「頭が悪いんじゃない。勉強のやり方を変えれば君も東大に入れる」和田秀樹先生が教える、中堅校から東大に受かる秘訣

 27歳のときに執筆した「受験は要領」が大ベストセラーになり、緑鐵受験指導ゼミナールを創業。無名校から多くの生徒を、東大や難関大合格に導いてきた、精神科医の和田秀樹先生。進学校じゃなくても東大合格のチャンスは十分ある!とエールを送る和田先生直伝の秘訣とは?

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和田秀樹氏
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 27歳のときに執筆した「受験は要領」が大ベストセラーになり、緑鐵受験指導ゼミナールを創業。無名校から多くの生徒を、東大をはじめとした難関大合格に導いてきた、精神科医の和田秀樹先生。最近では、東日本大震災で被災した子を支援し、わずか1年で医学部合格へと導いたことが作家・林真理子さんのエッセイでも話題になった。

 模試の偏差値だけで安易にあきらめてはいけない。進学校からでなくても東大合格のチャンスは十分ある!と日本中にエールを送る和田先生直伝の秘訣とは?

模試の偏差値を上げたところで東大には合格しない



--今年も東大の合格者数の学校別ランキングが出ました。上位にはお馴染みの中高一貫の進学校が並び、その数にも圧倒されてしまいます。でも和田先生は今なぜ、あえて公立や私立の中堅校から東大に行くための指南をしようと思ったのですか。

 確かにそうしたランキングでは名門校が目立ちますが、合計すると地方や中堅校からもかなり合格しています。今、自分なりに一生懸命やっているけど偏差値が良くない。だから「東大なんて絶対に無理だ」って思いこんでいる人が日本中にたくさんいると思いますが、それは今の勉強のやり方が間違っているだけ東大に合格するには、東大の入試に沿った正しい勉強法に変えればいいだけのことです。

 模試の偏差値を上げたところで東大には合格しませんが、入試で合格最低点を取れば合格します。最難関の理科III類を除けば、2次試験で6割も取れれば合格です。私立の早慶レベルでも試験科目は小論文を除けば2、3科目の場合が多いので、そこだけに集中すればいい。さらにそれぞれの入試の傾向をよく分析すれば、出ない問題は最初からやる必要がないので、負担はかなり少なくて済むはずです。

 それなのに真面目な子ほど、学校にいわれたとおりの勉強をコツコツと愚直に取り組んでしまう。全く入試には出ないようなことにも膨大な時間を割いています。これではせっかくの努力も入試では報われません。

和田秀樹氏
 一般的な模試は傾向に偏りなくオールラウンドにつくられているので、ほとんどあてにならない。だからそんな模試の偏差値にとらわれず、志望校の過去問で何点取れるかというところに主眼を置くべきなのです。この発想さえあれば絶対に合格できます。

--今、成績が振るわなくても失望するのはまだ早い。勉強のやり方が問題だということですね。そういえば以前、開成の校長が「生徒たちはここの空気を吸っているだけで東大に行けるような気になる」とおっしゃっていたのを思い出しました。それは、無駄のない東大の攻略法みたいなものが有形無形に受け継がれているということなのかもしれません。

 僕は灘高出身ですが、確かに周囲を見ると灘高の勉強法は、東大合格を目指す理想的なやり方だったと思います。たとえば歴史なら、教科書を読んで年号や出来事を隅々まで暗記するのではなく、新書を何冊か読んで流れを抑えていました。東大は論述問題がメインですから、対策としては最適です。自分が東大を出ている、あるいは東大入試に精通した先生だと東大の入試に何が必要かがわかるのですが、そうではない場合は的外れな勉強をさせられてしまうことがどうしても多くなります。

--教え方が目指すものと噛み合っていないということですね。

 そうです。教え方が問題なんです。僕はスポーツが苦手で、小学校の時もずっと逆上がりができず、当時は教師まで一緒になってクラス中が僕のことをバカにしていました。その後医師になり、ある幼児向けの体操教室に仕事でお邪魔する機会があったのですが、そこでは子どもに逆上がりができるようにさせられないトレーナーはクビだといっていました。あぁやはり何事も教え方次第なんだと確信しましたね。僕が逆上がりができないのは、僕をからかったあの教師の教え方が悪かったんだと。東大も逆上がりも、根性でなんとかなると思うのは大きな誤解です。

難関大学に受かっていく子の特徴



--根性主義に陥ると何が問題ですか。

 問題は2つあります。まずひとつは睡眠不足とストレスです。医学的にこれは脳の力を落とし、記憶力が減退します。そしてもうひとつは勉強のやり方を工夫しなくなることです。今は中学受験でも東大受験でも、とにかく膨大な課題を与え、やった”量”で勝負するような勉強法がまかり通っていますが、これは残念なことに“賢い子を馬鹿にしてしまうシステム”としかいいようがありません。与えられたものを黙々とこなすだけでは常に受け身になってしまい、自分で何をすべきかを考えなくなるからです。

和田秀樹氏
 僕は受験で身につく力で一番大事なものは、いかに効率的に勉強できるかを“工夫する”力だと思っています。満点ではなくても受かるんだから得意科目を伸ばそうとか、どの問題を捨てるか、あるいはミスをどうやったら減らせるかなど、時間配分や合格最低点を取る方法などに知恵を絞る力です。

--闇雲に時間をかけて“量”で勝負しようとせず、自分に合わせてメリハリをつけたほうがいいということですね。

 僕がやっている受験勉強(志望校別)の通信指導で、医学部受験3浪目の生徒がいました。東日本大震災で外科医だったお父さんを亡くした青年です。父の遺志を引き継ごうと医学部を目指し、浪人生活の最初の2年間は大手の予備校に通っていたのですがどこも受からず、3浪目にうちに来ました。3浪目なのに、2浪目のセンター試験の英語が7割しか取れていない。これは厳しいなぁと思ってよく見たら、長文1問全く手をつけられていませんでした。解いている問題だけに限れば9割も取れているので「君は読むのが遅いだけで英語力は足りているから、速読の訓練をすればいいよ」とアドバイスをしたのですが、なんと彼が2年間通った予備校では、1学期は文法や構文中心の授業で、長文読解を扱うのは2学期以降だったというのです。つまり、彼にとって予備校での1学期の授業は彼に必要な内容ではなかったということです。

 大手の予備校や集団塾ではひとりひとりに何が足りないのかを全く考慮されないまま、ミスマッチな授業がカリキュラムとして組まれている。そんなことをやったって受かるわけがありません。彼は私の塾でそれまでの勉強のやり方を変え、志望校の過去問を念入りに対策した結果、1年で無事に医学部に合格することができました。

--東大や医学部をはじめとした難関大学に受かっていく子の特徴は何でしょうか。

 根性主義の塾で浴びるように勉強させられてくる子も多いですが、「この科目は塾に行くが、この科目は家で過去問を解いたほうが力が付く」などと自分で判断し、最短距離で合格してくるタイプも結構います。そして入学後、そして社会人になっても伸び続けていくのは、圧倒的に後者のタイプです。 

 自分に合った効率的な勉強法を工夫できれば、自由な時間も作れます。そこで映画を見たり本を読んだり、部活や学校行事に打ち込んだり、好きなことにのめり込めばいい。工夫する力は、思考力、創造力、自己管理能力を育みます。こうした力を身につけられたら、将来頼もしい、ユニークな人間になりますよ。

 与えられた課題を根性主義で力づくでこなし、貴重な時間を学力のためだけに費やすのはもったいない。自分なりの勉強法を編み出そうとすることが、社会を生き抜くために大事な能力を育てます。

--東大の一番の魅力は何でしょう。

 東大の一番の魅力は生徒です。東大は、勉強法を工夫して入ってきた人の割合が日本で一番高い大学だと僕は思っています。

 ただし、学生の6割くらいは根性主義で入ってきたあまり面白くない人たちです。試験前にノートを借りる存在としては貴重だけれど(笑)、その人たちと交流しても得るものは少ないでしょうね。自分で勉強法を工夫して入ってきた残りの3、4割が、本当に頭が良くて面白い。東大は、この面白い人たちと付き合うための大学だといえます。

和田秀樹氏
--これからの大学入試では、内申書や課外活動を重視した選考枠を増やし、多様な人材を集めようとしています。これについてはどう思いますか。

 今の日本の大学では教授が面接している時点でインチキですよね。どうしても彼らは自分に忖度(そんたく)できるような人材を選んでしまいますから。アメリカの入試制度を真似ようとしているのでしょうけれど、アメリカのトップ大学では、教授が入試に関わることは一切ありません。専門部隊であるアドミッションオフィスが念入りに面接をし、忖度どころか、むしろ教授に喧嘩を売りそうな学生を積極的に選んでいます。イエスマンで自己アピール力が高い金太郎飴のような人間ばかり集めても良い研究は生まれません。先人たちの理論や世間の常識を疑うからこそ学問は進歩するのです。

 結果よりプロセスを大事にするなど、調査書重視の教育を受けると、積極的に見えても常に自分が周りにどう見られているかばかりを気にするようなタイプが増えてしまう恐れがあります。一方で、コミュニケーション力が低くても、いったんハマるとものすごい探究力を発揮するタイプの子もいます。人材の多様性を目指しているのに、むしろ尖った人材を取りこぼしてしまう危うさを感じます。

根性主義で無理をせずに、子どもの長所で勝負



--大学入試改革も来年に迫り、多くの親御さんが不安や戸惑いを感じています。どのようなメッセージを伝えたいですか。

 子どもに劣等感を感じさせないでほしいということです。どんな子にも必ず長所があります。たとえ今の学校や塾で成績が悪くても、それを頭が悪いとか、うちの子は頑張っていないからなどという理由で放置するのはあまりにも残酷です。放置した結果、志望校に合格できなかったら「自分は頭が悪い」という思い込みを子どもに植え付けてしまうことになりかねません。それは子どもの一生の心の傷になり、社会に出てからも自己肯定感の低い人間になってしまいます

和田秀樹氏
 繰り返しになりますが、そうならないようにするには、勉強のやり方を変えればいいだけなんですよ。そのためには親御さんが積極的に情報収集することが大事です。勉強法の本を何冊か読んで、自分の子どもに合いそうな方法を探してみるとか、今の塾で伸び悩んでいるならほかの塾の資料を集めて転塾を検討するとか、労力やお金をかけなくてもできることはたくさんあるはずです。ブランドだけを安易に信用し、長いものに巻かれておけば大丈夫と思うのは間違いです。どんなに合格実績の素晴らしい塾だって、第1志望に受かっているのはせいぜい3割くらい。7割は不合格なんですよ。その7割の子が自分のことを頭が悪いって思ってしまうかもしれない。でも別の場所で良い先生に出会い、良い勉強法を教えてもらえていれば、自分ができなかったのは自分の頭のせいではなかったと思えたはずです。自分はバカだと思って得することなんて何にもないんです。 

 受験でも、その後の人生においても、根性主義で無理をするのではなく、長所で勝負するほうが一番ラクに、そして自分の能力が最大限に発揮できます。お子さんにはぜひ、得意なものを伸ばし、合格最低点を取るという視点を与えてあげてください。

 受験勉強を通じて、自分の強みを知り、工夫できるようになることは「生きる力」になります。親御さんにはそんな思いをもってお子さんをサポートしてあげてほしいですね。

--ありがとうございました。

 和田先生が一貫しているのは、子どもに劣等感を植え付けないという姿勢だ。どんな人間にも長所と短所がある。だからこそ、受験勉強で苦手科目を根性主義でなんとかして平たい人間をつくるのではなく、得意科目を伸ばし、苦手科目ができなくても入れるようにしようという発想だ。それが一番発揮しやすいのが東大の入試だと和田先生はいう。

 「『うちの子はダメだから』は禁句。ダメだと思うなら、嘆いていないで親も動く。可能な限りの勉強法や塾や通信指導の情報を集め、子どもに合ったものを探してあげる。子どもの長所を伸ばし、自信をもって人生を切り開いていけるような道を一緒に探してあげなきゃ。」

 子どもたちひとりひとりの可能性を大切に思う、温かさと優しさに溢れたインタビューだった。

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発行:大和書房

<著者プロフィール:和田秀樹>
 1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、国際医療福祉大学心理学科教授。川崎幸病院精神科顧問。和田秀樹こころと体のクリニック院長。「I&Cキッズスクール」理事長。一橋大学経済学部非常勤講師。27歳のときに執筆した「受験は要領」がベストセラーになり、緑鐵受験指導ゼミナール創業。製作・監督した「受験のシンデレラ」はモナコ国際映画祭で最優秀作品賞(グランプリ)を受賞し、「『わたし』の人生 我が命のタンゴ」もモナコで4部門受賞、「私は絶対許さない」でインドとニースの映画祭で受賞するなど、映画監督としても活躍。


《加藤紀子》

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