝浦工業大学」などの受験決定キーワード表』(※記事の最後の赤いボタンより、大きなサイズのPDFをダウンロードできます)を見てほしい。

 図の見方は、縦軸は「教える側」(塾関係者)が進路指導で重視するキーワード、横軸は「選ぶ側」(受験生・保護者)が志望校決定時に重視するキーワードを表しており、塾と受験生・保護者は共に、右上に近いものほど重要度が高くなることがわかる。

 これは単なる「人気校ランキング」ではない。塾関係者や受験生とその保護者がどのような視点で具体的に志望校を選んでいるのかを示すものだ。内容を細かく見ていこう。まず注目すべきは、その右上にあるキーワード群である。

 ここは、受験生・保護者が重視し、かつ塾側も進路指導で重視している領域だ。いわば、学校選びにおける重要な価値観(キーワード)が集まっているといえよう。具体的には、「偏差値」「大学のブランド力」「学閥の強さ」「就職実績」「立地の利便性」「学部学科の充実度」といったキーワードが並ぶ。「偏差値」「大学のブランド力」が下降しているのは、その基となるデータ(大手予備校の模試)への不信感からだ。いわゆる少子化で受験者数自体が減少する中、数値は役に立たなくなっているという塾関係者の声を聞くことが多くなった。対して、「学閥の強さ」「立地の利便性」「学部学科の充実度」が短期間で急伸しており、こちらを重視する関係者が増えてきたのだろう。大学のリアルな中身をより見るようになってきたということだ。

 これは、一般選抜と学校推薦型・総合型選抜を併用する受験生が増えている影響もある。志望理由書や面接などが求められるこれら選抜は、学部学科の細かいところまで調べる必要がある。「学閥の強さ」も同様だ。志望理由を考える際に、学校や学部の“とんがった”特徴を重視していると捉えることができる。

 さて、右下の部分(受験生が重視しているキーワード)だが、「就職実績」が低下したのは、「就職」よりも勉強することを重視している層が多くなったのがおもな理由だ。よく親世代が武勇伝的に語る「大学でまったく勉強しなかった」とう過去の大学生像は実は、“絶滅危惧種”と言って良いのかもしれない。

 一般選抜比率の高さが若干伸びているのは、一般選抜比率が高い=大学序列が高いと考える受験生がこの層には少なくないこと。一方で「自宅からの近さ」が下降気味なのは、地元の大学にこだわらず、遠くても難関私立大学を受験しようとする層が増えいること。「実学的な学び」は下降し、変わって「学際的な学び」が急伸している。このクラスの大学群では、政策系、社会科学系学部など幅広く学べる大学・学部に人気が高いことが伺える。

 次の左上(学習塾が重視しているキーワード)、左下(塾も受験生も重視していないキーワード)では、急伸しているキーワードはすべて、学校推薦型・総合型選抜の実施拡大の影響である。

 「留学実績やカリキュラム」「大学院進学率」「有名な教授や研究室の存在」といったキーワードは、塾関係者からも受験生からも現時点で重視度は低いが、伸び率を考えた場合、10年後は、最重要視されているキーワードになっている可能性が高い。そう仮定すると、大学選びは激変する。入試の出願書類の1つである志望理由書を執筆するにあたって、いずれものキーワードも大切である。ちなみに、留学によってアメリカのトップ大学院に進学して更なるステップアップを目論むのが多いのがこの層である。

中堅私立大学で強まる「コスパ重視」と入試方式の影響

 日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)や武蔵野大学といった中堅私立大学のキーワード表を見ると、受験生の大学選びの基準が大きく変化していることがわかる。

 まず、右上に位置する「大学のブランド力」「立地の利便性」「自宅からの近さ」を重視する比率が上昇している。これは、全国的な知名度があり、通学や生活コストを抑えやすい大学を選びたいという意識の表れで、この層では大学の中身以上にコストパフォーマンス(コスパ)を重視する傾向が強いといえよう。

 こうしたコスパ志向の中で、「学校推薦型・総合型選抜の実施」というキーワードが急伸し、最重要項目のひとつとなっている。より合格可能性を高めるため、自分に合った入試方式を選びたいという意識が背景にある。とくに、東洋大学や大東文化大学が導入した「年内学力入試」の影響は大きく、受験生の注目度を押し上げた要因と考えられる。この影響もあり、「偏差値」という指標の重視度は相対的に低下している。年内学力入試では偏差値が存在しないことも、その一因だろう。

 右下では「実学的な学び」や「学閥の強さ」が伸びているが、これはコスパよく他者と就職で差をつけたいという意識の表れとみられる。

 また、「学部・学科の充実度」に加え、左上の「入試問題など出題傾向のわかりやすさ」、左下の「有名な教授や研究室の存在」「留学実績やカリキュラム」が伸びている背景にも、学校推薦型・総合型選抜の拡大がある。

 一方で、「一般選抜比率の高さ」を評価する声が相対的に弱まっているのは、一般選抜のみで志望校を目指す受験生層そのものが縮小しているためと考えられる。また、「学際的な学び」や「大学院進学率」は、この層の受験生から見るとコスパが低いと受け止められやすく、いずれも重視度が下がる結果となった。

一般選抜がほぼ機能しない「地元小規模大学」

 最後は、「地元小規模大学」だ。難関、中堅大学と大きく違うのは、まず一般選抜がほぼ機能しなくなっていること。

 右上を見ると、「学校推薦型・総合型選抜の実施」のキーワードが最重要キーワードに位置している。さらに、「日東駒専」など中堅大学以上に、ハード面にこだわる。大学の中身は二の次だ。面白いのが、「大学説明会での職員のイメージ」だけで受験するか決める層が多いこと。これ、実は中堅大学でも同傾向であるから驚きだ。

 「自宅からの近さ」「立地の利便性」「就職実績」「学閥の強さ」「看板学部のブランド」「大学のブランド力」「有名な教授や研究室の存在」は、小規模大学自体が、医療、福祉系学部に特化した大学が多いからかもしれない。その証拠に、右下の「学際的な学び」よりも「実学的な学び」の方が重視され、「偏差値」よりも「学閥の強さ」がより重視されている。

 大学受験における大学選びは、今や明確に三極化している。難関大学では依然としてブランド力や学部の強みが重視される一方、中堅大学ではコストパフォーマンスや入試方式の多様化が志望校決定に大きく影響する。そして地元小規模大学では、推薦・総合型選抜を前提とした進学が主流となり、大学選びの判断軸そのものが大きく異なっている。

 東日本105塾112人の進路指導担当者への調査で見えてきたのは、「偏差値」や「大学ブランド」だけでは大学選びを説明できない時代に入っているという現実だ。受験生や保護者は、学部学科の特徴や立地、入試方式、さらには大学の将来性まで含めた“複合的な視点”で志望校を考えるようになっている。

 偏差値表だけでは見えない大学の特徴をどう読み取るかが、これからの志望校選びの鍵になる。今回のキーワードマップを参考に、受験生それぞれにとって意味のある大学選びを考えていくことが重要になるだろう。

大きいサイズのキーワードマップ(PDF 1.04 MB)
ダウンロードはこちら ※別ウィンドウが開きます

●著者:西田 浩史(にしだ ひろふみ)

追手門学院大学客員教授/ルートマップマガジン社取締役・編集長

 2016年 ダイヤモンド社『週刊ダイヤモンド』記者(学校・教育産業担当)、学習塾業界誌の私塾界『月刊私塾界』、塾と教育社『月刊塾と教育』記者、追手門学院大学アサーティブ研究センター客員研究員を経て20年から現職。「デイリー新潮」「東洋経済オンライン」「ダイヤモンド・オンライン」「現代ビジネス」『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊エコノミスト』『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』など教育関連記事の寄稿、コメント多数。全国5,000塾、予備校(関係者20,000人)の取材達成(2024年09月現在)。著者に『総合型選抜は何を評価するのか』(かんき出版)、『医学部&医者』『関関同立』『最強の高校』(すべて週刊ダイヤモンド 特集BOOKS ダイヤモンド社)など。

●分析:井上 孟(いのうえ つとむ)

海外大学ジャーナリスト/ルートマップマガジン社代表取締役社長

 2016年 大手通信キャリアにてM&A戦略のコンサルティング、2012年米国 Hult International Business School で経営学修士(MBA)修了。13年から経営コンサルタントとして、英国コンサルティングファームの世界最先端のビッグデータ解析手法を日産自動車などへ提供。22年より現職。現在、Google等のビッグデータを生かしたマーケティング手法の開発を軸に、16年から教育業界のデータ分析を開始。国内外約3,000大学ビッグデータ分析を行う。『ダイヤモンド・オンライン』『週刊ダイヤモンド』『現代ビジネス』『週刊朝日』『塾ジャーナル』『週刊東洋経済臨時増刊』『サンデー毎日』などデータ寄稿や情報提供多数。その他、全国の大学や高校にて経営や広報に関するコンサルティングや講演を行う。

《ルートマップマガジン社 西田浩史/井上孟》

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