目標設定や振返りが主体性を育てる…リクルート高校生調査

 2020年の教育改革を契機に学校教育で求められる「主体的な学び」の育成メカニズムを明らかにするため、リクルートマーケティングパートナーズなどは高校生を対象に調査を実施し、分析結果を公表した。目標設定や振返りが主体性の向上に寄与する可能性が示された。

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分析結果の概念図
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 2020年の教育改革を契機に学校教育で求められる「主体的な学び」の育成メカニズムを明らかにするため、リクルートマーケティングパートナーズなどは高校生を対象に調査を実施し、分析結果を公表した。目標設定や振返りが主体性の向上に寄与する可能性が示された。

 目まぐるしく変化する社会において、子どもたちが活躍するための資質・能力を育むことを目的に新しい学習指導要領が告示され、2021年より大学入学共通テストも開始。入学者選抜では「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」や「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が求められるようになり、学校教育でも「主体的・対話的で深い学び」が求められている。

 一方、企業の新人・若手育成の場面では、自分で行動や環境を意味付けし、主体的に周囲を巻き込むことが苦手な若手が増え、入社後に壁にぶつかるケースが増えてきている。

 そこで、学習・進路領域で学校を支援しているリクルートマーケティングパートナーズと、企業の人材育成を支援しているリクルートマネジメントソリューションズが、主体性を育むメカニズムを明らかにし、人材育成の手がかりを得ようと、合同プロジェクトを立ち上げ、調査を実施した。

 調査対象は、リクルートマーケティングパートナーズが提供するオンライン学習サービス「スタディサプリ」を導入している全国の高校618校の生徒15万2,030人。調査期間は、2019年3月~2019年5月(5月24日到着分まで)。生徒に自分自身について「主体性」「多様性」「協働性」などのテーマに基づく23の質問を5段階で評価してもらい、因子分析や信頼性分析、共分散構造分析を実施した。

 調査にあたり、リクルートマーケティングパートナーズとリクルートマネジメントソリューションズは、文部科学省提唱の「新しい学習指導要領等が目指す姿」にある学びに向かう力の要素として「主体性」、人間性などの涵養の要素として「多様性・協働性」などに関わる調査項目を共同開発。学校教育において、生徒の「主体性」がどのようにして育まれるのか、得られたデータをもとに分析したところ、「目標設定・振返り」を行うことで「主体性」が高まる可能性が示唆された

 今回の調査で「主体性」として分析した質問項目は、「人から言われる前に自ら進んで行動している」「自分で決めたことは最後までやり遂げようとしている」「周囲から与えられた課題でも、自分がやるべきことに対しては逃げないで取り組んでいる」。分析によると、「主体性」が高まることで、「多様性・協働性」が高まることも示唆されたという。

 また、テスト校1校の生徒458人を対象に2018年9月と12月に「主体性得点の変動」について追加調査した結果によると、日々の学びや気付きを記録できる「スタディサプリ」のポートフォリオ機能のひとつである「活動メモ」の投稿数が多い生徒ほど、主体性の得点にプラスの影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。

 今回の分析結果を踏まえ、リクルートマーケティングパートナーズとリクルートマネジメントソリューションズは、「教員がどのように生徒ひとりひとりに合った目標設定・振返りの指導をするのか」が重要になると捉え、2019年7月末から学校の教員向けに「生徒の主体性育成」に関する支援を開始。教員の働きかけ、生徒の目標設定に対する振返りの質の向上を通じて、生徒ひとりひとりの自己効力感を高め、内省を通じた自己成長の促進を目指すとしている。

《奥山直美》

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