【子ども記者】小学生が生物ライター平坂寛さんに突撃取材「知りたい」が五感でわかった生き物とは?

 生物ライターとしてテレビやWebメディアなど多方面で活躍中の平坂寛さんの新著書「喰ったらヤバいいきもの」(主婦と生活社)を読んで感動したという、東京都内の小学校に通う6年生の雄大(ゆうと)君によるインタビュー。

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平坂寛さんに喰われそうになる雄大君
平坂寛さんに喰われそうになる雄大君 全 10 枚 拡大写真
 1冊の本がこの夏、11歳の少年の心を鷲掴みにした。生物ライターとしてテレビやWebメディアなど多方面で活躍中の平坂寛さんの新著書「喰ったらヤバいいきもの」(主婦と生活社)を読んだ東京都内の小学校に通う6年生の雄大(ゆうと)君は、両生類や魚類、爬虫類、昆虫などの生き物が大好きで図鑑が手放せない…という、クラスにひとりやふたりはいる、生き物に詳しいタイプの子どもだ。読む前は「めずらしい生き物をわざわざ食べなくても…!かわいそう…。」と心配していたが、「(平坂さんの)五感で生き物を感じる生き物への愛がすごい。読んでいると僕も嬉しくなる!平坂寛さんに会って話してみたい!」と大興奮。

 そこで、リセマム編集部は雄大君の夢を叶えるため、出版元の「主婦と生活社」へ本の著者である平坂寛さんへのインタビューを打診。ご本人の快い返事を受け、「主婦と生活社」調整のもと夢の対談がセッティングされた。インタビューを依頼したとき、平坂さんはフランスのセーヌ川で「ヤバい生き物」を捕まえるため出張中。帰国を待ち実現したインタビューでは、平坂さんの幼少時から現在も続いている生き物にまつわる数々の冒険ストーリーが、“後輩“とも言える生き物大好き少年の目をキラキラと輝かせた。

◆幼少期から生き物大好き、虫もトカゲも何でもお持ち帰り

雄大君:今日はよろしくお願いいたします。会えて嬉しいです!ありがとうございます!

平坂さん:よろしくお願いします!何年生ですか?

雄大君:6年生で今11歳です。僕はカエルやトカゲ、エイやウミウシや深海魚、昆虫など生き物が大好きなんですが、平坂さんはどんな幼少期を過ごしていたんですか?

平坂さん:11歳の少年に幼少期のことを尋ねられると思っていなかった(笑)。僕も小さいころから生き物が好きで、家の周りにいるクモを手当たり次第集めて獲物を糸で巻き取るようすを観察したりしていました。恐竜や鳥よりも、自分で捕まえられる、トカゲとかカエルとか昆虫とか海辺の生き物が好きな少年でした。

雄大君:恐竜はいても持って帰れないですね。鳥も飛んでいるから難しいですしね。

平坂さん:そうなんだよね。やっぱり自分で触りたくて。捕まえて見ていると可愛くて放すのがもったいなくて家に持って帰りたくなっちゃうんだよね。今でも持って帰りたくなっちゃう。大人になったから今はその欲求を抑えられるけれど、子どものころは連れて帰りたい!っていう欲求を抑えられなかったからね。なんでもポケットに入れて持って帰っていました。ジーパンみたいにピッタリしたズボンは、ポケットに生き物を入れられないからはかずに、カーゴパンツとか、ふわっとしたポケットのあるものをはいていました。でも、だんだんとお母さんからビニール袋をもらって出かけるようになりました。

雄大君:僕も同じです!可愛くて持って帰りたくなっちゃうんですよね…。僕もいつもランドセルにビニール袋が入っています。コンクリートの上で車にひかれてしまったヒキガエルや鳥がかわいそうなので土に返したいんですけど、ひかれてしまった生き物を素手で触るのはちょっと…。だから、ビニール袋を手袋のようにして持って、土に返しています。放おっておくとコンクリートの上でどんどんつぶれてしまうし、土に返せば分解されるので。

平坂さん:その行いは正しいね。優しいなぁ。僕は死んでしまっている生き物も直に持ってしまうけれど、衛生面の問題もあるからビニール袋が正解だね。

インタビュアーは小学6年生の生き物大好き男子
インタビュアーは小学6年生の生き物大好き男子

◆小学生時代の大発見、校舎の裏でカスミサンショウウオが生息!

雄大君:ありがとうございます!子どものころ一番思い入れが強かった生き物はなんですか?

平坂さん:最初は定番だけどクワガタですね。ヒラタクワガタが一番好きでしたね。人気のあるノコギリクワガタやミヤマクワガタは…何というかね、チャラいんだよね。なんかこう…茶髪みたいな感じがする(笑)。でもヒラタクワガタは眉毛が太い日本男児みたいでかっこいい。

雄大君:僕も同じです!ヒラタクワガタがクワガタの中では一番好きです。太っていてボリュームがあって、かっこいいですよね。

平坂さん:そうそう!(笑)ヒラタクワガタはあまり飛ばないんですよね。探しに行かないと捕まえられない。木を蹴っても落ちてこなくて、だいたい木の洞にいるんだよ。だから手を突っ込んで取るしかないんだけど、そういう場所にはゴキブリも多いの。「ヒラタだ!」と思って捕まえてみると、10回に6回はゴキブリなの(笑)。でも手を突っ込むしかないからね。その恐怖を乗り越えて頑張って捕った。ジョロウグモがゴキブリを食べているのを見てからゴキブリだけは触れられるんだけど、苦手。きちんと飼って調べれば、ゴキブリも好きになると思うんですけどね。

雄大君:学校でおもしろい生き物はいましたか?

平坂さん:僕の故郷は長崎なんだけれど、小学校の校舎裏の汚い水の流れる溝にカスミサンショウウオがいたんです。あまりにも汚いので「絶対に生き物なんていない」って思って、小学1年生から小学4年生までは全然その溝を見ていなかったんだけど、小学5年生になったある日、覗いてみたら「何かいる!」って気づいたんです。イモリかな…と思ったら、きれいな水でしか生きられないカスミサンショウウオがいたんですよ。きっとずっと前から棲んでいて、環境に適応していったんだろうなと感動しました。

雄大君:すごいですね!キレイな水に棲んでいるカスミサンショウウオを連れてきて、その汚い水に入れたらすぐに死んでしまいますよね?

平坂さん:そうだね。急に連れてきても死んでしまうと思います。環境に適応して生きてきたことがすごい。何でもよく観察して、「なぜ変な形なんだろう」とか、「なぜこんな色をしているんだろう」とか、「なぜここにいるんだろう」という疑問を持てば生物学という学問になるよね。

雄大君:はい。小さいころから生き物が好きなのは僕と同じですね。僕は図工が好きなんですが、小学生の勉強では何の教科が好きでしたか?

平坂さん:うーん。どの教科も嫌いではなかったですね。逆に理科は生き物に関係することは知っていることばかりだからおもしろくなかったな。でも生き物をきっかけに、化学とか地学とかも興味を持つようになりましたね。あとはやっぱり絵を描くのが好きだったので、僕も図工が好きだったね。生き物好きな人って、絵とか芸術に興味がある人が多いよね。何年か前に沖縄でサメを捕まえているときに出会った当時小学5年生の少年も生き物と絵を描くことが好きで、今は高校で芸術の勉強をしているよ。生き物好きには「生き物の造形が好き」っていう共通点があるのかもしれないね。

◆かわいそうだな、と思ったら食べないほうがいい

雄大君:いろいろな国に行って生物を捕まえていますが、年に何か国くらい行くのですか?

平坂さん:決めているわけではないんだけれど、年に3回は行って、最低1週間ずつは滞在したいですね。2016年はたくさん行きました。タイ、アメリカ、インドネシア、フィリピン、オーストラリア、ガイアナ共和国、香港…。あれもこれも捕まえるっていう目標ではなくて、1種類の生き物に会いたい、と決めて取材に出かけます。それを捕まえに行く途中で、その場所にいるほかの生き物にも出会えるとラッキーだなと思います。それも捕まえて、食べてみたりしますね。

「喰ったらヤバいいきもの」を一緒に読みながら質問に応える平坂さん
「喰ったらヤバいいきもの」を一緒に読みながら質問に応える平坂さん

雄大君:せっかく行ったらいろいろな生き物に会いたいですよね。普通の食事で食べる生き物は除いて、年にどれくらいの種類の生き物を食べているのですか?

平坂さん:月に3、4種くらいかなぁ。本に書いてない生き物もあるので。毎週何か食べていますね。年間で50種類くらいかな…。

雄大君:え!そんなに!?

平坂さん:そうだね。でもね、昔はもっと食べていました。最近食べたことがない生き物が減ってきましたね。たとえばツチガエルを食べたことはないんだけれど、ヒキガエルとウシガエルとトノサマガエルとあまり変わらない味だろうな、って想像がつくからわざわざ食べないんですよね。知識が増えていくと先読みできちゃうから、最近食べたい生き物が減ってきましたね。なので海外や未知の深海へ行こうか…となってきましたね。

 それに、食べなくてもいいかな、と思うものは食べないほうがいいと思っています。「食べなきゃよかった」っていう後悔はもう取り返しがつかない。「食べておけばよかった」という後悔は挽回できる。だから一人じゃ食べきれないような大きな生き物も、今度大勢のときに食べればいいやと思って逃がすし、かわいそうだなぁと少しでも思ったら逃していますね。生きていればまた捕れるからね。

雄大君:すごいです、感動です…。確かにそうですね。後悔しても取り戻せないですね。この生き物は忘れない、という出会いはありますか?

◆痛いけれどもっと触っていたかったデンキウナギ

平坂さん:たくさんあるけれど、やっぱりいろいろな意味でデンキウナギですね。昔からニョロニョロした生き物が大好きなんですよね。

雄大君:僕も大好きです!アシナシイモリとかニョロニョロした生き物って最高にかっこいいですよね。デンキウナギはあの不気味な表情を変えない顔がかっこいいですよね、ポーカーフェースで。

平坂さん:そうそう!気が合うねぇ(笑)。小学生のころ、図鑑でもよく見ていたあのカッコいいデンキウナギが地元の水族館に展示されているのを見たんだけれど、「デンキウナギが出す電流で電球が点灯します」って説明が書いてあって。確かに電球が点灯するんだけれど、うしろで警備員のおじさんがスイッチ入れているとしか思えなかったんですよね(笑)。想像していたのはもっと電流が目に見えてわかるような「ビリビリ!」って感じだったんだけれど。「これは実際に発電しているかどうか自分で触って確かめてみるしかない!」って思い続けて20年後に実際にアマゾン川に行って実現したんです。すごかった。本当にあのポーカーフェースですごい電流出してくる。すごく痛い。せっかく会えたんだから僕としてはずっと触っていたいんだけれど、もう手がね、僕の意思と無関係に跳ね返っちゃう。

雄大君:うわぁ……。

デンキウナギを「五感」で感じている映像を観て驚く雄大君と、冒険談を語る平坂さん
デンキウナギを「五感」で感じている映像を観て驚く雄大君と、冒険談を語る平坂さん

平坂さん:痛いけれど楽しかった。でも、もう1回やれって言われたら嫌です(笑)。ずっと知りたかったので体で知ることができて本当によかったです。食べても最初の一口は美味しかったですよ。豚の角煮の脂身の所だけを食べている感じでした。僕は食べることが目的ではなくて、「知りたい」が根源にある。長年の「知りたい」が五感でわかって満たされましたね。

雄大君:痛そうだけれど僕も触って感じてみたいです……。

「喰ったらヤバいいきもの」にサインをもらって感激
「喰ったらヤバいいきもの」にサインをもらって感激


【次ページ】「進化の歴史は味でわかるんだ!」平坂さんから子どもたち・保護者の皆さんへメッセージ
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《編集部》

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