教養を深め海外や起業など多様な選択肢、ワオ高等学校2021年度開校

 ワオ・コーポレーションは2021年4月に通信制高校「ワオ高等学校」を開校する。「能開センター」や「個別指導Axis」による受験指導で実績のある同社が40年以上にわたって温めてきた教育を実現するため、これまでにはない“オンライン高校”を目指す。

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ワオ高校の山本潮校長、校章の前にて
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 多様な学びや選択肢、さらにはコロナ禍においても学びを止めることのない特長などから通信制高校への注目が高まっている。全国47都道府県で学習塾を展開するワオ・コーポレーションは2021年4月に通信制高校「ワオ高等学校(学校法人ワオ未来学園、以下ワオ高校)」を開校する。「能開センター」や「個別指導Axis」による受験指導で実績のある同社が40年以上にわたって温めてきた教育を実現するため、これまでにはない“オンライン高校”を目指す。開校に至った背景や教養の探究、将来を見据えた教育プログラムの導入について、ワオ高校の山本潮校長、平田強副校長、教育開発兼広報担当の川本潤先生に話を聞いた。

塾から見た「こうしたら良い」をカタチに



 ワオ高校の校長に就任する山本潮先生は、塾講師のアルバイトから新卒でワオ・コーポレーションに就職。同社で教育に関するさまざまな業務を経験し、今回、通信制高校の校長に抜擢された。同じくワオ高校の立ち上げに深く関わる平田副校長とは同期入社で、校長・副校長をはじめとしたスタッフは、ワオ・コーポレーション創業者の西澤昭男理事長の「ワオイズム」をそのままに、グループで連携してワオ高校を支える。

--ワオ高校設立に向けた想いをお聞かせください。

山本校長:学校と塾は相反するという印象がありますが、双方が外から見ていて、尊重しながらも足りないと思うところを補助しながら成り立っています。ワオ高校は、塾側から見たときに、“もう少しこうしたら良い”ということに手が届くような学校になると思います。

 塾で学んでトップ高校に合格しても、夏になると塾に戻ってくる子がいます。それは、学校や友だちが嫌いなわけではなくて、もう少し進んだ勉強をしたい、こういうところをもっと知りたい、でも学校の授業は一律に進んで少し物足りないといういわゆる“吹きこぼれ”の子たちです。我々の学習塾である能開センターに来れば、講師がいろんなことを教えてくれる。そこに魅力を感じる子がいることも事実です。

 もちろん、学校は学習が遅れる生徒のケアをしなければなりません。ただ、意外にもできる子にはあまり手当てがされていない。少し尖った子や突き抜けた子たちを全面的にサポートする学校があっても良いと思います。ワオ高校ならば、やりたい学びができる。一方で、一般的な教科についていくのが難しくても、フォローして伸ばして出口まで連れて行く学校です。

 まず「普通ではないこと、その大切さ」があります。受験による大学進学は、ひとつの方法ですが、それだけではないことをわかってほしい。たとえば、受験では英語が得意だから苦手な数学をやりなさいとなる。本当は良いところをもっと伸ばせば、その後、さらに活躍できる人になるかもしれない。もっと自分の好きなことや得意なことに胸を張って堂々と没頭できるような学校があっても良いのではないかなと思います。普通ではない人たちが普通になる、そんな世の中になることを応援する学校でありたいと考えています。

インタビューに応えるワオ高校の山本潮校長
インタビューに応えるワオ高校の山本潮校長

科目横断的な学びを必修に



--ワオ高校を設立した経緯を教えてください。

平田副校長:学校設立の母体であるワオ・コーポレーションを創業した西澤理事長は、土日にだけ生徒を集めて平日は家で勉強するというスタイルや、夏休みなどを利用した「自然合宿」を通じて、科目の枠を超えた学びを目指しました。この設立当初の形を実現するために、何か良い方法はないかと40年以上にわたって模索してきたともいえます。今の時代、オンラインならば、全国から集まって議論ができます。そこで次の時代を生き抜くための力を養うために科目の垣根を越えた「教養」をしっかりと学ぶ。こうしたことから広域通信制高校という枠組みを選びました。

インタビューに応えるワオ高校の平田強副校長
インタビューに応えるワオ高校の平田強副校長

--ワオ高校のカリキュラムはどのような構成ですか。

平田副校長:ワオ高校では、教科書による基礎学習を中心とした「共通科目」、広い知識と考える力を養成する「教養探究」、将来に直結する学びの「オプションプログラム」という3段階のカリキュラムで構成されています。

 高校卒業資格に必要な科目としては、共通科目の国語、地理歴史・公民、数学、理科、保健体育、芸術・情報・家庭、外国語、総合的な探究の時間、スクーリングなどの特別活動に加えて、科目横断的な教養探究があります。英語、数学、国語、理科、社会などでは教科書を使って映像を見てレポートを出すといった勉強を進めていきます。教養探究では、オンラインによるアクティブラーニングを実施します。そして自由選択で別料金になりますが、オプションプログラムでは将来に役立つ4つのコースを用意しています。

ワオ高校のカリキュラム
ワオ高校のカリキュラム

--年間のスケジュールを教えてください。

平田副校長:1科目を半年で学ぶスタイルです。おおまかに言えば、4月と5月はメディア学習を通してレポートを書いていきます。半分程度経過したところでスクーリングが開催されます。このスクーリングは6月と12月の年2回。そこでは何のために学ぶかなどの動機付けも行われて、さらに2か月間学んだあとにテストが実施されます。

 なお通学という概念がないため、夏休みはありません。時間をどう使うかが大切になりますね。テストの期間などで空く時間は設けられていますので、スタディツアーなどの参加に有効活用できると思います。“学びに、自由を。”と銘打っているのは、場所と時間からの解放です。自分で時間をマネージメントできるようにしてほしい。そうは言っても高校生なので、メディア学習やレポートの締め切りを通じて、生活サイクルを作っていくことになります。

--どのような先生方が担当されるのでしょうか。

平田副校長:共通科目と教養探究は卒業の認定に必要な単位なので、免許をもっている先生が担当します。また教員はマルチな面をもつ人がいることも特長です。たとえば、音楽活動をされていて音楽を担当するが、英語の教員免許もあるので英語も担当するなど。共通科目以外の教養探究も担当してもらうので今、先生たちは一生懸命に勉強しています。

 その一方で、オプションプログラムでは通常の学校の先生とは異なるスキルを求めています。免許がなくとも教えることは可能なので、企業から先生として派遣していただくケースもあります。

未来を切り拓く力としての「教養探究」



--「教養探究」についてどのような内容を学ぶのか詳しく教えてください。

川本先生:ビジネスマンの間では今、武器としての教養が流行しています。実際に社会で稼いでいくために学び直しとしての教養が必要になっているためだと思いますが、裏を返せば今まで学校教育で十分な教養を身に付けることができなかったとも言えるのではないでしょうか。ならば高校生で教養に取り組む。こうした社会的な背景から、ワオ高校ではあえて「教養探究」を単位が認定される科目とし、オンラインでアクティブラーニングを行います。

 「教養探究」では、哲学・科学・経済の3つのカテゴリーを中心に据えましたが、こうした教養を学ぶ目的は「未来を有為に生きるため」です。「哲学」では、自分で考える力、定義し続ける力を養成します。また技術革新が社会を変える転換期では「科学」を知らなければ現状と未来は見通せません。そのために科学的な見地を養うことが目的となっています。「経済」は良くも悪くも社会を圧倒しています。社会に出ると必要なお金の稼ぎ方や仕組みといった、学校では教えないお金の話を中心に学びます。

インタビューに応えるワオ高校の川本潤先生
インタビューに応えるワオ高校の川本潤先生

平田副校長:最初に西澤理事長がこの「哲学・科学・経済」の3つを提示しました。今の時代には、この3つのどれもが必須だと考えています。

--「教養探究」でのアクティブラーニングは具体的にどのように行われるのでしょうか。

平田副校長:「遺伝子組み換え食品」というテーマを扱う場合を例にします。生徒に「遺伝子組み換え商品を食べたいか」と聞くと、「体に悪そう」など感覚的にネガティブな答えが出てきます。そこで、貧困地域では栄養失調やビタミンA欠乏症によって栄養が効率良く取れないために遺伝子組み換えをした「ゴールデンライス(Golden Rice)」が作られて、人の命を救っているという事実を伝えます。まずはそうした映像講座を通して見聞きした後に、生徒本人がそれに対して賛成か反対か、どちらの立場に立つかを考えて回答します。

 こうした議論にはいわゆる「正解」はないわけです。そしてそれを元にSNSのようにコメントを書いていきます。コメントに対して自分の意見と似ていれば「いいね」を押したり、ちょっと違うと思えば自分で意見をテキストベースで書いて議論したりしていきます。自分の意見を言える安心した場所で議論するスキルを身に付けてもらうことを目的としています。テキストベースの議論のあとには、Zoom等を使って実際に会話をするという流れです。

 議論を通じて、自分の中の考えを固めていき、自分なりの意見が言えるようになる。岡山のワオ高等学校本校で実施するスクーリングは、リアルからスタートするのではなく、すでにオンラインでの議論で繋がった状態で集まることになります。

「教養探究」でのアクティブラーニング
「教養探究」でのアクティブラーニング

多様な進路を実現するオプションプログラム



--オプションプログラムの概要を教えてください。

平田副校長:将来に直結する学びとして「データサイエンティスト養成」「アントレプレナー養成」「大学受験対策」「高校留学・海外大学進学支援」という4つのオプションプログラムを用意しています。

 AIが仕事を奪うならAIを作れる人を育てる「データサイエンティスト養成」コース、仕事がなくなるなら仕事が作れる人を育てる「アントレプレナー(起業家)養成」コースを用意しました。これらのオプションプログラムによって、時間や場所からも解放されて、学びをきちんと武器にしてほしいと考えています。

 その一方で、高校で学びは終わりではなく、大学に進学して学びをさらに進めたいという希望もあります。国内の大学進学を目指す人には、我々の学習塾でのノウハウからサポートしていきます。

 もうひとつは留学です。留学プログラムは2つあり、1つは海外の大学を目指すプログラム。TOEFLをしっかり学ぶことで英語の力をつけて送り出します。もう1つは高校での留学。高校生の頭が柔らかいうちに、文化に慣れたり、学んだりできるダブルディプロマ(日本と海外の2つの高校卒業資格が取得できる)コースを用意しました。オーストラリアの高校に編入して単位を互換することで海外の高校を卒業できます。日本では帰国子女枠で進学もできますし、海外でそのまま大学に進学することもできます。大学に行く前に素養も身に付けるので大学生活がより豊かになります。

主体性をもって学びを求める子どもたち



--オンラインイベントや説明会などでの参加者の反響はいかがでしょうか。

平田副校長:説明会で話をするときには、高校の普通科の“普通”とは何なのかと問いかけることがあります。これから世の中が変わっていこうとするときに、人と違うことをするのはダメ、普通が当たり前という状態から脱却しなければ、新しいことは始められません。また通信制高校はどうしても「不登校」という言葉が出ますが、そこにはさまざまな理由があります。合同学校説明会では、生徒会長をやっていた生徒が、やりたいことに対して先生から次々とダメ出しされて、それがきっかけで不登校になったという話がありました。そうした話を聞いたときに、やはりワオ高校のような学校を作って、子どもたちのチャンスを伸ばしていきたいと感じました。

川本先生:中学3年生を対象に「アントレプレナー(起業家)」のオンライン体験講座をしていますが、先日、小学5年生がアメリカから参加してくれました。平日夕方の6時からでしたが、アメリカは早朝の4時。講座を受けるために朝早く起きて受講して、そのあと学校に行くということで驚きました。実際の入学対象者ではありませんが、たくさんの質問をしてくれて、時差も乗り越えて来てくれたのはとても素晴らしいと思いました。その子に、起業の話をなぜそこまで聞きたいのかと聞くと、自分でお金を稼ぎたいので小中学生向けのプログラムを探したが希望に沿うものがなかったということでした。また友だちと話しても、なかなか話が合わない。本当に自律的に考えられる子どもは今、学校という場では孤立して力を発揮できないのではないかと感じました。

 コロナ禍で教育の本質が見直されるなか、我々の学校が「自ら学び、自ら考え、自ら判断する人」を標榜し、そういう人になるために「教養探究」を入れましたが、今もそうした「教養」に近い学びをやっている子たちが、年齢に関わらずいるのだと感じています。その子たちは学校などでは孤立し、その力を発揮できていない場合もあるので、ワオ高校がその力を伸ばせる場になれば良いと思います。

そこに自分の意志はあるのかを見つめる



--最後に受験生へのメッセージをお願いいたします。

山本校長:時期的にはすでに志望校を決めている子も多いでしょうし、まだ悩んでいる子もいるかもしれませんが、どこかのタイミングで、何のためにその高校に行くのかを考えてほしいと思います。

 そこに自分の意志や気持ちがどれだけあるのか。自分の外にあることだけで決めてはいないか。たとえば、偏差値ではここに行けそう、先輩や兄姉が行っているからなど。それらはすべて自分の意思ではないのかもしれません。

 自分がどんな大人になりたいのか。どんなことをしたいのか。時間をしっかり取って、自分は本当にどういうことが好きなのかを一度見つめ直して学校を見ていく。それで良いと思う学校があれば、そこで良いのです。いずれにしても、体調管理には気を付けて、しっかりと頑張ってほしいと思います。

ワオ高等学校
--ありがとうございました。

ワオ高校のエントランス
ワオ高校のエントランス

 多様な学びや進路を目指す「ワオ高等学校」は、これまでの学習塾における受験指導のノウハウや大学進学実績もあるため、保護者も安心感をもって選択肢のひとつにできるのではないだろうか。未来を自らデザインしようとする子どもたちにとっても、頼もしい存在になるだろう。

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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