東大医学部で司法試験最年少合格の河野玄斗さん「僕の武器は“やり込む力”」

 東大理三、最年少での司法試験一発合格、英検・数検1級合格…数々の実績をもち、メディアでは“天才”“神脳”とも称される河野玄斗さん。中学・大学受験の勉強を通じて得た“一生ものの武器”とも言える「やり込む力」をどう築いてきたのか話を伺った。

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河野玄斗さん初著書「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法」
河野玄斗さん初著書「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法」 全 8 枚 拡大写真
 東大理三、最年少での司法試験一発合格、英検・数検1級合格…数々の実績をもち、メディアでは“天才”“神脳”とも称される河野玄斗さん。常人離れした能力を持ち、さぞかしストイックに勉強ばかりしているのでは…と思いきや、子どもの頃も今も「大のゲーム好き」という今時の若者らしい一面も。

 そんな河野さんが、中学・大学受験の勉強を通じて得た“一生ものの武器”とも言える「やり込む力」をどう築いてきたのか話を聞いた。

とにかく“やり込んだ”経験が、無理難題に挑戦するベースに



--幼い頃から勉強が楽しい、そう思っていたという河野さん。小学校2年生で公文の中学数学の基礎課程を、3年生では高校数学の基礎課程を終えていたといいます。ご自身を振り返ると、いったいどんなお子さんだったのでしょうか?

 今になって思うと「自由だったな」という印象です。親から何かを強制されたり制限されたりすることはほとんどなくて、勉強したいときには勉強をして、ゲームしたいときにはゲームをして、という感じでした。僕は子どもの頃からゲームが大好きで、一度やり始めたらとことんまで突き詰めたいタイプでした。ただクリアするだけじゃなくて、集められるアイテムはすべてコンプリートしたり、戦略を立てて最短でクリアできる方法を試行錯誤したり、ひたすら“やり込んで”いましたね。

--子どもがゲームばかりやっていることを良いと思わない、ゲームは勉強の妨げになる、と懸念する保護者の方も多いと思いますが。

 確かに、ありがちなのが「ゲームは1日1時間まで」って制限すること。子どもは、本当はゲームをやりたいのに勉強をしなくちゃならないので、イヤだな~って思いながら最低限の勉強だけを済ませることになりますよね。でも、それだと結局ゲームも勉強も最低限しかできていないんです。何かひとつを徹底的にやる、完成させる体験がないまま、「誰かに言われたから、最低限これだけやっておけばいいや」という癖がついてしまいがちです。

 受動的に最低限のことだけをやっていると「宿題が終わる」以上のものは得ることができないし、「宿題をやったからいい、ゲームばかりやっているからダメ」、そういうふうに子どもを判断してしまうと“何かを得る”という勉強の本質からずれてしまうかもしれません。要は、何をするかということよりも、そこから何を得られたかということが大切だと思っています。

 僕は小学生のころ、ファイナルファンタジーVIIというゲームに熱中しましたが、その道のプロたちが何百人と関わって、本気でストーリーを練って何億円もかけて世に出すようなゲームは大人がやっても難しいもの。それを子どもながらに一生懸命頭を使って、全部やり込もうと挑戦したことが、僕にとっての勉強でした。

 そうやってゲーム攻略に没頭した少年時代の経験が、“与えられた以上のことを、片っ端っからやってやる”というモチベーションや、大学受験や司法試験といった最難関に挑む気持ちの土台となっていることは確かです。

東大の受験をめぐり母と大ゲンカ



--そもそも“勉強が好きになるようにしてくれた”のは家族がきっかけだそうですが、家庭ではどんなふうにお母様と接していたのでしょうか。

 4歳くらいから公文を始めて、もらったプリントを1日100枚以上やったこともありました。親からも「もうそろそろ寝ようか」と言われるくらい、小さい頃からのめり込むタイプだったんでしょうね。当時はよく母が隣にいて、「何秒で解けるかな~」とか、(採点をしながら)「どっちが早く終わるかな~」とかゲーム感覚でやっていました。押しつけられたものは拒否したくなりますが、ゲームなら苦にならないという僕の性格を見抜いてか、好きなものに寄り添った形で支えてくれていました。ファイナルファンタジーVIIの攻略本を渡してくれたのも母でしたから(笑)。

--ご両親から何かを強制されたことはなかったのでしょうか。

 一度だけあります。大学受験の直前、いよいよ願書を提出する時期になって、「東京大学しか受けない」と言い張る僕に対して、「(安心するために)ほかも受けなさい!」って母は主張してきて…。「私立大学の受験料は高いから、だったら僕にお小遣いをくれ」と反論する僕と大ゲンカになりましたね。母に何と言われようと、「東大に申し込んだ時点で安心だから」「どうせ払ったって(ほかの大学の試験には)行かないから」と押し通しました。僕の中では、模試の判定でまず落ちることはないっていう自信もあったし、合格を知ったときも「そうだよな」という感じだったんですが、母はやはりホッとしたでしょうね。

河野玄斗さん

知識ではなく、「わかった!」というひらめきで問題を解くのが楽しい



--小学3年生のときにそれまで住んでいたアメリカから帰国し、公立小学校に通っていたという河野さん。中学受験を意識したのはいつ頃からでしょうか。

 正直、中学受験といわれてもピンと来ていませんでした。小学5年生のとき、日能研の試験を受けてみたら?と母にすすめられて通い始めたことが始まりでしょうか。学校のクラスでは中学受験をする人は少数派でしたが、塾に通っていると当然まわりがみんな受験をするので、僕も自然と中学受験を意識するようになりました。

--見事受験を突破して中高一貫校の聖光学院に進学されましたが、中学受験を振り返って大変だったことはありますか?

 理科、社会はアメリカで習う内容しか勉強してこなかったのもあって、いざ受験科目としてやらなきゃならない…となったときは苦痛でした。地名とか日本三大〇〇とか、調べればわかるじゃんっていうことを覚えるのが面倒くさくて(苦笑)。当時は試験の点数を上げること以外で社会を勉強する目的が見いだせず、モチベーションが上がらなかったんです。今となれば、常識として知らなきゃいけないこともあるって思えますし、社会(地理や歴史)を学ぶことは多様な文化や価値観、考え方に触れられる貴重な機会だと思うことができるんですが。

--社会などの苦手教科を克服するよりも、得意な数学を伸ばすことが強みになったそうですが、河野さんにとって数学の楽しさはとはどんなところでしょうか。

 暗記が必要なほかの教科と違って、数学は、公式や解法など覚えるものは限られていて、それらをいかに組み合わせるかで解けたり解けなかったりするんです。知識ではなくて感覚やひらめきの部分で「わかった!」という体験ができるのが楽しかったです。中学、高校とずっと数学は好きで得意でした。数学的な思考の延長で勉強できる、物理や化学なども楽しかったですね。

--その後、英検1級も取得されていますが、大学受験においては英語も得点源だったのでしょうか。

 海外に住んでいたというアドバンテージがあったので英語も得意な方でした。特に大学受験をめざして、というわけではないんですが、学校で受けた駿台模試がきっかけで予備校に通うことになりました。そこで英語の最上位クラスにいたんですが、今まで帰国子女だからというノリで読めていたものがそうではなくなってきて。ひとつの文が5行くらいに渡る文だったり、長文の内容も哲学的で難しくなってきて、小学3年生までの英語能力では対応できなくなってきたんです。そこから本腰を入れて英語を勉強してみてわかったのは、どんなに難解な文章でも、主語、動詞、目的語など最低限の文法ルールがわかっていればあとはパズルのように理解できるということ。数学と同様、パズルを解くような感覚で長文読解や和訳なども楽しんでいました。

河野玄斗さん

同じ教科の勉強でも、目的によって到達点は千差万別



--子ども時代からの得意教科を武器としながらも、中学・大学受験を経験することで得た、“成功する勉強法”とはどんなものでしょうか。

 数学、英語、国語…教科によって勉強法は異なりますが、共通して言えることは「目的を意識して勉強する」ことだと思います。目先の課題を最低限終わらせることを目的とするのではなく、ゴール(目的)に向けて今自分はどの部分をやっているのか、を明確にすることが大切です。

 たとえば英語ひとつとっても、目的が大学受験のためなら、単語帳を買って単語を覚えて、参考書で文法を学んで、いろいろな文章を読む、といった勉強法になるでしょうし、留学するための英語が目的なら、たくさんの本を読むのではなく日常会話でよく使うフレーズを覚えたり英会話に通ってコミュニケーション重視の英語を学びますよね。

 大学受験に関しても同じです。たとえば私立文系学部の社会の試験問題は、一問一答や選択式で、覚えた知識を問う出題が多いのですが、東大の社会は大論述といって、歴史や時代背景などの流れを踏まえて600字以内にまとめなさい、といった体系的な理解を問われる記述式の問題が必出です。

 もちろんレベルに応じた対策も大切で、教科書ベースの必ず押さえたい基礎問題が出るのか、最後まで解けないことを前提として出題されるような難問応用問題の部分点を狙うのかというように、同じ科目でも到達点は千差万別です。それを見据えて勉強をしないと、せっかく出題範囲を網羅したのに求められている能力が違う、ということになりかねません

--目的を見据えた勉強法に“ノート”はどう活用しましたか?

 僕は、ノートは取らなきゃいけない場合にだけとればいいと思っています。理解している内容をわざわざノートにまとめる必要はないので、知らなかったところだけを、教科書に殴り書き程度に書き込んでいました。“まとめノート”をつくる人もいますが、教科書やすでにあるプリントを写すのは時間の無駄。だったら(書かなくても)何回も見て復習すればいいし、覚えるためならきれいに書く必要もない。ここでも、“目的は何なのか”ということをよく考えることが重要です。ノートをつくって勉強した気になるというのはよくある話で、ノート3冊もまとめたから勉強した、と思うのは注意した方がいいと僕は思っています。

河野玄斗さんが実際に使っているノート
河野玄斗さんが実際に使っているノート


 だから、僕がノートを取るのは本当に必要最小限です。大学4年生のときに受けるCBT(*)という試験にとりあえずパスするため、最低限の要点をまとめたノートをつくりましたが、(写真)医学の分厚い教科書の中で、先生が板書したところをピックアップしたのみです。CBTの勉強と並行して司法予備試験の勉強に時間を割く必要があったので、大学の勉強は最小限、単位はギリギリでクリアできればいいと思っていました。
*CBTとは医学部4年生で行われるComputer Based Testの略。基礎から臨床、社会医学まで幅広く問われ、5年生への進級判定に使われる。

--徹底的に狙いを絞った勉強法が功を奏し、たった8カ月で司法予備試験に合格、その数カ月後には司法試験にも一発で合格されています。そもそも、弁護士をめざしたきっかけはなんでしょうか。

 東京大学では、2年の後期に入る前に専門学部を決める進学振り分けという制度があります。その頃に「自分にしかできなくて楽しくて人の役に立つものはなんだろう」と考えたところ、医者と弁護士の両方の資格を持った医療弁護士になりたいな、と思うようになりました。とはいえ医学部は6年間あるので、当初は司法試験の短期合格を目指すつもりはありませんでした。短期合格を目指し始めたきっかけは大学2年生の11月、翌年5月の司法予備試験を受ける友人たちと弁護士事務所にお邪魔したときのこと。現役の弁護士の方を交え友人たちが「みんなで絶対受かろうな!」って盛り上がっている場に僕もいて、「俺も受かるわ!」と調子よく公言したことが発端です。このときすでに予備試験までわずか半年。ずっと法学部で法律を勉強してきた友人からは「けっこう大変じゃない?」と言われましたが、その反応が逆に僕に火をつけました。「きっと大丈夫、見てろよ」って。

勉強が楽しくて仕方ないっていう習慣や環境が大事



--とはいえ、合格率数パーセントの司法予備試験に受かるためには、並大抵の努力ではなかったと思います。「人生でいちばん勉強した」時期だったそうですが、河野さんにとって勉強をする原動力とは?

 極端な話ですが、勉強が楽しかったら24時間でもやっていられますよね。逆に、楽しくなかったら、やれって言われても最小限しかやらないでしょう。たとえば、1時間おきに勉強やれやれって言われて、12回、12時間机に向かったとしても結局半分くらいしか集中できていないのでトータルは6時間くらい。一方、勉強が楽しいという習慣がついていれば何も言われなくても6時間くらい勉強できますよね。

 中学、高校、大学…社会に出たあとも何かしらの勉強は続くことを考えると、早いうちに勉強そのものを好きにさせさえすれば、数十年後にはそれが何千時間分の勉強量になるかは計り知れない。親が無理やりお尻を叩いて勉強をさせるよりも、先を見据えて勉強好きにさせることがベストだと思います。

--ご家族に感謝していることはどのようなことですか?

 僕の場合、母は自由にゲームなどをやらせてくれつつも、勉強するときは集中できるようにテレビを消したり、お茶やお菓子をもってきてくれたり…。父はちょっと難しめの参考書を買ってきてくれたりして、勉強したいと思わせるような環境をつくってくれたことに感謝しています。

--勝負飯やパワーフードはありますか?

 サバ缶は好きでよく食べています。たった108円で買えて、たんぱく質もDHAもEPAもとれてしかもおいしい。今は1人暮らしをしているので、開けるだけでいいので重宝しています。「勝負飯は?」ってよく聞かれるんですが、試験前には親が買ってくれたキットカットを食べたり、ゲン担ぎでカツ丼を食べたりすることもありました。それによって成績が伸びるってことはないけれども、不安のなかで緊張をやわらげてくれるアイテムになると思います。「あれもしたこれもした、こんなところにもこだわった」っていう自信のひとつになるというか。僕も親の思いを感じ、いろいろな人が自分を支えてくれたんだから、恩返しを込めて全力で答案にぶつけようという気持ちで試験に臨みました。

“天才”“神脳”とも称される河野玄斗さんの弱点は?「美術が苦手」だそうです
“天才”“神脳”とも称される河野玄斗さんの弱点は?と聞いたところ…「美術が苦手」

--「コレ!」という集中法はありますか?

 机に向かって黙々と勉強するより、家のリビングや図書館、カフェなどのほうがよくはかどりました。ついついスマホをさわりがちなので、家に置いてカフェで勉強したり、あえて充電をしないようにしていました。音楽を聴いたほうが集中できるので、英単語の確認や数学の宿題といったアウトプット系の勉強をするときは歌詞のある曲、文章を読んで理解しながら解くようなインプットが必要なときはYouTubeで「集中」と検索したBGMを流すなど、使い分けています。

やるなら、自分にしかできない分野を切り開きたい



--将来は医療弁護士として活躍することを目指しているのでしょうか。

 将来を考えていくうえで、「自分にしかできなくて、かつ自分がおもしろそうだと思えるもの」を軸にしています。それが医療弁護士なのか、教育系の事業を立ち上げるのか、はたまた僕にしかできないアイドルのプロデュースなのか今はまだわかりません。AI技術を駆使しながら医療や法務に関わるかもしれないし、とにかく自分にしかできないことや分野を切り開いていきたいと思っています。

--これまでも、これからも、自分のなかで「やる」と決めたことを筋道立てて考えて実践する、さらにどんなことでも目的と楽しみを見出していけることが最大の武器なのですね。最後に、受験生への応援メッセージをお願いします。

 伝えたいことがあり過ぎてひと言ではまとめきれないのですが、これからの数か月を頑張ることで、受験だけじゃなく努力の習慣や仕方、いろいろなものを得ることができるはずです。努力をすることは、決して当たり前ではありません。数か月頑張れたことが、「あのとき頑張れたんだから」という将来の自分に対する自信として残ります。親や先生、多くの人に支えてもらっているということを自覚して、ゴールまで走り続けてほしいです!

--ありがとうございました。

河野玄斗さん初著書「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法」
河野玄斗さん初著書「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法」

 受験生に伝えたいことがあり過ぎて…と悩みながら言葉を選びエールを送ってくれた河野玄斗さん。ご自身の初著書となる「東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法」が発売になった。受験生に役立つ勉強法や技、思いがつまった1冊だ。

東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法

発行:KADOKAWA

<著者プロフィール:河野玄斗>
 1996年、神奈川県生まれ。私立聖光学院高等学校卒業後、2018年現在、東京大学医学部医学科5年生に在学中。4年在学中の2017年に司法試験に一発合格。第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストベスト30入り。雑誌・テレビにも多数出演。本書が初の著書。

《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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