【大学受験2025】東進生のデータから見る、共通テスト本番までの得点の伸ばし方(前編)

 東進ハイスクール運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏にインタビューを実施。前編では、共通テスト模試の分析から見えた受験本番前までにおさえておくべき特徴と求められる力について聞いた。

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 共通テスト本番まで、ラストスパート。新課程になってから初の共通テストは科目の追加や再編、出題傾向や時間などさまざまな変化があり、受験生もその対策に追われる中、不安を抱えているのではないだろうか。

 そこで東進ハイスクール運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏にインタビューを実施。東進ハイスクールで行われている模擬試験から集められたデータをもとに、新課程で行われる共通テストの傾向や、どういった出題となるかの予測、そして受験生が本番までの間にどのような対策をするべきか、アドバイスをもらった。

 前編の今回は、「共通テスト模試の分析から見えた受験本番前におさえておくべき特徴と求められる力」について聞いた。

基礎力の重要性は不変

--今回で5回目となる共通テストですが、今年度は情報Iの追加や教科・科目の再編等、動きがあります。

 2025年度は、新課程として初めて迎える共通テストです。試験時間の変化から見ると、数学(2)では「数学II・B・C」となり試験時間が10分増えて70分に、国語では「近代以降の文章」についての大問が追加され、試験時間が10分増えて80分に、そして、新設の「情報I」の60分が追加されます。共通テストでは、思考力・判断力が問われることから問題量が多くなっていますが、そこに今回の変化ですから、受験生にとっては単純に負担が増えることとなります。

ナガセの広報部長・市村秀二氏

--過去の試験内容や今回の変化を踏まえ、得点力アップにはどのようなスキルがカギになると言えるでしょうか。

 得点力アップのためには、すべての問題文を隅から隅まで読んでいては時間が足りなくなります。解答に必要な情報を探し、答えをいかに早く導き出せるかが重要です。このような力はなかなか一朝一夕で身に付くものではありませんが、訓練次第では1か月程でもある程度克服できます。これまで受けてきた本番形式の模試などを使って問題形式を確認し、思考の流れを想定しておきましょう。

 また、問題に解答するための土台、いわゆる基礎力の重要性については不変です。少しでも不安がある科目・分野があれば、基礎に立ち返り確認をしておきましょう。

 2024年の難関大現役合格者に実施したアンケートでは、模試や試験本番でマークミスをした経験があると回答した生徒が65.4%いました。マークミスは、自分が思っているより起きている可能が高いと思って、問題とのずれ、番号のずれなどが無いかを見直すことが大切です。特に国公立大学を志望する受験生は、共通テストの自己採点をもとに出願する大学を決定しなければならないので要注意です。

共通テスト前におさえておくべき特徴と求められる力とは

--共通テスト本番で少しでも得点を伸ばすために、ラストスパートの今、各科目でおさえておくべき特徴と求められる力について、具体的にお聞かせください。

 各教科の特徴について、東進で行っている共通テスト対応の「全国統一高校生テスト」や「共通テスト本番レベル模試」の解答分析をご紹介します。

【英語】

 英語リーディングの解答分析で見えてきた傾向のひとつとして、共通テストの特徴である言い換え(パラフレーズ)の問題の正答率が低くなる傾向がありました。選択肢の正誤を検討するには、単語や文法といった基礎力に加え、それぞれの選択肢の情報を素早く判断していく情報処理能力が必要となります。

「全国統一高校生テスト」 第1問B 問1の正答率

 また、リーディングでは直接的に文法知識を問う問題は出題されていませんが、選択肢の正誤を検討する際に、間接的な形で文法知識の活用を問う問題が出題されています。

 東進の共通テスト本番レベル模試で、以下のような出題をしました。語学学校で提供されているコースに関する設問です。3つのコースのうち、スピーキングを扱うコースは1つのみでした。正解の解答を多くの受験生が「すべてのコースでスピーキングの指導が提供されていない」と全文否定の意味で文意を取り違えた可能性があります。

2024年8月「共通テスト本番レベル模試」リーティング第2問より(全小問の正答率は48.5%)

【数学】

 数学II・B・Cの選択大問の選択傾向について分析した結果、受験率は以下の通りとなりました。第4問(数列)、第6問(ベクトル)はほとんどの受験生が選択をしています。

 新課程で新たに出題範囲に追加された「平面上の曲線と複素数平面」を含む4題中3題を選択する必要があります。文系の場合、「統計的な推測」は授業で学んでいますが、「平面上の曲線と複素数平面」はカリキュラムに入っていない場合もあり(数学Cはベクトルのみ学習する場合が多い)、実質的に文系受験者は「統計的な推測」の解答が必須になっていると考えられます。理系の場合は、二次試験の試験範囲に「平面上の曲線と複素数平面」が含まれ、また「統計的な推測」が含まれない場合もあるため、第7問を選択する割合が高くなっていると考えられますが、文系ほど顕著な差はありませんでした。

 数学I・Aの第4問、「場合の数と確率」においては、試作問題で新傾向として出題された期待値の2択問題を「共通テスト本番レベル模試」で出題したところ、「どちらが得か」の2択問題でもあるにもかかわらず、正答率は47.8%でした。

 期待値は、それぞれの場合の確率を求める必要があり、多くの計算をしなければなりません。素直に計算すると時間がかかってしまうことが、差がつく問題となったと考えられます。この問題では、あらたに求める必要がある期待については、対称性を利用することで計算量を大きく減らすことができます。問題を解く際に「工夫して簡潔に求めることはできないか」を常に意識することが大切です。

【国語】

 国語では「実用的文章」の大問が新たに出題される予定です。

 東進の模試において、新しい大問の得点率を分析したところ、過去3回のすべての模試において「実用的文章」の大問の平均点は他の大問と比較してもっとも高い結果となりました。得点の差はつきにくく、得点を落とせない問題となることが想定されます。多くの情報を読み取り、比較したり統合したりができれば難しくない問題であるため、時間との勝負になると考えられます。

【理科】

 物理、化学、生物におけるつまずきのポイントをご紹介します。

◆物理
 以下の問題は「8月共通テスト本番レベル模試」で得点率の低かった問題です。

 小球が受ける力積の向き(定性的理解)と、はね返り係数を求める(定量的計算)問題です。床に立てられた面に対して斜めに衝突するので、
 ・速度を図か成分分解する
 ・斜面の角度から、垂直方向に速度変化を幾何的に求める
というステップが必要な問題です。

 各選択肢を回答した生徒の割合をみると、選択肢(7)と(8)で8割近い生徒が回答しています。つまり、「小球は衝突面に垂直な方向に力積を受けること」は、8割の受験生が認識していることはデータからわかります。一方で、(7)と(8)の正答率に差が出ているため、実際に「速度の成分分解を行う」「はね返り係数を計算する」ということができてないと想定されます。なお、ほぼ同様の問題を2022年12月に出題していますが、そのときの正答率も24%でした。

 一方、同様のグラフを用いた衝突問題でも、2023年4月の同模試(8月実施の4か月前)では、正答率は47%と約半数の受験生が正解していました。

 学習が進むと、物理系の読み解きや法則の定義の理解・適応力、計算力などに視点が移りがちですが、「成分分解を行い、図から簡単な比を得る」という初歩的なことが、意外と弱点になっていることも考えられます。学習が進んだ段階においても、物理の理論体系を追うことばかりに注力せず、与えられた図や条件から必要なことを正しく読み取るといったような、計算以前に必要な視点が疎かになっていないか再確認をしてください。

◆化学
 2024年4月の「共通テスト本番レベル模試」で、結合と結晶に関する基礎的な問題を出題しましたが、イオン結合が容易に見分けられることもあり正答率は高くなりました。

 一方で2024年8月の問いは、標準的な知識問題ですが正答率は低く、解答も分散していることがわかります。(4)CaOは非金属元素と金属元素からなる物質でイオン結合を形成するため、瞬時に解答したい問ですが、(1)NaOHはナトリウムイオンと水酸化物イオンのイオン結合であることから迷った生徒も多く、正答率の低下につながったと考えられます。

 これらのデータから、多くの生徒はイオン結合を見分けることはできるようですが、共通結合となると知棋士があやふやな層が一定数いると考えられます。このような基礎知識の確認を今一度行い、確実に得点できるように対策を行うことが必要です。

◆生物
 実験1~3の結果から考察させる問2、共通テストで特徴的な出題傾向である「仮説検証」および「追加実験」に関する出題だった問3の正答率が低い傾向がありました。特に問3は選択率がバラバラでした。

 生物学の詳細な知識が必要であるわけではなく、実験を順番に正しく読んでいけば難なく正答できる問題だったはずなので、実験考察問題に対する演習が必要であると想定されます。

 実験考察問題を解く際には、ただ漫然と文章を読み進めるのではなく、何のための実験か、何と何を比較しているのか、結果から何がわかるのか、仮説を立ててみる、仮説の検証には何が必要か…など考えながら解いていくことが必要です。また、実験の流れや結論を自分で納得できるまで復習することや、実験考察問題の演習は内容を正しく理解しながら進めるようにすることが大切です。

【地歴公民】

 「地理総合、歴史総合、公共」の導入など、科目再編が一番大きい地歴公民。ここでは科目選択の割合について分析をしました。

 科目の受験総数で一番割合が大きいのは「地理総合、地理探究」の32.3%、ついで「日本史総合、日本史探究」の23.2%、「公共、政治・経済」の20.1%でした。

 2科目選択における科目選択の割合は、一番多かったのが「日本史総合、日本史探究」&「公共、政治・経済」で、32.8%。ついで「歴史総合、世界史探究」&「公共、政治経済」20.0%、「歴史総合、世界史探究」&「地理総合、地理探究」が10.1%という結果でした。

 2024年度共通テストの選択状況と比較をすると、延べ受験者に占める公民の割合が減少し(33.2%→26.2%)、地歴の割合が増加(66.9%→71.6%)していました。全国統一高校生テストにおける文理型別に見てみると、理系6-8型(国公立理系)で圧倒的に多いのは「地理総合、地理探究」の66.6%、ついで「公共、政治・経済」の16.3%です。これらのデータから、国公立理系の地歴公民選択が、公民科目で分散していたのが科目再編により「地理総合、地理探究」に流れた可能性が考えられます。

 「歴史総合、日本史探究」が旧課程日本史Bと比較して減少(25.1%→23.2%)、反対に「歴史総合、世界史探究」が旧課程世界史Bと比較して増加(14.5%→16.2)しています。歴史総合が世界史よりであるため、不安を考え日本史が避けられた可能性があります。

 また、2科目選択の割合で一番多い「日本史総合、日本史探究」&「公共、政治・経済」(32.8%)は、かつて一番多かった日本史B&現代社会(24年度共通テストでの割合19.5%)の流れを汲んでいると想定されます。

 「歴史総合、世界史探究」では、多くの問題で初見の資料読解が必要となります。知識と照らし合わせながら、資料から読み取れることと、選択肢とを比較する素早い情報処理の力が必要です。

 また公民の実用的文章の読み取りには、主語、述語が何かを把握する論理的思考力が必要です。知識を必要としない純粋な読み取り問題は得点を落としてはいけません。

【情報】

 東進では2023年2月から、試作問題を徹底的に研究をして情報Iの模試を複数回実施してきました。これまで実施した結果を分析すると、第1問(「情報社会の問題解決」)は安定して高い得点率ですが、第3問の「コンピュータとプログラミング」が低いことがわかりました。

 8月の「共通テスト本番レベル模試」の第3問の分析結果では、問1(ア~ウ)は、2ページにわたる文章を読んで内容を整理して回答する問題ですが、得点しやすい問題でした。問2以降、プログラムを書く力が求められる問題です。これらの問題を苦手とする生徒が多く、正答率がぐっと下がってます。プログラミングで得点するためには、
 1)プログラング思考による事象の構造化
 2)それをコードという形で表現・落とし込む
 3)最終的にはコードを書けるようになる
というステップが重要です。

 ただ、情報Iについては、プログラミングの問題も教科書レベルを理解し、共通テスト対応の演習を行えば、しっかりと得点できます。新しい教科で不安に思われるかもしれませんが、心配しすぎず取り組んでください。

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