小中一貫教育校でタブレット活用、足立区・興本扇学園の取組み
足立区立 興本扇学園が、タブレットやデジタル教材を使ったアクティブラーニングの公開授業を行った。公開された授業は英語、理科、数学、総合学習の4コマ。どんな授業だったのか。
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
興本扇学園は、東京都教育庁が実施している「公立小中学校ICT教育環境整備支援事業(出前ICT環境整備支援事業・ICTアドバイザリー事業)」に採択されたモデル校のひとつ。タブレットやネットワーク機器、サービスなどの提供を受け、実際の授業に取り入れ活用法や効果を検証し、ICT教育や環境整備等を支援する。
どのような公開授業だったのだろうか。
◆カメラや画像ツールを活用:4年生・理科
4年生理科の授業では、「水のすがたと温度」という内容で、ビーカーの水をバーナーで温めながら、温度とようすの変化を記録する実験が行われた。加熱することで水の状態がどう変化するのか、温度はどのように変わっていくのかを観察し、ボードやタブレットを使って記録をとっていく。
また、ビーカーのようすについては、メモをとるとともにタブレットのカメラで画像も撮影する。
この授業の特徴は、記録のとり方やレポートのフォーマットがグループごとに異なっている点だ。用紙や記録手順を教えるのではなく、実験内容から、ノートやタブレットなどを使いグループごとに課題を解決させるスタイルをとっている。
◆コース作りからグループ学習:6年生・プログラミング学習
6年生の授業はプログラミング学習だった。ブロック式のロボットキットでロボットカーを組み立て、自分たちが作ったコースを指示どおりにトレースするプログラムを作成する課題が出されていた。
ロボットは2つの車輪を回転させる方向、時間を設定し、進行方向を制御する。2つ同時に回転させれば前進・後進となる。右車輪だけ回転、左車輪だけ回転、左右を逆回転させることで、ロボットを右折・左折・転回させる。設定したコースをトレースするようにモーターをON/OFFする時間をプログラミングしていく。
コースは先生が課題として与えるのではなく、グループごとに自由に作っていた。トンネルを作ったり、坂や障害物を作ったり、グループごとの個性が発揮されていたが、プログラミング学習において、課題が同一でないと、グループごとにプログラムが異なるものになり、先生ひとりによる指導が難しくなる。
この事業では、機器の貸し出しだけでなく、ICT支援員によるサポートも受けられるため、このような指導も可能になる。
◆図形や関数の授業で教材ツールを活用:8年生・数学
8年生(中学2年)は数学の授業。三角形の等積変形をデジタル教材で学ぶというものだ。形が合同でなくても同じ面積となる三角形や四角形を考える問題だ。
使用されたデジタル教材は、先生がツールで作成したもので、生徒はタブレット上で補助線を引いたり、点を引っ張ったりして、等積図形を探していた。視覚的な操作ができるデジタル教材は図形問題に向いている。しかし、指導していた先生によると、普段は図形問題よりも、関数の問題でデジタル教材を自作することが多いという。数式をグラフ化するのに、タブレットと教材作成ツールを使うと、関数式を視覚化できるのが利点だと説明する。
◆プレゼンテーション能力を高める:8年生・英語
英語の授業も8年生によるものだ。各自が考えたアンケート(好きな教科は? 好きな色は? など)調査をグラフにして、英語でプレゼン資料を作成する。最終的には各自がそれを発表する。授業では、友達にプレゼンテーションをし、アドバイスを受けたり、時間を測ってもらったりしていた。
すべて英語で行うが、課題の評価は英語の発表内容だけでなく、発表時間、声の大きさ、わかりやすさなどもチェックされる。この授業では、タブレットのストップウォッチアプリで発表時間を測っている生徒もいた。
◆統合ソリューションで学校環境を整備
公開授業は、4教室同時に行われたが、足立区内外から学校関係者が多数見学に訪れていた。どの授業も、児童・生徒が自然にタブレットを使っており、普通教室でノートや教科書と一緒に使うタブレットの親和性の高さが際立っていた。
興本扇学園のICT環境は、NTT東日本が提供するクラウド、ネットワーク、Wi-Fi機器、タブレット、充電保管庫などを利用している。教材ツールも専用クラウドサービスからダウンロードする。システムや環境は限定されるが、設定や管理が一元化されているので、利用する学校側としては、ICTシステムをそれほど意識する必要がない。またICT支援員を含めたサポートを受けられるメリットも大きい。
ネットワークやデバイスなど環境さえ整えば、教育ICTの活用はもはや特殊なものではなく、学校も先生も子どもたちも、日常的に利用できる時代になってきたようだ。
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