6年目を迎えた大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、出題傾向の変化や難化が毎年大きな話題となっている。今年の共通テストでは受験生にどのような力が求められたのか。また、共通テスト後の志望校選びにはどのような動きが見られたのか。
多数の難関大学合格者を送り出してきた駿台予備学校 入試情報室長 城田高士氏に、2026年度共通テストの各科目の難易度分析をはじめ、志望動向、そして来年度以降に共通テストを受ける受験生へのアドバイスを聞いた。
文系・理系ともに難化
--2026年度共通テストの志願者数に変化はありましたか。
2026年度の共通テスト志願者数は49万6,237人で、昨年から1,066人増えました。全体としては2025年度とほぼ同水準です。内訳を見ると、現役生は42万311人で前年から5,657人減少し、既卒生は7万1,310人で6,336人増加しました。現役生が減った背景としては、18歳人口がそれほど変わっていないものの共通テスト離れが進んでいることや、年内入試の広がりが影響していることが考えられます。
今回は既卒生が増えましたが、そのうち特に「前々年度卒業」生が3,883人と大きく増え、前年比で1.4倍となりました。この学年が現役で共通テストを受けた年は、新課程入試の前年度で、「浪人回避」による安全志向が強まると言われていました。しかし、実際のデータを見る限り、全体として極端な安全志向にはならず、難関大の志願者が大幅に減ることもありませんでした。

この既卒生の増加は全体の動向を左右するほどではないものの、誤差と片付けるには大きい数字です。新課程を避け不本意な進学をした受験生が一定数存在し、再挑戦した可能性があると考えています。出願校や進学先に納得がいかない場合、何年も後悔する可能性があることは覚えておいてもらいたいです。
--2026年度共通テストの難易度についてはどのように分析されていますか。
データネットの6教科の予想平均点では、文系596点(対前年-24点)、理系603点(対前年-30点)とともにダウンしました。共通テストの初年度は平均点が高く、その翌年は下がりましたが、同様に新課程入試初年度にあたる昨年は高かったため、新課程2年目の今回は予想どおり揺り戻しがありました。理系は平均点が30点下がっていますので、下がり幅は大きいといえます。

中でも今回は、「国語」の平均点が大きく下がりました。平均点が昨年より10.3点下がりましたが、昨年10点ほど平均点が上がったので、元に戻ったともいえます。また昨年はじめて実施された「情報I」は、今年は下がると予想されていましたが、予想どおりで12.7点下がりました。これら2科目のマイナス分だけでも平均点の下げ幅は20点を超えています。

また、「物理」は難化し、平均点が13.4点下がりました。一方で「化学」は11.5点上昇しています。理系では物理と化学を併せて受験する受験生が多いため、この2科目間である程度はバランスが取られた面があります。
「地歴公民」では、平均点が上がった科目と下がった科目がありましたが、全体としてはおおむね60点前後に収まっています。理科では科目間の得点差が大きく出たのに対し、地歴公民ではおよそ4点以内に収まっており、比較的科目間の差が小さい結果となりました。
志願者の80%以上が参加した自己採点集計「データネット」の6教科の度数分布の推移を見ると、文系では昨年と比べて700点以上の高得点者が減少しています。成績下位も増えていますので、受験生にとっては昨年よりも難しいという印象が強かったと思います。

さらに理系では昨年と比べて700点以上の高得点層が文系以上に減少しています。また600点以下の下位層が2024年度、2025年度と比べてもかなり増加しましたので、文系以上に難化したといえます。

難化が目立った科目は?
--難化した教科の出題傾向と目立った変化について解説をお願いします。
「国語」は昨年、4題構成から5題構成になるという大きな変更がありました。新たに加わった第3問では、実用的な文章をもとにグラフや資料を活用しながら解く形式が導入されましたが、その他の問題は単一テキストになったことで解きやすくなり、平均点も上昇しました。今年は第2問と第4問、第5問が複数テキスト構成に戻ったため、解きにくさを感じた受験生も多かったと思われます。さらに今回の第3問はイラストが1枚入った以外はテキストベースで、題意が取りにくくなりました。特に理系の受験生はグラフから数字を読み取る形式よりも、テキストベースで情報を整理する問題の方が解きにくかったと思います。

「数学I,数学A」は難化して平均点が6点ほど下がりました。成績上位層が減ったので高得点が取りにくかったといえるでしょう。これまで日常の事象を題材に考える問題が多く出題されていましたが、今回はそうした形式が見られませんでした。誘導の意図をつかめないと解答に時間がかかる問題が多く出題されました。

「数学II,数学B,数学C」は平均点が3点上がりました。昨年は高得点が取りにくい問題でしたが、オーソドックスな出題に戻りました。難易度は特に変わりませんでしたが、今回は正規分布に近い得点分布で実力差が出やすくなりました。この傾向は今後のベースになると思います。
--「英語リーディング」は平均点が5点ほど上がりました。
今年は受験者の3分の1の人が80点以上に集まりました。高得点が取りやすかったため、英語を得意とする人がなかなか差をつけられなかったでしょう。昨年より語数が100語ほど減り、読みやすい文章で設問も解きやすかったと思います。極端に高得点者が増えたため、来年は少し難しくなる可能性があると考えています。

「英語リスニング」は、出題形式は大きく変わらないものの問題は難化し、平均点は6.6点下がりました。高得点が取りにくく、得点を取れる人と取れない人の差がつきやすい出題でした。昨年、一昨年と比べても難しくなりましたので、来年以降は今年の難易度をベースにした準備が大事になってくるでしょう。
--理科では「物理」の平均点が13点ほど下がりました。
昨年、一昨年と比べても高得点が取りづらく、80点以上取れた人は全体の6%、60点以上でもやっと30%ほどで、70%の受験生が60点未満になりました。数学と同様に身近な題材からの出題がなくなり、純粋に物理の力が問われ、計算力も求められました。「化学」は得点を取れる人と取れない人に二極化し、平均点は11.5点ほど上がりましたが、成績上位の人が高得点を引っ張る形で、実力差がかなり出たといえます。

地歴公民や理科など2科目連続で解答する教科では、前半の「第1解答科目」を合否に使う大学もあります。今回は物理が難化したため、物理を第1解答科目にした受験生は不利になった可能性があります。得意科目を第1解答科目に決めておくことが大原則なのですが、状況によっては柔軟に変更する判断も必要かもしれません。
--「情報I」の難化も注目されました。
昨年がかなり易しかったので平均点は下がると予想されていましたが、今回56.7点と60点近辺の平均点に落ち着きましたので、今回の難易度が来年度以降の基準になると思います。出題傾向では、2進法と16進法のやり取りに時間を取られた受験生が多かったと思います。昨年は高校生にも身近なレシートを題材に、そこから情報を読み取る問題がありましたが、今年は住民票が題材になるなど、高校生には馴染みのないものが扱われました。

共通テスト後、志望動向はどう動いた?
--国公立大の学部系統の志望動向に変化はありましたか。
志望者が増えているのは、語学系や法学系、経済・経営・商学系で、文系人気がやや戻ってきています。一方、理系は全体的に減少傾向で、唯一伸びているのは農・水産学系です。米の価格高騰など“食”に関する話題が家庭でも身近になったことが進路選択に影響したと考えられます。
学部系統を細かく見ると、総合科学でも「総合情報学」というデータサイエンス系の専攻が増えています。データサイエンスの人気は落ち着いてきたという声もありますが、やはり根強い人気を示していることがわかります。また理学系では「化学」専攻だけが伸びていて、専攻内容によって志望動向に差が出ていることがうかがえます。(※表中の数値は、前年の値を100としたときの今年の指数)

--国公立大で目立った志望動向の変化は見られましたか。
共通テストの平均点が大きく下がったため、かなりの安全志向が進むと思われました。しかし、2月18日に発表された国公立大学の志願者状況を見ると、難関国立10大学(北海道大、東北大、東京大、東京科学大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大)の前期日程志願者数は、前年対比指数で98に留まっています。北海道大、一橋大、大阪大は前年よりも志願者は増えています。一方、東京科学大の前期は指数87と大きく減りました。難関国立10大学の前期合計では1,047人の減少でしたが、そのうち569人が東京科学大の減少分です。大学間の差はあるものの、多くの難関大志望者は初志貫徹したと言ってもいいのではないでしょうか。
前期日程の志願者を見ると、国立大合計では992人の増加、公立大合計は1,396人の減少でした。概して国立大のほうが公立大より難易度は高いため、がんばって志望を貫いた受験生も多かったものと思います。
--共通テスト利用の私立大学における志望動向はいかがでしょうか。
今回、共通テストの平均点が下がったので、国公立大の出願には慎重になり、私大併願が増えているようです。こちらも文系、中でも法学系が増加、経済・経営・商学系も増加しています。また国公立大では増えなかった国際関係学も増えています。(※表中の数値は、前年の値を100としたときの今年の指数)

理系では、落ち着いてきたと言われていた医学系が少し持ち直しました。模試で志望者が多かった歯学系も引き続き堅調です。さらに工学系が増加し、国公立大と同じように農・水産系が増加しています。
共通テストと一般方式、どちらを軸にするか
--共通テストを利用する国公立大か私立大か、あるいは私立大志望の場合は共通テスト利用と一般方式のどちらを選ぶべきか。入試方式によって心構えや対策も変わってくると思います。新高1~3年生と保護者の方へアドバイスをお願いします。
第1志望が国公立大でも私立大でも、共通テストを全員が受けるという方針の学校もありますので、各学校の方針によることが前提ですが、たとえばMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は、一般方式よりも共通テスト利用方式の方が難度が高くなる傾向があります。
国公立大を第1志望とする場合は、併願する私立大で共通テスト利用方式を活用するのが一般的です。一方、私立大を第1志望とする場合は、共通テスト利用方式も視野に入れつつ、まずは一般方式に向けた準備を優先するのが良いでしょう。第1・第2志望の私立大については共通テスト利用方式も検討しながら基礎固めを進め、入試直前期には第1志望の一般方式に集中できる状態をつくることが理想です。
共通テスト対策については、「思考力・判断力・表現力を鍛える特別な訓練が必要」と考える方も多いかもしれませんが、基本となるのは学校の学習です。ただし、暗記した内容がそのまま出題される形式ではなくなってきているため、定期テスト前に詰め込むのではなく、教科書の章末問題をしっかり解けるレベルまで、理解と演習を積み重ねることが重要です。

学校での探究活動は受験に直接つながらないと言われることもありますが、資料を読み取り考える力や、自ら問いを立てる姿勢は、共通テストでも確実に役立ちます。また、高1・高2の学習が基礎となるため、この段階でしっかり理解を積み重ねておくことが重要です。
保護者の方にとっては、センター試験とは異なる出題傾向に不安を感じるかもしれませんが、十分な学力があれば対策は後からでも間に合います。対策ばかりを急いで基礎をおろそかにすると、出題の変化に対応できなくなるため、まずはどんな問題にも対応できる基礎力を身に付けることがもっとも大切です。
--ありがとうございました。
共通テストの難化が伝えられる今こそ、出題傾向と向き合いながら、基礎を着実に固めることが何より重要となる。志望校合格には学校での学びを大切にするのはもちろん、駿台予備学校のような実績に基づくデータ分析やプロによる指導が、現役生・既卒生ともに有用となるだろう。
第一志望は、ゆずれない。駿台予備学校

