大阪府は高校授業料の完全無償化を2024年度の高校3年生から段階的に適用し、2026年度に全学年で授業料を完全無償化する。個別指導学院フリーステップと開成教育セミナーを展開する開成教育グループの入試情報室上席専門研究員 藤山正彦氏とクラス指導部教務課長 照井健司氏に、知っておくべき変化や準備、親の心構えなどを聞いた。
私立専願志向が強まり、学校改革に拍車
--授業料の完全無償化が始まり、入試に影響はありましたか。
藤山氏:これまで大阪では第1志望は公立が7割を占め、私立は併願で受験するパターンがメインでした。ところが高校2年生から全面無償化となる2024年度入試より急激に私立専願志向が高まりつつあります。
公立の出願なく私立のみに出願する私立専願が増えている今、それら受験生・受験家庭のニーズを汲み取り、改革することが学生募集の決め手になっています。今まで私立高校の多くは、土曜日や夏休みの補習などの徹底した受験対策を武器にしてきましたが、一転して、公立高校にあわせて土曜日授業をなくす動きや、教養講座などを設けて学びを多様化する動きも増えています。一方で、かつての流れを強化し、大学進学実績をセールスポイントに、補習などの受験対策をさらに整える学校もあり、二極化が進んでいます。
私立人気が高まる一方で公立高校入試では、これまで定員割れになったことのなかった学校が定員割れを起こし、大阪の高校受験界隈を揺るがしました。伝統ある地域の名門校・富田林(とんだばやし)や地域2番手の名門校寝屋川、産近甲龍合格ランキングの上位に入る槻の木が定員割れとなったことは、その最たる例と言えるでしょう。
こういった定員割れの話をすると「難関の公立高校が入りやすくなったのでは?」と聞かれますが、公立校の中でもTOP10高をはじめとする偏差値上位の人気校については、校風やブランド力もあり、変わらず高い倍率を維持しています。
高難度のC問題、数学は図形特化
--今一度、大阪の公立高校入試について教えてください。

藤山氏:大阪府の公立一般入試の受験科目は、国語・数学・英語・理科・社会の5科目。そのうち国語・数学・英語は「A:基礎的問題」「B:標準的問題」「C:発展的問題」の3段階に分けられます。当日の試験は1教科90点満点×5教科の450点満点です。
内申点は、中3の成績を重視するため、中1と中2の9教科学年末の成績を2倍、中3は6倍で計算します。学力検査と調査書の比重は、I型7:3、II型6:4、III型5:5、IV型4:6、V型3:7の5タイプあり、たとえばI型であれば学力検査の成績は1.4倍、調査書の評定は0.6倍をかけるので、5タイプの中ではもっとも学力検査を重視する型になります。
2026年度入試を実施するのは前年度より2校少ない140校です。このうち、3教科すべてC問題を扱うのは18校で、北野(文理)、茨木(文理)、豊中(文理)、春日丘(普通)、千里(国際文化/総合科学)、池田(普通)、大手前(文理)、四條畷(文理)、天王寺(文理)、高津(文理)、生野(文理)、八尾(普通)、富田林(普通)、三国丘(文理)、岸和田(文理)、泉陽(普通)、和泉(普通/グローバル)、鳳(普通・単位制)となっています。
また、学力検査の英語では英語資格を活用することもできます。対象はTOEFL iBT、IELTS、実用英語技能検定(英検)で、スコアなどに応じた読み替え率により換算した点数をみなし得点にすることができます。英検であれば2級で80%の72点、準1級と1級で100%の90点満点が保障され、換算した得点と当日受験した英語の得点を比較し、高い方が英語の得点として採用されます。
--難関校が扱う「C・C・C」の問題について教えてください。

藤山氏:難関校は、一般選抜の国語・数学・英語の学力検査問題3段階のうち、もっとも難易度が高い「C:発展的問題」を3教科すべてで選択しています。英語のC問題は特に「リスニング」の難易度が高い傾向があります。そのため難関校の中でも「C・C・B」と英語だけ「B:標準的問題」を採用する学校もあります。
照井氏:国語のC問題は難度が高く、文中には中学生には馴染みの薄い抽象的な語句や難解な表現が多く見られます。そのため、豊かな語彙力に加えて、背景知識の乏しい文章であっても論旨を追い、文脈から意味を読み取る力が必要となってきます。
数学のC問題は「図形特化」と言っても良いほど図形問題の配点割合が高い構成となっています。特に空間図形では、立体の位置関係を整理しながら筋道立てて考える力や、多角的にアプローチできる思考力が求められます。また、関数や証明の問題では、複数の知識や解法が組み合わさった問題に対応し、直感的な理解を論理的に説明する力が必要となります。
人気校の傾向は?
--公立高校の人気傾向はありますか。
藤山氏:公立高校は倍率を参考にしていただくと良いでしょう。府立桜和は、2024年度に0.98倍と定員を下回りましたが、大阪市立から府立へ移管された経緯があり、校舎がきれいで立地が良いこと、多くの海外の提携校があることなどの魅力もあり、今年は1.31倍と高倍率となりました。
--私立高校の人気傾向はいかがですか。
藤山氏:私立高校は、規模が大きな学校のほうが発信力がある分、人気が集まりやすい印象です。また人数規模が大きいということは、その分、部活動の選択肢も増えますので、こういったことも人気に影響すると考えられます。
得点アップに向けた、過去問の活用法
--過去問の入手時期や効果的な使い方を教えてください。
藤山氏:過去問は受験する高校が決まった時点で必ず入手してほしいです。記述系の問題が多いなど、学校ごとに出題傾向が異なるため、過去問でしっかり準備をするということが大切になります。過去問はそこから必ず出題されるというものではありませんが、「最新傾向を知る」「ペース配分を学ぶ」ための重要な教材です。
照井氏:過去5年分を効果的に活用することで、出題傾向の把握だけでなく、自分の課題の発見、得点設計のイメージづくり、さらには時間配分の感覚を養うことができます。時間のある土曜日の朝などに、本番さながらに教科順で練習しておきましょう。
藤山氏:こうした練習を重ねると、自分が得点しやすい問題と、時間をかけても取りにくい問題が見えてきます。難関校を目指す場合は、限られた時間の中で「解く問題」と「捨てる問題」を見極める力が必要になります。過去問で間違えた問題は解き直しをしながら、その判断が適切であったかを検証してみてください。
照井氏:「捨てる問題」を見極める際は、得意不得意だけでなく、点数配分のバランスを考えることが重要です。「捨てる問題」を見誤って、大きく失点するといったことがないように、過去問トレーニングで見極める感覚を身に付けていってほしいと思います。
難関校を目指す生徒の中には、中学校の定期テストでは高得点を取れていても、公立入試のC問題では半分ほどしか得点できず、ギャップに戸惑うケースもあります。そこで「自分は向いていない」と早々に諦めてしまうのではなく、合格最低点などを参考に、現実的な得点戦略を立てて過去問に取り組んでほしいと思います。
高校受験の勝者は「朝型」
--この時期、保護者ができるサポートについてがアドバイスをお願いします。

藤山氏:やはり時間管理と栄養管理に尽きます。いちばん良くないのは、生活リズムが乱れて、夜型になってしまうことです。入試は朝から始まり、長時間にわたって集中力が求められます。朝の時間帯から頭が働くように、今のうちに生活リズムを整えておくことが大切です。今からでも十分間に合いますので、ぜひ見直してみてください。
照井氏:受験生には、保護者の精神的な支えも欠かせません。過去問がうまく解けず、落ち込んでしまうことは誰にでもありますが、大切なのは「落ち込むこと」ではなく「次につなげること」です。保護者の方には、ぜひお子さまに「これまで積み重ねてきた努力を信じて、本番を迎えればきっと大丈夫」と伝えてあげてください。その言葉が、当日の緊張を和らげる大きな力になります。
選択肢を狭めない、広い視野での学校選びを
--2026年度(全学年完全無償化)以降の受験生と保護者へメッセージをお願いします。
藤山氏:まずは、早めに学校選びのモーションを起こしてほしいですね。受験勉強のエンジンをかけるには、「本当に行きたい学校を見つける」ことが何よりも大切です。特に私立高校は、校則や学校行事の雰囲気などひとつひとつが大きく異なります。その学校の特色をよく見て、自分に合う環境を探していってください。一方で公立高校では、予想もしないような学校で定員割れが起きるケースが増えています。3年連続の定員割れとなり、改善の見込みがないと判断されると、府条例により募集停止となることもあります。最新の募集状況を確認しながら検討することが重要です。
学校選びの流れとしては、まず紙の情報誌などで全体像をつかみ、次に合同説明会で気になる学校のパンフレットを集めて比較し、そして最後にオープンスクールへ参加し、実際の校風を肌で感じてほしいと思います。
照井氏:「受験校は何で選びましたか?」という質問をすると、偏差値で選んだという人が大半です。通学距離を重視する人が多いのも事実ですが、偏差値・通学距離を条件に選択肢を狭めてしまうと、本当に自分にあう学校を見落としてしまうことにもつながります。大学受験も含めた先の進路も踏まえて、幅広く情報を集めたうえで検討してほしいと思います。
--ありがとうございました。
変わる大阪府公立入試、最後まで徹底サポート
2026年度大阪府公立高校入試が年明け2月に実施される。特別入学者選抜の出願期間は2026年2月16日から17日まで(音楽科は2月3日から4日まで)。検査日は2月19日・20日(音楽科は2月14日・19日)、合格発表は3月2日。一般入学者選抜の出願期間は3月4日~3月6日、学力検査は3月11日、合格発表は3月19日に行われる。
開成教育グループでは、受験生のニーズに応えるさまざまな受験対策講座を用意している。
開成教育セミナー
公立中高一貫コース、私立中学受験コース、小学生実力練成コース、中学生実力練成コース、難関校突破コース・選抜シリウス、開成ハイスクールなど、小中高生の各学年に応じた最適な指導で全員を目標実現に導くための多彩なコースを展開。受験につながる「図形センス」を鍛えるパズル道場やプログラミング講座も実施している。
開成教育セミナー個別指導学院フリーステップ
個別に教材を選ぶことができ、苦手な教科に集中して受講するといったオーダーメイドの柔軟な対応ができることが魅力。部活動に勤しみ、入試直前期まで忙しい受験生にもお勧め。独自開発のシステムにより、定期テストの「点数アップに強い」個別指導となっている。
個別指導学院フリーステップ
