【プログラミング教育4】遊びと学びは一体…CANVAS石戸奈々子氏

 第4回の本記事では、11年前から子ども達にプログラミングのワークショップを提供し、ご自身も母親でいらっしゃるNPO法人CANVAS(キャンバス)理事長の石戸奈々子氏のインタビューをお届けする。

教育ICT その他
石戸奈々子氏
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--品川区立京陽小学校は、CANVASの支援のもとでプログラミングを通常授業に取り入れていますね。具体的にはどのように取り入れていますか。

 京陽小学校では、全校児童約350人に手のひらサイズのコンピュータ、ラズベリーパイを配布し、国語・算数・理科・社会などの教科の授業においてプログラミング学習を導入しています。国語の授業で同音異義語を学んだ後にゲームを作ったり、理科の授業でゴムの力の強さをシミュレーションするプログラムを作ったりしています。授業の後に、先生方からは「知識を活用する力につながった」「言葉で上手く表現できない子が、シミュレーションを作ることで自分の言いたいことを表現できた」という声をいただきました。プログラミングはツールですから、このように教科・科目の理解を深めるためにプログラミングに触れる機会があることはいいことだと思っています。

◆2万5千人が参加したPEG、指導者研修にも注力

--PEG(プログラミング・エデュケーション・ギャザリング)とプログラミング学習のプロジェクトは、どのような経緯で始まったのでしょうか。

 2012年の夏、東日本大震災の被災地の方々から、「地域の人材を育成していくことが、ひいては被災地の復興につながる。被災地でプログラミングのワークショップを開催してほしい」というお話をいただき、被災地でプログラミングワークショップを開催したのが始まりでした。

 半年の間に約600人の子ども達が参加しました。また、単発的なイベントとして終わらないように、地域の大学生やプログラマーの方、また教育系の団体、教育委員会などとの連携を大切にし、実施しました。ワークショップの開催のみではなく、運営を担うファシリテーター研修なども行い、12の被災地の団体と連携し、いまでも継続的にワークショップを展開している団体もあります。

 被災地でのワークショップが地域に根付き、継続的な活動になってきたとき、ちょうど社会的にも子どものプログラミング学習への注目が高まってきました。そこで、本格的に全国の子ども達へプログラミング学習を届けていきましょう、ということでスタートしたのがPEGです。昨年はGoogleに後援をいただき、目標としていた1年間で2万5千人の子ども達の参加も達成しました。

--PEGでは指導者研修にも力を入れているそうですね。

 被災地でワークショップを始めたときから、もっとも大事にしているのは「gathering(集まり)」です。学校、NPO、家庭、地域、企業、ミュージアム、自治体、みんなで集まって力を合わせ、子どものプログラミング学習の輪を拡げるムーブメントをつくっていきたいと願っていました。

 自治体からの問合せもすごく多いのですが、どんなにがんばっても、CANVASが直接プログラミング学習を提供できる子どもの数は知れています。それよりも、全国の子ども達へ自律分散的に学習環境が広がる仕組みを作っていくことが必要だと考えていました。それぞれの地域で提供するプログラミング学習は、授業、放課後、部活、学童、児童館、地域の活動など活動の場はさまざまですが、その地で継続して運営していけるような支援体制を整えることが必要です。そのためのコミュニティづくりの支援を行っているのです。おかげさまで、愛知、横須賀、北九州、郡山、宮城、沖縄など、各地域でプログラミング学習に関心の高い方々が集まるgatheringがすでに14か所で立ち上がっています。

 また、ワークショップ・授業の開催や、指導者研修などを通じたワークショップ・授業の開催支援を行うほか、PEGのウェブサイトを通じて、全国から寄せられたアイデアや授業例を共有し、プログラミング学習に関する情報を集約するとともに全国に発信する活動を行っています。CANVASは、今後も、そのようなバックヤードとしての活動に力を入れていきます。
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《柏木由美子》

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