E判定からの合格は珍しくない?医学部受験の内実

 大学受験で自分の実力をはかるために受ける模試だが、医学部受験において模試の結果はあまり気にしなくてよいという。それはなぜなのか。医歯専門予備校の学院長が、偏差値と合格率のからくりについて解説する。

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「医学部合格完全読本」(田尻 友久 著/かんき出版)
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 大学受験で自分の実力をはかるために受ける模試だが、医学部受験において模試の結果はあまり気にしなくてよいという。それはなぜなのか。医歯専門予備校の学院長が、偏差値と合格率のからくりについて解説する。

合格可能性判定を気にしない



 偏差値同様、模擬試験の「合格可能性判定」も、あくまで「目安」でしかありません。受験生や親御さんにとっては、とても気になると思いますが、私たちは実際のところほとんど気にしていません。

 A~Eの合格可能性判定は、模擬試験を実施した大手予備校などの主催者が、模擬試験の受験者に大学入試が終わってから「合否調査」というアンケートを行い、その結果をもとに基準を決めます

 つまり「去年ウチの模擬試験を受けたA君、キミはどこの大学に受かって、どこの大学には合格できませんでしたか?」と聞いて調査し、その結果を集計していくわけです。

 その上で、「この時期の模試で偏差値が60だった人の約半数がA医大に合格している」といったことがわかります。

 翌年の受験生が、同じ時期に同じ予備校の模擬試験を受けて偏差値が60だと、この受験生たちはみんな「A医大はC判定」(合格可能性50%のボーダーライン上)ということになるわけです。

 基準になっているのは昨年の受験生の実績です。そもそも模試の受験生(高校等)から返ってくるアンケートが正確かどうかもわかりません。

 ですから目安として考えるのはいいのですが、必要以上に気にする必要はありません。

 同時期に受けた複数の模試を比べても、必ずしも同じ大学で同じ判定が出るとは限りません。河合塾はC判定、駿台がE判定、進研模試はA判定というようなこともあり得ます。

 A判定をとり続けても結果の出ない生徒もいます。逆に、最後までE判定しかとったことがなくても、医学部に合格する生徒は珍しくありません。これは決して特殊な例ではないのです。

 「偏差値」が1年で20上がればたいしたものです。さすがに「偏差値30から1年でボーダーライン偏差値72.5の慶應義塾大学医学部に合格」というのは、現実的には不可能と言ってもいいでしょう。

 もちろん、その「偏差値30」が、東大志望者だけが受ける「東大模試」の偏差値で、本人は超のつく進学校に通っていたにもかかわらず、高校3年間まったく勉強せずにラグビーだけやっていたというようなケースで、しかも本人にものすごいやる気と潜在能力と体力があった場合、1年の浪人で合格してしまうことも「ゼロ」とは言い切れませんが、例外中の例外です。

 某予備校の合格体験談で「偏差値30からの東大合格」とあったのが、実はこういった内実だったことが明らかになり話題になりました。

 ただし、「E判定からの合格」はまったく珍しくないので、「偏差値」、「点数」、「判定」、「順位」などの数字については「意味」をよく知り、一喜一憂しないようにしてください。

(※本記事内の情報は2016年6月時のものです)

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<著者プロフィール:田尻 友久(たじり ともひさ)>

医歯専門予備校メルリックス学院 学院長。大阪府出身。同志社大学法学部卒。銀行に入行後、複数の上場企業を中心とした企業グループの統括部門を経て、1996年から医学部受験にかかわり、2000年に私立医学部・歯学部受験を専門とするメルリックス学院を創立、学院長に就任し、現在に至る。予備校関係者でさえも想像に頼る部分が多い医学部入試について、全国の大学医学部から直接話を聞き、正確かつ最新の入試情報を得ている。毎年メルリックス学院から発行される「私立医歯学部受験攻略ガイド」は今や、受験生やその家族はもちろん、高校、塾、予備校でも医学部受験指導の必需品となっており、大学関係者からも高い評価を得ている。

《リセマム》

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