個別指導塾TOMASは2025年2月23日、新宿のホテルハイアットリージェンシー東京にて「中学入試最新分析報告会2025」を開催した。毎年2月に実施される本イベントだが、TOMAS教務本部の松井誠氏によると「今回はコロナ以降最大規模の来場者数を記録した」とのこと。
イベントは、森上教育研究所所長の森上展安氏による特別講演「今年の入試を振り返って」と、TOMASに通い見事難関中への合格を果たした生徒と保護者を招いての「難関中合格者インタビュー」の2部構成だ。最新の入試状況を知りながら、その中を戦ってきたリアルな受験生の声の両方に直接触れられる。本記事では、その概要についてレポートする。
1都3県の私立中学受験率は15.2%の「高止まり」
東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県において、2025年度入試に私立中学校受験に挑んだ小学6年生は4万2,801名、受験率は15.2%。依然として高止まりの状態だと森上氏は話す。

背景にあるのは、高校入試における就学支援金制度の拡充(私立高校授業料無償化)だ。すでに同制度が導入されている東京都では、私立高校に通う際の負担減を念頭に、その分の教育費を中学入試に充てる家庭が増加していると推察する。
その裏付けとなるのが、東京都教育委員会が2025年1月16日に発表した「令和7年度 都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査結果(概要)」。これによると、2025年(令和7年)度の高校入試で都立を第一志望とした中学3年生の割合は66.97%で、ここ10年でもっとも低い数値となる。
2026年からは全国的に、私立高校の無償化制度において所得制限が撤廃される。つまり東京都以外でも同様の流れが発生する可能性が高い。こうした状況から、森上氏は「児童数が減少しているにもかかわらず中学受験者数は現状維持となり、今後も厳しい戦いが続くのではないか」と話した。
特に注目を集めた「開智所沢」「慶応普通部」
続いて、2025年度入試において特に目立った学校について、その背景の分析が行われた。
まずは2024年4月に開校した開智所沢だ。本校である開智との同時出願が可能で、複数回受験によって加点も行われることから人気が上昇し、志願者数は前年比男子185.2%、女子で170.3%と、森上氏曰く「大旋風。大いに盛りあがった」。開智の受験者数も男子163.8%、女子157.1%と大きく伸びており、来年以降の動向に注目が集まるところだ。
また、慶応義塾普通部も志願者数を前年比118.6%と大幅に伸ばした。同校は2024年度から合格者平均点や合格最低点の公開を始めたことが話題となっており、森上氏はこれについて「これまで麻布や駒場東邦を受けていた男子の最上位層が(慶応義塾普通部を)受験したのでは」と分析した。

2月1日AM受験者の7割が、同日PM入試に挑む
2月1日の午後入試については、2025年度も盛況だった。1日午前の受験者のうち7割ほどが午後入試に挑んだという。特に難関を目指す受験生が午後に中堅校を受ける傾向が目立つ。
その結果、1日午後入試では広尾学園・本科の女子は倍率5.77倍、広尾学園小石川・インターナショナルSGも、男子3.83倍、女子5.07倍の激戦に。森上氏は「広尾学園グループ人気は依然として強く、支持を集めている」とコメントした。
また、女子については跡見学園の2月1日午後入試で志願者が前年比121.6%と大幅増。十文字や普連土といった伝統校の人気が高まる中、併願先として選ばれたものと見られる。
1都3県ごとのトピックを紹介
ここからは、1都3県の主要な中学入試の志願者数・実倍率についての森上氏の解説の中から、それぞれの概要を大まかにレポートする。
埼玉県
森上氏によると「埼玉入試は、東京都内からの受験者も多いのが特徴」で、前受け校としての受験も多く見られるという。栄東は1月10日、1月12日の両日とも志願者数が微減してはいるが、それでも2日間で6,000名以上の志願者を集めている。また、淑徳与野、浦和明の星といった女子高も例年と変わらぬ人気を集め、堅調な入試となった。
千葉県
千葉県の中学入試は比較的地元志向が強く「進学前提で受験する生徒が多い」と森上氏は語る。渋谷教育学園幕張・市川・東邦大東邦の「千葉御三家」はいずれも倍率2倍以上を保ち、例年通り激しい戦いであったと言える。
一方、森上氏が注目したのは麗澤AEコース。1月21日の入試では、男子の志願者数が115.0%、女子は139.5%と大きく増加した。森上氏によると「都内でもその傾向が見られるが、最難関校よりも中堅校の人気が上昇傾向にある」とのこと。
また、昭和学院秀英も多くの受験者を集めたと話題に。第1回入試では男女合わせて1,291名が受験し、合格者365名であった。倍率3.5倍を超える激しい戦いであったことがわかる。
冒頭で触れた通り、千葉県でも私立高校の授業料無償化の影響が出てくることを考えると、この高倍率状態は2026年度以降も続くと予想される。
東京都・神奈川県(男子校)
東京都の男子校においては、日本学園が現体制最後の入試となり、前年比149.4%の志願者を集める激戦となった。2026年度からは「明治大学世田谷」となり、共学化する。
神奈川県では、浅野が2025年度より定員を30名減らし240名としたことに注目が集まったが、受験者数はほぼ変わらなかった(志願者数前年比98.4%)ため倍率は微増。森上氏の分析によれば「神奈川県も千葉県と同様に進学前提で受験する生徒が多く、しかも都内のように塾通い前提ではなく、学校生活そのものを重視する傾向がある」という。そういった背景から、定員が減るからと敬遠し、志望校を変える生徒は少なかったものと考えられる。
東京都・神奈川県(女子校)
2025年度の女子校入試については、ほとんどの学校で志願者数の減少が見られた。中でも桜蔭では志願者数前年比91.7%と減少幅が大きく、2024年の1.97倍に引き続き今年も1.79倍と実倍率が2.0倍を割った。
神奈川県でもフェリス女学院、洗足学園とも志願者が減少しており、近年の共学人気の高まりを実感させられる結果となった。
東京都・神奈川県(共学校)
難関男子校・女子校の倍率が低下する中、共学校は引き続き高い状態を保っている。特に渋谷教育学園渋谷・広尾学園の女子はいずれも実倍率が4.0倍を超え、上位層の女子からの人気の高さは明白だ。
三田国際・芝国際といった英語教育に力を入れている学校の人気も高い倍率で推移している。世田谷エリアは神奈川県も含めた幅広い地域から通学圏内となるため、この「共学+英語教育に力を入れている学校」の人気高騰はまだしばらく続きそうだ。
森上氏が注目する「2026年度入試のポイント」
2026年の2月1日は日曜日。2月1日が日曜となるのは、2015年以来であり、特にキリスト教系の学校では日曜日に実施されるミサの都合上、試験日を2月1日(日)から2月2日(月)に変更する学校が複数校あると予想される(すでに女子学院、東洋英和女学院、立教女学院は日程変更を公表している)。この「サンデーショック」と呼ばれる試験日程の問題が、受験生たちの志望校選択に大きな影響を及ぼすことは想像に難くない。
また、先述のとおり、日本学園中は2026年度より「明治大学付属世田谷」へと名前を変え、共学化する。共学化初年度の女子の志願者数・受験者数、また、それによって男子の入試状況がどうなるか、目が離せないところである。
2026年度には明星学苑が新校を開設するという話も出てきている。今後も各校から新しいニュースが発信される可能性があるので、引き続きチェックしておきたい。

合格者インタビューから垣間見える、中学受験親子のリアルな姿
イベントの第二部では、TOMASで学び、見事難関中に合格した生徒4名とその保護者を招き、受験にまつわるリアルな体験談を聞くインタビューが行われた。第一部では熱心にメモを取っていた保護者も、第二部では比較的リラックスした表情となり、ときには場内が笑いで満たされる場面もあった。以下、簡単にインタビュー内容を紹介する。
「暗記はサボらずコツコツやるべき」(O・Kさん(女子学院)とお母さま)
まずは、浦和明の星、渋谷教育学園幕張、女子学院、渋谷学園渋谷と、数々の難関中に合格を果たしたO・Kさんとお母さまが登壇した。1月の入試も成功しているように見えた彼女だが、それでもやはり本命の2月1日にはかなり緊張したと語る。
そんな彼女が後輩にアドバイスしたいことは「理社の暗記はコツコツ頑張った方が良い」。彼女自身、前半に手を抜いてしまったために後半かなり苦戦したそうだ。最後に冗談めかして笑顔で言った「地獄の暗記、頑張ってください(笑)」のコメントからは、中学受験生のリアルが感じられた。
「先取りカリキュラムで過去問をやり込んだ」(W・Tさん(開成)とお父さま)
続いて登壇したのは、西大和、渋谷教育学園幕張、開成、聖光学院に合格し、筑波大学付属中でも補欠の座に滑り込んだW・Tさんと、そのお父さま。算数についてはかなり先取りでカリキュラムを進め、小4の後期にはスペックTOMAS(TOMASから誕生した最難関中受験専門の個別指導塾)の6年生テキストを扱っていたという。
そんな彼でも、開成中の過去問には苦戦し、小6の後半には苦しい思いをしたそうだ。しかし「小さなつまずきを見つけたらすぐに対策する」という方法で壁を乗り越えたと笑顔で語っていた。
「模試を楽しむという心構えが大事」(H・Nさん(桜蔭)とお父さま)
続いては、栄東、浦和明の星、桜蔭、豊島岡女子学園に合格したというH・Nさんとお父さまが登壇。インタビュアーから「渋谷教育学園幕張中は受けなかったのか」との質問があったが、問題の難易度や桜蔭との傾向の違いから、候補から外したとのこと。本命に専念するために回避したと語っていた。
印象的だったのは、模試当日のお父さまの「模試を楽しんで」という声掛けだ。そのように伝えて見送り、帰宅後には「楽しかった?」と聞く。緊張するとお腹が痛くなるタイプだと語っていたNさんにとって、この温かなサポートは大きな支えとなっていたに違いない。
「仲間の存在は合格への道しるべ」(H・Yさん(筑波大学付属駒場)とお母さま)
最後に登場したのは、栄東、灘、渋谷教育学園幕張、開成、聖光学院、筑波大学付属駒場に合格したH・Yさんとお母さま。
見事、最難関中学の合格を勝ち取ったYさんだが、小学5年生の頃にはモチベーションが下がった時期もあったそうだ。しかし、同じ学校を目指す同学年の友人から刺激を受けて「また頑張ろう」と決心できたとのこと。
個別指導塾というと孤独な戦いをイメージする人もいるかもしれないが、案外同じ時間帯に通う生徒同士が仲良くなることは珍しくない。集団塾とは異なり、生徒同士が適度な距離感を保てることもメリットだ。Yさんの場合は、それがまさに合格への道しるべとして効果を発揮したと話していた。
個別指導塾「TOMAS」の2025年度合格実績TOMASが提案する「合格への道」
合格者インタビューの中で「小4のとき、小6の教材を使っていた」「先取りして学習を進めていた」という話があった。これらは1対1の個別指導だからこそ実現できることだ。
TOMAS教務本部の高山知行氏は「志望校合格の確率を高めるのにもっとも有効なのは過去問対策をやり込むこと。TOMASでは可能な限り単元学習を早く終わらせ、過去問を繰り返しやり込む時間の余裕をつくることを目指している」と説明した。
早いうちに学習を進めれば、つまずきかけたときに時間をかけて穴を塞ぐこともできる。致命的に苦手な分野を作らないためにも、この仕組みは有効だ。生徒それぞれの得意・不得意を早期に把握し、それを伸ばす、あるいは補うカリキュラムを設計する。個別指導の良さを最大限に生かし、TOMASは来年度もより多くの生徒を第一志望合格へ導いてくれるに違いない。
中学入試の世界は日進月歩。ほんの数年違うだけでもまったく様相が異なる場面も少なくない。そのような中、本イベントでは専門的な分析だけでなく、リアルな中学受験経験者の声を聞くことができ、中学入試におけるさまざまなトピックを知ることができた。
TOMASの「中学入試最新分析報告会」は、中学受験を希望してさえいれば、塾生以外の保護者や生徒も無料で参加できる。これだけの情報を惜しみなく提供できるのは、TOMASの本質は入試情報だけではなく、実際の授業であるというプライドの表れであるとも感じられた。TOMASでは、年間を通じて中学受験に関するセミナーやイベントを開催している。足を運び、最新の動向をキャッチアップしてほしい。
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