その中で、顧客満足度で決定する「イード・アワード2020 子ども英語教室」小学生の部にて、全国で展開される学研教室が、部門賞「効果がある英語教室」を受賞した。全国に1万5,000教室を展開し、その約8割で「英語」を学ぶことができるという同教室の特徴や、コロナ禍における取組み、今後の展望などについて、学研エデュケーショナル教務部統括編集長の船城英明氏に聞いた。
「使える英語」を身に付ける
--イード・アワード2020 子ども英語教室 小学生の部にて、部門賞「効果がある英語教室」の受賞、おめでとうございます。
ありがとうございます。いろいろな部門の中でも「効果がある英語教室」を受賞できたことに、特に大きな意味があると思っています。これは、教材と全国の指導者による指導をトータルで高くご評価いただけたからこそだと思いますので、関係者一同、本当に喜んでいます。

--まずは学研教室の「英語学習」の特徴を教えてください。

学研教室は、デジタル教材とプリント教材、そして指導の3本柱で英語を学んでいくスタイルです。デジタル教材はマルチデバイス対応でいつでもどこでも英語に触れることができ、教室ではプリント教材と指導者による指導で学習をさらに深めます。
私たちは、教材や指導の中で「使える英語」を身に付けることを目指しています。「使える英語」とは単に英語で会話ができるようになることを指すのではなく、自分の考えや意見を相手にしっかりと伝えたり、相手の意見を尊重しながらやり取りするなど、英語を自己表現のツールとして使うことを意味します。そのような力は将来的に、たとえば仕事で外国の方や異なるバックグラウンドを持った方と接する際に非常に重要な力となるでしょう。
教材や指導でも、自分の気持ちや意見を表現することを重視しています。教材に出てくる表現も定型の文だけではなく、自分の気持ちや意見を含めて指導者と会話ができるよう、生きた形での会話を意識しています。
私たちの教室では、「聞く・話す(やり取り・発表)・読む・書く」の4技能5領域を統合的に学んでいきます。同じテーマの中で、聞いて、話して、読んで、書くを一連として学ぶのです。この4技能5領域の統合学習は学研教室の英語学習の大きな特長です。
--各教材の位置付けや学習の流れを教えてください。
まずご家庭では、デジタル教材を使ってネイティブスピーカーの発音にしっかりと触れていただきます。英語のストーリーをはじめとした楽しいデジタルコンテンツを学習したうえで、教室に来たときには、アウトプットとしてプリント教材に取り組んだり、指導者と英語によるやり取りをしたりしていきます。
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教室からはプリントによる宿題も出しています。プリント教材は1冊でおよそ1か月分、年間12冊となっており、指導者が子どもたちひとりひとりの進度に合わせてフォローしていきます。これが基本的な学習の流れとなります。
なお学研教室の英語では独自に「級」を設定しています。級は10~1級まであり、幼児年長~中学3年生に相当する学習内容となっていますが、ひとりひとりの学力や能力、適性によって進度や到達度は異なります。
プリント教材もデジタル教材も学研オリジナルのものです。デジタル教材は、キャラクターが登場するストーリー仕立てになっています。英語学習の導入として、その日に学ぶ英語がどんな場面でどう使われているかにまず触れてもらい、直感的に理解できるようにしています。音声はすべてネイティブスピーカーによるものです。
--デジタル教材では発音の練習などは行われるのでしょうか。
はい。アルファベットの音と形の関連性を学ぶ学習を取り入れています。たとえば、“apple”であれば“æ”[a]という短母音が出てきます。この“æ”[a]がどういう形でどんな音かを動画で確認し、そのあと楽しいリズムに合わせて歌う「チャンツ」に進みます。学習開始時やプレ教材などによって扱いは異なりますが、どの級でもこれらは入ってきます。
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また、単語や分の発語を判定するコーナーもあります。このコーナーはゲーム感覚で取り組みながら、英語を発話することに積極的になってもらうことを目的として作りました。
学研教室では、実際の場面で使うことを重視して、やりとりや表現の中で自然に英語の音に触れてもらうスタイルを取っています。発話させる目的は、英語で話した内容が相手に通じた、反応が相手から返ってきたという小さな成功体験を積み上げてもらうことにあります。そのため、発音の良さももちろん大切なことのひとつですが、それ以上に子どもが自発的、積極的に自分のことを表現できるという点を重視して指導をしています。

文法的な誤りや発音の誤りがあった場合は、やり取りの中で少しずつ正しい形でフィードバックし、いつか自発的に気付くように学びを進めていくようにしています。お子さんたちには、間違ってもいいから積極的に自分から英語を使ってみようというメンタリティを養ってほしいと考えています。
2つのコース設定
--学研教室で英語を学ぶにはどのようなコースがあるのでしょうか。
学研教室には、算数・国語・英語3の教科で学ぶ「小学英語コース」と英語に特化した「英語アドバンスコース」があります。「小学英語コース」では、算数や国語を同時に学ぶことで、英語力とともに論理的な思考力や判断力、表現力を総合的に身につけられるメリットがあると考えています。
実際に、算数・国語の2教科だけでなく、算数・国語・英語の3教科を学習される方の比率はどんどん高まっています。保護者の方からは、「英語は別の教室に通っていたけれど、学研教室の英語も良いという話を聞いて算・国・英の3教科に変えた」といった声もいただいています。
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--「英語アドバンスコース」とはどのようなコースなのでしょうか。
「小学英語コース」はひとりひとりの進度に合わせた個別指導になりますが、「英語アドバンスコース」はグループレッスンです。会話やディスカッション、そして表現を深めるための教材も充実しています。授業は基本的にオールイングリッシュで行われ、英語で考え、英語で表現する力を高めるコースとなっています。「英語アドバンスコース」の指導は、学研に英語力を認定された指導者が行います。
--コース選びのポイントを教えてください。
しっかりと英語を集中的に学びたいなら「英語アドバンスコース」、ほかの科目とあわせトータルで力を伸ばしたいと考えるならば算・国・英の「小学英語コース」をおすすめしますが、ご家庭の価値観に合わせてお選びいただければと思います。
楽しんで取り組める教材や指導へ
--今年から小学3・4年生で外国語活動が必修化、小学5・6年生で英語が教科化されました。受講者の動向や教材制作などに影響はありましたか。
ここ数年、じわじわと英語の関心が高まってきている実感はありました。実際、お問合せも今年の1月頃からかなり多くなっていました。
いま、日本の英語教育自体が大きく変わってきています。小学校のみならず、来年には中学校の英語も大変革期を迎えます。こうした背景をもとに、幼児・小学生向けの教材をすべてリニューアルしました。
併せて指導方法についても、研修などを通じて背景や意図を指導者と共有しています。しっかりとノウハウを蓄積したうえで、指導しています。
--教科化により5年生からは「英語」に成績がつくことになります。保護者の方はやはり気になる部分かと思います。
小学校の場合は、中学校でのシビアな5段階評価の成績付けと違い、「下地作り」の期間という側面があると思います。そのため、いろいろな表現に馴染むことが求められます。
もちろん小学生でも保護者の方は評価が気になると思いますが、楽しく英語に触れられるかどうかや、どれだけ英語による体験や、英語の音や表現の蓄積ができるかが重要だと思うのです。そのために、子どもたちがいかに楽しめるかを主眼に置いた教材作りや指導を目指しています。
--小学校の5・6年生では「書く」要素が入ってきますが、そのための指導についてはどのように進めているのでしょうか。
学研教室の英語では、保育園・幼稚園や小学1年生の段階でも、お手本を見ながら「書く」トレーニングがはじまります。その意味では、かなり早期の段階から「書く」指導を取り入れています。
しかし、機械的に全部覚えて、全部書けるようになることが小学英語の目的ではありません。「自分が行ってみたい国を伝えたいから書く」など、文脈が場面設定を重視した、書く必然性のある指導を工夫しています。
子どもたちは、聞いておぼえて、耳に馴染んだものを書いてみたいという自然の欲求があるようです。書きたいという気持ちならば書いてみようか、とアプローチしています。
全国の指導者が支えた休校中の学び
--新型コロナ感染症の影響で全国の学校が一斉休校となりました。そうした中、教室の運営にはさまざまな困難があったと思います。取組みなどをお聞かせください。
突然のことでしたので、本当に大変でした。全国47都道府県に教室があるので、地域によってもまったく状況が異なります。その中で「学びを止めない」ためにはどうしたら良いのかを、私たち本部も指導者も一体となって考えて、さまざまな取組みをしました。
最初は、指導者が教室で子どもたちの教材を仕分けし、保護者の方にお渡しして、その際に宿題を持ってきてもらうようにしていましたが、保護者の方の感染リスクを減らすために郵送対応に変更していた教室もあります。その後、4月中旬くらいからは、先生方がプリントの画像を撮影して送ったり、保護者のスマホを用いてコミュニケーションを取ったり。Zoomなどを取り入れて遠隔指導を行うこともありました。
指導者が、それぞれに工夫をして、とても良く対応してくれました。指導者が、普段からいかに子どもたちとしっかりと向き合って、良い関係性を築いているかがわかりました。指導者の「子どもファースト」の姿勢には、本当に頭が下がる思いです。
そのような「学びを止めない」指導者たちの努力の甲斐もあり、学研教室の子どもたちは学校の授業が再開したときにも、あまり戸惑うことなく新しい学年の勉強に入れたようです。
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小学英語に続き中学英語も改訂へ
--中学生向けの教材についてはいかがでしょうか。
2020年度の中学校の教科書改訂を控えて、今まさに新教材を制作中です。幼児・小学生向けコースの英語教材のメリットや特長を引き継ぎつつも、中学校らしい1ランク上の英語を目指しています。
小学校の英語は、小学生なりのシチュエーションで表現を吸収していく、まさに下地を作る段階ですが、中学校では論理立てた形で、文法項目と実際に使う場面を結び付けながら学習していきます。より高度な英語に触れ、習得できるようにしています。
今後は、高校受験や大学受験でも4技能5領域が問われるようになってきます。そして、スピーキングテストが導入されるなど、試験自体も変わってくると考えられています。英語をどれだけ使えるのかが評価される時代になりますので、そこにつながる英語教育を、この中学の新教材で指導者と一緒に目指していきたいと考えています。
--英検などの検定試験を目指すことは可能でしょうか。
当然、受験できる素地、実力はついていくと思います。私たちの英語コースならば、小学校6年生までの教材を学習すれば英検で5級あるいは4級までを、中学3年生までの学習で英検3級から準2級を目指せるレベルの英語力が身に付きます。英語で自分の世界を切り拓いていくことを目指し、そのマイルストーンとして検定試験を受け、自信をつけたり、モチベーションを保っていただければと考えています。
--小学生の英語コースでの今後の展望をお聞かせください。
まずは新しくできた教材と指導方法を、できるだけたくさんのお子さんに広げていきたい。「効果がある英語教室」と、すでにご評価いただいていますが、これをできるだけ多くの子どもたちに体験していただきたいと思っています。
--ありがとうございました。
学齢に合わせて子どもたちの興味を喚起し続ける教材のすばらしさ。さらには各教室の指導者による子どもたちひとりひとりへの真摯で地道なサポートの実践が、「効果がある英語教室」に選ばれた理由なのだと強く感じることのできる取材となった。