タカラジェンヌから「表現」を学ぶ…21世紀型の新しい教育で注目、品川翔英中学校の授業

 週6時間の「Learner‘s Time」、定期テストからスモールステップのテストへの移行、メンター制等、新しい教育を実施している品川翔英中学校・高等学校。タカラジェンヌを講師に迎えた「ドラマエデュケーション」の授業を見学。教頭・村上亜矢子先生に校風、特徴を聞いた。

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タカラジェンヌを講師に招いた「表現」の授業のようす
タカラジェンヌを講師に招いた「表現」の授業のようす 全 5 枚 拡大写真

 品川翔英中学校・高等学校は、2020年に校名、校訓、カリキュラム、制服などすべてを一新して共学化し、新たなスタートをきった私立校だ。学校法人小野学園は、1932年設立。品川翔英幼稚園、品川翔英小学校(小野学園幼稚園と小野学園小学校から2020年に改名)もあり、地元の品川区西大井や大井町周辺では馴染み深く、長い歴史のある学校というイメージが定着している。

 共学化に伴い教育内容を大きく一新したところから、中学・高校ともに入学応募者も増加。地域周辺のみならず広範囲から注目が集まっているようすがうかがえる。生徒たちがワクワクするようなプログラムを実施する中学生の授業「LEARNER'S TIME」を見学し、同校の教頭・村上亜矢子先生にその狙いや特徴について話を聞いた。

--2020年度に続き、2021年度も大勢の中学生・高校生が入学し、教育内容の一新とともに注目を集めていますが、この人気の上昇をどのように感じていますか。

 2020年度入試に続き2021年度も入学者数が増加し、注目を浴びていることには驚きましたが、学校改革への期待値が高いのだと受けとめています。幼稚園児も小学生も同じ敷地内で過ごしていますので、移動時にお互い挨拶を交わしたり、女子校時代と変わらないアットホームな雰囲気は保ちながらも、中高ともに「自主・創造・貢献」を校訓に掲げ、将来を予測することが困難な新しい時代に、「学び続ける自律した学習者=LEANERS」を育成することを教育の目的としています。

品川翔英中学校・高等学校 村上亜矢子 教頭先生

--首都圏は中学受験熱が年々上昇しています。共学化後の中高一貫教育の特徴について教えてください。

 まず先に申し上げたLEARNERSとは、 あらゆることを自分ごととして捉え、自分を律しながら、そして愉しみながら行動できる人のことです。同時に、他人の意見に耳を傾け、他人と協働しながら、批判的な思考力をもって新たな価値を創り出し、社会に貢献する人を目指すことを「品川翔英 DP7」(DP=ディプロマポリシー)として定めています。その7つは、「1.愉しむ力」「2.主体性」「3.自律性」「4.協働性」「5.批判的思考力」「6.創造力」「7.貢献力」。高校卒業までにこれらの力を身に付けられるよう学年担任制とメンター制の両輪で支援していきます。学年担任制は、クラスに関係なく学年の生徒を学年教員団で受けもつシステムです。HRや清掃の時間などを数人の教員がチームで担当します。生徒のひとりひとりの成長を支援する「メンター制」は、日々の学習や進路進学などについて、1年間を通じて個々の生徒と深く向き合います。メンターとなる教員は生徒自身が選びます。

 学習面は、生徒ひとりひとりの学習レベルやペースに合った「個別最適化学習」を、ICTを利用して多彩にサポートしています。Qubena、スタディサプリ等によるアダプティブラーニング、オンライン英会話、反転学習等、学習から生活全般においてICTを使用することで、学習効率を向上し、思考を深める時間を増やしています。

 生徒の評価に関しても改革し、独自のルーブリックによる評価を行っています。「自主性・意欲・関心」等の非認知能力を見える化することで、自己理解と自己肯定感を高め、学びを愉しむ力を育みます。生徒はルーブリック評価表を見ながら学ぶことで、自らの目標を定め、主体的に学ぶ力を付けるという良いサイクルが成り立っています。

--体育館での「Learner’s Time」の授業を見学させていただきました。「Learner’s Time」の概要と狙いについて教えてください。

 「自律した学習者=LEARNERS」を育成する独自のカリキュラムが、週6時間(年間 180 時間)の 「LEARNER'S TIME」です。「PBL型探究学習」を中心に、「ドラマ・イン・エデュケーション」「プログラミングスキーム」等を中学1年生から3年生まで学び、高校での学習や進路選択に生かします。柴田校長が視察で訪れた米国のボーディングスクール(全寮制校)やフランスの学校で、生徒の自主性を尊重した自習時間を設けていることにヒントを得ています。

2021年7月3日に行われた、タカラジェンヌを講師に招いた「表現」の授業のようす。プロの動きを見ながら自分の身体を思い切り動かす時間から自己表現の大切さを学ぶ

 今回見学いただいた授業は「ドラマ・イン・エデュケーション」の枠組みのひとつで、タカラジェンヌの方を講師としてお招きして「表現」を学ぶものです。中学生のうちに自由に自分を表現することができるようになってほしい、殻をやぶってほしいという思いから始めました。本来なら学校内外の人との関わる機会が多い年代ですが、コロナ禍で学校内外でさまざまな機会が減ってしまったり、オンライン授業があったり、日頃から自粛もしていたり、物足りなさを感じているのに誰にも言えない、言ってもしょうがないとあきらめている生徒もいると思います。そんな非アクティブな日常の中ですが、この授業では、アクティブに、歌に合わせて手足を伸ばし、身体を思い切り動かします。ピシッとした美しい姿勢、プロの動きや発声を間近で体感することで、生徒ひとりひとりが自分なりの「表現」の幅を増やすきっかけになっていれば良いなと思っています。

「一緒に作品作りをさせていただくような気持ちで臨みました」という講師の花柳まり草さん。 「明るく真っ直ぐな生徒さんばかりで、私たちも楽しく授業をさせていただくことができました。『こんな風に生きたい』と志をもった時、その志に近づくために必要なのは好奇心をもち続けることと、歩みを止めないことだと思っています。 無駄なことは何ひとつありません。 学校生活をとことん楽しんでください」と生徒たちにエールを送った
風凛水花さんは「生徒さんの明るい雰囲気が印象的でした。難しい事や恥ずかしい事もあったかもしれませんが、前向きにトライしてくれて嬉しかったです。 自分を表現したり、気持ちを伝える事はとても大切で、どんなお仕事でも役に立つと思います。これからも頑張ってください」と生徒たちに気持ちを伝えた

 また、今日の授業は現役の大学生がボランティアで参加していることも特徴です。講師と生徒という関係にワンクッション、大学生が入ることによって活気が出ますし、生徒たちが少し先の自分の姿を想像してくれるのではと期待しています。

 人の学びは社会に出てからも終わりはありません。学び続けるLEANERSに成長していけるよう、こうした座学ではない授業から自己肯定感を育み、これから必要となっていくプレゼンテーションスキルや自己表現の力、創造力を伸ばしていきたいですね。内部だけで完結するとマンネリ化してしまうので、どんどん外部の風を取り入れていきたいです。社会に出る前に「失敗して良いんだよ」という土壌づくりは学校で用意してあげたいですし、経験から知ってほしいです。今後も生徒ひとりひとりが自分にとって学びたい事が何かを自ら考え出せるようを「LEARNER'S TIME」の中で多彩なプログラムを実践していきたいと思います。

--ありがとうございました。

 学校選びも最終段階となる秋。品川翔英中学校・高等学校では11月~1月まで見学会や入試体験会等を複数回開催している。中学受験、高校受験の学校選びに訪れてみてはいかがだろうか。 

《編集部》

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