東大京大に多数の合格者を輩出する、全国屈指の進学校・西大和学園が2014年に開学した大和大学。西大和学園を開校30年余りで躍進させた創始者・田野瀬良太郎氏が総長に就任。東京一極集中に抗い、関西からの優秀な人材の流出を食い止めるべく、開学当初から「東の早慶、西の大和」を目指し、日本を動かす人材を育成する。
難関国公立大学院への進学と日本を代表する有名企業への就職で優れた実績を誇る理工学部の記事に続き、今回は2024年に新設された政治経済学部グローバルビジネス学科にスポットをあてる。全員参加のアメリカ・アジアへの2カ国海外研修をはじめ、グローバル人材に必須の「英語+実践スキル」を身に付ける独自のカリキュラムについて、政治経済学部副学長の中岡義久教授と、同学科1期生となる大学2年生4人に話を聞いた。

中岡義久教授(政治経済学部グローバルビジネス学科・学科長)
2年生(グローバルビジネス学科1期生)
瀧口 遥菜さん大久保 美紅さん井福 陽仁さん古川 晃暉さん
経営学を「学ぶ」のではなく「体験する」
--2024年4月に誕生したグローバルビジネス学科の特長を教えてください。

中岡教授:本学科の特長は、実学・実践型の教育で、次の3つの力を身に付けることです。
まず1つ目は「ビジネススキル」です。最新のアメリカ型経営理論をベースに、トヨタ、コカ・コーラ、スターバックスなど、世界を代表する企業の戦略を題材としたケーススタディで、経営学を「学ぶ」のではなく、「体験する」学びを実現しています。企業の第一線で活躍してきた実務家教授陣や実際の企業経営者がリアルな課題と意思決定を学生に問いかけ、グループワークやプレゼンを通じて、自らのアイデアを「経営戦略」に活かすプロセスを体験し、企業の経営陣の一員になったかのような臨場感を味わいます。
また、AIやデータサイエンスなどのスキルを身に付け、経営やマーケティング戦略に生かす方策を学びます。さまざまなビジネス課題を、テクノロジーを駆使して解決を導く力を鍛え、未来のビジネスシーンで輝く人材の育成を目指します。
2つ目は「ビジネスマインド」です。これは単なる知識や技術ではなく、未来を切り拓く「志」と「感性」だと我々は考えています。人の成長は、人との出会いから生まれます。刺激的な対話が思考を広げ、情熱に火を着けます。ですから本学科では、世界を舞台に活躍する経営者に特任教授としてビジネスの舞台裏を語ってもらい、その情熱やビジョン、戦略に触れ、教科書では得られないリアルな学びを通じて、学生ひとりひとりの志を高め、フロンティア精神を育んでいきます。
そして3つ目は「グローバルスキル」です。西大和学園グループは、創設当初から国際教育に力を入れてきました。西大和学園カリフォルニア校を拠点に、日本とアメリカの架け橋となる役割を担ってきただけでなく、アジア各国の教育機関とも連携を深め、長年にわたって強い絆を築いてきました。その強みを活かした本学独自のプログラムが、全員参加の2カ国海外ビジネス研修 "Yamato World Challenge "(YWC) *です。
1年生のアメリカ研修では、シリコンバレーのGAFAM** をはじめとする最先端企業の現場で、イノベーションの本質を体感します。2年生のアジア研修では3か国(インドネシア・マレーシア・タイ)のうち1か国を選択して訪問。急成長市場のアジアで、学生自身が練り上げたビジネスプランの実現可能性を検証します。異文化の中で、交渉力・問題解決力・コミュニケーション力を鍛え、グローバルな視点を獲得します。
*研修期間はアメリカが約10日間、アジアが6日間
**Google,Amazon,Facebook,Apple,Microsoftの頭文字をとった呼び名
--1年次でのアメリカ研修では、Googleの社員から直接課題をもらって課題解決に取り組むという希少な経験ができるそうですね。
中岡教授:今回、Google社員の方から出されたテーマは「生成AIを用いたビジネスプラン」です。1年生全員がチームを組み、ビジネスモデルを企画・立案して、プレゼンとデモを行います。学生たちはアメリカ研修の前、1年後期の「プロジェクトゼミ」という授業で、毎週チームで議論を重ねながら企画をブラッシュアップし、デモツールの制作までしっかりとやり遂げました。
実践力育成を重視したカリキュラム
--グローバルビジネス学科のカリキュラムについて教えてください。
中岡教授:定員80名という手厚い教育環境の下、実践を重視したアメリカ型の最先端経営学を学べるカリキュラムになっています。
まず1年次には教養と基礎を固めたうえで、2年次からは最先端の経営学とビジネス実践力、そしてITスキルを本格的に学びます。具体的には実践的な英語力に加えて、「ITパスポート***」のような国家資格や「ビジネス統計スペシャリスト(上級)」などの取得も目指し、「英語+実践スキル」を身に付けます。
***情報処理技術者試験の1つで、ITに関する基礎知識を証明する国家試験

--英語力向上のために、大学ではどのようなサポートを行なっていますか。
中岡教授:ビジネス英語に重点を置き、英語演習や英会話、ネイティブ講師によるビジネスプレゼンテーションなど、かなり充実した授業を実施しています。また、英語は毎日の積み重ねも大事ですので、学生たちには学習アプリも活用してもらっています。さらに、TOEICで730点以上のスコアが取れた学生を対象に、スキルアップを目的とした実践型の特別講義も行なっています。
教授陣はビジネスのトップランナー、だから授業が面白い
--学生の皆さんは、なぜ大和大学政治経済学部のグローバルビジネス学科を選んだのですか。
瀧口さん:私はずっと留学したいという夢があったものの、長期の留学にはなかなか踏ん切りが付かず、チャレンジできずにいました。でも、ここなら全員参加の海外研修が2回もあるので、まずは短期留学からトライしてみたいと思ったのがきっかけです。

大久保さん:私も高校のときから留学したいと思っていて、大学1年生でアメリカに行けるカリキュラムが珍しかったのでここを選びました。
井福さん:僕も同じ理由ですが、僕の場合は語学留学ではなく、海外でのビジネスを学ぶための実践的な留学である点に魅力に感じました。
古川さん:僕にとって最大の魅力は、アメリカ研修でGAFAM企業に行けること。それも、昨年度はGoogle本社を訪れるだけではなく、パネルディスカッションやプレゼンテーションをしたり、スタンフォード大学の学生と交流できたりする機会があり、1年生からこんな経験は他の大学ではできないと思いました。
--実際に入学してみて、どんなところが魅力だと思いますか。
瀧口さん:中岡先生がおっしゃったように、先生方はビジネスの最前線で活躍する経営者などスペシャリストばかりで、実際に体験したことを話して下さるので、授業がとても面白いです。リアルなビジネスの話だと、専門的な内容も自然と頭に入ってきますね。
古川さん:実学・実践重視のカリキュラムなので、経済はもちろん、英語やIT、プレゼンテーションなど、いろいろな分野のスキルを学べるのが魅力だと思います。1年次のアメリカ研修では、アプリを作ったり、アイデアをプレゼンしたり、学んだスキルを早速使って実践する機会がありました。
大久保さん:私は、この学科に限らず大和大学の魅力は、少人数で先生との距離が近くて質問しやすいところ、学生同士の仲が良いところだと思います。高校のようにクラス制で、担任・副担任もいるので、大学生活や進路のことなど気軽に相談でき、私も昨年フィリピンに2ヶ月間留学した際には役立つアドバイスをいただけました。先生方も学生と積極的にコミュニケーションを取ろうと声をかけてくれます。
井福さん:僕も先生方はとても熱心で手厚いと思います。アプリを作成した際、先生にメールで相談したら、夏休みだったのにその日のうちに修正点を返信してもらえました。また、2年次のアジア研修では1年次のアメリカ研修での経験を活かして、段階的かつ実践的に学んでいくので、成長の手応えを感じられる優れたカリキュラムだと思います。

--特に印象に残っている授業はありますか。
瀧口さん:私は1年次の後期に海外研修の準備をする「プロジェクトゼミ」です。各チームに担当教員がつき、ビジネスプランの企画からデモ用ツールの制作、プレゼンスキルの習得までを幅広くサポートしてもらえます。先生方はビジネス経験が豊富なので、アドバイスによって視野が大きく広がり、さまざまな考え方を学べたことが印象に残っています。
大久保さん:私は「ビジネスプレゼンテーション」です。英語でのプレゼンスキルを身に付けるための授業で、カナダ人の先生にプレゼンの導入から結論まで効果的に構成するコツを教えてもらい、アメリカ研修でもすごく役立ちました。
井福さん:僕は「経済学」と「情報科目」です。政治経済学部は大学入試では文系として扱われるので、こうした理系の学問はあまり学べないだろうと半ばあきらめていました。でも、授業がとても面白くてわかりやすく、ITにも数学を使う経済学にも一気に興味が湧きました。
古川さん:僕は「経営学」です。実在する企業を例に、どんな事業を行い、いかに成功していったのか、企業の動きは社会にどういう影響を与えるのかについて、グループごとに分析して発表する授業です。ケーススタディを通じて学ぶので、まさに冒頭で中岡先生がおっしゃったように経営学を体験しているようで、モチベーションが上がりました。
アメリカ研修は自らリミッターを外すきっかけに
--1年次に経験したアメリカ研修で、どんな変化がありましたか。
瀧口さん:私は、働き方に関する価値観が揺さぶられました。シリコンバレーでは「仕事が趣味だ」と感じている人が多くて驚きましたし、現地で働く日本人の方に「なぜアメリカで働こうと思ったのか」と質問したら、逆に「なぜあなたは日本で働こうと思っているの?」と返され、あらためて自分はどこでどんな働き方をしたいのかを考えるきっかけになりました。
大久保さん:私も滝口さんと同じです。アメリカ研修に行くまでは、日本で就職し、その会社で海外と関われたら良いなと思っていたのですが、なぜ日本なのかと聞かれてハッとしました。他の国で働くという選択肢を考えていなかったこと、無意識に自分の進路を型にはめてしまっていたことに気付かされました。
井福さん:僕はアメリカ研修を通じて、課題解決の本質を学べたことが最大の成長だったと思います。
研修に行く前、Google社員の方から課題をもらい、ピッチコンテストに向けて準備していた際には、「どんな面白いアイデアが審査員の興味を引くだろう?」という視点のみで考えていました。ところが、予選で審査員の方から「潤沢な資金をもつところがお金をつぎ込んできたら絶対に勝てない。だからこそ課題の中に自分たちにしかできない理由を見つけ出す必要がある」というフィードバックを受け、自分の思考がいかに表面的だったかを突きつけられた思いでした。絵に描いた餅ではなく、課題の根本までしっかり深掘りし、自分たちだからこそできることを考え抜いた結果、本選で優勝することができました。
古川さん:僕は、自分がアメリカという大国にとらわれすぎていたことに気付けたのが大きな収穫でした。もっと日本や、近隣の成長市場であるアジアに目を向けてみようと思えるようになり、これからのアジア研修がますます楽しみになりました。

留学費用、資格取得…「学生ファースト」で手厚い支援制度
--2年生になり、9月にはアジア研修がありますね。どんな準備をしていますか。
井福さん:僕はタイに行きます。今は「プロジェクトゼミ」で、タイの高島屋から出された新規事業の提案という課題に取り組んでいます。タイの高島屋は大型複合施設内にあるのですが、立地の関係で来店者数が少ない、顧客が定着しないなどの課題を抱えているそうです。そこで、日本らしさを活かしながら、利益を出せるような事業を考えています。
瀧口さん:私はインドネシアです。私が「プロジェクトゼミ」で取り組んでいるのは、現地のイオンモールから出された「インドネシアに新しいモールを作る」という課題です。イオンモールの方から、建設・運営にあたって日本と何が違ったか、イスラム教の戒律がビジネスにどう影響するのかなどについてオンラインでレクチャーを受け、立地や現地の流行など必要な情報をヒアリングしたり、自分たちでどんなコンセプトがふさわしいかを考えたりして検討を重ねています。イスラム教の国に行くのは初めてなので、とても楽しみです。
--充実した研修ですね。一方で、授業料に加えて、留学にかかる高額な費用が入学の障壁になるご家庭も多いのではないでしょうか。
中岡教授:その点で、大和大学では手厚い支援制度を設けています。まず、全員必修の海外研修については、学生一人につき、アメリカ研修に20万円、アジア研修に10万円と、総額で30万円を支援しています。さらに、入学後3年生の8月までにTOEIC L&Rで 730点以上のスコアを獲得し、学修成績などの基準を満たせば、両研修の費用を全額(100万円相当)支援します。
また、これとは別に、さらに留学を希望する学生には、最大で100万円の留学支援奨学金制度も用意しています。留学期間に応じた給付型奨学金で、事前に審査を行った上で、1年間留学で上限 100万円、半年間留学で上限50万円を支給します。
授業料についても、グローバルビジネス学科では、入学時に特定の英語外部試験の資格・ スコアを所持している場合、授業料の1/2または1/4相当額の給付型奨学金が受けられる特待生制度があります。
瀧口さん:私はTOEICで730点以上取得したので、アメリカ研修もアジア研修も全額を大学から支援してもらえます。さらに留学支援奨学金を使って、1年間の留学を検討しているところです。
古川さん:英語の資格の他にも、簿記や税理士、公認会計士、ファイナンシャルプランナー、証券アナリスト、米国公認会計士など多くの資格取得を手厚くサポートしてくれて、合格すれば奨励金がもらえます。今、どの資格が注目か教えてくれたり、逆に学生からこんな資格を目指していると伝えると、すぐに支援を検討してくれたり、常に「学生ファースト」でいてくれるところが本当にありがたいです。
好奇心と行動力を世界へ挑む原動力に変える
--最後に、皆さんの将来の夢と、本学科への入学を検討している中高生にメッセージをお願いします。
瀧口さん:私は美容に興味があるので、今海外でも人気のある日本の化粧品をもっと世界に広める仕事ができたらと思っています。中高生には、大学1、2年生のうちに2回も海外研修に行けること、社会の最前線で活躍している人たちから直接学べることを、この学科の魅力として知ってもらいたいです。
大久保さん:私は航空系の仕事に携わりたいです。大和大学は学生ひとりひとりへのサポートがとても手厚いので、自分をもっと成長させたいと思う人にはぴったりな環境だと思います。

井福さん:僕は昔から好きだったゲーム業界に進みたいですね。英語力含め、ここで身に付けたグローバルなビジネスに役立つ国際的な視野や経営の知識とITスキルの両輪で、新しいゲームを作って世界中に売っていけたらと思っています。今日、皆が話したように、大和大学は実践的な学びができるのが何よりも魅力なので、充実した大学生活が送れると思います。
古川さん:僕は、アジアと取引する企業で働きたいです。この学科には、英語は得意ではないとかプレゼンは苦手だと感じている人にこそ来てほしいですね。ここで、さまざまな体験を通じて実践力を付ければ、社会で活躍できる人材になれると思います。
中岡教授:本学科は、皆さんの好奇心と行動力を、世界へ挑む原動力に変える場所です。実在の企業課題に挑戦し、AIやデータサイエンスのスキルを駆使して、皆さんの可能性を最大限に伸ばしてほしい。ここでなら、それができると私たちは本気で信じています。ぜひ1度キャンパスに足を伸ばし、この環境を自分の目で確かめてみてください。皆さんと出会えることを楽しみにしています。

--ありがとうございました。
学生の声からは、同学科の充実したカリキュラムで学ぶうちに、自らのリミッターが外れ、視野の広さと柔軟性が備わってくるようすが見てとれた。世界で活躍する一流ビジネス人材の基盤となるスキルと心構えを手厚く細やかに育成していく。1期生の彼らが、世界のビジネスの現場で活躍する日は遠くないだろう。