H29年度始業日時点、11自治体で小学校の常勤教員266人が不足

 文部科学省は平成30年8月8日、第101回教員養成部会の配付資料を公表した。埼玉県や大阪市など11自治体を対象としたアンケートによると、平成29年度始業日時点で小学校の常勤教員266人が不足。不足の要因として産休・育休取得者数や特別支援学級数の増加などをあげている。

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教員の確保の状況に関するアンケート結果 「教員の不足数」について
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 文部科学省は平成30年8月8日、第101回教員養成部会の配付資料を公表した。埼玉県や大阪市など11自治体を対象としたアンケートによると、平成29年度始業日時点で小学校の常勤教員266人が不足していたことがわかった。不足の要因として、産休・育休取得者数や特別支援学級数の増加などをあげている。

 文部科学省初等中等教育局は、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、大分県、鹿児島県と、大阪市、北九州市、福岡市の11都道府県・指定都市の協力を得て、教員の確保状況に関するアンケートを実施。8月2日に開催された第101回教員養成部会の配付資料「いわゆる『教員不足』について」として公表された。

 学校に配置されている教員の数が、各自治体において学校に配置することとしている教員の数を満たしていない状態を指す「教員の不足」について、平成29年度始業日時点で、小学校では11自治体にて常勤266人、非常勤50人が不足中学校では10自治体にて常勤101人、非常勤153人が不足していた。また、「中学校の教科担任」が3自治体にて34人不足し、当該教員がいないことで必要な授業が行えない、または授業時間を確保できない状況だった。

 「教員の不足」の要因を尋ねると、欠員または必要教員数の増加に係るものでは、9自治体が「産休・育休取得者数の増加」を「よく当てはまる」「どちらかと言うと当てはまる」要因として回答。そのほか、「特別支援学級数の増加」を7自治体、「転入等による学級数の増加」「辞退者の増加等により予定人数を採用できなかった」をそれぞれ5自治体があげている。

 臨時的任用教員等の確保に係る困難に係るものでは、「講師登録名簿登載希望者数の減少」「採用候補者がほかの学校に就職済み」をそれぞれ8自治体、「採用候補者が教員以外の職に就職済み」を6自治体があげている。

 資料に掲載された育児休業取得者数の推移を見ると、平成26年には3万7,052人だったが、平成27年には3万9,859人に増加し、平成28年には4万705人に達している。

 特別支援学級数の推移では、平成25年に小学校で3万4,133学級、中学校で1万5,610学級だったが、平成29年には小学校で4万1,864学級、中学校で1万8,326学級へと増加していた。

 一方で、教員採用の受験者数は減少傾向にあり、平成25年度の18万902人から平成29年度は16万6,068人に減少している。試験区分別の競争倍率を見ると、小学校3.5倍、中学校7.4倍、高等学校7.1倍、特別支援学校3.8倍と、小学校と特別支援学校の倍率が低い傾向にある。

 アンケート結果によると、「教員不足」の解消に向けた対策例として、正規職員の採用者数の引上げ、正規職員や臨時的任用教員等の採用年齢上限の引上げ、退職教員の再任用の積極的な活用、教職を目指す大学生への広報、中学生・高校生を対象とした教職セミナーの開催、学校における業務負担の軽減の推進などがあがっていた。

 文部科学省は、内閣府が掲げる「Society 5.0」に向けたリーディングプロジェクトとして、「『公正に個別最適化された学び』を実現する多様な学習の機会と場の提供」「基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が習得」「文理分断からの脱却」などに取り組む。

 その中で、中学校・高等学校教員採用試験に比べ小学校教員採用試験の倍率が低迷していることや、中学校・高等学校でも技術科、情報科のような特定教科の免許状を保有する教員が少ないことを踏まえ、指導体制の質・量両面にわたる充実・強化を図る観点から、免許制度の在り方を見直す考えを示している。

《黄金崎綾乃》

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