SGH事業の5年間の成果、文科省が検証結果を報告

 文部科学省は2019年7月4日、スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証の報告(1年目)を公表した。3カテゴリー・11調査データーに基づき、分析を実施。2014年より開始されたSGHプログラムについて、5年間の事業活動の成果をまとめている。

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 文部科学省は2019年7月4日、スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業検証の報告(1年目)を公表した。3カテゴリー・11調査データーに基づき、分析を実施。2014年より開始されたSGHプログラムについて、5年間の事業活動の成果をまとめている。

 文部科学省では、スーパーグローバルハイスクール(SGH)事業の現状と成果を把握するため、事業検証を行っている。7月4日に公表された成果検証結果は、事業検証機関である筑波大学によるもの。「SGHプログラムは、この5年間でどのような教育プログラムを開発し、何を変えたのか」「SGHプログラムは、受講生にどのような資質や能力の向上をもたらしたのか」「SGH受講は、どのような卒業生たちの進路選択や進学後の大学での学びに役立っているのか」「外部ステークホルダー(SGU副学長、国内外連携機関、保護者、インターナショナルスクール・国際認証機関)はどのようにSGHを評価しているのか」という4つのリサーチクエスチョンに基づき、書面調査、アンケート調査、インタビュー調査を通して、SGHプログラムの5年間の事業活動の成果の検証を行った。

 書面調査(2014年~2017年度)では、毎年末にSGH全指定校を対象として実施される「目標シート」「研究開発完了報告書」を時系列的に分析し、SGHプログラムの研究開発の進捗状況について、全体傾向をまとめている。経年的に、着実に成果指標の向上が見られること、SGH受講生は非受講生に比べて、顕著な学習成果をあげていることなどが示された。一方、海外留学希望や海外キャリア志向は停滞気味教員の課題研究指導、生徒の英語能力の向上が改善点としてあげられている。

 なお、2018年度からWeb書面調査として実施。2018年度の分析では、S~Aレベルの高い研究活動の成果を達成しているほか、経年効果により目標達成の実現度が高まるなどの結果が見られた。課題として、成果発信に繋がるWebサイトの整備や、教員の英語力、業務過多などの改善がある。

 卒業生アンケート調査では、「同じ学年が全員受講したグループ(全員受講)」「一部の選抜された生徒だけが受講したグループ(選抜受講)」「SGHプログラムを受講していない(非受講)」の3グループに分類し、受講形態の違いからSGHプログラムの成果と課題について分析。SGH受講生は非受講生に比べて、大学進学の基準として「提供するカリキュラムが魅力的である」ことを重視しているという成果があった一方で、卒業生の98%は国内大学に進学。2%の海外進学者は全員が欧米の大学に進学しており、留学先の6割が北米だった。

 将来の海外勤務について、全体の54%が「国・地域によって働きたい」と答えているが、「どんな国・地域でも働きたい」は選抜受講(21%)が全体受講(13.5%)、非受講(11.3%)を約10ポイント上回っていた。海外で働きたくない主要な理由は「語学力に自信がない」となっており、非受講で58%、選抜受講で54%、全員受講で50%と、全体として語学力への不安が高いことがわかった。報告書では対策案として、英語以外の科目の英語化により、学内に恒常的な外国語(英語)環境を提供することを提示している。

 また、SGU(スーパーグローバル大学)副学長へのインタビュー調査では、附属高校を擁する15校、附属高校を要さない12校に分類して調査を実施。それぞれの実績事例や評価・コメント、今後の計画・提案をまとめているが、共通の意見として「高大連携の結果を入試に反映できないことが問題」「SGHの課題研究を入試選考に反映するべき」などがあった。

 報告書の結語において、「今後の継続的な改善活動、SGUとの高大連携、SSHとの水平連携により、将来の日本を牽引する次世代グローバル人材育成に貢献することが 大いに期待される」とコメントしている。

 「成果検証結果の概要(エグゼクティブサマリー)」は、文部科学省Webサイトから閲覧できる。また、6月28日開催の「2019年度スーパーグローバルハイスクール(SGH)、WWLコンソーシアム構築支援事業、地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)合同連絡協議会、事業別連絡会」において発表された「2018年度スーパーグローバルハイスクール事業検証報告」も掲載されている。

《黄金崎綾乃》

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