理工系学部の「女子枠」偏見や逆差別への対応など課題も

 山田進太郎D&I財団は2024年3月7日、理工系学部の「女子枠」実態調査の結果を公開した。「女子枠」導入には否定的な意見も多いため、偏見や逆差別との指摘への対応が必要で、認知獲得のための広報活動や、入学後のサポート充実などが課題であることがわかった。

教育・受験 高校生
理工系学部の「女子枠」実態調査
理工系学部の「女子枠」実態調査 全 7 枚 拡大写真

 山田進太郎D&I財団は2024年3月7日、理工系学部の「女子枠」実態調査の結果を公開した。「女子枠」導入には否定的な意見も多いため、偏見や逆差別との指摘への対応や、認知獲得のための広報活動、入学後のサポートの充実などの課題があることがわかった。

 山田進太郎D&I財団は、2024年1月に理工系学部における「女子枠」入試を実施している大学を対象にアンケート調査を実施し、24大学から回答を得た。調査に回答した「女子枠」入試を導入している24大学のうち、2020年度以前導入は3校(12.5%)であるのに対し、2023年度以降、21校(87.5%)が導入しており、「女子枠」制度への関心が急速に高まっていることが示された。

 大学が女子枠を導入する際に期待していた効果は、学部の多様性と活性化(87.5%)、優秀な女子学生の獲得(83.3%)、学部のジェンダーバランス改善(79.2%)の順で多かった。「女子枠」を導入することによって、大学が質の高い女子学生を集めて、教育環境のジェンダーバランスや多様性を向上させる期待が強いことを示唆している。一方で、入学した女子学生にとって学びやすい環境(ハード/ソフト面)や入学後のサポートに関する期待は3割程度で、副次的効果としての期待にとどまった。

 2024年度女子枠入試の応募状況において、非公開などの5大学を除く19大学のうち、定員を上回る応募あるいは同数程度だった大学は12校であり、定員を下回った大学は7大学となった。定員を下回った大学はすべて2024年度入試からの導入となっており、高校訪問やパンフレットなどによる周知などの広報活動の不足や、女子枠の定員数の問題なども原因と考えられる。

 「女子枠」入試を導入した大学においては、導入時期による成果の違いが出ている。2020年度入試以前からの導入大学では、2016年度入試の導入から8年で10%だった工学部の女子学生比率が15%となったり、卒業後、約半数の女子が大学院に進学し、意欲的な女子学生が研究面でも貢献するなど、具体的な成果が出ているという。

 「女子枠」入試導入にあたって、45.5%の大学が、大学内外からの否定的なコメントなどがあったと回答している。偏見や逆差別への対処として、制度の目的や必要性を社会に明確に発信し、女子枠入学者が不当な扱いを受けない対策が必要とされている。また、学力試験がない場合は、入学後の数学・物理の補講や専門教育導入授業の実施など、学力面でのフォローアップが必要になるケースがあるほか、女子トイレの増設やロッカールームの設置など施設の充実にも課題との回答が寄せられている。調査の詳細はWebサイトで閲覧できる。

《中川和佳》

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集