東大不合格からの再挑戦。その覚悟を決めるも、「次の1年も同じやり方で良いのか」と不安を抱える既卒生(浪人生)は少なくないだろう。合格のカギは根性や勉強時間の長さではないはず。ではどうしたら良いのだろうか。
そんな課題感に応える理想的な環境が「東大特化学習支援」だ。駿台予備学校(以下、駿台)がカルペ・ディエムと連携し、2024年度からスタートした既卒生向けのオプション講座で、現役東大生が伴走しながら東大合格に欠かせない勉強法のコツを伝授する。
本講座の真価について、累計40万部のベストセラー『東大読書』シリーズ執筆の他、漫画『ドラゴン桜2』の編集やドラマ『ドラゴン桜』の脚本監修などを手掛け、自身も2浪を経て東大に合格したカルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏、駿台お茶の水校3号館(東大専門校舎)で学習コーチを務める堤政文氏、そして1期生として本講座を受講し東大合格を果たした理科二類1年生の髙角康河さんに聞いた。
【話を聞いた人】
堤政文氏:駿台予備学校 お茶の水校3号館 東大コース学習コーチ
西岡壱誠氏:カルペ・ディエム代表取締役
髙角康河さん:東京大学理科二類1年(埼玉県立浦和高等学校出身)

現役東大生だから伝授できる 「合格するための勉強法」
--2年目を迎えた東大特化学習支援、まずはその概要から教えてください。
堤氏:「東大特化学習支援」は、駿台予備学校がカルペ・ディエムと共同で2024年度から導入した、東大合格を目指す既卒生向けのオプション講座です。通常授業に加え、カルペ・ディエムの現役東大生が学習をより効果的に進められるようサポートしてくれます。2期生は1期生から50人以上増え、想定していた以上にニーズがあるなと確かな手応えを実感しているところです。
--駿台には東大合格のために必要な学習環境がフルセットで整っていると思うのですが、カルペ・ディエムの現役東大生はどの部分でどのような役割を担っているのでしょうか。
西岡氏:駿台には東大受験に向けた指導においては日本一と言っても良い実力派の講師陣がそろっており、さらに堤さんのような学習コーチが生活面やメンタル面を支えてくれています。そこで僕らは、効率的な学習計画の立て方や勉強の方法など、自身の経験をもとに、より受験生に近い目線に立ってサポートしています。
現在、この講座を担当している現役東大生は、東大文科一類から理科三類まで10名以上おり、中にはこの3号館で浪人生活を送った経験者もいます。学生と年齢の近い現役東大生が関わり、カジュアルな対話を通じて近い距離感で寄り添えるところが最大の特徴であり、強みだと思っています。
--この講座では具体的にどういった活動を行なっていますか。
西岡氏:おもに次の3つの活動です。
1.東大生による週1回の講義
毎週土曜日、現役東大生が担当する特別講義が開講されます。ここでは東大合格に向けた1年間の学習ロードマップ(学習計画)の描き方、効果的な勉強法、過去問の取り組み方などについてアドバイスします。
2.個別面談による学習計画のフィードバック
受験生ひとりひとりに合わせた目標設定、学習計画の作成や進捗管理、添削・個別フィードバックを実施します。年2回ほどの個別面談も行い、学習状況や悩みを聞きながら、着実に成長していけるようにバックアップします。
3.東大生に質問できる自習室の提供
現役東大生スタッフが在室し、自由に質問できる自習室も提供しています。ちょっとした学習内容に関するつまずきや質問、それ以外のモチベーションの保ち方や生活リズムの調整といった悩みや不安、あるいは東大に関する雑談に近いことなど、「どんなことでも気軽に話しかけてくれていいよ」と伝えています。
僕は特にこの3つ目のフリートークの場こそが、この講座の真髄だと考えています。学校に行けば友達がいる現役生と違って、実は浪人生って意外と孤独で、ちょっとしたことを気軽に話せる相手が周りにいないことが案外多いんです。教科についての質問なら講師に質問できますが、「地理と世界史、どんなバランスで勉強すると良いか」といった悩みだと、講師にも聞きにくかったりする。東大受験を経験したからこそわかる、微に入り細にわたるところで壁打ちの相手となり、近くで伴走してあげられるのが現役東大生の役割だと感じています。
「成績の上げ方がわからない」からの脱却
--このプログラムを選択しているのはどのような学生さんたちですか。
西岡氏:受講してくれている学生はさまざまですが、大きく3つのタイプに分かれると思います。
いちばん多いのは、「自分で計画を立てたことがなく、入試に必要な勉強法がわからない」というタイプです。中学受験では塾や親に管理されて合格できたものの、その後は勉強についても厳しく管理されることがなくなり、計画の立て方さえわからないまま大学受験を迎えてしまうケースは少なくありません。実際に説明会では保護者からも、「大学受験は本人が自分で乗り越えられるのか心配」という声をよく聞きます。
2つ目は、地方の高校出身者で、周囲に東大を志す仲間や東大生がいないまま孤軍奮闘してきて、東大受験に関する情報が圧倒的に少ないタイプです。
3つ目は、現役時代は別の大学を目指していたものの、「浪人するからには東大を目指したい」と目標を切り替えたタイプです。
受験がうまくいかなかった学生が共通して抱えているのは、「どうしたら成績を上げられるのかわからない」という不安です。この講座が目指すのは、こうした不安を克服する具体的な方法を知ってもらうことです。
--支援をしていく上で常に心がけていること、大切にしていることを教えてください。
西岡氏:受験を通じて成長してもらうことです。時々誤解されるのですが、僕らは計画の立て方は教えるけれど、学生の代わりに計画を作ることはしていません。なぜなら僕らは、東大合格をゴールにするだけでなく、合格までのプロセスを通じた成長も、合格後の長い人生に役立つかけがえのない財産だと考えているからです。

さらに、計画性と効率性がいかに重要かを徹底して伝えることを心がけています。最近の大学入試は、この数年間でもやるべきことが格段に増えており、「根性」や「勉強時間」でどうにかなるものではありません。それに気付かなかったことで浪人せざるをえなかった人も少なくないはずです。だからこそ、浪人生にとっては計画を立て、効率よく勉強する方法を知る必要があるのです。
東大特化学習支援はどんな人に向いている?
--髙角さんは、なぜ東大特化学習支援を受講しようと思ったのですか。
髙角さん:高校時代はラグビー部に所属し、部活に全力を注いでいたので、高3の11月に引退するまでは平日も土日も勉強時間がほとんど取れませんでした。引退後は東京科学大学を目指し、とにかくがむしゃらに勉強した結果、共通テスト本番では8割を取ることができました。結果は不合格でしたが、「3か月でこれだけ伸びたなら、1年間浪人すればもっと上を目指せるのでは」と思い、東大を志す決意をしました。
ただ、3か月で成績が大きく伸びたのはそれまで勉強していなかった分の伸び代があったからで、勉強スタイルは計画も立てず、「今日は数学」「今日は物理」と気分任せでやっていただけでした。「このままではいずれ伸び悩むかもしれない」と不安を感じていたので、東大特化学習支援では「計画の立て方や勉強への向き合い方を教えてもらえる」という点が当時の自分にはグッと刺さりましたね。親には「東大を目指すから追加で受講させてほしい」と頭を下げてお願いしました。

--東大特化学習支援を受講する動機としては、髙角さんのような不安を抱えているケースが多いのですか。
堤氏:そうですね。髙角さんが言ったように、現役時代に計画を立てられなかったり、自分なりの勉強法が固まっていなかったりする人には特にお勧めしたいです。現役東大生が密に寄り添ってくれるので、「身近な人に引っ張ってほしい」という人にも向いていると思います。
また、私にとってこの講座での思いがけない発見は、学生たちが勉強を楽しんでいる姿です。毎週同じメンバーで顔を合わせるので仲間意識が生まれやすく、「一緒に頑張ろう」という連帯感からやる気が湧くようです。
西岡氏:勉強を楽しむという点では、過去問や東大模試の問題を僕らも一緒に解いて、「この問題は難しいね」と講評しあったり、「この問題は、XX年のあの問題と関連があるんだよ」といった話題で盛り上がったりするがよくあります。これは、渦中の受験生と受験の記憶が色濃く残る現役東大生だからこそできるマニアックな会話です(笑)。
髙角さん:僕も自分が解けなかった問題について、現役の東大生に「難しかったよね」と共感されて、「東大に合格した人でもそうなのか」と励みに感じたことを今でも覚えています。
浪人が決まったときは東大入試の情報がほとんどなかったので、比較的近い年に受験した先輩から直接体験談を聞けるのは参考になることが多かったですし、気軽にそうやって何でも話せたのはすごく心強かったです。
身近な先輩の存在が、勉強でも精神面でも大きな支えに
--実際に支援を受けてみて、自分が変わったと感じたことはありますか。それは東大合格につながったと思いますか。
髙角さん:受講してまず大きく変わったのは、年間目標シートや月間目標シート作成に取り組んだことによって、計画的に学習を進められるようになったことです。

最初に年間目標シートで1年の学習ロードマップを作り、そこに1か月ごとの計画を具体的に落とし込んでいったことで、着実に必要な勉強を進めていけるようになりました。優先順位が明確になり、勉強のペースをつかみやすくなったことは大きな変化でした。

中でもいちばんの変化は、模試の復習への取り組み方です。それまでは「できた」「できなかった」で済ませていた問題を、「しっかりできた」「偶然できた」「ギリギリ間違えた」「まったくわからなかった」と細かく分類し、より解像度を上げて課題を洗い出したことで、メリハリのある効率的な復習ができるようになりました。
さらに、現役東大生から、東大入試実戦模試に向けてのアドバイスとして、「まずは得点源の核となる分野を作り、そこから野球の守備範囲を広げていくような感覚で、得点源を少しずつ広げていく」というアプローチで、着実に成績を上げていく方法を教えてもらったときは目から鱗でした。
また、精神面でも、現役東大生との面談を通じて、高校時代から抱き続けてきた劣等感が消え、「周りと自分を比べる必要はない」と気持ちが楽になりましたね。東大合格はもちろん、入学後にも良い成績をキープできているのは、東大特化学習支援で身に付けられたさまざまなスキルやマインドセットのおかげだと思っています。
--これまで東大特化学習支援を受講した学生さんたちからはどんな感想が寄せられていますか。
堤氏:「学習支援に参加すると必ず勇気をもらえた」「つらいときには精神的に助けられた」「最後まで諦めずに頑張り続けられた」といった感想が多く寄せられています。私たち学習コーチに対しては、成績が伸びていないことや、スランプに陥って勉強できないことなどを理由に「申し訳ない」「相談しづらい」と遠慮して壁を作ってしまう学生もいるので、現役の東大生が相談しやすい場を作ってくれることで、これまでカバーしきれなかった悩みや不安の受け皿ができたと実感しています。

西岡氏:失敗談を含めたリアルな体験談が、後輩にとって大きな心の支えになっているのは間違いないと思います。浪人を経験したからこそ語れることもありますし、浪人中の学生はそうした彼らの言葉に励まされ、奮起させられると思うのです。実際、受講生のエンゲージメントは高く、学習支援の意義を物語っているのではないでしょうか。
東大をめざして得られる「人間力」
--この講座をどのようにしていきたいか、今後のビジョンをお聞かせください。
西岡氏:2年目である今年は、髙角さんを含めた1期生に経験談を語ってもらう機会を設けています。今後は、そうやってここを巣立って行った先輩たちに東大合格に向けた伴走を手伝ってもらうことでポジティブな循環を生み出し、不合格で落ち込んでいる人も、挑戦を迷っている人も「もう一度頑張ってみよう」と思えるきっかけになるような講座にしていきたいと思っています。
--最後に、東大を目指す受験生、そして、東大への挑戦になかなか踏み切れずに迷っている受験生に向けてもエールをお願いします。
髙角さん:東大を目指したいという気持ちが少しでもあるなら、「難しいからやめておこう」と簡単に諦めず、ぜひ挑戦してください。楽な道のりではありませんが、同じ目標に向かって頑張る仲間と出会えること、多くの課題を計画的かつ効率的にこなせるよう努力することはかけがえのない経験であり、合否に関わらず今後の人生の糧になるはずです。
堤氏:「挑戦したい」と思う気持ちがあるということは、すでに東大入試に向けて準備できている証拠です。東大の入試は、学校の教科書に載っている内容をベースに、正しい勉強法でコツコツと努力を積み重ねれば、西岡さんのように現役時代はE判定でも合格を手にすることは決して夢物語ではありません。だからこそ、まずは自分の可能性を信じて挑戦してみてください。
西岡氏:僕は、受験そのものが人として成長できる貴重なチャンスだと考えています。東大の入試問題では、知識やテクニックの優劣が問われることはありません。受験勉強を通じて、思考力や判断力、さらには人間力が十分に備わっているかが測られます。だからこそ、これから東大を目指す皆さんには、「どんな人間に成長できるか」という視点をもって挑んでほしいですね。
--ありがとうございました。
計画的で効果的な勉強法、精神面での支え、そして先輩や仲間と学ぶことの心強さと楽しさ。これらすべてを備えているのが東大特化学習支援である。その先に「東大合格」だけでなく「人としての成長」があるなら、まさに理想的な学びの環境と言えるだろう。西岡さんが言ったように、ここで育った東大生が次の世代を支えるという循環が続いていくことで、このプログラムの真価が一層深まっていくことを大いに期待したい。
第一志望は、ゆずれない。駿台式「東大合格」への道
