東京都、「小1問題・中1ギャップ」解決に向け実態調査

 東京都教育委員会は3月24日、「平成22年度 小1問題・中1ギャップの実施調査」について発表した。

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不適応状況の発生の有無/不適応状況の発生時期と終了時期
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 東京都教育委員会は3月24日、「平成22年度 小1問題・中1ギャップの実施調査」について発表した。

 同調査は、公立小・中学校における第1学年の児童生徒の学校生活への適応状況を把握し、小1問題・中1ギャップの解決に向けた今度の施策に生かしていくことをねらいとして実施されたもの。

 小学校の調査対象は、公立小学校1,308校の校長で平成22年11月に実施、調査内容は「不適応状況の発生の有無、不適応状況の発生と終了の時期等」。同調査における不適応症とは、入学後の落ち着かない状態がいつまでも解消されず、教師の話を聞かない等、授業規律が成立しない状態が数ヶ月にわたって継続する状態をいう。

 不適応状況が「発生した」と回答したのは全体の18.2%にあたる238校で、平成21年度の調査結果に比べて5.7ポイント減少している。発生したと回答した学校のうち、発生時期として一番多かったのは「4月」、次いで「5月」「6月」となっている。終了時期については「現在おさまっていない」が56.7%ともっとも多く、次いで「7月」「9月」となっている。

 不適応状況が発生した学級担任の教職務経験年数をみてみると、「30年以上」が23.1%ともっとも割合が多く、「2〜5年未満」が17.6%となっている。また、不適応状況が発生した学級の児童数は、「31〜35人」が38.7%、「26〜30人」が25.2%、「36〜40人」が18.9%となっている。

 中学校は公立中学校の1年生の調査で22年7月に7,593名、23年1月に7,392名を対象に2回実施。調査内容は「入学前・入学3ヶ月後・入学9ヶ月後の不安の有無と不安の内容等」。入学前・入学3ヶ月後・入学9ヶ月後の不安については、入学前の不安が「たくさんある」「少しあった」が78.4%、3ヶ月後は59.3%と減少しているが9ヶ月後は64.7%と増えている。不安の内容ごとにみると、「友達関係」に関しては不安は減少しているが、「学習」と「生活」に関しての不安は入学3ヶ月後に減少するものの9ヶ月後には増加していることが伺える。

 入学前に「不安なし」と回答した生徒のうち、入学後3ヶ月後に「新たな不安が発生した」と回答した生徒は「学習」で24.0%、「友達関係」で7.2%、「生活」で9.6%となっている。平成21年度と比較してみると、「学習」での不安が4.7ポイント、「友達関係」での不安が1.0ポイント増加していることがわかる。

 さらに東京都では、平成22年度から小1問題・中1ギャップの予防・解決のために、教員の加配などを行うとともに、平成22年度から3年間、新たな教員増加による児童生徒の学校生活への適応状況の変化と実効性を検証するための調査を実施しており、平成22年度に実施した調査の結果を一年次の報告書としてまとめている。

 加配措置を受けた小学校53校のうち、20校全52学級では、年17回(4〜6月は各月3回、7月と9〜11月は各月2回)委託業者の観察員2名により、該当する児童数や不適応状況に対する学級担任の対応等を調査した。

 不適応に該当する児童数をポイントとして統計処理を行った結果によると、1単位時間あたりの平均値は4月に56.2ポイントだったのが徐々に減少し、10月から11月にかけて0.3ポイント上昇がみられるものの、11月には51.9ポイントまで減少している。学級規模別に4月と11月を比べてみると、20名のクラスで53.9ポイントから51.3ポイントに、26〜27名のクラスで57.8ポイントから52.6ポイントに、40名のクラスで52.8本とから50.3ポイントに減少している。

 加配措置を受けた小学校53校と中学校40校の校長に対して、平成22年7月に聞き取り調査(抽出した小学校20校・中学校20校)を、平成23年1月に質問用紙による調査を行った結果も公開されている。

 小学校では、教員加配の効果に関して校長、教員、保護者から「きめ細かに児童を見ることができるようになった」「児童の個性に合わせた指導ができるようになり、学級が落ち着いた」「先生が子どもをよく理解してくれる」という意見が出ている。

 中学校では、「加配の教員が休み時間などに1年生のフロアにいることで、問題の未然防止になる」「生徒の変容を見過ごすことが少なくなり、いじめ等の対応に有効であった」「生活面や学習面において、個に応じたきめ細かな指導を受けられていることが大変喜ばしい」などという意見がみられたという。

《前田 有香》

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