子どもを幸せにするシリコンバレー型ICT教育…Life is Tech!発起会
シリコンバレーの教育法をモチーフにした中高生対象のIT教育プログラム「Life is Tech!」本格始動に先立ち、発起会「日本のIT教育についてちょっと考えてみよう」が開催。
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
同イベントは一般にも公開され、会場となった東京大学福武ホールの福武ラーニングシアター(定員180名)は、学生ら若い男性を中心とする参加者でほぼ埋め尽くされていた。会場には無料の無線LANが用意され会場からもTwitter(#LITech)で参加でき、ツイートはリアルタイムに、前方のスクリーンに映し出された。
◆ゲームで集中力やチャレンジ精神が向上
“ゲーム界の神”との紹介で登壇した東京大学 馬場章教授は、「教育界から見た日本のICT教育」と題し、「ゲームリテラシー」と「デジタルネイティブ」をキーワードに基調講演を行った。
馬場教授は、「デジタルゲームをめぐる古い言説」である目や歯や姿勢が悪くなる、外で遊ばなくなる、頭が悪くなる、凶暴になる(切れやすくなる)は、いずれも科学的に証明されておらず、「ゲームをめぐる新しい言説」である集中力がつく、忍耐力がつく、チャレンジ精神が豊かになる、協調性を獲得する、科学的・論理的思考力に強くなる、経済観念を理解する、ICTスキルが習得できる、についての科学的証明が進んでいることを説明。「ゲームの世界でリーダーシップを握れる人は、実世界でも同じだ」とし、ゲームの学習効果については、ある高校で歴史の授業に「大航海時代 Online」(中世ヨーロッパ、7つの海を冒険する海洋MMORPG)を使用したところ、歴史に対する関心、学習するモチベーションが高まり、成績が伸びることが実証されたと紹介した。
◆デジタルネイティブとデジタルイミグラント
「デジタルネイティブ」については、生まれた時からデジタル環境やインターネット技術が存在した時代の人で一般に1976年以降生まれをさすことを紹介すると、会場からは「もう一段ぐらいランクわけがあっていい気がする」といった意見もツイートされていた。いずれにしても、「デジタルネイティブ(原住民)」と「デジタルイミグラント(移民)」では物事の考え方や考える内容が異なり、ビジネスの世界でも注目され、また教育では、デジタル教材でより効果的に教育を行うことなどの研究が進んでいるとした。
馬場教授は、「21世紀はICTが世界を、政治を大きく変える時代」であり、「自ら情報やメディアを作り出す創造は世界観を変え世界を変える。これからはそういうリテラシーが必要だ」とし、「1人でも多くの中高生がこのプログラムに参加するよう願っている」と語り、講演を終えた。
◆高校生プログラマーが情報教育の問題点を指摘
中高生の視点として登壇した渡辺祥太郎君は、高校生プログラマーだ。千葉県にある渋谷教育学園幕張の高校2年生で、iPhoneアプリの開発を独学で学び、昨年はシリコンバレーのテクノロジーキャンプ「iD Tech Camps」に参加。無料iPhoneアプリ「日本の借金時計」などを開発し、「Life is Tech!」では講師デビューを果たすという。
渡辺君は、「日本のIT教育~21世紀の情報化社会に生きる私たち高校生~」と題して、学校における情報教育の問題点を指摘、さらに今年も参加予定という「iD Tech Camps」の紹介などを行った。
まず「自身の視点で問題点をあげると」と前置きをしたうえで、情報の授業は「他の科目と異なり、先生のスキルの差が大きく、生徒のそれも大きい」と指摘する。他の教科では生徒からの質問に答えられない教師はいないが、情報では回答できない教師もいるという。また内容も、「Word、Excel、PowerPoint(Microsoft Office)が中心であり、ソーシャルメディアに触れることはない」とし、「これからを生きる高校生のためにも、(情報の授業を)軽視することなく重要な教科として扱ってほしい」、また「中高生のころからPCに慣れ親しむことが大切と僕は考える」と語った。
「iD Tech Camps」は、米国カリフォルニア州のシリコンバレーに位置するスタンフォード大学のキャンパスで毎年行われているサマーテクノロジーキャンプで、プログラミングやゲームデザインなどのクラスが開催される。渡辺君によると、「異文化交流が盛んで小中学生の参加者も多く、ITスキルの向上だけでなくモノづくりの楽しさを学べる」のだという。こうしたキャンプは日本にはなかったが、2011年夏にスタートする「Life is Tech!」がこの日本版であるとして、プログラムの紹介も行った。
◆「子どもたちが幸せになるために頑張っていきたい」水野代表
「Life is Tech!」を主催するピスチャーの水野雄介代表は、開成高校で教師を務めてきた経験から「大人が作った(今の)教育システムでは、よい大学に行っても就職できない」、また「教育のシステムが育っていないことで、子どもたちにしわ寄せが来ている」などの問題への解決策として「中高生ためのICT教育プラットフォーム」を企画。先の渡辺君や、灘中3年の昨年、iPhoneの大ヒットアプリ「健康計算機」の開発で注目されたTehu君のような中高生を育てたいという。また、「IT好きな子を増やし、新しい友だちと知り合い、学べる環境を作り、子どもたちが幸せになるために頑張っていきたい!」と締めくくった。
パネルディスカッションでは、MOVIDAJAPANの孫泰蔵代表、面白法人カヤックの柳澤大輔代表、NPO法人CANVASの石戸奈々子代表、サイバーエージェント・ベンチャーズ投資家の佐藤真希子氏、ジークラウドの渡部薫CEOにより、「これから必要なIT人材」に関する討論が行われた。
◆Life is Tech! 夏季プログラム
「Life is Tech!」は、東京大学、慶應義塾大学SFC、デジタルハリウッド大学の協力により、ピスチャーが実施する中高生向けITプログラム。2011年の夏休み期間には、iPhoneアプリ開発、ゲームデザイン、FLASHアニメデザインの3コースが実施される。
・iPhone開発コース
7月28日(木)~30日(土)3days
東京大学本郷キャンパス
8月2日(火)~6日(土)5days
開催場所調整中
8月18日(木)~20日(土)3days
慶應義塾大学SFC(KIEP)
・ゲームデザインコース
7月28日(木)~30日(土)3days
東京大学本郷キャンパス
8月15日(月)~17日(水)3days
東京大学本郷キャンパス
8月22日(月)~26日(金)5days
東京大学本郷キャンパス
・Flashアニメデザインコース
8月15日(月)~17日(水)3days
東京大学本郷キャンパス
8月22日(月)~26日(金)5days
東京大学本郷キャンパス
【料金】
5days:52,500円(5月末まで45,000円)
3days:31,500円(5月末まで26,500円)
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