海外留学の危機管理実施状況、文科省が大学等847校を調査

 文部科学省は2019年7月30日、「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」フォローアップ調査の結果を公表した。「自分の身は自分で守る」という基本原則を学生に理解させるよう指導している大学等は9割以上となった。

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 文部科学省は2019年7月30日、「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」フォローアップ調査の結果を公表した。「自分の身は自分で守る」という基本原則を学生に理解させるよう指導している大学等は9割以上となった。

 海外留学者数の増加に伴い、留学生が事件やトラブル等に巻き込まれる危険性も増加しているが、昨今のテロや暴動などが頻発する治安情勢、感染症が国境を越えて流行するなど、危険事象を予見して回避することが難しい状況となっている。文部科学省の「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」は、各大学が学生への意識啓発および危機管理体制の整備を行うにあたって留意すべき事項を、外務省の協力を得てまとめたもの。 2017年3月31日付で通知された。

 フォローアップ調査は、「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」について、大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)における実施状況を確認し、各学校における危機管理体制について確認するとともに、危機管理ガイドラインの改善点などや課題を把握し、今後の改善に活用できるよう行われた。調査対象は、日本学生支援機構が2018年度に実施した「2016年度日本人学生留学状況調査」で、協定に基づく海外留学者数および協定に基づかない海外留学者数の合計人数が1名以上の教育機関。大学(学部レベル)532大学、大学(大学院レベル)145大学、短期大学65大学、高等専門学校47校、専修学校58校の計847大学等が回答している。

 渡航先の治安状況を学生自身が事前に熟知し、日本にいるときとは意識を切り替えることにより事件・事故を防ぐことができること(「自分の身は自分で守る」という基本原則)を学生に理解させるよう指導しているかという調査では、全体の54.1%が「全学レベルで学内すべての海外留学者を対象に対応」と回答。そのほか、「全学レベルと部局で分担してすべての海外留学者に対応」14.9%、「部局のみで対応」13.1%など。9割以上は何らかの対応をとっており、「全学レベル、部局レベルとも特に対応していない」は3.7%にとどまった。

 危機事象が発生した場合に備え、留学中は常に所在を明らかにするよう、留学前に学生に指導しているかという項目では、「全学レベルで学内すべての海外留学者を対象に対応」52.2%、「全学レベルと部局で分担してすべての海外留学者に対応」15.0%、「部局のみで対応」13.5%など。

 渡航先での連絡先、国内の緊急連絡先の登録方法等について具体的に指導している大学等は783校。そのうち、65.9%が「指導しているだけではなく、すべての部局で登録を義務付けている」と答えたが、「登録を義務付けていない」という回答も33.7%を占めた。

 また、海外留学に対応する危機管理のための組織(危機管理委員会など)は定められているかを聞くと、「はい」66.0%に対して、「いいえ」が34.0%。学校種別に「はい」の割合をみると、高等専門学校の85.1%がもっとも高く、ついで大学(大学院レベル)73.1%、大学(学部レベル)68.6%、短大50.8%。もっとも低い専修学校は25.9%という結果だった。

 文部科学省からの通知「大学における海外留学に関する危機管理ガイドライン」を踏まえ、学内の危機管理体制の整備・見直しを行ったかという項目では、「ガイドラインを参考に整備・見直しを行った」が29.6%で、「ガイドラインを参考に、今後整備・見直しを行う予定」46.2%がもっとも多かった。なお、17.6%は「従前より危機管理体制を整備しているため特に整備・見直しを行っていない」と答えている。

 フォローアップ調査の詳細な結果は、文部科学省Webサイトに公開されている。

《黄金崎綾乃》

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